東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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今回は小傘を描かせて頂きました。次回は鬼人正邪を描こうと思ってます。


【挿絵表示】


場面が変わります。

ではではどうぞ。


第七十二話 灯りの灯る場所

すっかり暗くなった森の中を一人の少年が駆けていく。

「ったく……何処に行きやがった」

木の枝に跳び移りながら暗闇を見渡す。暗闇には退治屋時代に大分慣れたがそのなかから一人見付けるのは中々骨が折れる。

「……まだ遠くには行ってないはずだが」

先程椛が言ったように今は妖怪の活動が活発化する時間帯なのだ、しかも何も力を持たない只の人間がその中に放り込まれる。橙矢としては非常に好ましくない事態だ。

妖怪が持つ妖力を辿って移動しているが椛みたく千里眼を持っているという訳ではないので実際どれくらいの力を持つ妖怪なのかは分からない。

(ハズレか……?)

顔をしかめた瞬間―――

「な、何なんですか貴方達!」

さっき聞いた声と同じ声が聞こえた。

方向はこのまま真っ直ぐ。距離は声の大きさからしてかなり近い。

「遠くなかっただけまだマシか………!」

再び足を強化させて跳ぶ。

(声から予測すると確かここを抜けた先っと)

目の前に迫る木を蹴り飛ばすと視界が開けた。

橙矢に視線の先には少女の周りに群がる妖怪共。

「―――そいつに触れんじゃねぇ!!」

妖怪共の背後から根こそぎ抜いた木を投げ付けた。

「な……!た、退治屋!?どうしてここに……!?」

「元退治屋だ妖怪共!」

刀を引き抜くと近くにいる妖怪を真っ二つに斬り裂いた。流れるように横から跳んでくる妖獣を振り下ろした状態から刀を返して峰で深く斬る。

相当な鈍い痛みになる。それは普通に斬られるよりも苦痛だろう。

「グ…ガァ……!」

「退け!邪魔だ!」

悶える妖獣を蹴り飛ばして背後から新たな妖怪が飛び出てくる。

「仲間割れかよ……」

振り下ろされる鋭利な爪を横から刀で弾くと腰から抜いた鞘で殴り付けた。

「……!」

「退けって言ってんだろ!」

苛立ちを隠せずに強化した拳を地に叩き付けて衝撃波を散らすが妖怪や妖獣は既に距離を放しており、喰らってくれなかった。

「チッ!うざいな…!」

「今のうちに連れていけ!」

橙矢を牽制している妖怪共の後ろで一匹の妖怪が少女を引っ張って行こうとしていた。

「何しやがる!!」

慌てて追おうとするが妖怪共に遮られる。

「お前等の相手をしてる時間はねぇんだよ!」

刀を振り回して道を空けようとするが退く素振りを見せない。それどころかさっきよりも橙矢に襲ってくる頻度が増えた気がする。

「くそッ!邪魔だッつってんだろ!!」

周りに群がる妖怪共を無視して突っ込む。

その際妖怪に肉やら食い千切られるがそれだけでは橙矢は止まらない。舌打ちして無理矢理突破する。

血を撒き散らしながらもその足を止める事はなく、包囲網を振り切ると少女を引き摺っている妖怪へ跳び移って顔面を殴り飛ばした。

「おい、大丈夫か!?」

「いやぁ!止めてください!」

相当混乱しているのか血塗れの橙矢に恐怖したのかどちらにしろ今少女を落ち着けるのは無理そうだ。

すぐに振り返るとまだ残っている妖怪共に向けて刀を構えた。

「結局こうなるのかよ……!」

腕を限界まで強化させると刀を振り抜く。その軌道上にあるものが全て斬り裂いた。妖怪であれ自然のものであれ。例外なく裂かれていく。

「な、何だよそれ!冗談じゃ――ギッ!?」

上半身と下半身が別れた妖怪共が地に伏せる。その頭を踏みつけて潰す。

「だから邪魔するなって言ったろ」

他の残っている妖怪を見ると顔面を蒼白に染めて逃げていった。

「………まぁいいか。……さて」

後は後ろに蹲っている少女に歩み寄る。

「おい」

「いや!来ないで……ください……!」

未だに脅えている少女の顎を上げた。

「大丈夫だ。俺だ」

「……え?さ、さっきの………」

「そうだ。おま………君がさっき殺人鬼と言ってた奴だ」

「あ、貴方が………これを……?」

少女の視線の先には幾つもの妖怪の死体が。

「……………………あぁそうだ」

「……………」

「それよりももう遅い。人がいるところまで送ってってやるよ。あ、俺里入れないんだっけ」

「里……?」

「……まぁいいか。それよりもここが危険だって事よく分かっただろ。あれは妖怪。人を喰らって生きる……よく外界のアニメで見るだろ?あれに出てくる化け物と考えた方がいいな。……信じられないと思うがな」

「……いえ、目の前であんなの見せられたら信じるしかないじゃないですか」

「………そう言ってくれると助かるよ。立てるか?」

「は、はい」

手を差し伸べると今度は手を取ってくれた。

「ん、今回は取ってくれるのな」

立ち上がらせながら冗談混じりにそう言うと少女は恥ずかしそうに俯いた。

「先程はすみませんでした……。助けられていたのにあんな失言を……」

「気にすんなって。それより早く行こう。また妖怪共に見付かったら面倒だ」

歩き出してからふと思い出したように橙矢は口を開いた。

「そういえば君の名前聞いてなかったな。俺は東雲橙矢。………人間だ」

ここで妖怪と言ってしまうと何か面倒事になりそうなのでそう言っておく。

「東雲…君、ですね。私は新郷神奈(にいざとかんな)と言います」

「………そうか、じゃあ新郷。明日になったら……あー、外界に返してもらうわ」

「外界、ですか?」

「そ、外界。ここは日本であって日本でないところ。謂わば異世界、とまではいかないが……まぁそれに近い類いだろ。実際俺も君と同じ外の世界から来た人間だしな」

「東雲君もですか?でしたら東雲君も帰りましょうよ一緒に」

「悪いが俺はもう帰れない。そもそも帰る気なんてない。俺を捨てた世界になんて……」

「………捨てた?どういう事ですか?」

「………世界から忘れられた。それだけだ」

「忘れられた……。それって」

「もういいだろ」

神奈の言葉を遮る。

「さすがにこれ以上は言えない。プライバシーってもんがあるからな」

「………すみません」

「さて、どうすっかなー。里に送りたいけど俺が里に行くとまずいことになるからな。かと言って一人で行かせるのも危ないし」

「あの……」

悶々と頭を捻っていると神奈が少し申し訳なさそうに橙矢の背に声をかけた。

「ん、どした」

「その……向こうに光が見えて……」

そう言う少女が指差すのは橙矢から見て左側。橙矢の家の真反対側だ。

だが確か微かな光がぼんやりと見える。

「何だあれ………」

目を凝らすがよく分からない。

「………一応行ってみるか?」

「そう……ですね」

そう言うや否や足早に歩を進めていく。ある程度近付いてきたところで何か分かってきた。

「あれは………屋台…?」

昔の田舎によくあるような手押し車に暖簾やらが垂れている。

「……ですね」

「……いやはやこの歳であんなものを見付けてしまうとは」

「うーん………その表現はおかしいと思いますけど」

「確かに………まぁ行こうか」

「はい」

神奈の手を引いて行くと段々と詳細な事が分かっていく。

「…………誰かいる。やってるようだな。腹減ったし丁度良い。新郷、飯まだだろ」

「ですけど私お金は……」

「あぁ大丈夫大丈夫。こんな事もあろうかと金は持って来てるんだ」

「用意周到ですね……」

「凄いだろ」

ケラケラと笑いながら暖簾を潜った。

「すまん、今はやってるか?」

「はーい」

聞こえてきた声に頭を捻った。その声は少女のものだった。橙矢の脳内の中ではおっさんがその声を出している図が浮かんだが視線を上げてその考えは無くなった。

背中に鳥のような翼を生やした少女がいたのだ。

「あれ、貴方見ない顔ですねー。初めて来る人ですか?」

「あぁ初めてだな」

「ではそこに座っててくださいねー」

「はいよ」

すでに先客がいたのか隣に二人誰か酒を呑みながら座っていた。

「隣失礼するよ」

「……ん?あれ、橙矢じゃないか」

聞き覚えのある声が聞こえてそちらに顔を向けると今一番会いたくない人物がそこにいた。

藤原妹紅と上白沢慧音。

里に最も近い幻想郷の実力者だ。

「………………あんた等か」

「あんた等っていきなりだな東雲」

「慧音さん。俺はあんた等とは今一番会いたくないんだよ。あんた等もそうだろ?目の前には里を潰しかけた敵だ。そんな奴と席を一緒にするのは嫌だろ?」

橙矢は神奈に金を押し付けると暖簾を潜って出ていこうとする。

「ちょっと待ちなよ橙矢」

それを制したのは妹紅だった。

「私と慧音は橙矢はそんな事する奴じゃないと思ってるんだけどね」

「……そんな口実に」

橙矢の肩を掴んで無理矢理席に座らせた妹紅は宥めた。

「まぁまぁ、そんな事言わずに。折角会えたんだしさ。腹を割って話そうよ。橙矢と私の仲だろ?」

微笑んでくる妹紅の顔を少し眺めた後大きくため息を吐いて観念したように手を上げた。

 




友人とヤンデレについて話している時の事でした。

犬走夜桜「ヤンデレって怖いよなー」
友人「いやいや、それほど自分を愛してくれてるんだから喜ぶべきだろ」

友人イケメンすぎだろ!
友人を尊敬した瞬間でした。

では次回までバイバイです!
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