大丈夫だ、問題無い。
はてはて、今回は場面が変わります。
ではではどうぞ。
「まだ来てないみたいだな」
目の前でシエスタしている美鈴を前に一先ず安堵した。
………てかこの時間ではシエスタとは言わないか。
「おい起きろ美鈴」
肩を掴んで揺らすと美鈴がゆっくり目を開いた。
「何ですか咲夜さん……」
「誰がメイド長だ」
「………え、あ、と、橙矢さん!?」
「その反応だとさっき俺が来たときからずっと寝ていたな……。まったく門番が何してるよ」
「……でもどうして橙矢さんがここに?もしかしてまた執事やるんですか?」
「まさか、やるわけねぇよ」
「そうですか……ではどうしてこちらに?お嬢様に何か用でも?」
「は?……まさかレミリア様が出ていった事自体知らないのかよ……」
どんだけ寝てんだよ、と額に手を置いてため息を吐いた。
「え、ちょっとそれどういう事ですか!?」
「咲夜さんが一緒だから大丈夫な筈だ。……それより門番の仕事頼むぞ」
鋭い視線を喰らって一瞬身構えたがすぐに敬礼する。
「了解です!……ですが一応聞いておいて良いですが?」
「ん?なんだよ」
「その怪我どうなされたんですか?」
血が滲んでいる制服を見下ろして美鈴が呟く。
「…………ともかく門番頼む」
そう言い残すと館の中へと入っていった。
治療室で簡易な手当てを済ませると広大な図書室に来ていた。
そこには予想通りの人物が。
「あら、東雲。来ていたの」
「お久しぶりですパチュリー様。相変わらずな寝間着ですね」
「そういう貴方は執事は辞めても皮肉さは健在ね」
「それだけが取り柄みたいなものですから」
「異変解決者の一人が何言ってるのよ」
「止めてくださいよ。俺はただその場に居合わせただけですから」
「別にそんな謙遜しなくても良いのに……ところでレミィはどうしたの?」
「……フラン様に斬られました」
「…………は?」
パチュリーは目を見開いた。
「どういう事?どうしてフランが?」
「……………………」
何も言わずに目を附せる。
「東雲!」
「……そのままの意味です。すみません、力及ばず……」
「………レミィは無事なの?」
「はい。今は地霊殿で咲夜さんと東風谷との治療を受けています」
「……そう、なら良いわ」
「………それよりも恐らく間もなくフラン様がここに来ます」
「?帰ってくるの?」
「いえ……潰しに来る可能性が高いです」
「ッ!」
「……………今のフラン様ははっきり言って狂気の塊でしかないです。そうでなければ実の姉を手にかけたりしないでしょう」
「…………」
「ですから迎撃体勢を取っといてください。いつフラン様が来ても対処出来るように」
「……わ……かったわ」
渋々といった様子で了解した。
それを確認すると図書室の扉を開ける。
「俺は辺りを見回ってますから」
「……そう、気を付けてね」
「ありがとうございます」
微かに微笑んでから図書室から一歩、出た瞬間―――
轟音と共に紅魔館が揺れた。
「ッ!フラン様がもう来たのか……!」
「東雲!大丈夫!?」
駆け寄ってくるパチュリーを手で制す。
「俺は大丈夫ですからパチュリー様は覆っている結界の強化をお願いします。ここからフラン様を逃がさない……!」
その時廊下の数少ない窓から美鈴が飛び込んで来た。
「ッ美鈴!」
「橙矢さん……。妹様が」
「分かってる。………来るぞ!」
外から圧倒的な熱量を持った剣が振り抜かれた。
美鈴と橙矢はその場から飛び退き、直撃を免れる。しかし衝撃の余波によって吹き飛ばされた。
「ッぅ……!」
「………なんだ、また私の前に立ち塞がるのね。お兄様」
フランが窓に足をかけて橙矢を睨む。
「………フラン様こそ何でそんな戦闘後みたいに傷付いているんです?確かレミリア様と戦っている時はそんな傷付いていなかった筈ですが」
するとフランが急に表情を明るくし、笑みを作った。
「そうなんだよ!私ね、妖怪の山にある神社の神様を倒してきたんだよ!」
「………ッ!」
「フラン様……何言って………」
動揺を隠しきれない美鈴が一歩後ずさる。
「あれ?まだ分からないかな美鈴。つまり守矢神社の二柱の神様を倒したんだよ。私が一人で」
「マジかよ……」
「まだ信じられない?……だったら神様を倒したその力、貴方に直接喰らわせる必要があるわね!」
「構えろッ!」
言うと同時にいつの間に移動していたのか横からフランに蹴り飛ばされる。
「ッ速!?」
「橙矢さん!」
「大丈夫だ……!」
床を滑り、止まると同時にフラン向けて駆け出す。
降り下ろされるレーヴァテインをスライディングして避けると一気に懐へ潜り込み、足を振り上げてレーヴァテインを持つ手を蹴りあげる。
そして首を掴んで持ち上げると床に叩き付けるように投げ付けた。
「ッァ!」
「次ッ!」
「邪魔だ……!」
逆にフランに顔を掴まれて廊下の奥へと投げられる。
一瞬で目の前に迫る壁を身を翻して足を着けると強化させて再びフランに接近する。
その勢いのまま拳を突きだすが掌で受け止められる。しかし勢いは殺せなかったのか二人とも窓から外へ出ていく。
「っと……」
橙矢は何とか窓に掴まり、落下を免れる。
フランは翼を広げて空中に留まる。
「フラン様!」
美鈴が窓から身を乗り出す。
その時を狙っていたのかフランがレーヴァテインを降り下ろす。
「馬鹿野郎……!」
身体を持ち上げて身体ごと美鈴を押して中に押し込んだ。
レーヴァテインが館を削りながら橙矢の頭のすぐ上を通り過ぎていく。
「美鈴!お前確か〈気を操る能力〉だろ!?フラン様の気は今どうなってる!?見えるだろ!」
「橙矢さん何言って……」
「いいから!見えるのか見えないのか!」
「み、見えます……」
「だったらどうなってるのか教えろ!」
「何こそこそ話してるの?」
「………チィ!」
振り向くと目の前に迫るレーヴァテインを刀を引き抜いて受け止める。
「今の内に……早くしろ!」
「は、はい!」
「ッハァ!」
「うぉぁ!」
押し返されて体勢が崩れたところで殴り付けられた。
「橙矢さん!」
「俺の事はどうでもいい!それよりも気を抜くな!」
「え?」
美鈴が前を見るとフランがレーヴァテインを上段に構えていた。
「うぇ!?」
慌ててその場から飛び退き、橙矢に並ぶ。
「……美鈴。お前は妖精メイド達を集めて避難させとけ」
「ッ!ですかいくら橙矢さんでもフラン様相手では……」
「お前は下手に手を出せないだろ?だから俺がやる」
「しかし……」
「はっきり言って邪魔なんだ」
美鈴を一瞥すると身体を震わせた。
「かと言っても俺はまだ死ぬ気無いんだけど」
無理矢理作り笑顔を装うと刀を中段に構えた。
「分かったら早く行ってくれると助かる。俺単独行動の方が楽なんだ。それよりも見えたか」
「え……あぁ、見えました。かなり気が乱れていますね」
「………お前の能力で直せないか?」
「無理です。無理に直そうとすると少しでも操作が誤ると更に気が乱れます」
「…………分かった。後は任せろ」
ゆっくりとフラン向けて歩き出す。
「……どうしても私は退かなくてはいけませんか?」
「……どうしてもだ。それともなんだ、俺が信じれないのか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「じゃあ早く行け」
「………分かりました。気を付けてください」
渋々といった様子で了解してくれた。
「あぁ、任された」
美鈴が駆け出すのを見届けるとフランへと突撃しいった。
「……またお兄様?もう少し賢い人だと思ってたけど………私の勘違いのようね!」
呆れ顔で橙矢を一瞥してからレーヴァテインを天井を破壊しながら降り下ろす。
「マジかよ……!」
回転しながら受け流し、すぐ真横にレーヴァテインが叩き付けられて衝撃波が橙矢を襲うが耐えて腕を掴むと窓の外へ投げ出した。
「うわ……!」
自らも外へ出ると宙に漂うフランを睨み付けた。
「お兄様、いくら何でも諄いんじゃないかしら」
「自覚してますよ」
「じゃあ早く消えてくれないかしら!」
急降下して橙矢の距離を詰めるとレーヴァテインを降り下ろす。
それに合わせて刀を振り上げた。
が、
「掛かったわね!」
レーヴァテインをふと消した。
「ッ!」
「残念でした……」
目の前に広がる弾幕。
それを避け、あるいは刀でいなす。
弾幕が晴れるとそこにフランの姿が無かった。
「何処に……ガァ!?」
背中に弾幕が被弾した痛みが生じ、その場から飛び退く。
「被弾一、お兄様の残機はあと幾つかな?」
口を歪ませて嘲笑うフランに対してさすがの橙矢も焦りを感じていた。
(……地霊殿にいるときはまだ対処出来たが……それよりも遥かに強くなっていやがる…。神様と戦ってその影響で……?いやまさか……だが神様がこんな短時間に?)
「何考えてるの?別に何か考えたところで何も変わらないよ!!」
「…………少々黙って頂けますかね」
「別に良いけど………ねッ!」
紅魔館の壁を足場にして蹴ると一瞬にして橙矢の顔面を掴み、地に叩き付けられた。
次いで首に手をかけると締め付けに入る。
「ァ……カ…ッ……!?」
「…………………」
手を掴み返して剥がそうと試みるが無意味だ。
「フラン……さま……!」
「………お兄様やお姉様がいけないんだよ?……みんな私を独りにするから」
「……………!」
「だから私は本当の自由を手に入れる為にお姉様を殺す」
「―――――――!!」
「もう遊び方には飽きた。お兄様はここで死んでもいいよ」
片手を離してその手にレーヴァテインを顕現させる。
「ッ!」
「…………………バイバイ、お兄様」
真っ直ぐ橙矢の胸に降り下ろされた―――
あ、前書きでいい忘れてました。
次回は阿求を描こうかな、と思っております。
あー寒い。炬燵にくるまって寝たいです。
では次回までバイバイです!