東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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ではではどうぞ。


第六十一話 護れなかった者

「――――――――――――――」

時が止まったような沈黙が辺りを包んだ。

「…………………何言ってんだ……?」

掠れた声で何とか言葉を発する。

「聞こえかなかった?」

「ば、馬鹿言えよ……俺は妖怪共を殺して…………殺して………」

「殺して?それからどうしたのかしら?」

「フランとこいしを殺ろうとして…………」

そこでハッと顔をあげた。

「ようやく思い出したようね。そうよ、貴方の中にいる妖怪、夜叉が出てきたのよ」

「え…………ァ…………」

それに、と傘で橙矢の足元を指す。それを追うように視線を動かす。

そこには里の人の…………死体が。

「ァ………アァ…………」

「酷いものね。これで貴方は里の人達から恨まれる存在になる。……最初に里を襲った妖怪共と同じ存在。私達妖怪が暴れた結果がこの景色よ」

「……………―――――ハッ」

橙矢が小さく嗤いを溢した。それは吹き出るように絶え間なく続ける。

「ハハ……アハハハハ!そうか、そういう事かよ!あぁいやぁこれは傑作だな!」

狂ったように嗤い続ける橙矢を冷ややかな眼で見ていた。

「おかしくなっちゃったのかしら?」

「ハハ…………あ?馬鹿言えよ。狂ってなんかいない」

橙矢は目を細めると幽香の後方に視線を向ける。

幽香は見るまでもなく笑みを浮かべた。

「………、なるほどね。そういえば貴方の目的はそっちだったかしら」

「………里を護れなかった事は後悔している。けどそれ以上に………

 

 

 

―――――家族を護れなかった事の方が後悔している!」

 

 

 

 

前方から来るフランとこいし目掛けて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様が元に戻った……!」

フランが一転して嬉しそうな表情でレーヴァテインを引き抜いた。

「東雲お兄ちゃん!もう一回遊ぼうよ!!」

こいしも満面の笑みで弾幕を放った。

「来いよ妹等……!今度こそちゃんと相手してやる………!」

「言われなくても!」

突っ込んでくる妹二人に接近すると腕を掴んで投げ飛ばした。

「うわ…!」

「きゃ……!」

「一旦ステージセレクトをさせてもらう!」

「そんな暇あるなら早く戦いなさい!」

体勢を立て直すフランに刀を降り下ろすがレーヴァテインによって止められる。橙矢は大きく左腕を振り上げ、強化させると刀身を殴り付けた。

「――――!!」

吹き飛ぶと今度は横からこいしが巨大な針を手に迫る。

「前々から思ってたがその針は何だよ…!」

針を弾きながら問う。

「これ!?これはね、私の瞳を閉じた時に使ったいわば縫い針だよ!」

「デカすぎるだろ…!」

「同情なんかしてもらわなくていい!」

「してねぇよ!」

腕を強化して針を弾いてこいしを蹴りあげた。

里の端まで追いやると足を止めた。

「さて……ここまで来ればいいだろ。さすがにこれ以上お前ら二人を押し続けると俺が動けなくなる」

平然と言ってみせたが実は今のところ立っているのがやっとだ。

「…………お兄様、まさか今まで手加減してたの」

対するフランとこいしも肩で息をしていた。

「……質問の意味が分からないな」

「どうしてそんなに私達二人を相手に押し通せるの!?」

「……手加減なんてしていた覚えがないな。さっきだって本気でやっていた。それでもお前らに敗けたしな」

「だったら……!」

「もう護る物が無いからな。俺には。気楽なんだよ」

「……………護る物?」

「そうだ。それをお前は傷付けた」

刀の先をフランに突き付けた。

「家族をな」

「―――――ッ!」

「俺はお前を許さない。……許せるはずがない。お前にとっては今はどうでもいいものかも知らないが……俺にとっては唯一の居場所なんだよ……!」

「…………………」

「だから何だってさ!東雲お兄ちゃん!」

横から迫る蹴りを受け止め、地に叩き付けた。

そして持ち上げた。

「お前には悪いがここで退場願う。迎えが来たからな」

「ッ!」

「橙矢さん!」

上空から橙矢の前にこいしの姉が降り立った。

「ようさとり……無事だったか」

「えぇ、急にこいしに背後から刺されるのは予想外だったけれど……。ま、そこは姉の優しさで許してあげるわよ」

「じゃあこいつは返すよ」

こいしを放るとさとりの腕に中に収まる。

「…………無意識だか何だか知らないけどな、家族を大切にしろ。……捨てられたらそこまでなんだからな」

そう言う橙矢には説得力があった。

「………………うぅ……」

まるで悪戯がバレた子供みたいに萎れた。

「………橙矢さん、ありがとうございました」

「だったら早く行ってくれ。邪魔だ」

そう言うやいなやさとりを背後に下がらせて目の前まで迫っていたレーヴァテインを刀で受け止める。

「さすがに庇いながら戦うのはキツい……!」

弾くとその弾かれた勢いを使ってフランがレーヴァテインを降り下ろす。

「マズい……避けろッ!」

さとりの腕を掴んで後方に跳んだ。

真後ろにレーヴァテインが叩き付けられてその衝撃で橙矢達を吹き飛ばした。

「チッ………!早く行け!」

「橙矢さん……!」

「東雲お兄ちゃん!」

「分からず屋が……!」

一気にフランに接近し、蹴り飛ばした。

「うあ…!」

「こっからは小細工無しのサシだ!遠慮することはない!互いに殺り合おうか!」

「ハハッ、お兄様!」

手を翳すと弾幕を放つ。それを器用に避け、或いは刀で払い落とす。

「弾幕は効かねぇぞ!」

「……どうやら本当らしいね。なら!」

再びレーヴァテインを顕現させた。

「接近戦がお好みのようね!」

「ッッ!」

上半身を寝かせると目の前をレーヴァテインが通る。

「アハハッ!上手い上手い!」

フランはそのまま横に回転すると踵を腹に入れた。

「カ……ハッ」

地を転がりながらも立ち上がった。

「ハァ……ハァ………」

「まっだ行くよー!」

「………!」

薙ぐレーヴァテインに刀身を当てて何とか軌道を逸らさせると足を払う。続くようにレーヴァテインを持つ手を蹴りあげた。

「ッ!」

「接近戦は得意分野でな……!」

「くそ…!」

掴みかかってくる手を手で押さえ込んで取っ組み合いになる。

「……………!」

「…………………!」

僅かにフランが押しきり、橙矢を後退させた瞬間弾幕を放つ。

「チッ!」

全て避けると腹を蹴り抜く。

「ガハッ……!?」

吹っ飛んで地を転がるが翼を広げて宙に身を浮かべた。そのフランに飛び付いて翼を掴む。

「………!?何を……!」

「墜ちろフランドール!」

平衡感覚を失い、地に身体を叩き付けた。

「グ…………」

「終わりだ!」

「まだ……!」

転がる勢いでレーヴァテインを顕現させて振り抜く。

「くそ………ッ!」

慌てて刀を縦にして防ぐが勢いは止められずに吹き飛ばされた。フランは一瞬にして追い付くとレーヴァテインを振り下ろす。

器用に受け流すと殴り飛ばした。フランは宙で体勢を整え、橙矢に突っ込む。

刀とレーヴァテインが互いに弾き、再び火花を散らして交わる。

体勢を僅かに崩すが橙矢は右足で地を蹴って側転をするように回り、刀を振り回した。予想外の行動だったのか無理矢理防ぐが大きく後退する。

「鬱陶しい………!」

レーヴァテイン最大出力にして横に振り抜いた。

「ッッッ!」

足を強化させて真上に跳ぶ。

その判断は正しかった。あのまま受け止めていたら刀もろとも橙矢の身体も焼かれていたかもしれない。

「ハァッ……ハァッ……」

「お兄……様………しつこい……わよ」

共に息を荒げながら構える。

「お前としては……嬉しいんじゃないか………?」

「うん……楽しいよ。お兄様……何百年か前の………お姉様以来よ。こんな……楽しいのは……!」

「…………そうか」

そう言った瞬間二人は同時に駆け出して互いの得物を振り下ろした。

拮抗したのは一瞬。

後は衝撃波が二人を襲って吹き飛ばした。

 

 

 




今回は少し短めです。

では次回までバイバイです!
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