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……………
……
いつの間にか自分の家に戻ってきていた橙矢は一睡もせず虚空を見続けていた。
何も考えずただただ見続けていた。
「…………………」
不意に顔を上げたが特に何も無かったためすぐに上げた顔を下げた。
その時だった。
コンコンと軽めなノックが響いた。
「………………」
傍らに置いてある刀に手を伸ばす。掴むといつでも抜ける構えを取る。
「…………誰だ」
「私だ。豊聡耳神子だ」
「知らねぇなそんなやつ」
刀を一気に引き抜くと戸を吹き飛ばし、一切微動だにしない神子目掛けて刀を降り下ろした。
「やれやれ、少し話し合う事が出来ないのか君は」
溜め息をつくと腰にぶら下げている刀で受け止めた。
神子は橙矢の目を見ると目を細めた。
「………成程、良い具合に妖怪に近付いているようだね」
「………うるせぇ」
刀をかち上げて腹を蹴り飛ばす。
「っとと、痛いな退治屋」
「…………その呼び方止めろ」
「失礼。それでは何と呼べば良いのかな」
「………何でもいい」
「じゃあ退治屋と―――」
「却下だ」
「連れないね。まったく………」
「太子」
後ろに控えていた布都が焦るように呼ぶ。
「あぁ分かってる分かってる。して退治屋、私から良い報せだ」
そう言って口の端を吊り上げる。
「……………………何だ」
橙矢は興味無さげに受け流した。
「まぁそう言うな。君にとっては今かなり大事なことだから」
「………今の俺に?」
「あぁ、知りたいか?」
「……………別に」
「少しくらい反応してくれたって良いじゃないか。つまらないな」
「…………用件が無いなら帰れ」
「じゃあもう言うよ。里が襲撃に遭いそうになってる」
「………………何?」
「どうやら妖怪目測およそ百超の数が里に向かっている。………このままじゃ里は壊滅するよ」
「…………霊夢や魔理沙達がやってくれるだろ」
「………………ほとほと君には呆れたよ」
大きく落胆して歩み寄ると胸ぐらを掴み上げる。
「いつまで根に持つつもりだ?いくら君が嘆いたところで時間は戻らないんだ。…………君の歳なら理解出来るだろう?」
「……………黙れよ、俺の事を何も知らないくせに………」
睨み付けるが冷たい視線を送ってくる神子に圧倒されて逸らした。
「あぁもちろん知らないよ。そもそも知りたくもないしね。君の事なんか」
「だったら………」
「そうそう、これは私の想像に過ぎないけど多分フランドールも関わってると思うよ」
「……………!」
「君は妖怪の賢者に任されたのだろう?だったら最後までやり遂げてみせろ屑」
「……………屑、だと……?」
「何だ、聞こえていたのか。言った通り任された事も出来ない奴はみんな屑さ」
「…………ふざけんな、俺は……」
「じゃあさっさと里に向かえ、今里は助けを求めているはずだ」
「…………………」
唇を痛いほど噛み、己をコントロールしようとする。
「………フランドールを止めろ。それが君に出来る唯一の報いだろう?」
「――――――――!!」
その言葉を聞いたときすでに駆け出していた。
「ようやく行ったか……、世話の焼ける坊やだ」
欠伸をして来た道を戻ろうとする。
「待て太子」
「何だ布都」
「……………お主はどっちの味方なんだ?東雲を妖怪化させようとしたり里へ助けに向かわせたり………何を考えている?」
「…………何って、私がしたいようにしてるだけだが?」
「それが何かと――――」
ずいっと顔を近づけられ、思わず言葉を失う。
「………お前は黙って私に付いてこればいい」
「ッ…………」
布都には構わず謳うように続ける。
「私は私の悲願のためだけに動いている」
目の前の妖怪を切り捨て、殴り飛ばす。
「邪魔だ……!」
身体を捻って前から来る妖獣を斬り上げて真っ二つに斬り裂く。
そのまま後ろに回転して左右から来る妖怪を蹴散らした。
足を強化させて前方目掛けて蹴りあげた。するとそこから亀裂が走り、更に衝撃波を発生させる。
「消えろッ!」
道が開けると駆け出しからトップスピードに乗り、駆け抜ける。
左右から迫る妖怪を速度を落とさぬまま回転して刀で斬り、或いは鞘で殴り付けた。
斬った妖怪の頭を掴むと妖怪の群れに投げつけた。巻き込みながら転がる妖怪を横目に再び走り出す。
次は全方位から――――
「うぜぇんだよ!!」
強化した腕で地を殴り付け、その衝撃で一掃させた。
「ハァ……ハァ………」
肩で息をしながらも前方を見据える。ようやく里が見えてきた。
「やっとか……」
「ギィィィヤァァァァアアアア!!」
絶叫が橙矢の耳を叩いた。
「ッ!」
すでに妖怪共は里の中に侵入しているようだ。囲っている柵を飛び越えて里の中に入る。
空にはすでに霊夢や魔理沙、それに妹紅と慧音がいて妖怪に応戦していた。
「わざわざ里を襲うことねぇだろフランドール!」
一飛びで里の中心まで跳ぶと群がっている妖怪目掛けて刀を降り下ろす。
辺りにいた妖怪はそれだけで吹き飛んでいく。
横回転して妖怪を真っ二つに斬り、それを足場にして屋根に跳び移る。
周りを見渡すが里人の姿は見れない。
(何処か安全なところにでも避難したか?……だとしたら何処に……)
考えるより早く駆け出す。それほど里は大きくないと推測するので全て探し出すにはそれほどの時間は掛からないと思う。
刀を鞘に収め、足を強化すると屋根の上を次々と駆けていく。
前方から妖獣が飛んでくるが、後ろに回転して下から蹴りあげる。しかしその妖獣は翼を広げ、空中で留まる。しかもその翼には見覚えがあった。
「ッ!妖獣と吸血鬼の雑種…!?」
「オオオオォォォォォォ!!」
橙矢に迫る鋭い牙を避け、頭を掴むと下に投げつけた。
「せめて言葉を話しやがれ……」
刀を引き抜いて構える。
「お前に割いてる時間は無いからな。早めに死ぬことをオススメするぞ」
「ギィヤァァァァァァ!」
「………やっぱり話は通じないか……」
距離を一瞬で潰すと下から斬り上げる。それを紙一重で避けられると殴り飛ばされる。
「ッ………!」
幾つもの家屋を貫通していくが寸前に後頭部を強化させたためそれほどのダメージは無い。
それでも口の中を切ったのかペッと血を吐いた。
「中々面倒な相手だな……」
再び絶叫を揚げて橙矢目掛けて突進してくる。
「俺の邪魔をするな!!」
刀を上段に構え、一気に降り下ろした。それは鋭い爪によって阻まれる。
と同時に横から蹴り飛ばす、寸前に翼をはためかせて避けた。
「しゃらくせぇ!!」
刀を投げつけ、それを妖獣が弾く。すぐさま跳び、刀を掴んで妖獣に降り下ろした。
深々と斬り裂き、大量の血が噴水のように飛び散る。
一切気にせず懐に潜り込み、殴り付ける。
「ガァ………!」
吹き飛びそうになる身体を腕を掴んで無理矢理止め、更に殴り付ける。
限界まで腕を強化させ、顔面を殴り付けた。
続くように刀を首もとに捻り込む。
「―――――――!!」
横に振り切って首を斬る。
「ッアアアア!」
血を吐きながら妖獣が橙矢の首もとに噛みついてきた。
「………」
冷静に身体ごと妖獣を地に叩きつけた。
「ガァ……!?」
「あばよ」
刀を首目掛けて降り下ろした。
次回までバイバイです!