艦隊これくしょん 艦これ~蒼き鋼の航海記~再記録 作:Mr.tosi
原作とは違ったストーリーになっていましたがアニメの方もよかったと思います!!
感想としてはコンゴウが途中から艦隊戦ではなく怪獣バトルみたいなことをしていたような気がします。
アニメは終わりましたが原作があるので楽しみです。
神奈川県 横須賀市 『刑部邸』
「じゃあ行ってくるね!」
「はい!行ってらっしゃい!!」
「お気をつけて。」
ここは、『振動弾頭』の開発者『刑部博士』が住む豪邸である。そこには昨日、群像と吹雪が出会った少女と二人のメイドの姿があった。少女は、何処かへ出掛けて行き、二人のメイドは少女を見送っていた。
「お嬢様大丈夫でしょうか。港は戦闘中だと聞いているけど。」
「だからよ。『振動弾頭』を安全な場所に運ぶためには、お嬢様の指示がないとできない仕事だから仕方ないわ。」
屋敷に戻る二人だが、少女の事を心配していたメイドは浮かない顔をしていた。それを見たもう一人の眼鏡をかけたメイドは、彼女を説得した。
「いい加減に腹を括りなさい。今夜には出航するんだから。」
「けど・・・榛名たちがいなくなったらお嬢様は・・・。」
「政府によって隔離されるか、処分されるでしょうね。けどこうなることはあなたもわかっていたはずよ。私たちはお嬢様が寝静まる夜中までに『振動弾頭』の設計データを回収しないといけないの。だからお嬢様とは今夜限りで縁を切りなさい。」
「霧島はこれでいいの!一年半もお嬢様と一緒にいたのに!!」
「それを言ったら・・・別れが辛くなるだけよ。それに『振動弾頭』開発者である『刑部蒔絵』お嬢様と私達『霧の艦隊』の艦娘じゃ住む世界が違うの。ここに来たとき覚悟していたはずよ榛名。」
二人の会話から正体が明らかになった。
先程のの少女は『振動弾頭』開発者『刑部蒔絵』博士である。まだ10歳くらいの少女だが、最年長の科学者たち以上の頭脳を持っている。
さらに、蒔絵のお世話をしていたメイドは『霧の艦隊』の艦娘で金剛型三番艦『榛名』とその四番艦『霧島』だった。二人は一年半前から刑部邸にメイドとして潜入しており、『振動弾頭』完成後その設計データを回収する任務を受けていた。ちなみに群像たちが持っているデータはそのコピーである。
二人は刑部邸の地下にある隠し部屋まで来ていた。そこには政府の依頼によって兵器開発された研究データが保管されている。『振動弾頭』の設計データもここに保管されている。
「霧島、いつの間にこんなこと覚えたの?」
「お嬢様がやっているのをこっそり隠れて見ていたのよ。」
すると霧島はあっという間に部屋の暗証番号を入力し、ドアのロックキーを解除した。
二人はそのまま部屋に入ったが、あたりは真っ暗だったため、榛名は部屋の電気をつけた。部屋が明るくなった瞬間、二人の目の前に執事長のローレンスが姿を現した。
「待っていたよ二人とも。」
「ローレンス様!?」
「執事長・・・なぜあなたがこちらに。」
「それはこちらのセリフだ。ここはお嬢様以外立ち入り禁止のはずだ『小鳥遊榛名』そして『霧島京子』。いや・・・こう呼ぶべきか『霧の艦隊』戦艦『榛名』そして『霧島』。」
「いつから気付いていたのですか。」
「君たちがこの屋敷に来た時からだ。蒔絵の開発した『振動弾頭』を狙ってきたようだが無駄足だったようだな。」
「無駄足とは聞き捨てなりませんね。それにお嬢様を呼び捨てとは執事長としていかがなものかと?」
「父親が娘の名前を呼んで何か問題でもあるのかね。」
「どういうことですか・・・。」
榛名と霧島に衝撃が走った。そしてローレンスの口から蒔絵の正体とその真実が語られた。
かつて私は、『深海凄艦』に対抗できる兵器を開発していた。しかし、それは失敗と挫折の連続だった。その中で悟ったのだよ。私自身の人としての限界というものをね。そして私はあるプロジェクトを立ち上げた。人が成し得ないのならば成し得るものを、頂上的な才能を持つ人間を作り上げればいい。それが『デザインチャイルド』計画だった。
開発過程で生み出された個体は109。その内プログラム通りに成長し、生存したのはわずか2。それ以外は計画外として処分された。その時、私は自分の研究に恐怖を感じた。目の前にあった命を・・・・使い捨ての道具のように扱う自分が怖かった。もはや人ではなくなってしまったのかと、いつしか自分自身を恐れるようになってしまった。
そんな私の心を癒してくれたのが蒔絵だった。あの子は期待以上の働きをしてくれた。私の成し得なかったことを彼女はやり遂げてくれた。だがそれ以上に彼女が私に笑顔を向けてくれたのが何より嬉しかった。
しかし国家は冷淡だった。いや・・・あの子の力を恐れたのだ。『深海凄艦』と同様にね。私たちはこの館に押し込められ、政府の管理下で生かされた。外部との接触も許されず、同年代の子供のような生活も望めない。だがそれでも幸せだったよ。
あの子が笑ってくれればそれでいい。私は…あの子を娘として愛してしまったのだ。
だがある日、政府は私に命じた。蒔絵のバックアップとなる『デザインチャイルド』を作成せよと。彼等は使い捨てのゴミのようにあの子の廃棄を決めた。
私は表向き上、自ら事故死という経歴を残して『デザインチャイルド』のデータと共にその姿を消した。あの子を唯一の存在とするために。『振動弾頭』の調整にはまだあの子の力が必要だ。だからあの子は守られているのだ。
二年後、私は自信を偽り『ローレンス』という名で蒔絵と再会した。だが・・・・あの子は本当に人形になってしまった。
その半年後に、君たちがここを訪れたのだ。最初は『振動弾頭』目当てで潜入していたのかと考え、監視していたが・・・君たちが接触したことであの子はかつての笑顔が戻っていった。私は君たちの監視を解き、時が来たら真実を語ろうと決めた。
『刑部藤十郎』は全てを語り、満足していた。そこで彼は榛名たちにあるお願いをした。
「君たちに頼みがある。蒔絵の友達になってくれないか。」
「お嬢様の・・・・ですか。」
「そうだ。あの子が私以外のものに心を開いたのは君達が初めてだった。勝手な妄想だが、お互い境遇が似ているのだよ。同じ日本政府にお払い箱にされた者同士の痛みをあの子は感じたのだと思う。」
「お嬢様が・・・。」
「身勝手なお話ですね。」
霧島が不機嫌そうに前へ出た。彼の話を否定するかのように自分の答えを語った。
「さっきから黙って聞いていれば、要はあなたも政府も自分たちの都合だけで、お嬢様を振り回していただけですよね?私から見れば、貴方は執事長としても、父親としても失格です!」
「何が言いたい。」
「あなたのもとにおいては、お嬢様の今後の将来が心配です!もしお嬢様が不良女子高生になったり、引きこもりのダメ人間になったりしたらどう責任を取るおつもりですか!」
「霧島・・・まさか!」
「蒔絵お嬢様は私たちがお預かりします!それでよろしいですね!!」
そう断言した霧島を見て、刑部藤十郎は笑みを浮かべた。
「私の話を聞いて君はまだ執事長のローレンスだと見ているのかい?」
「あなた過去に何があったかは私達には見当もつきません。ですが・・・・信頼に値する執事長だと理解しているつもりです。」
「霧島の言う通りです!榛名たちにとってローレンス様は、提督と同じくらい信頼できる方ですから!」
「そうか・・・・。」
刑部藤十郎は安心していた。彼女達なら蒔絵を任せられる。彼は全てを終わらせるかのように彼女たちに命令した。
「霧島京子並びに小鳥遊榛名。これは刑部藤十郎ではなく、執事長ローレンスである私からの最後の命令だ。お嬢様をお連れしてこの館から脱出しなさい。」
榛名も霧島も状況を理解できていなかった。
「あの・・・どう言うことでしょうか。」
「間もなく陸軍の部隊がここを襲撃する。恐らく狙いは蒔絵のはずだ。」
「そんな!」
「『振動弾頭』はまだ調整中のはずなのにどうして・・・・。」
「事態は急を要する。『振動弾頭』に関するデータはすべて削除した。君たちは蒔絵が戻るまでにすぐ出航できるよう準備しなさい。」
「ローレンス様はどうなさるおつもりですか?」
「私は軍を引き付け君たちの脱出時間を稼ぐ。」
「危険すぎます!!執事長にもしものことがあったらお嬢様は!!」
「私は・・・・既に蒔絵に死んだことにされている。名残惜しいのは確かだが、あの子が無事ならそれでいい。」
彼はすでに決意していた。『振動弾頭』が完成すれば蒔絵は殺される。せめて彼女には幸せになってほしいと願い、自ら盾となって蒔絵を守ると決めていた。それは彼が父親としてできる事だったからだ。
彼の決意を感じ、説得することができなかった榛名と霧島は、蒔絵が戻ってくるまで脱出準備を始めた。
それから二時間後、蒔絵が帰って来ると館はいつもより静かなことに彼女は違和感を感じていた。
「お帰りなさいませ。お嬢様。」
迎えに来てくれたのはローレンスただ一人だった。いつもなら榛名や霧島を始め、数名のメイドが出向か合えてくれるはずだが、今は彼だけだった。蒔絵は、嫌な予感がし、不安な気持ちになった。
「あれ?ローレンス一人?ハルハルとキリキリは?他のメイドたちは?」
「彼女達にはすでに解雇しました。小鳥遊榛名と霧島京子にも同様の処置を執らせていただきました。」
「どうして・・・・。」
「お嬢様。間もなく陸軍がここを襲撃します。急ぎ準備を。」
陸軍の襲撃を聞いた蒔絵は潔く言うことを聞いた。彼女自身こうなる日が来ることはわかっていたからだ。何よりショックだったのが榛名と霧島がいなくなったことだった。暗い顔をしながら、いつも背負っているリュックとヨタロウというピンクのクマのぬいぐるみを持ってローレンスとともに館を出た。
横須賀 「旧倉庫街」
二人が着いた場所は廃墟となった倉庫街に来ていた。そこは『蒼き鋼の航海記』に記されていた大戦艦『ハルナ』のメンタルモデルとその刑部蒔絵が接触した場所でもある。
「ローレンス・・・ここは?」
「あちらをご覧ください。」
彼の指す方を見てみると、そこには榛名と霧島の姿があった。喜んだ蒔絵はすぐに彼女たちの元に走っていった。だがよく見ると、彼女たちは堤防の上に立っているわけでもなければ、海岸でもない、海の上だったのだ。蒔絵はそのまま足を止めてしまった。彼女たちは艤装を装着し、既に出港準備を完了していた。
「ハルハル?キリキリ?どうしたのその恰好。艦娘みたいだけど?今時そんなの流行らないよ。」
すると榛名は蒔絵に近づき、自分の正体を告発した。
「お嬢様・・・今まで黙っていてごめんなさい。」
「私達は艦娘みたいではなく、艦娘なのです。」
二人から真実を聞いた蒔絵の表情は強張ったまま何も言わなくなってしまった。
「後の事は二人に任せてあります。彼女たちの指示に従うように。」
「ローレンスは・・・。」
「私は館に戻り、陸軍の部隊を引き付けておきます。その間にお嬢様はお逃げください。」
「嫌だ!ローレンスも一緒に・・・。」
彼は優しく蒔絵を抱きしめた。
「お別れだ。私の愛する娘よ。」
それだけを言い残し、ローレンスはすぐに蒔絵から離れ、榛名たちに出航するよう命じた。
「榛名、後は頼む。」
「お任せください。お嬢様は榛名たちが守りします!」
「ありがとう。さあ行きなさい。」
榛名は蒔絵を抱きかかえ、霧島を先頭に単縦陣で出航した。
「待ってハルハル!!まだローレンスが!!」
蒔絵は榛名にローレンスも連れて行くよう言うが、榛名は蒔絵の言うことを聞かず、そのまま出航した。それは、榛名自身も心苦しいものだった。
「お父様・・・・お父様!お父様!!」
蒔絵は彼の正体に気付いたのか、執事長のローレンスではなく、父である刑部藤十郎の事を呼び続けた。しかし彼は何も言わず笑みを浮かべながら蒔絵たちを見送っていた。それが刑部藤十郎をみた最後の姿だった。
それから1時間後、陸軍の夜襲部隊が館に到着し作戦を開始。30分という短い時間で撤退した。その頃、榛名たちは『横須賀基地』に向かっていた。
「霧島、後は『横須賀海軍基地』に向かえば大丈夫なのよね!!」
「そうよ榛名!海軍基地まで行けば陸軍は来られない。極秘任務中に海軍と揉め事は起こしたくないはずよ。そこまで行けば私たちの勝ちよ!」
海軍の領海に陸軍が入港するには正式な申請と手続きが必要なのである。榛名と霧島はそれを利用して、基地の周辺まで逃げ込もうとしていた。
「ごめんなさい。」
すると口を閉ざしていた蒔絵がようやく喋ってくれた。榛名は少しホッとしていた。急な出来事で蒔絵がショックを受けて立ち直れないと思っていたからだ。予想はしていたとはいえ結果はそれ以上に残酷なものだった。いくら天才とはいえまだ子供の蒔絵には刺激が強すぎだと榛名は心配していたのだ。
「私のせいでハルハルやキリキリに迷惑かけて、本当にごめんなさい。」
「どうしてそう思うのですか。」
榛名に聞かれた蒔絵は、正直に自分の胸にある全てを打ち明けた。
私ね『振動弾頭』が何に使われるか知らないで無我夢中で作ってたの。だってそうすればお父様が褒めてくれたから。
でもそれが完成したらお父様は死んじゃうし、メイドたちは私を恐がって逃げちゃうし、いつの間にか一人ぼっちになってた。一年・・・ずっと怖かった。寂しかった。
そんな時、ハルハルとキリキリが来てくれて、その時から不思議に思ってたの。なんで二人は私に構うんだろ。二人は恐がって逃げずに近寄ってくるのかなって。でもそんな事どうでもよくなってきた。二人といるうちに毎日が楽しくなって、まるで友達ができたみたいだった。
「もうハルハルとキリキリに迷惑かけたくない!お願い私を陸に卸して!私が陸軍に捕まってる間にハルハルとキリキリは逃げて!!」
しかし、榛名は蒔絵の言うことを受け入れず、彼女を強く抱きしめた。霧島も蒔絵の案には乗らなかった。
「今更・・・何をおっしゃいますか。」
「そうですよ。散々私や榛名を振り回して何を言いますか。そんなのお嬢様らしくありません。」
二人は怒るどころか、いつも通りに蒔絵に話しかけていただが蒔絵はそれが不思議でならなかった。自分を助けてこの二人に何の得があるのかと。榛名は蒔絵に『ともだち』とは何か説明した。
「お嬢様。榛名も霧島も、もうお嬢様と友達になっているのです。」
「友達に?」
「はい!一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に苦難を乗り越えて、共に助け合う。それが友達です!」
「ハルハルとキリキリが・・・。」
「お嬢様。改めてもう一度・・・私達のお友達になって頂けないでしょうか。」
「二人の友達に・・・・・・・うん!!」
さっきまで暗かった蒔絵に再び笑顔が戻った。榛名も先頭を航行していた霧島も安心していた。
その時、霧島の表情が急変した。さっきまで穏やかだった顔とは逆に目つきが鋭くなっていた。彼女の前方に黒い影が迫っていた。
「前方に敵艦見う!!榛名、戦闘準備!!」
榛名が霧島の呼びかけに振り向くと、そこには複数の陸軍の揚陸艦の姿があった。さっきまで笑顔だった蒔絵もその表情が一瞬にして消えた。
「ハルハル!!」
「大丈夫ですよお嬢様。霧島!!最大船速!!敵艦隊を突破するわ!!」
「そのつもりよ榛名!!」
二人は陸軍の艦艇に囲まれる前にさらに速度を上げた。しかし、彼女たちの行く手を阻むように前方に巨大な艦影の姿が現れた。
「なんで陸軍の揚陸艦がこんなものを・・・。」
霧島が見た物は、旧日本海軍の戦艦『大和』に搭載されていた46㎝三連装砲らしきものが積まれていたからだ。
陸軍の新型揚陸艦で上陸作戦援護に特化した大型揚陸艦へいし型一番艦『きよもり』とげんじ型一番艦『よしとも』。
今二隻の砲身が霧島たちに向けられた。司令塔では『きよもり』の艦長が指示を出していた。
「たかが子供一人相手に『きよもり』と『よしとも』を導入するとは上もどうかしている。主砲照準!!目標!霧の艦隊艦娘と刑部蒔絵!!撃てぇ!!」
二隻から爆音と共に砲塔から煙が上がった。航行を妨げるように霧島と榛名の周辺に砲弾が着水し、水柱が高く上がった。さらに多数の水柱の影響で霧島と榛名の速度が徐々に落ちてきている。さらに46㎝の発射時に放たれる衝撃波が直撃して二人は火事が聞かず、蛇行している状態なのだ。
「私の計算がここまで狂うなんて・・・・けど好き勝手はさせない!!」
霧島も負けじと自分の主砲で対抗した。
「応戦させてもらいます!!」
横須賀でもう一つの戦闘が開始された。しかし、戦況はかなり厳しいものだった。
横須賀海軍基地『防護壁周辺』
「摩耶様の攻撃!くらいな!!」
摩耶の主砲で、敵『深海凄艦』の軽空母が撃沈した。
「摩耶、敵軽空母撃沈。戦艦以外の艦の撃沈を確認。増援なし。」
「周辺の敵戦闘機なし!今なら制空権取れるぞ!!」
「よし!これより戦闘機による空襲攻撃を開始する!!全艦航空隊発艦開始!!」
静と杏平が確認し群像に報告。それを聞いた赤城たちは、九九式艦上爆撃機と九九式艦上攻撃機を発進させた。
「空母機動部隊!稼働機!発艦開始!!」
赤城の合図とともに各空母から放たれた矢が分裂し、戦闘機となって飛び立った。
「すごい・・・・。」
吹雪はその光景に目を奪われいた。すると敵戦艦は戦闘機の攻撃を受け、さらに爆撃機が落とした投下爆弾で『戦艦ル級』に火の手が上がりそのまま轟沈した。
「『戦艦ル級』二隻撃沈を確認。敵の増援なし。」
静の報告を聞いて群像は急に席を立ちあがった。
「各艦隊旗艦、状況を報告せよ!」
勝利に喜ぶのも早かった。赤城と約束した『完全勝利』がまだ残っている。各艦隊旗艦の艦娘達は群像に状況を報告した。
『第一艦隊旗艦摩耶、全員損傷なし。』
『第八水雷戦隊旗艦那智、こちらも損傷した者はいない。』
『第三水雷戦隊旗艦神通です。こちらも怪我人はいません。』
麻耶、那智、神通の艦隊は全員無傷。残るは空母機動部隊の赤城と『白き鋼』だけだ。
『空母機動部隊旗艦赤城、艦隊損傷者なし。』
『吹雪!被弾個所は!』
「ありません!」
「杏平!火器発射管に異常は!」
「発射管及び弾薬異常なし!」
「静!ハヤテの船体やエンジンに異常音は!」
「浸水音なし!エンジンも正常音です!。」
「船体もくまなく見たけど傷も凹みもなし!エンジンも正常に稼働中!!」
「ありがとう!いおり!」
群像は一息ついて高らかに勝利宣言した。
「戦闘終了!俺たちの完全勝利だ!!」
群像の一声と同時に、ハヤテのクルーや霧の艦娘達の歓声が響き渡った。やはり完全勝利は艦娘達にとっても嬉しいものであるのだ。それは彼女たちだけでなく指揮を執った群像も気持ちのいいことだった。辺りを見わたせば、ちょうど日が沈み、ハヤテに付いているライトが点灯された。
「見事な指示でした群像さん。」
赤城や加賀、他の正規空母や吹雪もハヤテに近づき、赤城に呼びかけに答えるように群像もハヤテの甲板に出てきた。
「私たちの完敗です。今回は大人しく引き下がります。」
「しかし赤城さん。それでは任務を放棄したことになるのでは?」
「約束は約束です。任務を優先し、彼との約束を破ることなど私には出来ません。」
加賀が説得するものの、赤城は断固として任務を遂行することを拒み続けていた。それを見た群像はあることを思いついた。
「赤城、実は俺達『白き鋼』は北良寛代議士からある依頼を受託している。内容は『霧の艦隊』解散と所属していた艦娘達とその指揮官『海原翔像』を軍に帰投するよう交渉を任されている。」
「北・・・・海軍大将が・・・・。」
「これから俺達は『霧の艦隊』提督と面会をするため、君達の基地がある『小笠原』に向かう。横須賀に帰投するかどうかは君達の提督の判断に任せることになるが、それでも構わないか?」
「構いませんが、貴方はよろしいのですか。あれほどお父上を拒んでいたはずなのに。」
「いつか親父と向き合わなきゃならない。その時が来ただけだ。」
「群像さん。」
赤城は心の中で嬉しかったのか今まで強張っていた彼女の症状は穏やかになっていた。すると赤城は吹雪に声をかけた。
「吹雪さん。」
「はい!」
「よい司令官を持ちましたね。羨ましいです。」
「赤城さん・・・はい!!」
吹雪も何故か赤城に褒められてうれしかった。だが、群像にとって父親の海原翔像は唯一の壁であり、過去を乗り越える存在でもある。そうは少し心配していた。
「けどよろしいのですか?司令官にとって父親との再会はトラウマのはずでは。」
「どうも避けて通れそうにもない。けどその波を乗り越えなければこの先に進めないと思ったからな。」
「そうですか・・・ならどこまでもお付き合いしますよ。」
「ありがとう、僧。」
僧は、群像の覚悟を見てついていくことに決めた。それは僧だけでなく、杏平、静、いおり、吹雪も同じ気持ちだった。
「そんなことより提督の息子!榛名姐さんと霧島姐さんが何処にいるのか教えろよ!!」
すると摩耶や他の艦娘たちもハヤテの近くに集まってきた。もちろん群像も忘れていたわけではなかった。
「そうだったな!榛名と霧島なら・・・・。」
群像が話そうとしたその時だった。北西辺りから全身に響くような爆音がしたからだ。
「なんだ今の!!」
全員その音に驚いてその方角を見た。群像は一瞬脳裏に浮かんだ『蒼き鋼の航海記』の内容の一部を思い出し、すぐさま全員に指示を出した。
「各艦隊、復従陣に陣形を組め!!」
「はぁ!?」
「静!さっきの爆音の解析を頼む!!」
「はいっ!!」
「いおり!吹雪!機関最大出力!!十時の方向に全速前進!」
「わかった!!」
「了解しました!!」
群像の急な指示に困惑するクルーや艦娘達は、彼の指示に従いながら爆音が響いた方角に向かった。状況が不明な中だったのか杏平と僧は群像に聞いた。
「おい!急にどうしたんだ!!」
「『蒼き鋼の航海記』に出ていた最後の記述覚えているか!!」
「この後、榛名と霧島は刑部蒔絵のところに滞在し、陸軍の襲撃に会って館を脱出しますが・・・・それは二人の戦闘の後では?」
「いや!それはない!榛名たちは俺たちが来る前に上陸し、すでに刑部蒔絵と接触していたんだ!!彼女たちの目的がオリジナルの『振動弾頭』の開発設計書の回収なら俺たちに接触する必要はないはずだ。」
「では先程の爆音は・・・・。」
「既に彼女たちが陸軍と戦闘しているということだ!!」
「一部飛ばしてねぇ!?」
群像たちが勝手に話を進めるので、摩耶や赤城たちも割り込んできた。
「おい!何があったんだよ!!」
「榛名と霧島が陸軍と交戦している可能性がある!!」
「どういうことですか!!なぜ榛名さんたちが陸軍と!!」
「『振動弾頭』の開発者!刑部蒔絵という少女を連れているからだ!!陸軍の狙いはその子だ!榛名たちはそれに巻き込まれたんだ!!」
「ウソだろ!!」
「とにかく急げ!!手遅れになる前に!!」
群像たちは急いで榛名、霧島そして刑部蒔絵のところに向かった。しかし、状況は最悪なものになっていた。
「ハルハル!!」
「お嬢様・・・大丈夫ですか?」
「なんとか。」
先程二射目の砲撃で、榛名は瞬時に蒔絵を庇うようにしゃがみ込んでいた。しかし、二人に損傷や負傷は見られなかった。すると目の前に霧島が二人の前に立っていた。彼女の姿を見て衝撃を受けた。
「霧島!!」
「キリキリ!!」
彼女はさっきまでとは違った姿になっていた。艤装は主砲三門が破損し、服もボロボロになり、眼鏡も右目のレンズが割れていた。霧島は榛名と蒔絵を庇い大破してしまったのだ。
「榛名・・・・お嬢様は・・・・無事?」
傷が酷いのか、霧島の喋り方は痛みに耐えているようだった。
「私なら大丈夫だよ!!でもキリキリが!!」
「こんなのただのかすり傷です。」
霧島の強がりに榛名は見るのが辛くなってきた。立っているだけでもやっとなのに、霧島は蒔絵を守ろうと最後の力を振り絞ろうとしていた。
「榛名・・・お嬢様を連れてここから逃げて。」
「霧島・・・何を言ってるの!!」
「見ての通り・・・私はもうまともな航行すらできなくなってるの。今お嬢様を守れるのはあなたしかいない。だから・・・早くここから逃げて!!」
「そんなのダメだよ!!」
蒔絵の叫びに、霧島は思わず振り向いてしまった。
「お嬢様・・・。」
「私たち友達でしょ・・・・友達を見捨てるなんてできないよ!!」
「しかし・・・。」
「もう嫌なの!!私のために誰かがいなくなるのは!!だからハルハルもキリキリもずっと一緒にいて!!」
榛名と霧島は、蒔絵のいつものわがままに聞こえた。ただ違ったのは、彼女は榛名と霧島と一緒にいたいという気持ちだった。
「申し訳ありませんでした。お嬢様。。」
「榛名たちは・・・お嬢様とずっと一緒です。」
「ハルハル・・・。キリキリ・・・。」
だが三人の絆を、陸軍は平気で奪い取るかのように、数隻の揚陸艦から発射された魚雷が彼女たちの方に近づいてきた。
「魚雷!?二人とも伏せて!!」
魚雷に気付いた霧島がとっさに二人を庇いながらしゃがみ込んだ。だが魚雷は揚陸艦と榛名たちのちょうど真ん中で爆発した。
「誰が起爆させていいと言ったぁ!!」
「わかりません!!何かがぶつかったと思われます!!」
「海の真ん中だぞ!!そんなのあるはずがない!!」
「ですが各艦でも勝手に起爆したとの報告があります!!」
「艦長!!三時の方向に艦影あり!!漁船です!!」
「漁船・・・『白き鋼』か!!」
だがそれは漁船だけでなく、数人の艦娘たちもいた。魚雷が爆発したのはハヤテから放たれた『冷却魚雷』が海中で氷を形成し、榛名たちを守ったのだ。
「ふー、ギリギリだったな!!」
「さすが変態ゴーグル!なかなかやるじゃない!!」
「なあ・・・・その変態ゴーグルってのいい加減やめね?」
霧島は杏平と瑞鶴の会話が近づいてくるのに気が付いた。
「この声・・・瑞鶴?」
それは彼女たちの危機に駆け付けた『白き鋼』と『霧の艦隊』だった。榛名たちの盾になるようにハヤテを止め、群像はすぐに各艦娘達に指示を出した。
「空母以外の艦娘は陸軍を牽制し、救出時間を稼ぐぞ!!」
「夜戦だ夜戦!!夜戦なら任せて!!」
「川内!悪まで牽制だ!!直撃は避けろよ!!」
「那珂ちゃんの魅力で陸軍さんをメロメロにしてあげる!!」
「那珂!あまり敵の注意をこちらに向けさすな!牽制の意味がなくなる!!」
「え~それじゃアイドルの仕事がなくなっちゃう!!」
「今はいい!!」
「そんな~!!」
「空母部隊は杏平と一緒に大破した霧島の乗船作業に入ってくれ!!」
「了解しました!!」
群像の指揮で赤城たちはすぐに霧島の救出作業に入った。
「霧島さん!榛名さん!」
「赤城さん?なぜ正規空母の皆さんがここに?」
「そのお話は後で、今はあなたを漁船に搬送します。」
霧島をハヤテのところに連れて行き、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、祥鳳の全員で霧島の体を持ち上げ、そのまま杏平に渡した。だが霧島の偽装が重いのかハヤテの乗せるのに時間を掛けてしまったが、引きずるような形でなんとか霧島を乗船させた。
「待ってください!!」
すると榛名が蒔絵を抱えたままハヤテに近づいてきた。
「この子をお願いします!!」
「子供じゃねーか!?」
杏平は急いで蒔絵を担ぎ上げた。引き取られた蒔絵は不安そうに榛名を見ていた。
「ハルハル・・・・」
「もう大丈夫ですよ!霧島の側にいてください。」
そう声をかけた榛名は蒔絵を安心させた。杏平は霧島の偽装を外して彼女を楽な姿勢で座らせた。これですべての作業が完了した。
「霧島の乗船作業完了!!」
「全艦急速回頭!戦闘海域を離脱する!!」
ハヤテや艦娘たちはすぐに旋回し、速度を上げて戦線離脱した。陸軍も後から追いかけようとしたが、動き出すころにはいなくなっていた。彼等は横須賀基地にうまく逃げ込んでいた。
横須賀海軍基地『大堤防』
無事に、陸軍の追撃から逃げきれた群像は、海軍基地の大堤防に停泊していた。榛名と霧島は、蒔絵の事や自分たちの任務の事をすべて明かした。群像と吹雪も『第4施設跡地』で彼女たちと接触したことを話した。
「まさかあの時お嬢様に迷惑をかけたあなた方が『白き鋼』の提督と秘書艦の艦娘とは思いもしませんでした。」
「こちらもだ。艦娘がメイドの姿で『振動弾頭』開発者のお守りをしているなんて誰も気が付かないよ。」
「榛名たちはてっきり仲の良いご兄弟かと思いました!」
「兄弟・・・ですか・・・・。」
吹雪は榛名に群像の妹と勘違いされがっかりしていた。彼女は内心、恋人同士の方を期待していた。しかし、周囲から見れば群像と吹雪には身長差があるのか仲の良い兄弟にしか見られないのだ。榛名が勘違いするのも無理はない。
「にしても本当にこのチビが新兵器を作った科学者なのか?」
摩耶は蒔絵を疑うような目で睨み付けた。蒔絵は怯えてしまい霧島にしがみついた。
「キリキリ・・・・。」
「大丈夫です。摩耶は私の友達です。」
「キリキリの友達?」
「はい。性格は荒っぽいですが根は優しい子なので安心してください。」
「何かあたし・・・危険人物扱いされてない?」
「摩耶!そんな顔でお嬢様を睨み付けないの!怯えてるじゃない!」
「お嬢様って・・・。」
「なぜお嬢様なのだ?」
霧島が蒔絵をお嬢様と呼ぶあまりに、那智や摩耶も任務中に何があったのかと気になっていた。
「それにしてもこんな小さい子供狙うなんて何考えてんだか!」
「本当だよね!小さい子いじめるなんて最低だよ!!」
「今から陸軍に一発ぶちかましに行きたいくらいよ!!」
「いいね!夜だし!夜戦なら任せて!!」
「それは止めておいた方がいいですね。」
盛り上がっていたいおり、那珂、川内を、僧は引き止めた。理由は静が爆音の解析結果が出たことにある。
「先程の爆音の解析結果が出ました。音声から察するに、戦艦の主砲かと思われます。その口径・・・約46㎝かと。」
「46!?」
「なんで揚陸艦がそんなもの積んでるのよ!!」
「やはりあれは46㎝砲でしたか。」
静の報告を聞いて杏平や瑞鶴、ほかの艦娘も驚いていた。だがあの時、霧島が見た物は間違ってなかったことになる。
「これで『小笠原』』に行くことになりましたね。」
「ああ、『小笠原』に行けば彼女たちの基地で霧島を入渠させられる。断る理由が・・・・・・。」
群像が突然話すのをやめてしまった。辺りを見ると、さっきまで笑顔だった霧の艦娘たちが突然暗い表情をしていたからだ。気になった杏平は恐る恐る聞いてみた。
「どうかしたか?」
杏平の質問に答えたのは摩耶と赤城だった。
「ねーんだよ・・・・。」
「は?」
「ドッグがねーんだよ!!あたしらの基地には!!」
「ドッグがないってどういうことだ!?」
「あの『第三次防衛戦』の後、私達は『小笠原諸島』に基地を造りましたが、入渠用のドッグだけは特別な技術が必要だったため建造することができませんでした。」
入渠ドッグには専門の技術と膨大な資材を使うため、入渠用のドッグを設置することができなかった。群像は赤城からさらに詳しい事情を聴いた。
「負傷した艦娘たちはどうしていたんだ。」
「出撃はありませんでした。敵の哨戒圏を避け遠征任務しか行っていません。」
「そうか・・・仕方ない。」
群像は予定を変更して『白き鋼』が基地にしている『硫黄島』に霧島を入渠させることにした。この後群像は、とんでもないなことを言い出した。
「僧、霧島と刑部蒔絵を連れて『硫黄島』に向かってくれ!後の指揮は副指令に任せる!」
「構いませんが司令官はどうなさるおつもりで?」
「俺一人で『小笠原』に行く!」
それは群像は一人で敵地に乗り込むようなものだった。杏平と吹雪は必死に群像を止めた。
「お前本気で言ってるのか!!」
「私も行きます!司令官一人で行かせるわけにはいきません!!」
「ダメだ!ハヤテの護衛にはお前が必要だ!それだけは変更できない!!」
「でもそれじゃ司令官が!!」
吹雪が説得するも群像は受け入れなかった。その光景を見ていた赤城がある提案を持ちかけた。
「群像さんの身は私たちが保証します。『白き鋼』の皆さんは霧島さんをお願いします。」
「赤城・・・。」
「もしあなたに何かあったとき、私達は艦隊を抜けてでもあなたをお守りします。そうですよね、みなさん。」
赤城も他の艦娘達も賛成の声を上げた。先程の戦闘で群像の指揮を受けて彼の事を気に入ってしまったようだ。だが彼女たちが群像の事を認めたということだ。榛名を除いてはだったが。
「榛名、君はどうする。」
「榛名は・・・。」
群像に聞かれたとっさに蒔絵の方を振り向いた。
「ハルハル。」
榛名の考えは変わらなかった。自分たちを助けてくれた群像の恩よりも、蒔絵と一緒にいたいという気持ちが強かった。榛名は群像に答えた。
「榛名もお嬢様と霧島と一緒に『硫黄島』に行きます!」
「そうか、わかった。」
それを聞いた群像は、全員に指示を出した。
「これより『霧の艦隊』提督海原翔像との面会に『小笠原』に向かう!『白き鋼』はそのまま『硫黄島』に向かい霧島の修復作業にかかるよう!このまま出航する!」
1930。彼らは夜の海を駆け抜け、横須賀を出た。だが群像はそこで父の思いを受け継ぎ、新たな艦隊を結成する。
それが『蒼き艦隊』の誕生である。
次回は蒼き鋼のアルペジオとは違ったオリジナルストーリーです。
これからの展開を少し紹介すると、「蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ」のストーリーを硫黄島辺りで一旦中断し、「アニメ艦隊これくしょんー艦これー」のストーリーを入れていきます。
なお登場人物に「イオナ」「ヒュウガ」「キリシマ」が出てきます。
これからも「艦隊これくしょんー艦これー蒼き鋼の航海記」をよろしくお願いします。