東方空雲華【完結】   作:船長は活動停止

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前回のあらすじ
……刀が折れました。


次回は小野塚小町を描こうと思ってます。

ではではどうぞ。


第八十話 天叢雲剣

 

翌日、橙矢は神奈を連れて魔法の森を歩いていた。

目的地は香霖堂。

「あの、東雲さん?どちらに向かっているのですか?」

「ん、あぁ香霖堂ってところだよ。俺が初めてこの幻想郷で会った奴が営んでる店だ」

「でもどうしてそこへ?」

「これだよ」

刀の納まってない鞘を見せる。

「あれ、この刀の部分は?」

「折れたんだよ。シヴァとの戦闘でな」

「それでその刀の代わりを?」

「そういう事だ」

「けどそんな都合よくありますか?」

「……………まぁ大丈夫じゃね?」

どうこうしているうちに香霖堂の前に着いた。

「ここが香霖堂?」

「そうだ。てか看板見れば分かるだろ」

建物の上に付けてある看板を指差しながら店の中へと入っていく。

「おい霖之助、いるか」

声をあげると店の奥から怠そうに一人の男が出てきた。

「誰だいまったく………。あぁ君か」

「よぉ、その様子だとまだ覚えてたみたいだな」

「逆に君の事を今幻想郷で知らない人はいないと思うよ」

「違いない」

「それで、一体何のようだい?」

「刀が折れてからその代理をな」

そう言って鞘を腰から抜くと近くの机に置く。

「あぁ折れたのか。随分と持ったね。感心するよ」

「は?じゃあお前は不良品を渡したのか?」

「まさか、あれはそれこそ名前がある刀じゃないが不純物が一切入ってない純粋な刀だ」

「不純物とかが入ってるものもあるのか?」

「斬る事ではなく観賞用のものとかね」

「それで、なんか武器とか無いのか?また刀とかがあると嬉しいんだが」

「ふむ、それよりも刀はどのようにして折れたんだい?」

「……どのようにって……戦闘で折れた」

「誰との」

「シヴァとの」

「………………。うん、大方折れた原因が分かった」

「折れた原因?金属疲労じゃなくて?」

「それもあると思うけどこわれるまでにはいかない。他に理由がある。話は少し変わるけど君はシヴァとの戦闘で何か驚いた事等はなかったか?」

「……………………ひとつ、あったな」

「それは?」

「………刀が確かにシヴァを裂いたはずなのに」

「通り抜けた」

「…………あぁそうだ」

「なるほど。これで確信付いた。あの破壊神には普通の刀じゃ傷付けられない。神というのは中々面倒でね。殺すのにはそれなりの武具を装備しなきゃいけないんだよ」

「………シヴァが持っているカリブルヌスとかか?」

「そんなものまで持っているのか?あの神は」

霖之助にしては珍しい驚いた表情を浮かべた。

「あぁ。確かあの駄神はそう言ってた」

「………だとしたら対抗する術がかなり限られてくる。最悪の場合………無抵抗でやられるのを待つしかない」

「破壊されるのを待ってられるほど能天気じゃねぇぞここの連中は」

「だろうね。心当たりがふた……いや、三人いるよ」

「霊夢と魔理沙辺りか?……けど残りの一人は誰なんだ?」

「僕の目の前にいるじゃないか」

当たり前のように霖之助は橙矢を指差した。

「俺ね。はいはい」

「さて、君が探しているものは一応目星は付いている。ちょっと待っててくれ」

店の奥へと入っていくと一分くらいしてからひとつの刀を手に戻ってきた。心なしか扱いが妙に丁寧な気がする。

「………それが?」

「あぁ、素材は不明。だけど斬れ味は保証するよ」

「………それだけか?」

「話は最後まで聞いてくれ。……この刀の銘は天叢雲剣。またの名を草薙の剣」

「あ、天叢雲剣ィ!?なんでそんなものが!?」

「魔理沙が昔たまたま無縁塚で拾ってきたんだよ」

「魔理沙が?」

「うん、特に使うときも無いだろうし。……今回だけは特別だ。これであの破壊神の首でも獲るがいいさ」

「……………良いのか?俺は……」

「構わないよ。君が何も考えずに行動している、なんて考えられないからね。それを信じてみるよ」

だからほら、とカリブルヌスに匹敵する聖剣を橙矢に押し付けた。

「あ、あぁ。それじゃあ言葉に甘えて」

鞘に納まっている天叢雲剣を掴んだ。

瞬間。

電撃が奔り、橙矢を襲う。

「ッゥァ!」

思わず天叢雲剣を手放しそうになるが無理矢理止める。

「何が……!」

「東雲さん!」

「大丈夫かい!?」

「大丈夫だ……!」

近付いてくる神奈を制して痛みに耐える。

「ちょっと店員さん!東雲さんに一体何が……!」

「………多分だが東雲君の妖力と天叢雲剣が拒絶反応を引き起こしている。僕は半人半妖だから少ししか感じなかったけど東雲君は完全な妖怪。少なからず妖力を持っている。元々聖剣というものは神と一部の人間のみにしか扱えない。妖怪なんて例外だ」

その時神奈の思考が止まった。

「橙矢さんが………妖怪?」

掠れながらも出した声は何とか霖之助の耳に届いた。

「あれ、知らなかったのかい?……それは悪いことをしたね」

チラと悶え苦しむ橙矢を一瞥して神奈の方を見る。

「聖剣が正であるなら妖怪である東雲君はその正反対の悪だ。悪は正である聖剣を扱うどころか触れることすらままならない。その逆も成り立つ」

「………気付いてるのにも関わらず渡したのですか?」

「そうだよ。薄々は気付いていた。だけど破壊神を殺ると言った東雲君の眼は本気だった。だから無理を承知で渡した」

「……………ッ」

「これから彼がどうなるかは分からない。死ぬか天叢雲剣を手放すか。どちらにせよ幻想郷は救えない」

「貴方それを分かってて…………ッ!」

「護るというのはそれほど重い。それを東雲君は分かってないんだ」

「………重い……」

「アアァァ……!グッ!ゥァア!」

急に橙矢が苦悶の声をあげる。

「りん……之助ェ…!…余計な事……言うんじゃ……ねぇよ……!」

「……それはまず痛みを引かせてから言いたまえよ」

「んなこと……分かって―――アグッ!?」

片膝を床に着けるが倒れるまでにはいかない。

「この聖剣野郎……!とっとと……俺の刀に……なりやがれ……! 」

橙矢が鞘に手をかけて外そうとする。少しだけだが刀身が見える。

「ガ…………アァ!」

少しずつゆっくりと抜かれていく。

「…………まさかほんとに抜くつもりかい?」

「当たり前だ…!この刀があれば奴だって殺せるかもしれねぇんだぞ…!」

「例えそれがこの少女が死のうと知ってもか?」

「馬鹿言え!俺は新郷は殺さずシヴァだけを殺すだけだ……!」

腕を強化させると一気に引き抜いた。

「ハァ、ハァ、ハァ…!」

息を取り乱しながら崩れ落ちるが刀は手放さなかった。

「東雲さん!無事ですか!?」

今度は神奈を制することなかった。

「…………………あぁ、何とか大丈夫だ」

そう言う橙矢の右手には神々しく輝く天叢雲剣の刀身が。

「………まさかほんとに妖怪である君が解放してしまうなんてね」

霖之助が呆れたような、何処か嬉しそうな表情で橙矢の前に屈む。

「さぁこれで東雲君、君は神を殺す権利を得た。自らの力でだ。存分にその力を奮ってきたまえよ」

「……………なんだ、さっきとはまるで正反対の反応だな」

「言っただろう?君は考えなく行動するような輩ではないと」

「……………」

「ついでに言っておくと君はまた半人半妖に戻ったよ。さっきの天叢雲剣のおかげで大半の妖力が消えたからね」

「何?」

「さっきそこの少女に説明したようにこの聖剣は妖怪等の悪を滅する為の刀だ。それは即ち内部から破壊していく。妖力を破壊するんだ」

「………でもなんで俺の妖力は全て壊されない?」

「妖力が無くなって人間に戻れば外の世界に戻ってしまうだろう?それを天叢雲剣が止めた。つまり君にはやることが残っている」

「……………それが神殺しってことか」

「そういう事だね」

「ハッ、いいさ。やってやる」

ゆっくりと立ち上がると抜き身の刀を鞘に納める。

「ありがとな霖之助。この礼はいつかする」

「それだったらこの幻想郷を救ってくれよ。神殺し」

橙矢は喉の奥で笑う。

「あぁ救ってやるよ。………シヴァは俺が殺す」

「その意気やよし。かな………それともうひとつ。これは君達にとっては悲報だ」

そう言うと霖之助はある一枚の紙を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――手配状

破壊神シヴァの妃であるサティーの生まれ変わりである新郷神奈の殺害。以上のものを成したものには報酬を与える。

             八雲紫』

 

 

 






いつの間に紫さん手配状を出したのか。はてはて。

では次回までバイバイです!
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