東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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本日二回目の投稿です。
というのも皆さんに謝らなくてはいけない事がありまして………。
前回から新章と言ってましたが次回からです。
申し訳ありません。
今回は比那名居天子を模写しました。


【挿絵表示】



ではではどうぞ。


第六十六話 姉と妹

 

 

 

寝ている門番を脇目に橙矢と妹紅は紅魔館の敷地内に入る。

「二日しか経ってないのになぁんか懐かしい気分だ」

「何言ってるんだよお前は」

「――誰かと思えば橙矢じゃない」

不意に紅魔館の扉が開いて咲夜が姿を現した。

「どうも咲夜さん」

「………あら、美鈴は」

「シエスタしてる」

「…………………あぁ」

額に手を置いてため息をついた。

「まぁいいわ。後でたっぷり〆とかないと」

「わー知らねー」

数分後血塗れになる美鈴を想像して合掌した。

「それに竹林の蓬莱人も一緒にいるなんて……珍しいわね。貴方がここに来るって」

「あぁそうだな。久し振り、と言っておけばいいのかな?竹林の異変の時以来だな」

「えぇそうね」

「今日来たのは……まぁ橙矢の付き添いだ」

「付き添い……ねぇ。騒がしくなりそうだわ」

「え?」

「霊夢と魔理沙が来てて迷惑かけたから異変解決の宴会をしろだの騒いでるのよ。橙矢、止めてくれない?」

「俺がですか?油を注ぐだけですよ」

「ごめん貴方に頼んだ私が馬鹿だったわ」

「そうそう。………それで、レミリア様やフランはどうしてる?」

「…………貴方のお陰で仲良くやってるわ」

「仲良く殺ってる?」

「語弊があるから自重なさい」

「うぃ」

「こんな事してないで早く行くわよ」

「いや元はと言えば咲夜さんが―――」

と首もとに冷たいものが触れた。

「悪い訳ありませんよねだからこの冷たいもの下ろしてください咲夜お姉様」

「却下」

「マジすか」

手の甲で突き付けられていたナイフを弾く。

「なぁ二人とも、何してるんだよ。行くなら早く行こう」

二人の脇を通って館に入っていく妹紅。

「あ、おい待てよ妹紅」

「……………さてと、美鈴とお話ししに行かないと」

「……おーい咲夜さん。まだ怪我残ってるかもしれないから手加減してやってくださいよ」

「分かってるわ。精々明日に響かない程度に済ませとくわ」

そう言いながら手をゴキゴキ鳴らす咲夜に恐怖を覚える。

「お……お手柔らかに………」

苦笑いを浮かべて館の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

広い居間のようなところに出るとレミリアと何故かさとりがテーブルを挟んで向かい合うようにして座っていた。

「レミリア様………とさとり?どしてこんなところいるんだ?」

「あら橙矢、花妖怪から解放されたのね」

「どうも、レミリア様。それよりさとり。なんでいるんだ?」

持っていた紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。

「一昨日振りね橙矢さん」

「あぁそうだな」

「橙矢さん、貴方は地霊殿が崩れた事を知ってますよね。ですから直るまでここの館に世話になっているんですよ」

「かなり珍しい組み合わせだけどな」

「そうでもないわ。地底の異変以来ここに遊びに来るもの。こいしが」

「なるほど、意外なところに接点だな。それより霊夢や魔理沙は?」

「魔理沙が図書館に行って霊夢は魔理沙に無理矢理連れていかれたわ」

橙矢の問いにレミリアが答える。

「ふーん、また盗みですか?」

「霊夢がいるから大丈夫でしょ。いいストッパーよ」

「さいですか」

「まぁ貴方に止められてから少しは自重したのか頻度が少なくなったけど」

「完璧に止めてはいないんですね……」

「そりゃあ魔理沙だからね。それと、そこの蓬莱人、貴方は来るの始めてよね」

「あぁそうだな。まさかあのロリがここの館の主だなんて思わなんだ」

「あ?」

「冗談でーす」

一瞬殺気を放った気がするが妹紅をそれを受け流して然り気無く橙矢の後ろに隠れた。

「ハァ……それより橙矢。貴方フランに会いに来たのでしょう?……行ってあげなさい」

「良いんですか?レミリアさん」

急にさとりが意地悪そうな笑みを作る。

「良いって……何がよ」

「私のサードアイには丸見えですよ!ほんとは橙矢さんとあんなことやこんなこと――――」

刹那グングニルがさとりを貫いた。

「……………………」

「橙矢、忘れなさい。悪い夢よ」

「そうですね。忘れる事にします」

……とりあえずさとりが話したところの記憶は消しておこう。

「………一応聞いておきますけど生きてますよね。さとりは」

「殺すわけないじゃない。さすがにそこまではしないわ」

「その言葉を聞いて安心しました。目の前で殺されるのは気分が悪いので」

「逆に気分が悪いだけで済む貴方に安心したわ」

「死体は死ぬほど見てきましたからね」

「………………………………ねぇ橙矢」

「お断りします」

「早っ!私まだ何も言ってないわよ!」

「大方この館に戻らないか、と言いたいのでしょう?生憎ですがもう戻る気にはなれません」

「………そう、貴方がそこまで言うなら仕方無いわね」

「すみません」

「気にしなくていいのよ。貴方には貴方なりの事情があるからね。けどその代わりに暇がある時には

紅魔館に来て頂戴」

「それは良いですけど……理由を聞いても?」

「フランの精神状態がまだ不安定でね……」

「あー、なるほど。分かりました」

了承すると安心したようにレミリアが笑みをこぼす。

「ありがとうね」

「……いえ」

「……………………」

「……………………」

沈黙が二人の間を包む。

気まずかったのか妹紅がその部屋から出ていこうとする。

しかし扉を開ける寸前勝手に扉が開かれた。

「あれ、ここの扉自動だったっ―――けぶぁ!?」

何者かが妹紅を吹き飛ばした。

その数、二。

「お兄様ぁ!」

「東雲お兄ちゃん!」

飛び出てきたのは異変を起こしたフランドール・スカーレットと古明地こいし。

二人は妹紅を吹き飛ばした後橙矢目掛けて飛んできた。

「おっと」

勢いを受け流して二人を受け止める。

「危ないぞ二人とも」

「お兄様はしっかりと受け止めてくれるって信じてたから!」

「私も!」

「あぁそうかい。けど危ないから次から気を付けろよ」

「その時はまた東雲お兄ちゃんに受け止めてもらう!」

「…………………………………」

頭を抱える橙矢に抱き着く二人の妹を二人の姉ため息をつきながら見ていた。

「フラン、みっともないから止めなさい」

「レミリアさんの言う通りよこいし。はしたないわ」

「「関係無いね!」」

「………二人とも、頼むからそろそろ離れてくれないか……」

「やだ!」

すると橙矢は微笑んでみせた。橙矢にしては屈託の無い笑みだが逆にそれが恐怖を感じさせた。

「離れろ」

「…………………はい」

それが二人にも伝わったのか素直に離れた。

「よし、いい子だ」

二人の頭に手を置いて撫でた。

「わっ!……お兄様……」

「東雲お兄ちゃんそれはズルいよ………」

「?ズルいって何がだよ」

「な、何でもない!」

フイと顔を逸らされた。………何か悪いことしただろうか。

「……なぁフラン、俺悪いことしたか?」

「んー?何もしてないと思うけど……」

「だよなぁ………」

「ちょっと何の騒ぎよー」

廊下から声が聞こえてきた。それだけで誰だか分かった。

声の主が姿を現すと同時に手を軽くあげた。

「よ、霊夢。………と魔理沙」

「橙矢!?どうしてあんたがここにいるのよ!」

「いやどうしているかって言われても……」

「橙矢は私達の家族なのだからここにいてもおかしくないでしょう?」

レミリアがカップを回しながら微笑む。

「……え、そうなのか橙矢!」

魔理沙が目を見開きながら橙矢に問い詰める。

「ん?あぁ確かにそうだけど……なんでそんな焦ってんだよ」

「だってそれはつまり紅魔館の誰かと―――結婚してるって事だろ!?」

「変な妄想止めろ」

帽子の上から頭を叩くと言葉を止めた。

「まったく………俺はまだ成人すらしてねぇんだぞ。結婚出来るわけねぇだろ」

「な、何だよ驚かせるなよ」

「お前が勝手に驚いただけだろ」

「……………それより橙矢、あんた怪我は大丈夫なの?」

魔理沙を霊夢が押して橙矢の視界に入る。

「怪我か?幽香に世話になったから多少は動ける」

「幽香に?………よく無事だったわね」

「そういうお前等も無事だったんだな」

「私は蹴られただけだから」

「私は地面に叩き付けられただけだぜ」

「……腹を貫かれた」

「そういや妹紅、慧音は?」

「私達の中では一番の軽症だよ。一番酷かったのは橙矢」

「やっぱりか」

「……少しは自分を大切にしろよ」

その一言に橙矢は少し口を歪めた。

「…………悪いけどそれは無理だな」

「……………橙矢?」

不穏に感じたのかその場にいた全員が橙矢に注目を向けた。

「…………自分を大切にしろっていったってもう遅いんだよ」

………橙矢は半妖になり始めてから自分の事をより軽視するようになっていた。すでに人間という身を捨てて自身が殺していた妖怪の一匹になり、里からは恨まれる存在となった。

「………もう人間だった時の俺じゃねぇ」

これほど自己嫌悪したことはない。どれほど自身を恨んでも里を嫌っても妖怪から人間には戻れない。

だったらもう認めるしかない。

「俺は…………妖怪だ」

 

 






はい、前書きでも書いた通りです。すみません。

では次回までバイバイです
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