艦隊これくしょん 艦これ~蒼き鋼の航海記~再記録 作:Mr.tosi
仕事がやっと落ち着いたので時間に余裕が出来ました。
ネタが溜まってきてるので一気に話を進めたいと思います。
横須賀「軍務省」
「刑部蒔絵はどうなっている!」
「現在捜索中とのことです!」
廊下を速歩きで移動していたのは、上陰次官補とその部下たちだった。彼はすでに刑部邸襲撃の事も、『白き鋼』が『霧の艦隊』や『深海棲艦 』と戦闘状態にあったことも、耳に入っていたのだ。
「上陰次官補!」
すると一人の部下が上陰のところに訪れた。
「どうした。」
「刑部邸の捜索並びに横須賀基地周辺の最新情報が入りました。」
「報告しろ。」
「刑部蒔絵の捜索中に思わぬ人物の遺体を発見しました。2年前『デザインチャイルド計画』の件で事故死に見せかけ、表舞台から姿を消した『刑部藤十郎』博士です。」
「そうか・・・・刑部蒔絵の捜索はどうなっている。」
「横須賀基地で目撃されたそうです。なんでも『白き鋼』と『霧の艦隊』といっしょにいるところを自衛隊が確認したとのことです。』
「彼等の戦闘はどうなった。」
「双方一時休戦し、『深海棲艦 』の撃退に共同で参加。敵艦隊の撃沈に成功。そのまま横須賀を離れ外洋を出たとの事です。南東に向かったと推測されます。」
「南東・・・・確か『白き鋼』が基地にしている「硫黄島」があるところか。捜索中の部隊に撤退するよう伝えろ。」
上陰は『刑部藤十郎』の死に無念を感じていた。蒔絵のことは群像たちに任せる事にし、現在捜索中の部隊に撤退命令を出した上陰は、陸軍の行動を止めるため、あるところに向かった。
「車を出せ。行き先は首相官邸だ。」
彼が向かおうとしていた先は、中央管理区首相『楓信義』のいる首相官邸である。陸軍の暴走を止めるにはより上の権力者に頼むしかないからだ。上陰はこれ以上自分の計画を邪魔されないよう行動に出る。
「小笠原諸島 」
その頃、横須賀を出た群像達は、小笠原諸島に入った。群像は「名古屋沖」での戦いで長門について気になっていたので赤城に聞いてみることにした。
「赤城。この前長門さんに会ったんだが、彼女は総旗艦から既に下りてるのか。」
「はい。今は『第一巡航艦隊』旗艦ですが、同時に現総旗艦の指導も担当しています。」
「今の総旗艦は誰が。」
「あなた方も知っている艦娘です。」
それを聞いて誰もが思いつくあの艦を思い出した。
「戦艦『大和』。」
「これは・・・・とんでもない艦娘が『霧の艦隊』の秘書艦になっていましたね。」
「なあ群像!お前一人で本当に大丈夫か!話し合いに応じるにも戦艦『大和』にお前の親父さん相手じゃ話聞いてくれるかどうか!」
「少なくとも命までは狙わないさ。霧の目的は俺と吹雪のはずだ。心配は無い。」
「けどよ!」
「フフフ・・・・。」
二人の会話を聞いて何故か赤城は笑っていた。
「どうかしたのか?」
「確かに彼女は日本国民誰もが知っている戦艦ですが、私は別の意味であなた方の知り合いだと仰ったのですよ。」
「どういうことだ?」
「お会いになればわかります。とりあえず基地には私から報告してあるので安心してください。」
僧と杏兵が不安そうに群像を心配するが赤城がフォローするような感じでその場をおさめたが、彼女が何を言ってるのかわからなかった。。
「取り込み中のところ悪いけどもうすぐで着くぜ!」
摩耶がそう言うと前方に島らしきものが見えた。
「あれが「父島」か。」
『霧の艦隊』本拠地、「父島」が見えて来たからだ。
「それにしても『白き鋼』の基地が、この先のさらに南東にある「硫黄島」だったとはね。私達の目を盗んでどうやって本土まで行ってたの?」
「簡単な話だ!霧と『深海棲艦 』の哨戒ルートを避けて「沖縄」か「北海道」まで遠回りしてたんだよ。」
「なんでそんな面倒な事を?」
「お前らがウロついてたからだろ!」
杏兵と瑞鶴がそんな会話をしている内に、父島に到着した。ハヤテを遊覧船などが利用していた堤防に止めて、群像は船から降りた。既に朝を迎えていた。
「吹雪、榛名!みんなを頼む!」
「お嬢様たちを無事に「硫黄島」までお連れします!」
「司令官・・・・。」
だが吹雪は群像の事が心配で不安になっていた。それを見た群像は、吹雪を安心させるためこう言った。
「心配するな。必ず戻ってくる。」
「絶対に・・・・戻ってきてくださいね!!」
「ああ・・・約束する。」
その思いは吹雪だけではなかった。
「では司令官、お気をつけて。」
「絶対戻って来いよ!」
「帰って来なかったら承知しないから!」
「武運をお祈りします!」
「ああ!必ず帰る!」
僧、杏兵、いおり、静も、群像の安否を心配していたからだ。彼の任務成功と無事の帰還を信じてハヤテはその場から離れ「硫黄島」に向けて出航した。それを見送る群像は寂しさを感じていた。『白き鋼』を結成して以来、単独で任務をするのは初めてだったからである。群像は気を引き締めた。
「では群像さん。私達は工廠に艤装を置いてきますので、群像さんは先に鎮守府に向かってください。」
赤城が指す方を見てみると、基地らしき建造物が見えていた。そこは、かつて海軍横須賀地方隊父島基地分遺隊が常駐していたが、12年前の防衛戦で軍は島民を連れて本土に撤退した。そのため現在父島は無人島となっていた。だが群像はその基地の隣の建物が気になっていた。
「あれが鎮守府か。」
「はい。基地の隣が艦娘達のいる鎮守府になります。」
「そうか、ありがとう。」
「ではまた後で。」
そう言って赤城達は基地の方に向かった。群像も鎮守府に向かった。だが到着してみると目を疑ってしまう光景だった。
「これって・・・・学校か?」
海軍基地の隣は学校になっていたのだ。それも国立学園のような豪華な建造物で、立札には『横須賀海洋総合学院』と書かれていた。この学校は西暦2059年に開業し、12年前まで続いていた。実はこの学校はかつて群像たちが通っていた『海洋技術総合学院』の原点になった海兵育成機関でもある。ただその存在は現在の生徒や卒業生は知られていないため群像も何も知らないまま敷地内を進んでいた。すると広場らしきところに出て始め、さらにその奥には校舎が見えていた。
そのまま広場を抜けて正面玄関の近く辺りに来た時だった。彼の目の前に女の子と主砲のような小型のロボットがいた。彼女は、駆逐艦『島風』という艦娘で駆逐艦の中でも最高速度のスピードで航行する艦だ。ロボットのようなものは彼女の艤装の一部で名前は『連装砲ちゃん』と言うらしい。群像はここの基地の艦娘だと思い話し掛けた。
「君!すまないが提督室を案内してくれないか!『霧の艦隊』提督『海原翔像』に話があって伺った!」
群像が尋ねると、『島風』は大きく息を吸い、突然叫びだした。
「敵襲ぅぅぅ!!!」
彼女の声が周囲に響きわたったとき、ぞろぞろと人が集まり、群像はいつの間にか艦娘達に囲まれてしまった。
「お主『白き鋼』の提督じゃな!」
「君は?」
「我輩は『利根』である!でこっちが我輩の妹の!」
「『筑摩』と申します。」
「こちらこそ。」
群像に話しかけて来たのは、重巡洋艦利根型一番艦『利根』とその二番艦『筑摩』だった。
「あれ!提督の息子じゃん!!なにしてんの!!」
「ちょっと隼鷹!飲み過ぎよ!」
「いいじゃん別に!!やる事無いんだしさ!!てか息子今暇?一緒に飲まない!!」
「俺未成年なんで。」
さらに軽空母『隼鷹』とその一番艦『飛鷹』も絡んできた。酒を強要されるも彼はまだ18のため断った。さらに「名古屋沖」で交戦した艦娘たちも集まってきた。
「提督の息子!」
「重巡『高雄』!」
重巡洋艦『高雄』とその二番艦『愛宕』だった。彼女は群像に突っかかるように「名古屋沖」の話を持ちかけた。
「「名古屋沖」ではどうも!」
「こちらもな。あの時は油断してたよ。まさか長門さんの艦隊まで出てくるとは思わなかった。」
「その割には余裕のようにも見えたけど?」
「いや、こちらはあの時弾薬が底をついていたんだ。だから君たちとまともな戦闘ができなかった。」
「あの後高雄ちゃんご機嫌ななめだったのよ。宥めるのに苦労したわ〜。」
「ちょっと愛宕!」
彼女を揶揄う愛宕と、ムキになる高雄の光景を見て群像は少し笑いそうになった。
「あぁぁぁぁ!!!」
突然群像を見て大声を出したのは軽巡洋艦『天龍』と重雷装巡洋艦『大井』だった。二人は「名古屋沖」での戦いを根に持っていたのか、群像に近づきいちゃもんをつけてきた。
「テメー等あの時は逃げやがってどういうつもりだ!!」
「いや、こっちは弾薬が既に底をついていたから逃げるしか手がなかったんだ。」
「だからって閃光弾なんて邪道な手口を使うなんて!北上さんの目が潰れたらどう責任を取るつもりでしたの!!」
「俺たち敵同士だよな?」
『天龍』と『大井』が急接近してきたので、群像は対応に困っていた。それ以前に群像は女性との付き合いがないどころかあまり話した事がないため、彼女たちとどう接していいかわからなかった。更に追い討ちを掛けるように、軽巡洋艦『龍田』と重雷装巡洋艦『北上』も入ってきた。
「あれ?提督の息子じゃん。何してんの?」
「決まってるでしょ。わざわざ殺られに来てくれたのよね。」
「いや・・・・そう言う訳にもいかないんだが。」
群像は何故か龍田の発言に寒気を感じた。彼の異変に気づいた北上が話を戻した。
「龍田の冗談はいいとしてさ、本当は何しにここに来たの?」
「それは・・・・。」
群像が話そうとしたとき、また別の艦娘が割り込んできた。
「そんなの決まってマース!!」
何処かで聞いた事のある声だと思い振り返ってみれば、「名古屋沖」で『第二巡航艦隊』旗艦を務めていた戦艦『金剛』とその二番艦の『比叡』であった。彼女は群像に近づき彼の腕と組み始めた。
「さっき赤城達が帰還してきたとき『白き鋼』の漁船を見ました!それは赤城達が彼の説得に成功したという事デース!!つまり彼が新たな『霧の艦隊』提督になるのデース!!」
「ですがお姉様、提督の息子が私達の提督になるとしてそれとお姉様の何の関係が?」
「決まっているじゃありませんカ!それは私が彼の秘書艦になるからデス!そして行く行くは・・・・イヤもう提督!触ってもいいけど、時間と場所をわきまえなヨ!!」
勝手な妄想を膨らませる『金剛』を見て、群像は彼女が夢から覚めないと思い、誤解を解くかのように榛名と霧島の事を話した。
「それより『金剛』『比叡』君達に聞きたい事があるんだが、榛名、霧島は二人の姉妹艦だったな。」
「もちろん!自慢の妹たちデス!!」
「実は、二人が任務中に陸軍に襲われて霧島が大破した。」
「What!?霧島が!!」
「それで霧島は!霧島は無事なんですか!!」
「心配はない。彼女なら今頃は俺たちの基地のドッグで入渠中だろう。榛名も付いているから問題は無い。」
「そうですか。ありがとうございます!!」
「さすが私の提督デース!!」
『金剛』がまだ勘違いをしているのか、群像は正直にここに来た目的を話した。
「それと俺は『霧の艦隊』の提督を引き継ぎにここに来たわけじゃない。確かに赤城に説得されて来たが、俺がここに来たのは君達の提督に話があって来たからだ。」
「提督にですカ?」
「そうだ。だから君達の艦隊の提督になる気はない。」
「そうですか・・・・せっかく提督に会いに来てくれたのに残念デス。」
さっきまでハイテンションだった金剛が急に暗くなった。彼女の様子に不安になった群像は辺りを見渡した。すると他の艦娘達まで元気を無くしていた。群像が父親の話をした事で彼女達の様子が急変した。それを見た群像は翔像に何かあったのではないかと考え始めた。そのときだった。
「やっと重い腰を上げたようだな。」
群像の前に現れたのは、戦艦『長門』と艤装を置いて来た赤城達だった。彼女の声は重くなった空気に更に緊張感を与えた。
「長門さん。」
「提督室には私が案内する。ついて来い。」
群像はそのまま長門に着いて行った。周りの空気が気になるが翔像の安否については長門から聞く事にした。
施設に入ると外観と違って昔のレトロな旧校舎ような作りになっていた。群像にとってはそれが新鮮で初めて見る光景で、まるで昭和の時代にタイムスリップしたようだった。すると廊下を進んでいる途中に長門型二番艦『陸奥』に出会った。
「あら、もしかして群像君?」
「陸奥さん。」
群像が長門と初めて会った日に実は陸奥もあの場にいたので群像とは面識があったのだ。陸奥も入れて提督室に向かう事になった。彼女は「名古屋沖」の事や12年前の話をした。
「ごめんなさい。この前長門が大人気ない事言って、恥ずかしかったでしょ?」
「ウチのクルーに揶揄われました。」
「あらあら。」
「よくあんな昔の事を覚えていましたね。」
「まあな。当時私が民間人の子供と接触したのは、お前だけだったからな。」
話をしている内に、提督室に着いてしまった。正面玄関から入って左の廊下を曲がって数メートル進んだところにあった。長門がドアを開けようとした時こんな事を言った。
「お前は今の『霧の艦隊』総旗艦が私でない事は知っているな。」
「赤城から聞きました。そして今の総旗艦が戦艦『大和』である事も。」
「そうか。だがその戦艦『大和』はお前とも面識のある艦娘だ。気楽でいい。」
そう言って長門は提督室のドアを開けた。群像は長門や赤城の言葉が気になったが会えばわかると思い、提督室に入った。そこには群像達を迎えるように戦艦『大和』と軽巡洋艦『大淀』の艦娘が立っていた。だが群像は大和を見て何故か驚いていた。
「桜・・・・。」
4年前、『第四研究所』の爆発事故で死んだはずの『大和桜』と瓜ふたつの女性が群像の目に写っていたからだ。
「どうかしましたか?」
「あッ!いや・・・・失礼した。昔の知り合いに似ていたものでつい・・・・。」
彼女が突然訪ねてきたので思わず群像は我に返ったかのようにいつもの態度をとった。それを見た長門は話を変えるように大和に報告した。
「作戦行動中だった艦隊は全て帰還した。だが霧島は大破して現在『白き鋼』の基地で修復中。榛名は彼女の付き添いで同行中出そうだ。」
「報告ありがとうございます。」
「それと見ての通り、海原群像を連れて来た。」
長門が報告を終えると群像は彼女の前に出て挨拶をした。
「『白き鋼』司令官の海原群像です。」
「『霧の艦隊』総旗艦大和型一番艦『大和』です。あっ!それと陸地での名前も教えないといけませんね。」
彼女を見る限り外見は桜にそっくりで群像は少し違和感を感じながらも彼女に接した。だがその違和感は彼女の地上での名前をあかしたときに明らかになった。
「『海洋技術総合学院』海上戦術学科戦術学部中等部二年『大和 桜』。」
「えっ・・・。」
「4年ぶりだね!群像君!」
なんと彼女の正体は四年前に亡くなった『大和 桜』は戦艦『大和』だった。実は大和は翔像の命令で『海洋技術総合学院』の『大和 桜』と言う偽名を使い、群像達に接触したのだ。その目的は群像の監視と護衛であったが、大和の話を聞いた群像は未だ信じられなかった。
「本当に桜なのか・・・・。」
「やっぱり信じてないのね。」
「当たり前だ!4年前の事故で死んだはずの君が、「実は艦娘で生きていました」なんて話を信じろと言う方が難しい!」
「やれやれ、頑固なところはやはり提督と一緒か。ここからは私が説明する。」
長門は納得していない群像に詳しく事情を説明した。
彼女の話によると、あの爆発で大和は爆心地から離れた場所にいたため軽傷で済んだのだ。
しかし辺りは炎で被われ、優一の逃げ場が大和がいた展望台近くの海だけだった。
だが彼女のいた場所は地下格納庫のすぐ近くで、そこには整備が既に完了した彼女の艤装が収納されていたのだ。
大和は危険を顧みずも、自ら炎の中を駆け抜け、地下格納庫の自分の艤装を装着し、格納庫の発進デッキから脱出し海に出たのだ。
燃え盛る施設周辺を彷徨っていると、爆発で飛び散った建物の破片が浮いていた。そこには、破片にしがみついた群像の姿があったので大和は急いで気を失っていた群像を担ぎ上げ、施設から離れた。
そして彼女が着いた先は、群像と吹雪が出会ったあの堤防だった。大和は小笠原に救援要請を出し、そのまま群像を置いて小笠原に向かった。
その後、救難に駆けつけた艦隊と合流し小笠原に到着した彼女は、今年に入り総旗艦として就任し、現在に至る訳である。
それを聞いた群像は次第に彼女を桜だと認識し始めたが、少し疑っていた。
「そうだったのか。」
「まだ疑ってるの!まさかとは思うけど・・・・。」
すると彼女は群像に徹底的に確信させるような話をした。
「私に『ホテルウーマン』とか『大学の講師』とか言って、杏兵君と一緒に5時間以上お説教された事忘れた訳じゃないよね?」
彼女の穏やかな笑顔が殺気立って見えた群像は、ふと思い出した。以前群像と杏兵は大和の優秀な成績と完璧な家事を見込んで、今後の就職先にホテルや教師を冗談で進めた事があったが、軍艦である彼女はそれが屈辱的だったため、彼女は群像と杏兵に5時間以上説教した事があったのだ。それを思い出した群像は戦艦『大和』が桜である事を確信したのか、安心していた。
「間違いなく桜だ。まさか本当に艦娘だったんだな。」
「本当はちゃんとみんなにお別れを言わなきゃいけなかったのにあんな事になっちゃって・・・・ごめんなさい。」
「いや・・・・お前が生きてた事を知ったら、杏兵も僧も喜ぶと思うぞ。いおりなんて飛びついてくるかもな。」
「そうね。」
「さて、感動の再会はここまでだ。」
お互いに再会を喜び合った。だが群像は、これ以上は時間がない事に気付いたのか、本題に入る事にした。
「俺がここに来たのは、『霧の艦隊』提督『海原翔像』との謁見を所望するために訪れた。彼に会わせて欲しい。」
群像がその名前を出した時、大和や長門たちの表情が急に暗くなった。まるで先ほど昇降口に集まっていた艦娘と同じ反応だった。その異変に気付いたのは群像だけでなく、任務で出撃していた赤城たちも群像と同じだった。
「あの長門さん。提督は今どちらに?」
「提督は出撃中の艦隊には話すなと言われていたがちょうどいい。」
赤城が尋ねると長門は重い口調で答えた。
「2091年7月31日午後17時31分42秒『海原翔像』提督が死亡した。」
「えっ・・・・。」
長門から衝撃の事実を聞かされた。海原翔像が既に他界していたからである。群像が父の名前を出した時、他の艦娘たちが暗くなっていたのはこの事だったのだ。だがその事実を受け入れられなかった赤城たちは取り乱しながら長門に迫った。
「なぜですか・・・・なぜそんな事に!!」
「聞いたところ半年前から体調が悪かったらしい。医者に見せようにも本土に行かなければならないが、私達はお尋ね者だ、間違いなく無事では済まされない。それに気を使ってか我々に今まで話さなかったそうだ。」
「だから何もしなかったのですか・・・・かつての秘書艦であったあなたは何もしなかったのですか!!」
「私だってどうにかしたかったさ!!だが気づいた時にはもう手遅れだったんだ!!」
「そ・・・・そんな。」
荒げる長門の声から悔しさと無念が伝わってきた。翔像の死に居合わせた彼女がよっぽど辛かったのだろう、そんな気持ちが伝わってきたのか、赤城はその場に座り込み涙を流した。それを見た加賀も涙を浮かべ後に続くように出撃中だった艦娘たちも泣き始め、提督室に泣き叫ぶ声が響いていた。そんな中、群像はただ黙っていた。
「それから群像、お前がここを訪れた時これを渡しておくよう提督から預かっていた物だ。受け取れ。」
長門から渡されたのは一通の封筒である。中身は確認していないらしく、群像宛に書かれたものだ。彼はそれを受け取り、長門に案内され翔像の墓へと向かった。ここから西に向かった所に海が見える丘があり、そこに翔像は眠っていた。出撃中だった艦娘たちは全員手を合わせしばらくして長門と一緒にみんな鎮守府に戻った。恐らく群像に気を使ったのだろう。だが赤城と加賀だけはその場に残っていた。赤城は翔像のお墓を眺める群像の姿を見て申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「申し訳ありません・・・・まさかこんな事になるなんて・・・・。」
「気にするな。君は俺の為を思って動いてくれてたんだ。君が悪いわけじゃない。」
「ですが・・・・。」
「誰だってこうなる事なんて予測してなかった。だからもう気にするな赤城。」
深々と頭を下げる赤城を、群像は許す形で彼女を説得した。しかし赤城は気が収まらず何度も群像に頭を下げた。それを見た加賀は彼女を落ち着かせようと一旦鎮守府に戻る事にした。
「赤城さん、行きましょう。」
「加賀さん。」
「今は、彼を一人にさせてあげるべきです。」
「わかりました。では群像さん、我々は鎮守府に戻ります。」
「ああ、いろいろありがとう。」
群像を残し、二人は鎮守府へと戻って行った。群像は再び父翔像の墓を見ていたが、特に何もするわけでも、その場から動くこともなく、ただ時間だけが過ぎていった。
東京都 中央管理区「首相官邸」
群像が「父島」に着いた頃、上陰は『楓信義』に面会すべく、中央管理区「首相官邸」に来ていた。ただなぜ昨晩ではなく翌日の早朝に面会なのかは言うまでもわかる。
「昨晩にこちらに急にお邪魔した事、それから早朝急にお呼び立てした事、誠に失礼しました。」
『私の方こそ対応に応じずすまなかった。』
頭を下げる上陰の目の前にいたのは、車椅子に座り拡声器で話す男がいた。この男こそが中央管理区首相『楓信義』である。元は海兵だったが、『第三次防衛戦』の時に体に深傷を覆い、下半身の機能と喉に後遺症を残した。そのため拡声器を使って会話をする。
『君が私のところに直接訪ねて来るという事は、緊急の事態のようだね。差し詰め陸軍の戦闘行為だろう。』
「では刑部邸襲撃の事も。」
『こちらにも情報が来ている。もちろん横須賀での『白き鋼』『霧の艦隊』『深海棲艦 』の戦闘結果も耳に入っている。君がこの件で私を訪ねてくる事は把握していたが、タイミングが悪かったようだね。』
「いえ。」
楓は横須賀での状況を既に耳にしていた。そして上陰がその件で訪れる事も知っていたのだ。
『では要件を伺おう。』
「はっ!陸軍防衛相『薙切薊』に今後の海軍作戦行動への介入を禁止して頂くよう首相から申し立てて下さい。」
『なるほど・・・・だが彼が素直に受理するとは考え難いが、指令書は出しておこう。』
「ありがとうございます。それともう一つ、あなたが進行している『硫黄島殲滅作戦』を撤回して下さい。。」
楓が進めていた『硫黄島殲滅作戦』。それは『白き鋼』のクルーの殲滅だった。それを聞いた楓は窓の外を見て上陰にこんな事を聞いてきた。
『私にとって彼等は今後の政治活動の障害に成り得る存在になる。今から排除しても遅くは無い。だが横須賀の結果報告を聞いた時、世界の歯車が変わる音がした。君はそんな音を聞いた事があるかね。』
楓の質問に対し、上陰は一年前の『白き鋼』の事を思い出し楓に話した。
「ちょうど一年くらい前でしょうか。『白き鋼』が「尖閣諸島沖」で『戦艦タ級』を撃沈した時にその音を聞いたかもしれません。」
「君はまだ『白き鋼』に希望があると思っているのかね?」
「少なくとも利用価値はあります。役目を終えた後でも遅くは無いかと。」
「そうか・・・・ならこの件は保留にしておく。それまでは高見の見物をさせて貰うよ。」
「ありがとうございます。」
政府の陰謀が少しずつ動き出す中、『小笠原』ではある変化が起きていた。
小笠原諸島「父島」
群像は未だ翔像のお墓を眺めていた。辺りが夕暮れ時になってやっと我に帰るようになった。その時、長門から渡された封筒を取り出して開けてみた。そこには翔像が群像に書いた手紙が入っていた。そこには『第三次防衛戦』の真実が明かされていた。
群像。お前がこの手紙を既読した現時刻を持って貴官を『霧の艦隊』司令官に任命する。現在、進行中の作戦や艦隊の編成に関しては同封されている資料の通りだがその前に下記に記された『第三次防衛戦』の結果報告から目を通してくれ。
『ミッドウェー海域』から進行してきた敵深海棲艦 の連合艦隊に対し、こちらは『金剛』を旗艦とした連合艦隊で応戦。最小限の損害で勝利し、無事に作戦は完了した。
だがこれで終わりではない。『第三次防衛戦』は敵連合艦隊を引きつけるための囮、本作戦の目的は敵深海棲艦 の泊地『ハワイ諸島』に向けての奇襲攻撃だ。なおこの作戦は上層部の命令ではなく当時海軍大将だった『北良寛』代議士とこの私『海原翔像』中将による独断で実行されている。旗艦長門と赤城たち空母機動部隊を中心とした連合艦隊で初動作戦は成功。我が艦隊は本土で交戦中だった連合艦隊と合流し内密に本土を離れ、『小笠原諸島』でに基地を作り引き続き作戦を続行した。その間に関しての補給物資は内密に手配される予定だった。
だが期日になっても補給艦が来る事はなかった。組織の様子を探るため艦のクルー全員を一次的に横須賀に帰投させた。だが副長以下隊員が戻ってくることはなかった。私は水雷戦隊を遠征に出し、資源を少しでも確保することにした。だが遠征だけで得た資源だけでは足りず作戦は続行不可能と判断しこれを保留とした。
以上が『第三次防衛戦』の詳細である。この作戦が成功すればアメリカとの輸送ルートを確保できるはずだった。だがそれすら叶わなかった。
今現在、日本の経済は衰退の一途を辿っている。アメリカや他国との貿易海路を確保しなければ、日本経済は間違いなく崩壊する。当時危機感を感じた私と北海軍大将はすぐ政府に「ハワイ諸島」の攻撃許可を申請したが、取り合ってもらえず、内密に作戦を実行したが作戦に協力していた北海軍大将もこの作戦を断念した何らかの事態に遭遇し、作戦は続行不可能と私個人で判断し、今に至ると言う訳だ。
全ては陸軍上層部が仕向けたものだろう。奴等のことだ、海軍が戦果を上げるのが余程気に入らなかったらしい。これ以上彼等の下らぬプライドで国家を危険にさらしたくは無い。
だから群像、お前に『霧の艦隊』を引き継いで欲しい。お前なら政府や陸軍の目を掻い潜り、作戦を完遂する事が出来る。
頼む群像。日本の行く末はお前たちに掛かっている。
海上防衛司令官 海原翔像
P.S
この10年お前や沙保里には苦労を掛けたと思っている。特に群像、大和から話は聞いた。辛い思いをさせてすまなかった。だからせめて最後に二人に会ってちゃんと話すべきだった。それが唯一の私の心残りだ。
さらばだ群像、後はお前に任せる。
翔像からの手紙を読み終えた群像はいつの間にか涙を流していた。
「何だよそれ・・・・。」
その涙は後悔と無念だけしか伝わって来なかった。もっと早くに『霧の艦隊』と接触していればこんな結末を見ずに済んだことを。
「もっと早くにあんたに会うべきだった。ちゃんと話すべきだった。なのに・・・・。」
その場で泣き崩れると読み終わった筈の手紙にもう一枚別の紙が落ちた。群像は泣きながらその紙を拾って見てみると、そこに書かれていたのは『深海棲艦 』の行動パターンが描かれた図や絵だった。だが群像が目にしたのは、更に別の内容だった。
(そんな馬鹿な!もし親父の読みが本当だとして何故そんな事をする必要がある。敵の目的は一体・・・・。)
それを見て群像は衝撃を受けて、泣くのをやめて立ち上がった。泣いてる暇なんて無い、前へ進もう。そう自分に言い聞かせた。
「親父、俺は行くよ。親父達の作戦を引き継ぐつもりはない。俺は俺のやり方で「ハワイ諸島」を奪還する。それと親父が予想しているこの最悪の事態も俺達が必ず止めてみせる。だから安心して見守っていてくれ。さようなら・・・・父さん。」
そう翔像に言い残し群像は鎮守府へと戻って行った。この先自分が何をすべきか、何処へ向かうのかも決まっていたかの様に行動に出た。
その頃鎮守府ではある問題が浮上した。それは鎮守府周辺を哨戒で出ていた艦隊が帰投してきた時だった。艦隊旗艦は重巡洋艦『青葉』。彼女は同じ艦隊で出撃していた二番艦の『衣笠』と共に、司令室で大和、長門、大淀に報告していたがその内容が危機的事態を招いていた。
「それは本当か!!」
「間違いありません。青葉達の取材で『敵深海棲艦 』の艦載機が鎮守府周辺を飛行していました。直ぐに撃ち落そうとしましたが高度が高すぎて青葉達の射程では撃墜は不可能でした。」
敵艦載機が鎮守府周辺を飛行していたという事は、偵察が目的と考えていい。そしてこれが敵の今後の奇襲作戦に繋がると考える方がいい。それは大和や長門も感ずいていた。
「やはり狙いはこの基地か。」
「よりによって提督不在の時を狙って来るなんて。敵艦隊が来る前に「小笠原」を出ましょう。」
「いや・・・ここで迎え撃つ。」
「資材も資源も無いのにどうやって!!」
「ならここを出て何処へ行くつもりだ。」
「それは・・・・。」
「我々を受け入れてくれる場所など何処にも無い。ここしか私達の居場所は無いんだ。だから守り抜く!最後の最後まで!」
「それで艦隊が全滅したら意味無いだろ!!」
鎮守府に戻ってきた群像が急に司令室に入って来た。しかし、さっきまでの沈んでいた顔とは違い、いつもの群像の表情に戻っていた。
「群像くん!」
「もういいのか。」
「はい、お陰様で・・・。」
「あの『白き鋼』の提督さんですよね?」
「君は?」
「重巡洋艦『青葉』です!あの取材させてもよろしいでしょうか!」
「ちょっと青葉なにしてるの!!」
群像が話そうとした時、重巡洋艦『青葉』が急に迫ってきた。さらに『衣笠』まで入り、さっきまで重苦しい空気が無くなった。
「この非常時に何をしているんだあいつらは・・・。」
「でも少し気が楽になったと思いません。」
「まあ確かにそうだが・・・。」
さっきまで緊張状態だった長門と大和はこの騒ぎで気が楽になり、冷静さを取り戻した。その時、群像は『青葉』と『衣笠』に何かお願いしていた。
「それより『青葉』!」
「はい?」
「それと・・・。」
「重巡洋艦『衣笠』です!」
「『衣笠』!二人に頼みたい事がある。基地内にいる全艦娘達を、校庭に集めてくれないか。」
「全員ですか。わかりました!」
「衣笠さんにお任せ!!」
『青葉』と『衣笠』は直ぐに司令室を出て行った。その後群像は「大淀」に紙切れのようなものを渡した。
「大淀。」
「はい?」
「『白き鋼』が使っている通信回線のチャンネル番号だ。これで「硫黄島」に繋いで校内放送で流せるようにしてくれ。それと向こうにこちらの声が届くように頼む。」
「わかりました。」
長門と大和は、群像が何をしようとしているのか全く見当が付かなかった。直接本人に聞くしかなかった。
「何をするつもりだ群像。」
「決まってるだろ。着任式だ。」
「本当か!」
「でも『白き鋼』は!いおりちゃん達はどうするの!」
『霧の艦隊』提督に就任すると言いだすも、それは『白き鋼』を離れるにもなるということだ。だが長門も大和も群像にそこまでして『霧の艦隊』を継いで欲しくはなかった。だが群像は大和の質問とは全く別の答えだった。
「その事だが今回の件も含めて三人に話す事がある。」
長門、大和、大淀の三人は群像の話を聞き納得し、賛成した。彼女たちが何故群像の提案に賛成したのか、それはこの就任式で明らかになる。
その一時間後、基地内にいた全ての艦娘達が疑問を抱く中集まり、着任式の準備が完了しようとしていた。そして『硫黄島』にも、通信が入ってきた。
硫黄島「硫黄島基地 管制室」
「副司令!外部から不明の通信が入ってきてます!」
「繋いでください。恐らく司令でしょう。」
指令室には、僧や静だけでなく杏兵や吹雪、更に刑部蒔絵に榛名、そしてドッグで入渠が完了した霧島と彼女の偽装を修理していたいおりが集まっていた。静が外部から送られきた通信を開くと、相手は『大淀』だった。
『こちら『霧の艦隊 小笠原基地』。『硫黄島基地』応答願います。』
「こちら「硫黄島」。貴官の所属と名前を教えて下さい。」
『私は『霧の艦隊』所属、軽巡洋艦『大淀』です。これより、海原群像さんの『霧の艦隊』提督の着任式を行います。』
それを聞いて杏兵、吹雪、いおりは反発し、蒔絵、榛名、霧島は困惑していた。
「司令官が『霧の艦隊』提督に!?」
「ちょっとそれどう言うこと!!」
「お前ら家の司令官に何吹き込みやがった!!」
『黙って群像の話を聞け!!』
いきなり大淀ではない声がした。一時的に大淀から長門に変わったのだ。
『お前達の提督だろ。なら最後まであいつを信じてやれ。』
長門に言われるままに杏兵達は黙りこんだ。長門も『白き鋼』にが落ち着いたのを確認し、大淀に返した。
「小笠原諸島 父島」鎮守府校庭
鎮守府の校庭には基地内にいた艦娘達が集まり、壇上には群像を始め、大和と長門が立ち、群像がマイクを持ち、就任式が始まった。
『本日付で『霧の艦隊』提督に着任した海原群像だ。上手く艦隊を纏められるかわからないが、君達と信頼関係を築いていきながら頑張って行きたいと思う。なお『白き鋼』だが、俺が『霧の艦隊』提督に着任した現時刻を持って解散とする。』
群像の演説を聞く艦娘達や『白き鋼』は理由は違えど群像の『霧の艦隊』提督に納得していない者もいた。杏兵や吹雪も『白き鋼』の解散に不服な気持ちでいた。だが群像から思わぬ発言が飛び出した。
『早速だが諸君等に三つ報告ある。まず一つ目だが、現時刻を持って『霧の艦隊』を解散とする。』
群像の『霧の艦隊』の解散を聞いて、艦娘達は混乱と不安でざわついていた。
「一体何を考えているのでしょう。」
「『白き鋼』ならまだしも『霧の艦隊』まで解散させる意図がわかりません。」
赤城と加賀も含め、艦娘達は群像の考えに混乱していた。そんな彼女達にお構いなしに群像は話を進めた。
『そして二つ目だが、先程解体した『白き鋼』並びに『霧の艦隊』に所属していたクルーと艦娘達には新たな艦隊に入隊してもらいたい。』
群像は間を置いてから大きく息を吸った。彼が思い描く艦隊の名は・・・・。
『『蒼き艦隊』だ。』
『蒼き艦隊』。それは『蒼き鋼の航海記』に記されていた『蒼き鋼』が由来となっている。『深海棲艦 』との戦いに向けて前から群像が思い描いていた艦隊がここに実現したのだ。だが艦娘たちは急な話で戸惑うも群像は演説を続けた。
『『白き鋼』と『霧の艦隊』はお互い制海権を取り戻すため海に出た。だが条件下の厳しい中で何の戦果も得られないまま、気付けば長い月日だけが立っていた。俺達はそんな事をするために戦ってきたわけじゃない!だからこそもう一度やり直す。お願いだ!ここにいる全員や「硫黄島」にいるみんなの力を俺に貸して欲しい!頼む!』
群像はそのまま深々と頭を下げた。だが艦娘達はどうするか迷い始め、そのまま黙り込んでしまった。いきなりそんな話をされても、翔像の息子とはいえ簡単に従う事はできない。彼女達に迷いが出てきてる中、一人だけ真っ直ぐな目で群像を見る者がいた。
「一航戦赤城!」
赤城が突然敬礼をしながら叫び始めたのだ。群像も思わず頭を上げてしまった。彼女はもう決意を固めていたのだ。
「本日付けで『蒼き艦隊』に入隊します!空母機動部隊を編成するなら、私にお任せ下さい!」
「赤城・・・・。」
赤城の隣で見ていた加賀も群像の方を振り向いた。
「同じく一航戦加賀!本日付けで『蒼き艦隊』に入隊します!提督、ご命令を!」
彼女も群像に向かい敬礼をした、その時だった。赤城と加賀に呼応してか他の艦娘達も敬礼をし始め、いつの間にか全員群像に敬礼をしていた。それは全員が『蒼き艦隊』に志願する意思を表していた。長門も大和も大淀もこの状況を待ちわびていたのか、群像の方を向いて敬礼していた。更に硫黄島からも僧から報告があった。
『こちら硫黄島基地。こちらも『旧白き鋼』のクルーを始め、刑部蒔絵、榛名、霧島。全員が『蒼き艦隊』の入隊を希望しています。司令官、返答を。』
目の前の光景を目にしてホッとしたのか、まるで風を感じるかのように目をつぶり、息を吸い、高らかに宣言した。
『全員『蒼き艦隊』の入隊を許可する!総員!暁の水平線に勝利を刻むぞ!』
「『了解!!』」
艦娘たちや「硫黄島」にいる僧たちも声を揃えて返事をした。それを聞いた群像は次の報告をした。
『さて、最後に三つ目だが先程『深海棲艦 』の大艦隊がこの「小笠原諸島」に進軍して来てると言う情報が入った。恐らくこの『父島』に攻撃して来る可能性が高い。』
重巡洋艦『青葉』達水雷戦隊が目撃した敵艦載機の件だった。群像は『青葉』の話を聞いて敵艦隊が「小笠原諸島」に進軍して来る事は予想していた。不安を抱く艦娘もいたが、群像はその対策も準備していた。
『そこでだ『蒼き艦隊』最初の任務は、『小笠原基地』から『旧白き鋼』が使っていた『硫黄島基地』への大移動作戦を発令する。『深海棲艦 』の大艦隊が来る前にこの『父島』を脱出する。なお訳あって既に戦艦榛名、霧島が『硫黄島基地』に着任しているから、残りはここにいる俺達だけだ。作戦開始は明日の早朝0700だ。それまで各自荷物をまとめておくように。』
「了解!」
艦娘達は最初の任務で張り切っていた。そんな光景を見て群像は彼女達が自分を信じてくれたのか少し安心していた。その時僧から報告があった。
『では早速ですが司令官。二点ほど報告があります。』
『報告してくれ。』
『まず一点目ですが、当基地に運ばれた戦艦霧島の入渠が完了しました。現在は我々や戦艦榛名と共に司令室にいます。いおりからは艤装の修復も終了したとのことです。』
『そうかご苦労だった。』
『それと二点目ですが『蒼き鋼』の建造が完了しました。』
『完成したのか!』
『可動プログラムや内蔵武器の設定と各種機能テストがまだなので完成とは言えません。』
『わかった。直ぐ作業にかかってくれ。』
『了解しました。では司令官、そして艦娘の皆さん『硫黄島』でお待ちしてます。これで通信を終了します。』
そのまま『硫黄島』からの通信が切れた。
『ではこちらも作戦準備を始める。各自作業に入ってくれ。』
群像の呼びかけと共に、艦娘達は直ぐに準備に取り掛かった。そして作戦当日、午前七時『蒼き艦隊』は『父島』を出港し「硫黄島」へと進路をとった。『蒼き鋼の航海記』とは物語が外れているものの彼女達の航海は始まったばかりである。
今回、話の内容がわかりづらいかもしれません。
そして五話を見返してみたら誤字や脱字がいっぱいありました。
すいません。