艦隊これくしょん 艦これ~蒼き鋼の航海記~再記録   作:Mr.tosi

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今回は今後の話に左右する内容なので長くなってしまいました。

それと二話「霧の艦隊」で松永中将のプロフィールを一部変更しました。これを気にもう一度読み返して見ては如何でしょうか。



七話「蒼き艦隊」

硫黄島 「硫黄島基地 管制室」

 

 

 

「それにしても群像の奴、ヒヤヒヤさせやがって!」

 

 

「本当、こればっかりは今回だけにして欲しい。」

 

 

 

 

「小笠原基地」との通信が切れた後「硫黄島基地」では杏兵やいおりが緊張の糸が解れたのか疲れ切った顔をしていた。

 

 

 

 

「どうでしょう。お二人から見て『海原群像』という指揮官の印象は。」

 

 

「素晴らしい提督だと思います。」

 

 

「データ以上の方とお見受けしました。」

 

 

 

榛名と霧島は、群像が提督として艦隊指揮を取る事に満足していた。二人の答えを聞いた僧は安心していた。

 

 

 

「けど驚きました。新たに組織を結成するなんて。」

 

 

「ですが良い判断です。何方に就くのではなく、両組織を解体し、新たに別の組織を立ち上げればお互い差別関係もなく、平等に接する事が出来ます。」

 

 

「けど良く群像の親父さんが許したよな?どんな手を使って改心させたんだか。」

 

 

「元提督も子の親ですから、息子の頼みを聞き入れたのではないでしょうか。」

 

 

「親子の絆って奴か。悪くねーな。」

 

 

 

僧が言った通り、お互い今までの組織ではなく新たな組織を設立すれば差別関係は無くなることも群像は考えていた。静も思いつかなかったのか、驚いていた。だが「硫黄島基地」にいるメンバーは、『海原翔像』が既にこの世にいない事を知らなかった。

 

 

 

「ところで先程から気になっていたのですが『蒼き鋼』とは一体何なのです?」

 

 

 

 

霧島が聞いてきたのは、僧が群像に話していた『蒼き鋼』の事だった。その正体は『旧白き鋼』が建造していた潜水艦の事である。松永中将から「硫黄島基地」を託された時に、群像がこれからの戦いに必要になってくると予感して、建設用のドッグを増設し、建造していたのだ。だが霧島は一つ疑問に思っている事があった。

 

 

 

「艦である自衛艦や潜水艦だと『深海棲艦 』相手では相性が悪いのでは?」

 

 

 

 

霧島の言うとおり、自衛艦や潜水艦で『深海棲艦 』との戦闘は相性が悪いからだ。理由は単純に大きさの違いからだ。人型サイズの『深海棲艦 』には自衛艦、護衛艦のソナーは反応し難いため、感知が遅れたり、浮遊物と認識することが多いのだ。勿論潜水艦も同様だ。だが『深海棲艦 』にとって自衛艦は大きい的に過ぎないので、簡単に撃沈出来るのだ。

するといおりからこんな返答が帰ってきた。

 

 

「私達の造った潜水艦は対深海棲艦用じゃないのよ。」

 

 

「はい?」

 

 

 

首を傾げる霧島を見て僧が説明した。

 

 

 

 

「対深海棲艦 と言うよりは、艦娘専用の潜水艦ですね。」

 

 

「艦娘専用ですか?」

 

 

「はい。艦隊を運用するための潜水母艦です。言わば移動基地と受け取って下さい。」

 

 

 

 

その話を聞いた榛名と蒔絵、そして霧島はその潜水艦に興味が湧いたのか、見に行こうとお願いした。

 

 

 

「ねえねえ!その潜水艦見てもいい!」

 

 

「いいよ!着いて来て!あと紹介したい子たちがいるから!」

 

 

「やったぁ!」

 

 

 

いおりに許可を貰い、蒔絵達は彼女の後を着いて行った。「横須賀基地」では着々と出迎えの準備が進められていた。

だが、翌日『深海棲艦 』の予想外の出現により『蒼き鋼』は予定より早く出撃することを余儀なくされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神奈川県横須賀市「横須賀基地 第二艦隊提督室」

 

 

 

 

 

 

 

 

群像が「小笠原」で『蒼き艦隊』を結成してから翌日の事、上陰は慌ただしく松永中将のいる『第二艦隊提督室』に向かっていた。そこには中将だけでなく、上陰に呼びだされていた北代議士と、もう一人思わぬ人物が招かれていた。

 

 

 

 

「失礼します。」

 

 

 

『やあ。遅かったじゃないか上陰君。』

 

 

 

提督室に入ると、そこには中央管理区首相『楓信義』の姿もあったからだ。上陰は呼んでいる筈もない楓に驚き訪ねてしまった。

 

 

 

 

「首相!なぜこちらに!」

 

 

 

『「小笠原諸島」に妙な大群が出現したと言う報告が私の耳にも入ってきてね。君も動き出すと思った。そして君が最初に訪れるとしたら松永中将のところだと思って来てしまったよ。』

 

 

「そうですか。」

 

 

 

 

そんな話を聞いていた松永は頭を抱えていた。流石に中央管理区首相が、海軍基地をアポイントも無しに訪れるのは異例の事態だったため、かなり動揺していたらしい。

 

 

 

「お言葉ですが次官補ってのは代議士や首相を強制的に呼び出す程の権限をお持ちで?」

 

 

「ご迷惑でしたらお詫び致します。」

 

 

『おや?私は何か失礼なことをしたかね?』

 

 

 

惚けた顔で誤魔化す楓を見て、上陰は腹が立ったのか彼を睨み付けた。流石の楓の勝手な振る舞いに困っていたからだ。

 

 

 

「首相。ご自分のお立場を考えて行動して頂きたい。」

 

 

『まあ、固くならないで下さい。昔みたいに呼び捨てで構いませんよ。北先生。』

 

 

「首相!」

 

 

『松永中将もそれでよろしいですね。』

 

 

「じゃあお言葉に甘えて。自重しろノブ。」

 

 

「全く貴様は・・・・。」

 

 

 

楓の振る舞いに北と松永は呆れていた。お互いの立場や階級は関係なしに昔の関係に戻っていた。ちなみに楓は松永や翔像の海軍士官養成所の同期で、北はその上官だった男だ。今の楓とは正反対の関係だったのだ。

 

 

 

「ところで我々を呼び出したのは『白き鋼』の件かね?」

 

 

 

北が訪ねると、上陰はその通りの返事で説明した。

 

 

 

「はい。先程首相が仰ったように、現在『小笠原諸島』に出現した大群は『霧の艦隊』の艦娘と判明しました。これがその衛星写真です。」

 

 

 

上陰は、衛星画像を加工したものを彼等に見せた。そこにはアップで映し出された艦娘達と漁船らしき姿があった。

 

 

 

「間違いない長門達だ。それとこの漁船・・・・まさか!」

 

 

「確認は取れていませんが、恐らく『海原群像』と『海原翔像』が乗っていると思われます。」

 

 

「群像の奴ついにやったか。」

 

 

「ですが問題は彼女達の前方にいる物体です。」

 

 

 

上陰が指差すところを見ると、松永はその正体に気付いた。

 

 

 

「『深海棲艦 』か。」

 

 

「見た所交戦中のようだが。」

 

 

 

北の言うとおり、今交戦しているのは群像達『蒼き艦隊』と『深海棲艦 』の連合艦隊の水上打撃部隊である。長門、大和、金剛を旗艦とした主力艦隊と空母機動部隊、水雷戦隊の殆どを前衛に出していた。だが群像の護衛艦として残っていたのは大淀や工作艦『明石』、軽空母『鳳翔』を含め、給糧艦『間宮』と駆逐艦『望月』『弥生』だけだった。比べて敵は水上打撃部隊であったが、戦況は『蒼き艦隊』が有利であった。

 

 

 

『ん?小島辺りから別の敵艦隊も向かっているね。』

 

 

「東と西に出現した敵艦隊でしょうか?恐らく増援でしょうが、金剛殿と長門殿がいるので問題はないでしょう。」

 

 

 

楓が東と西から出現した『深海棲艦 』に気が付いたが、上陰はそれを増援部隊と考えていた。だが松永は画像を見て表情 が強張った。

 

 

 

 

「まずいな。」

 

 

「どうかしたのか。」

 

 

 

松永が呟くと北が彼の異変に気付いて声を掛けた。松永がこれは敵の増援ではなく全く別の何かで動いていると視ていた。

 

 

 

「こいつら増援じゃない・・・・作戦行動で動いている艦隊だ。」

 

 

「何だと!」

 

 

 

松永の発言に北や上陰に楓も驚いていた。上陰は詳しい状況を松永から聞いた。

 

 

 

「恐らく艦隊を孤立させる事が目的だ。群像が前衛に戦力を集中させ過ぎて自分を守るための護衛の艦が少ない。奴等はそれを狙って来やがった。」

 

 

「では狙いは『海原群像』と『海原翔像』ですか。」

 

 

「恐らくな。だが『深海棲艦 』がそこまでの戦術を立てるとは考え難いが。」

 

 

 

 

これまでの『深海棲艦 』との戦闘で敵は単純な戦略と戦術が多かった。だが松永の推測は的中していた。敵艦隊に有能な『深海棲艦 』がいたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小笠原諸島「母島沖」

 

 

 

 

「長門、戦況はどうなっている。」

 

 

『こちら長門。残りは戦艦二隻と重巡一隻だけです。そう時間は掛からないでしょう。』

 

 

「わかった。戦闘終了後、また連絡してくれ。」

 

 

『了解しました。』

 

 

 

『蒼き艦隊』は「硫黄島」に向けて航行していたが、群像の予想よりも早く『深海棲艦 』と遭遇し、現在も戦闘中である。群像も長門も仕事中はお互いの立場を脇まえて会話をしている。それは長門だけでなく、大和も金剛も他の艦娘達も一緒であった。ちなみに群像の秘書艦は大和が付いている。

 

 

長門との通信を終えた群像は何かを考え込んでいた。

 

 

 

「いかがしましたか提督。」

 

 

 

大淀が異変に気付いて声を掛けると、群像は疑問に思っていたことを口に出した。

 

 

 

 

「交戦中の敵艦隊にeliteやflagshipがいないのが気になる。増援で来ると思ったが、違っていたみたいだ。」

 

 

「敵の作戦でしょうか?」

 

 

「それならもう動いてもいい頃だが。」

 

 

「提督!大変です!!」

 

 

 

鳳翔が慌ただしく群像の所に寄って来た。

 

 

 

「どうした鳳翔。」

 

 

「一時の方角に敵機動部隊出現!その数12!距離200!」

 

 

「なに!!」

 

 

 

報告を聞いた群像は、直ぐにその方角を見ると、複数の『深海棲艦 』が目視で確認出来る程の距離にまで迫っていた。しかもそこには空母ヲ級flagship複数確認された。すると金剛から通信が入ってきたが、様子がおかしかった。

 

 

 

『テートク!!』

 

 

「どうした金剛!」

 

 

『11時の方向に敵艦隊カクニン!!』

 

 

 

 

そして金剛に続き大和からも通信が入った。

 

 

 

 

『こちら大和!2時の方角にも敵増援部隊を確認!数30!!敵射程距離に入りました!』

 

 

「金剛!そっちも状況は同じか!!」

 

 

『Yes!しかもflagshipしかいまセン!!水上電探は正常なのに全然反応シマセンデシタ!!』

 

 

 

大和も金剛と同じ状況だった事に気付き直ぐ様彼女に確認を取った。そしてある事に気が付く。こちらの水上電探が探知範囲内にも関わらず敵の艦隊を察知できなかったのだ。

 

 

 

(どの艦もレーダーが察知出来なかった?どうなっている。)

 

 

「提督!敵艦載機接近!直上です!!」

 

 

「大淀、望月、弥生は対空防御!それ以外は回避行動を取れ!!」

 

 

 

完全に敵に先手を取られた群像達は逃げ回るしかなかった。そしてそれをあざ笑うかの様に『深海棲艦 』の機動部隊は高みの見物をしていた。

 

 

 

「航空部隊カラ通信。『敵ターゲットヲ補足。コレヨリ攻撃二移ル。』ダソウダ。」

 

 

「ソウカ。」

 

 

 

 

群像達を攻撃している『深海棲艦 』の機動部隊の旗艦を務める『空母ヲ級』二隻が指揮を取っていた。

 

 

 

「艦隊指揮ト言ウノハ難シイモノダ。」

 

 

「ヨク言ウヨ。『低周波マイクロチップ』マデ用意シテ、ソンナセリフハナイヨ。」

 

 

 

その『低周波マイクロチップ』を見ながらもう一隻のヲ級をからかった。このチップは低い周波数を発するため、電探やソナーはその物体を探知する事ができない。艦娘達の電探が反応しなかったはこの装置を敵艦隊が装備していたからだ。

 

 

 

「イッソノ事オ前ガ旗艦ヲヤレバヨカッタンジャナイカ?過去二旗艦ヲ務メタコトモアルノダロ?」

 

 

「実ハ海外遠征ヲシタ事ガ無インダ。勿論日本ヲ出タ事モナイ。」

 

 

「トンダ引キコモリダナ。何ノ為二建造サレタンダ?」

 

 

「『ミライ』様!『イブキ』様!」

 

 

「『ハレカゼ』カ。ドウシタ?」

 

 

 

ヲ級二隻を呼んだのは、重巡リ級『ハレカゼ』と名乗る『深海棲艦 』だった。彼女達にも艦名があるらしいが、現在の人類の研究ではまだ明るみになっていない。

 

 

ちなみに、艦隊指揮を取っている空母ヲ級『ミライ』とそんな彼女をからかっていたのが『イブキ』と名乗る『深海棲艦 』である。

 

 

 

「水上打撃部隊ガ敵艦隊ト戦闘ヲ開始シマシタ!」

 

 

「了解シタ。第二次攻撃隊発艦後『海原群像』二総攻撃ヲ行ウ。ソレマデ待機ダ。」

 

 

「ハッ!」

 

 

 

 

『ハレカゼ』の報告が終わると、『ミライ』は『イブキ』が空を見ながらぼーっとしてるのに気が付き、彼女に声を掛けた。

 

 

 

 

「何ガ見エル?」

 

 

「『ジパング』。」

 

 

 

その言葉に聞き覚えがあるのか、『ミライ』の表情が殺気立った。

 

 

 

「今回ノ作戦デ・・・・我ガ『ジパング計画』ハ急ピッチデ進ムダロウ。」

 

 

「貴様・・・・ドコデソノ言葉ヲ知ッタ。」

 

 

「コレハ驚イタ・・・・上層部ニシカ知ラナイ情報ヲ何故君ガ知ッテイル?」

 

 

「質問ヲシテイルノハコッチダ!!答エロ!!」

 

 

 

 

殺気立つ『ミライ』を落ち着かせようと、『イブキ』は『ジパング計画』の事を話した。

 

 

 

「姫様ガ『大本営』ト話シテイル時二聞イタンダ。詳シイ事マデハワカラナカッタガ、近々大規模作戦ガ行ワレルラシイ。」

 

 

「大規模作戦?」

 

 

「詳細ハ不明。タダ新国家創立ノ為ノ重要ナ作戦ラシイ。」

 

 

「新国家創立・・・・。」

 

 

 

『ミライ』は昔を思い出すように考え始めた。彼女は過去にも似た様な出来事に遭遇した事がある様なそんな感じだった。

 

 

 

「トコロデ何故『ジパング計画』ノ事ヲ知ッテイルンダイ?」

 

 

「ソロソロ時間ダ。第二次攻撃隊ヲ発艦スル。」

 

 

「了解シタ。話ハ作戦ガ終ワッタ時二聞カセテモラウヨ。」

 

 

 

敵『深海棲艦 』の艦載機が『ミライ』そして『イブキ』から発艦し、機動部隊も動き出した。敵艦載機は、群像乗る漁船へと迫っていた。

 

 

 

「上空に敵艦載機接近!第二次攻撃隊です!」

 

 

 

大淀は必死に報告するも対応間に合わず群像の乗る漁船に敵艦攻の機銃攻撃を受けた。その時、『長門』から通信が入ってきた。

 

 

 

『こちら長門!前戦の艦隊は撃破しました!!直ぐそちらの救援に向かいます!!』

 

 

「ダメだ!大和、金剛の艦隊を支援してくれ!!」

 

 

『それでは提督が!!』

 

 

「だからこそだ!!こちらに来れば長門達も被害を受ける!なら大和達の足止めしている敵水上打撃部隊と機動部隊を撃破してから全艦で合流してくれ!!」

 

 

『了解しました。提督・・・・ご無事で。』

 

 

 

納得行かないまま、長門は通信を切った。そこへ赤城が彼女のところに訪ねてきた。

 

 

 

「長門さん!提督はなんと!!」

 

 

「自分より先に敵増援部隊を叩けとの事だ。」

 

 

「そんな!ですがこのままでは提督が!」

 

 

「今は提督を信じるしか・・・・っ!?」

 

 

 

だが長門が群像の乗る漁船を見ると、直上に敵艦爆機が攻撃態勢に入っているのを確認した。その瞬間を見た長門もそして赤城も思わず群像に叫んだ。

 

 

 

「提督!!」

 

 

「逃げろ群像!!」

 

 

 

 

長門や赤城だけで無く、交戦していた大和と金剛も思わず叫んでいた。

 

 

 

「群像君!!」

 

 

「テートク!!」

 

 

 

 

二人の声を聞いた群像は空を見上げると、敵艦爆機が迫っていた。

 

 

 

(しまった!)

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

その時、群像の乗る漁船に何かが猛スピードで駆け付けた。手に持っていた主砲で敵艦載機を次々と被弾させ、全て撃墜した。

 

 

 

「吹雪。」

 

 

 

群像の目の前にいたのは、「硫黄島」にいるはずの吹雪だった。

 

 

 

「よかった!何とか間に合いましたね!」

 

 

 

突然の吹雪の出現に敵も味方も驚いていた。

 

 

 

「アノ駆逐艦、何処カラ現レタ?」

 

 

 

『ミライ』が吹雪を見ている時、突然彼女達の頭上から弾丸の雨が降り注いだ。戦艦が三式弾を撃ったものと思われる。

 

 

 

「何ダ!!」

 

 

 

三式弾が放たれた方を見ると、そこは「硫黄島」のある方角だった。その進路上を二隻の艦影らしき物が近づいていた。正体は、榛名と霧島だった。先程放たれた三式弾は彼女達の物だ。二人はそのまま群像達と合流した。

 

 

 

『こちら霧島。提督の護衛は私と榛名、吹雪さんにお任せください。皆さんは直ぐその場から後退して下さい。』

 

 

 

霧島から全艦娘に通信が行き渡り彼女の指揮に従った。

 

 

 

「全艦!霧島さんの指示通り後退してください!!」

 

 

 

大和達は霧島の指示通り後退したその時、海面から巨大な物体が飛び出してきた。始めはクジラかと思っていたが、その物体は鉄の塊のような物だった。

 

 

 

「青い潜水艦?」

 

 

「ああ・・・・しかも伊400型だ。」

 

 

 

陸奥と長門が見たのは、第二次世界大戦の終戦間近に建造された『伊400型潜水艦』である。その正体は、「硫黄島」で建造された『蒼き鋼』。それは、群像が夢で見る『蒼き鋼の航海記』に登場する『イ401』その物であった。

 

 

 

『こちら401。これより艦首カタパルトデッキを展開します。全艦娘はそこからの乗艦して下さい。』

 

 

 

静から全艦娘、そして群像が乗る漁船に通信が入っていたが、群像は401の光景に見とれていた。

 

 

 

「行きましょう司令官!皆さん待ってます!」

 

 

「ああ・・・・。行こう吹雪!」

 

 

 

吹雪に声を掛けられた時、やっと帰ってこれた気がした。そしてここから新しい航海が始まる予感もしていた。そんな気持ちを胸に懐き、群像は深く息を吸い、艦娘達に指示を出した。

 

 

 

「全艦!401に搭乗!艦内で点呼を終了次第、401で戦闘海域を離脱する!!」

 

 

『了解!!』

 

 

 

群像は通信を切り、護衛艦隊にも指示を出した。

 

 

 

「これより401と前衛艦隊と合流する!!」

 

 

「ですがどうやって前方には敵艦隊が!」

 

 

 

霧島の言うとおり、目の前には敵『深海棲艦 』の水上打撃部隊がいる。だが敵は動こうとしなかった。何故なら動けなかったからである。

 

 

 

「401が急速浮上してくれたお陰で、荒波が出てきた。奴等は足を取られてうまく旋回出来ないはずだ。その隙に敵艦隊を突破する!!」

 

 

 

群像達は、そのまま荒波で身動きができない敵水上打撃部隊の横を通り過ぎた。その異変に気付いた『ミライ』は直ぐに通信した。

 

 

 

「水上打撃部隊!!何故攻撃シナイ!!」

 

 

『申シ訳アリマセン!!現在荒波ノ影響デ全艦行動不能!!』

 

 

「バカ者!!オ前ラノ訓練不足ダ!!直グニ体制ヲ立テナオセ!!」

 

 

『ハッ!』

 

 

 

『ミライ』は不機嫌そうに通信を切り、黙ったまま再び401の方に振り向きそのまま目を閉じた。今の光景を見て彼女は少しだけ昔を思い出していた。

 

 

 

(あれがこの時代の兵器か。似ているな・・・・霧の中から突如戦艦『大和』が出現したあの時と。思えば彼女との出会いで戦争に巻き込まれ、あのマリアナ沖海戦で私達二人は海の底に沈んだ。『ジパング』を・・・・日本の未来を掛けて。そう・・・・全ての元凶はあの男から始まった。)

 

 

 

瞼の裏に浮かぶ昔の記憶が、彼女にとっては忌まわしき物であった。

 

 

 

「何ガ見エル?」

 

 

 

『イブキ』が尋ねると、『ミライ』は怖い顔をしながら答えた。

 

 

 

「『ジパング』・・・・忌ワシキ国ダ。」

 

 

 

『ミライ』は哀しき過去を思い出しながら、群像達が逃げていくのをただ黙ってみていた。既に追っても手遅れだと判断したのだ。

 

 

その頃、大和達は401に乗艦準備に入った。401の艦首部分が魚雷発射管より上から中心を裂けるように左右に展開しながら後方にスライドし、さらに艦首部分の上部甲板とカタパルトが半分だけ上下に展開しながらスライドし、折り重なった。その中は、艦娘だけでなく、漁船と言った小型艇が入るような構造になっていた。

 

 

全ての艦娘達を収容し、残っているのは401に向かっていた群像達と彼等の合流を待っていた大和、長門、金剛の三人だった。

 

 

 

「テートク!こっちヨ!」

 

 

 

金剛の声を聞いた群像が前方を見ると、三人が401の開閉した艦首付近で待っているのを確認し、彼女達の案内で艦内に入り、開閉していた艦首が再び元の状態で閉じられた。

 

 

中は艦娘達を収容しやすいように、発進カタパルトの横に上に上がる階段が設置してある。さらにカタパルトには小型艇を固定出来るロックが付いている。だがそこから艦娘を発進させる事は出来ない。

 

 

「全員いるな!」

 

 

「はい!全て確認しました!!」

 

 

 

吹雪が返事をすると群像は漁船から降りて階段を上り、すぐ近くにあった艦内用の通信機の受話器を取りブリッジに繋いだ。

 

 

 

「ブリッジ!401急速潜行!!戦闘海域を離脱する!!」

 

 

『了解。』

 

 

 

群像の指示を聞いた僧は、直ぐに操舵担当に指示を出した。だがそれは杏兵でもなければいおりでもなかった。

 

 

 

「『イオナ』!401急速潜行!現海域から離脱します!」

 

 

「了解。急速せんこ~。」

 

 

 

『イオナ』と呼ばれる蒼い少女は、僧の言われるままに、401を潜水させた。

 

 

彼女の容姿はまるで群像が夢で見る『蒼き鋼の航海記』に出てくる少女と瓜二つであった。彼女が何故群像達と一緒にいるのかは今後明らかになって来るが、目的は未だ不明である。

 

 

そんな問題を抱えた401は『深海棲艦 』の前から姿を消すように深海の海へと潜って行った。

 

 

 

「逃ゲラレテシマッタヨウダ。」

 

 

 

『イブキ』がそう言うと『ミライ』がこんな事を呟いた。

 

 

 

「『神ノ企テカ?』『悪魔ノ意思カ?』コレガ・・・・コノ時代ノ21世紀ノ戦闘。」

 

 

「ナンダイソレハ?」

 

 

 

『イブキ』が聞くと『ミライ』はそのまま自分の過去を語り出した。

 

 

 

 

「昔アル旧日本海軍ノ将校二言ワレタ言葉ダ。ソノ男ハ私ノ戦闘ヲ見テソウ言ッタ。」

 

 

「ソレデ?」

 

 

「何レ彼ハ私ノ存在ヲ調ベルハズ。ソウサレルクライナラ自ラノ正体ト私ノイタ時代ヲ彼二明カスシカナカッタ。モチロン、口外ヤ干渉モシナイ事ヲ約束ニナ。」

 

 

「君ノ正体ヲ知ッタ彼ハ、ソノ後ドウシタノカナ?」

 

 

「見事二裏切ッテクレタヨ。奴ハ私達ノ知ラナイ日本ヲ創リダソウトシテイタ。自分ノ理想ノ日本ヲ。」

 

 

「ソレガ我ガ軍ガ進メテイル『ジパング計画』ト言ウ訳カ。」

 

 

 

『イブキ』は『ミライ』の話をある程度聞いただけで自分たちが進めている『ジパング計画』と繋がっていると推測した。更にその人物も概ね予想していた。

 

 

 

「ソシテ私達ノ提督ガ、ソノ旧日本海軍ノ人間ノ可能性ガアル訳ダネ?」

 

 

「ソウダ。提督ノ存在ヲ知ッテイルノハ、凄姫クラス以上ノ深海棲艦 ダケダカラナ。ソコハ姫様カ他ノ凄姫クラス二聞クシカナイ。」

 

 

 

話を終えた『ミライ』は今後の事についても『イブキ』に指示した。

 

 

 

「ヲ級イブキ。艦隊旗艦ノ指揮権ヲ貴艦二譲渡スル。「真珠湾(パールハーバー)」二帰投シ、『飛行場姫』様二今回ノ件ヲ報告セヨ。」

 

 

 

 

「了解シタ。『ジパング計画』二ツイテハ、コッチデモ姫様二聞イテミル事二スルヨ。」

 

 

 

『イブキ』は『ミライ』の指示を素直に受け入れたが、『ミライ』は『イブキ』の言ったことが気になったのか片方の眉を吊り上げながら彼女を疑った。

 

 

 

「ドウカシタノカイ?」

 

 

 

だが『イブキ』は彼女を揶揄うようにわざと聞いた。

 

 

 

 

「イヤ・・・・私ノ話ヲ信ジルノカ?」

 

 

「ウソヲツイテイル訳デハナイノダロウ?ソレニ君ノ話ハ興味深イ。艦娘達ノ相手ヲスルヨリカハコッチノ方ガ面白イ。」

 

 

「ワカッテルノカ?状況次第デハ私ハ艦隊ヲ裏切ルカモシレナイ。ソレニ関与スレバオ前トテ只デハ済マサレナイノダゾ。」

 

 

「別二構ワナイサ。ソレガ私ノ選択シタ未来ダカラ。」

 

 

 

 

忠告はしたが、『イブキ』は自分の件に関して首を突っ込もうとしていた。だが『イブキ』や他の深海棲艦 を巻き込みたくなかった『ミライ』の気持ちは複雑のまま話が進んだ。

 

 

 

「トコロデ君ハドウスルツモリダイ?」

 

 

「私ハ本土デ情報収集ヲ行ウ。例ノ艦娘共ノ艦隊ト、『ジパング計画』ノ事ヲ調ベル必要ガアル。」

 

 

「ソレデシタラ、私二心当タリガアリマス。」

 

 

 

すると今度は先程『ミライ』に戦況報告していた重巡リ級『ハレカゼ』が二人の話に割り込んできた。彼女は『ミライ』の話を全て聞いたのだ。

 

 

 

「『収集凄姫』様ヲ訪ネテ見テハイカガデショウカ。彼女ハ今広島ノ「宮島」二イルヨウデスヨ。」

 

 

「ハレカゼ!聞イテイタノカ!?」

 

 

「ミライ様オ 一人デ陸二上ガセル訳ニハイキマセンカラ、私モ同行サセテイタダキマス。」

 

 

「ダガオ前マデ・・・・。」

 

 

「構イマセン。ミライ様ヲ一人二サセル訳ニハイキマセンカラ。ソコハ譲レマセン。」

 

 

「『海ノ仲間ハ家族ダカラ』カ?ヤレヤレ・・・・オ前ニハ敵ワンナ。」

 

 

 

『ミライ』は諦めて、『ハレカゼ』を連れて行く事にした。彼女はとても頑固者で、一度言い出したら後には引かない性格なのだ。それにとても頼りになるので、よく連れて行く事がある。『ミライ』にとって、『ハレカゼ』は欠かせない随伴艦なのだ。

 

 

 

「重巡リ級『ハレカゼ』ハ私ト共二横須賀へ上陸スル。空母ヲ級『イブキ』ハ艦隊ヲ連レテ「真珠湾(パールハーバー)」二帰投セヨ。」

 

 

「了解。」

 

 

 

艦隊の指揮を『イブキ』に任せ、『ミライ』と『ハレカゼ』は横須賀に針路を取り、艦隊を離れた。『ミライ』が恐れていた仮説が現実になっているとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小笠原諸島付近海底

 

 

 

 

 

 

 

その頃401は、先程の戦闘海域から少し離れた海域の海底最深部に船を止め、敵に見つからないよう身を潜めていた。

 

 

 

「敵艦隊現海域から移動開始。撤退していきます。」

 

 

「戦闘終了。静、艦内放送で通達をお願いします。」

 

 

「了解しました。」

 

 

 

緊張感漂う空気が一気に抜けた。ブリッジにいた僧達は安心して一休み出来た。

 

 

 

「一次はどうなるかと思ったぜ。」

 

 

「航行システムとクラインフィールドの調整しか完了していない。内蔵武器が使えないこの状態で追撃されていたら轟沈していた。」

 

 

「ですがなんとか敵を振り切る事が出来ました。なかなかのお手並みでしたよイオナ。」

 

 

「まあ敵さんも見逃してくれたみたいだし一先ず安心だな!」

 

 

『こちら機関室。一息ついてるとこ悪いけどこれからどうするの?』

 

 

 

 

杏兵達が一息着いていると、前方の大型画面で現在の海域マップが表示されていた画面に左斜め上を少し占領しながら、いおりが映しだされた。彼女は機関室で重力子エンジンの調整・管理を行っている。報告やブリッジから指示を受ける際には映像を通じて行う。今もブリッジからの指示待ちである。

 

 

 

「しばらくは待機しましょう。後は司令官の指示待ちです。」

 

 

 

その頃群像は、吹雪と一緒に艦娘達を連れて401の格納庫に集まっていた。

 

 

 

「うまく撒いたようだな。さすがイオナだ。」

 

 

「そうですね。」

 

 

 

安心したのか群像は吹雪の方を見た。

 

 

 

「さっきはありがとう。お前が駆けつけてくれなかったら危ないとこだった。」

 

 

「信じていましたから。司令官は私達の所に絶対帰ってくるって。そんな司令官をあんなところで沈めさせたりしません。」

 

 

「そうか。」

 

 

 

群像も吹雪もこうしてお互い再会できた事に喜びを感じていた。それは二人に限らず他の者もそうだった。

 

 

 

「榛名!霧島!」

 

 

「金剛お姉様!」

 

 

 

艦娘達もまた榛名、霧島との再会を喜んでいた。

 

 

 

「二人共一年半ぶりネ!」

 

 

「霧島、大破したって聞いたけど体は大丈夫なの?」

 

 

「硫黄島の設備が良かったのでこの通り完治しました。」

 

 

「それは無事で何よりデス!!」

 

 

 

特に金剛と比叡は二人の再会に大喜びしていた。二人の姉妹が無事に帰ってきたからだ。そしてここにも二人の帰りを待っていた者がいた。

 

 

 

「ハルハル!キリキリ!」

 

 

 

蒔絵が走りながら榛名と霧島の所に駆けつけてきた。

 

 

 

「お疲れ様!」

 

 

「お嬢様もお疲れ様です。」

 

 

 

榛名は駆け寄ってきた蒔絵を抱きかかえた。すると蒔絵の周りに、大和や長門そして他の艦娘達も集まってきたが、蒔絵が最初に目にしたのは金剛と比叡だった。

 

 

 

「この人達ハルハルと同じ格好してるけど知り合い?」

 

 

「ええ、榛名と霧島のお姉様達です。」

 

 

「お嬢様、こちら金剛型一番艦の金剛お姉様です。」

 

 

 

霧島が金剛を指すと彼女は高らかに名乗った。

 

 

 

「金剛型一番艦 金剛デース!」

 

 

「同じく金剛型二番艦!比叡です!!」

 

 

 

金剛に続き比叡も蒔絵に挨拶をした。金剛の元気の良さに蒔絵はビックリしていたが、彼女も負けてはいなかった。

 

 

 

「お姉様、こちら振動弾頭開発者の刑部蒔絵お嬢様です。」

 

 

「刑部蒔絵だよ!よろしくね!!」

 

 

「よろしくネ!蒔絵!!・・・・・・蒔絵?」

 

 

「えぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

『刑部蒔絵』と聞いて全員声を上げて驚いていた。誰も振動弾頭の開発者がこんな小さな子供だと思う筈もなかったからだ。

 

 

 

 

「ちょっと摩耶本当なの!?」

 

 

「やっぱ疑うよな。こんなチンチクリンが新型兵器を作った科学者なんて!」

 

 

「何かの間違いじゃないのか?」

 

 

「いや、榛名と霧島の話じゃ彼女がそうらしい。」

 

 

 

鳥海は慌てて摩耶に聞くわ、長門は何かの間違いではないかと那智に確認するわ、みんな疑いの目を隠せなかった。

 

 

 

「しかしこ奴まだ子供じゃろ?どうも信じられんが?」

 

 

 

利根もまた蒔絵の事を疑いながら彼女に近づいた。それに気づいた彼女は利根に話し掛けた。

 

 

 

「あんた誰?」

 

 

「吾輩か?吾輩は利根である!よろしく頼むの!」

 

 

「なんか夏目漱石みたいな喋り方するね?」

 

 

「そうか?吾輩はいつもこうであるぞ!」

 

 

「ふーんそうなんだ。まあいいや!よろしくね()()()()!」

 

 

()()は一回だけじゃぁぁぁぁ!!」

 

 

 

利根のツッコミでみんなの笑い声が広まっていた。

 

 

 

「良かったですね!蒔絵ちゃん皆と仲良くできそうで!」

 

 

「そうだな。」

 

 

 

彼女達の様子を見て、群像も吹雪も安心していた。蒔絵が、榛名や霧島以外の艦娘達と親しくなれた事や彼女達の溜まりに溜まった不安が取り除かれていくのが見えていた。二人は彼女達の所へ行き、この後の指示をだした。

 

 

 

「蒔絵、榛名、霧島。全員を休憩所(リフレッシュルーム)に案内してくれ。蒔絵の自己紹介はそれからでもできるだろ。」

 

 

「うん!」

 

 

「はい!」

 

 

「了解しました!」

 

 

 

三人共嬉しそうに返事をして群像の指示を受け入れた。すると群像は指定した艦娘の名前を呼んだ。

 

 

 

「それから長門、金剛、大和、大淀、赤城、加賀は俺達と一緒にブリッジに来てくれ。先に401のクルーを紹介したい。」

 

 

「群像君?私も?」

 

 

「当たり前だろ。というか、桜が一番会いたがってたじゃないか。」

 

 

 

それを聞いて大和は嬉しそうにしていた。4年前ぶりにいおり達と再会出来る事を楽しみにしていたからだ。だが二人の会話聞いていた吹雪の様子がおかしかった。

 

 

 

「あの大和さんが桜さんって?」

 

 

「人間だと思っていた大和桜は、実は戦艦大和だった。それだけだ。」

 

 

「えぇぇぇ!!」

 

 

 

吹雪は動揺しながら群像達とブリッジに向かった。まさか死んだはずの大和桜が実は生きていて、しかもその正体が戦艦大和だった話に驚くのも無理はなかった。だが少し嬉しい気持ちもあった。今まで亡くなったと思っていた仲間と群像は再会できたのだから。こんな嬉しい結果を、僧や杏兵やいおりに報告できる。彼女はワクワクしながらブリッジに到着した。

 

 

 

「おっ!『蒼き艦隊』司令官殿のお帰りか!」

 

 

 

 

群像と吹雪だけがブリッジに入った。ブリッジに入ると、目の前の台のような物にはイオナが座っていた。左を見るとイオナの席から少し離れたところに座っているのは僧、中央の画面が配置された下の席には杏兵、更にその右を見て、空席の更に隣に静が座っていた。

 

 

 

「イオナ。やはりお前が操舵を担当する事になったか。」

 

 

「正確には操舵を含め、クラインフィールドの出力調整と杏兵といおりのサポートも行う。」

 

 

「そうか。」

 

 

 

401の操舵はイオナに決定したようだ。実は彼女、401の操舵だけでなくエンジンの起動や魚雷などの火器操作などなど、この艦の全ての機能を自分の身体のようにコントロールすることが出来るのだ。

 

 

 

「みんな聞いてくれ!先に『元霧の艦娘』たちを何人か紹介したい。」

 

 

「いよいよご対面か!」

 

 

「少し緊張しますね。」

 

 

 

杏兵と静を含め、いおりも僧も腹を括るかのように、構えていた。そんな光景を見てイオナは首を傾げ、吹雪は「皆さんそこまで緊張しなくても」と思いながら困った顔をしていた。

 

 

 

「先ず『第三次防衛戦』の連合艦隊総旗艦で俺が最初に出会った戦艦 長門だ。」

 

 

「戦艦 長門だ。よろしく頼む。」

 

 

「こちらこそよろしくお願いします。「小笠原」では司令官がお世話になりました。」

 

 

「なに、弟のように接していただけだ。気にしないでくれ。」

 

 

 

廊下で待っていた長門が姿を現し、僧が座っている辺りに来た。僧は少し緊張していたが、彼女に一礼をしていた。

 

 

 

「次に戦艦『三笠』同様、イギリスの『ヴィッカース社』で建造された戦艦 金剛だ。」

 

 

「英国生まれの帰国子女!金剛デース!よろしくお願いしマース!! 」

 

 

 

群像に呼ばれて出てきた金剛は、何故かイオナが座っいる台に割り込んで座ってきた。

 

 

 

「金剛。ここ私の席。」

 

 

「ノンノン!硬いこと言いっこ無しヨ!」

 

 

「狭い。」

 

 

 

イオナは、厚かましいくらい迷惑していた。

 

 

 

「なぁ・・・・本当にお前()()()()生まれか?()()()()生まれの間違いじゃないのか?」

 

 

「No!私は()()じゃありまセン!!()()デスッ!!」

 

 

「けどあなたのコミュニケーションの取り方は紛れもなく米国式。」

 

 

「Noooooo!!だから違うと言っているの二!!」

 

 

 

イオナと杏兵が金剛をからかってるのを見て、群像は何故か安心していた二人も艦娘と打ち解けていっていたからだ。この調子で赤城と加賀も紹介した。

 

 

 

「次に「横須賀」で俺達に力を貸してくれた第一航空戦隊所属母艦、空母 赤城。」

 

 

「赤城です。よろしくお願いします。」

 

 

「そして加賀だ。」

 

 

「加賀です。よろしくお願いします。」

 

 

 

二人は群像の左側に出てきて礼儀正しくお辞儀をした。

 

 

 

「横須賀の時はサンキューな!お前らがいなかったら俺等だけじゃどうにもできなかったぜ!」

 

 

「別に・・・・大したことはしていません。」

 

 

 

横須賀の戦闘に加勢してくれた加賀に御礼を言うも、彼女は素っ気ない態度だった。だがこれが普段の彼女の態度である。

 

 

 

「それから艦娘達の通信を担当している。軽巡洋艦 大淀だ。」

 

 

「大淀です。」

 

 

 

赤城達に続いて大淀も出てきた。

 

 

 

「大淀。大規模作戦の時は401で指揮をする事があるから、その時は君も乗船してもらう。」

 

 

「私もですか?」

 

「そうだ。席は静の隣になる。」

 

 

 

静と杏兵の間に空席と見られる席がある。そこは大規模作成時に、401での艦隊指揮を取る時、大淀も加えて群像達と作戦行動を共に遂行できるよう用意された席である。大淀はその席に向かい腰を掛けた。

 

 

 

「401のソナー担当の服部静です。」

 

 

「大淀です。よろしくお願いします。」

 

 

 

少し緊張していた大淀は、静が話し掛けてくれたお陰で気持ちが楽になり、固くなってた彼女の顔はいつの間にか笑顔になっていた。

 

 

そしていよいよ、桜こと戦艦 大和の登場である。

 

 

 

「では最後の艦娘を紹介しよう。」

 

 

「遂にお出ましか戦艦 大和!」

 

 

『なんか緊張してきた。』

 

 

 

いおりと杏兵が身構えるも、戦艦 大和はその姿を現した。

 

 

 

「おい・・・・。」

 

 

『ウソ・・・・。』

 

 

「これは・・・・。」

 

 

 

彼女の登場で三人共目を疑った。4年前に死んだはずの桜が目の前にいるのを見て、三人共小笠原の時の群像と同じ反応をしていた。

 

 

 

「紹介しよう。戦艦 大和だ。」

 

 

「大和型一番艦 大和です。よろしくお願いします。」

 

 

 

群像が大和を紹介するが三人共黙ったままだった。

 

 

 

「どうかしましたか?」

 

 

「いや・・・・わりぃ。」

 

 

『昔亡くなった友達と似てたからビックリしちゃって。』

 

 

 

それを聞いた大和はクスクスと笑い始めた。群像と同じ答が返って来たのが可笑しかったのだ。僧は不思議そうに彼女に尋ねた。

 

 

 

「どうかしましたか?」

 

 

「だって!皆群像君と同じ事言うんだもん!」

 

 

 

何故彼女がそんな事を言うのか、いおり達は訳がわからなかった。そして大和は自分の正体を明かすかのように、今までの事を話した。

 

 

 

「僧君!いおりちゃん!杏兵君!海洋技術総合学院 中等部二年 大和桜。ただいま帰投しました!!」

 

 

 

笑顔で敬礼する大和を見て、いおりと杏兵の表情が一変した。僧は何度も彼女を見返すくらい驚いていた。

 

 

 

『えっ・・・ウソ!?桜ちゃん!?』

 

 

「本当に桜なんですか!?」

 

 

「何がどうなってんだよ群像!!」

 

 

「『海洋技術総合学院 中等部二年 大和桜』その正体は『旧日本海軍の軍艦 戦艦大和』の艦娘だったんだ。」

 

 

 

 

群像は三人に彼女の事を説明した。『海洋技術総合学院』の生徒となって群像達に接触した事、『第四研究所』の爆発事故の事、その後の四年間『霧の艦隊』の総旗艦として過ごしてきた事も全て明かした。話しを聞き終えた三人だったが、昔と何も変わらず彼女に接していた。

 

 

 

「お前もいろいろ苦労してたんだな。」

 

 

「ごめんなさい。本当は皆にお別れを言うつもりだったんだけどあの事故じゃそんな暇なくて。」

 

 

「気にするなよ!お前が無事だっただけで十分だ!」

 

 

『そうだよ・・・・桜ちゃんに会えただけでもいいよ!』

 

 

「いおりちゃん・・・・ありがとう!!」

 

 

 

申し訳無さそうにする大和を杏兵は許していた。そして、モニター越しに涙ぐんでいるいおりもまた、彼女の再会を喜んでいた。

 

 

 

「ちなみに秘書艦は大和に任命する。」

 

 

 

それを聞いた杏兵といおりと静と金剛は驚いていた。

 

 

 

『えっ!?吹雪じゃないの!?』

 

 

「桜が秘書艦なのか?」

 

 

「てっきり吹雪を秘書艦にするのかと思いました。」

 

 

「無理ですよ!私に秘書艦なんてそんな大役出来ません!!」

 

 

「て言うか!何で私が秘書艦じゃないんデスカァァァァ!!」

 

 

 

 

吹雪はいやいや秘書艦を辞退した。それにはある理由があった。長門も今の吹雪に秘書艦をやらせるのは無理だと判断しその理由を説明した。

 

 

 

「『旧白き鋼』にいた頃の吹雪は、艦娘同士の艦隊戦を知らないし、ましてや練度も足りていない。だが大和は『旧霧の艦隊』にいた頃に私が指導していたから、このまま『蒼き艦隊』で続けようと考えている。」

 

 

「そう言う事だ。」

 

 

「ネェ~!テートク!なんで私はダメなんデスカァ!!」

 

 

 

群像の隣で泣きつく金剛の姿があったが、長門がはっきり答えた。

 

 

 

「お前が秘書艦だったら仕事にならないだろ!」

 

 

 

長門の言うとおり皆頭の中で、群像にベッタリくっついている金剛の姿しか思い浮かばないのも明白なので秘書艦に選出されなかったのも無理はないのだ。

 

 

 

「さて、次は『旧白き鋼』のメンバーを紹介しよう。」

 

 

 

群像は次に『旧白き鋼』のクルーを紹介をするが、艦娘達はイオナ以外のメンバーとは顔馴染みだったので省略した。

 

 

 

「まず副司令官並びに401の副長を担当する織村僧。」

 

 

「よろしくお願いします。」

 

 

「それから火器管制担当の加藤杏兵。」

 

 

「よろしくな!」

 

 

「ソナー担当の服部静。」

 

 

「よろしくお願いします。」

 

 

「それと彼女はエンジンルームにいるため画面越しだが、重力子エンジンの調整・管理を担当している君塚いおりだ。」

 

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

 

「そして最後に401の中枢コンピュータイ-401ことイオナだ。」

 

 

 

だがイオナの紹介に長門達は彼女の存在に疑問を抱いていた。

 

 

 

「提督。彼女は人間ではないのか?」

 

 

「詳しい事は俺も彼女自身もわからないが、イオナは『メンタルモデル』と呼ばれる艦娘らしいんだ。」

 

 

 

群像が言うに、『メンタルモデル』とは銀砂で作った人型の個体で、主に人間と接触するために構成された仮の体である。彼女達の存在について殆どが不明であるが、わかっていることは、彼女達の本当の(からだ)は旧日本海軍の軍艦、即ち艦娘達の前の(からだ)をモデルに造られた軍艦だと言う事と、もう一つはイオナが受けていた命令である。

 

 

 

「『海原群像に会い従う。』それが私の中にあったただ一つの命令。」

 

 

「誰に命令されたか覚えてないの?」

 

 

「わからない・・・・私が起動した時のデータがそれしか確認されていない。」

 

 

 

大和が聞いてみると、彼女の記憶していたのがそれだけしか確認されていない。話を聞けば聞くほど彼女の謎は深まるだけだった。

 

 

 

「何ともmystery(ミステリー)な艦娘ネ。」

 

 

 

謎が多すぎるイオナについて、金剛はお手上げな感じで両手を上げて首を横に振っていた。

 

 

 

「以上で各自の自己紹介は終わりです。司令、この後はいかがしましょう。」

 

 

「そりゃ硫黄島に帰るだろ?帰ったら艦娘達に宿舎を案内しないといけないしな。」

 

 

 

僧や杏兵を含め、誰もが硫黄島の帰投と思っていた。

 

 

 

「硫黄島に帰る前に少し寄り道するぞ。」

 

 

「寄り道ですか?一体何処に?」

 

 

 

だが群像は別の目的地を指した。

 

 

 

「横須賀基地だ。」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 

何故か横須賀を指名し、しかもよりによって海軍基地を指名した。自分達の立場から考えて杏兵達は驚いていた。

 

 

 

「司令?今の我々の現状を理解してないわけないですよね?」

 

 

「勿論わかった上での決断だ。」

 

 

 

横須賀に向かおうにも、既に『白き鋼』は解散し、『蒼き艦隊』として動いている。さらに『霧の艦隊』の艦娘達に加え、401の導入により組織の殆どが変わってしまったため、横須賀基地がその事実を受け入れる筈もないのだ。今横須賀に行けば政府に反逆した『霧の艦隊』と『白き鋼』が同盟を組み攻め込んで来ると向こうの解釈はしか浮かび上がらないので徹底交戦される危険性もあるのだ。それを承知の上で群像は横須賀に向かうつもりでいる。彼には策があったからだ。その前に大和や長門に『振動弾頭』について質問した。

 

 

 

「大和。『振動弾頭』について前任の提督はどう思っていた。」

 

 

「良く思ってはいませんでした。今後の事を考えると、あれは余りにも危険な兵器だから。」

 

 

「だから前提督は『振動弾頭』の輸送ブロジェクトを妨害するためにあなた方『旧白き鋼』を名古屋沖や横須賀で進行を妨げたのだ。」

 

 

「やはり親父も北代議士と同じ考えだったか。」

 

 

「だが提督の考えはそうではないのだろ?」

 

 

 

 

長門にそう問いかけられ、群像は自分の考えてる事を打ち明けた。

 

 

 

「『振動弾頭』は、人類が再び深海棲艦 に立ち向かう希望で、世界に風穴を開ける抑止力になると思っていた。だが北代議士の話を聞いてから、今後の事を考えると俺だけで判断するのは難しい。やはりここは開発者の意見も聞くしかない。」

 

 

 

人類の未来が掛かった大事な決断を自分一人で決める訳には行かない。そこで群像は『振動弾頭』の開発者である蒔絵の意見も取り入れる事にした。最良の選択を少しでも増やすために。

 

 

 

「静。休憩所(リフレッシュルーム)に繋いでくれ。蒔絵と話がしたい。」

 

 

「わかりました。」

 

 

 

いおりが映しだされている画面のサイズが少し縮小し、別の画面が映しだされた。そこには、榛名に抱っこされている蒔絵の姿や彼女と話している夕立と時雨、そして他の艦娘達の声も聞こえた。

 

 

 

『あっ!司令官だ!!』

 

 

「蒔絵。少し話がしたい。」

 

 

 

群像は正直気乗りはしなかった。こんな小さな女の子に人類の未来を判断させることをしたくなかった。それでも群像は躊躇いながらも彼女に問いかけた。

 

 

 

「君の造った『振動弾頭』が深海棲艦 に対抗できる唯一の兵器。それは自覚しているな?」

 

 

『うん!』

 

 

「なら深海棲艦 がいなくなったら『振動弾頭』はどうなると思う?」

 

 

『もう使わないから処分するとか?』

 

 

「誰もがそう出来るといいけどな。」

 

 

 

子供である蒔絵には群像が何を言っているのか理解できなかった。だがこれだけは理解できた。

 

 

 

「人を殺す兵器として使われる可能性が出てきた。」

 

 

『えっ・・・・。』

 

 

 

群像の一言で、テロや戦争で自分の開発した兵器が多くの命を奪う事を理解した蒔絵はショックを受けていた。だが群像は話を進めた。

 

 

 

「『振動弾頭』をアメリカに届ける任務だが、今後の事を考えると俺一人じゃ決められない。蒔絵の答え次第で今後の『蒼き艦隊』の方針が決まる。」

 

 

『お言葉ですが司令!』

 

 

 

話を聞いていた霧島が、群像に意見するような態度で二人の話に割り込んできた。蒔絵の不安そうな顔を見て我慢できずにいたのだ。そして彼女は群像の話を理解していた。

 

 

 

『司令はお嬢様がその対策方法をご存知だと仰るのですか!』

 

 

 

霧島の言う通り、群像は『振動弾頭』に何か細工出来ないかと考え、蒔絵に相談したのだ。

 

 

 

「蒔絵。『振動弾頭』を起爆せず、使用不能にする事は可能か?」

 

 

『出来るよ!』

 

 

「わかった。現在『振動弾頭』は調整に5日も時間を有しているが、君ならどれくらいで終わる。」

 

 

『二時間あれば出来る! 』

 

 

「そうか。ならその後の細工は硫黄島の設備でも出来るな。」

 

 

『大丈夫!硫黄島の設備なら作業出来るよ!』

 

 

「そうか・・・・なら決まりだ。」

 

 

 

 

 

蒔絵との話も決まり、『振動弾頭』の悪用化の対策も練られた。それを見計らって陸奥が画面から顔を覗かせながら尋ねた。

 

 

『方針は決まったかしら?』

 

 

「ああ。」

 

 

 

群像は、今後の作戦行動について全員に発表した。

 

 

 

「これより本艦は『振動弾頭』受け渡しのため横須賀に入港する。そこで『蒼き艦隊』の次なる任務を行う。」

 

 

「任務?」

 

 

 

大和が聞くと、作戦名が発表された。

 

 

 

「『観艦式』を行う。だがただの『観艦式』じゃない。君達連合艦隊の帰還と『旧白き鋼』の存在のアピールだ。目的は横須賀海軍基地にこちらへの敵意を示さない事、各自心して掛かってくれ。」

 

 

「『了解!!』」

 

 

「イオナ。401発進。」

 

 

「了解。進路を横須賀に設定。」

 

 

「人類の希望とやらを受け取りに行くぞ。」

 

 

 

 

艦娘達と401のクルーは声を揃えて返事をした。そして401は横須賀に向けて出港した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神奈川県横須賀市「浦賀水道」

 

 

 

 

 

 

大昔の日本海軍が使用していたドッグがある浦賀水道は、防護壁の門の開閉が見れる絶好のスポットだが、観光客は入って来ていない。そんな寂しい町に16歳位のヤンチャな少年が、突然海を見て歩道で立ち止まった。

 

 

 

 

「スゲェー門が開いてる!」

 

 

 

 

 

普段開く筈がない門が開いていたからだ。 そこから潜水艦らしき物が入ってきた。

 

 

 

 

「おい坊主!こんな道の真ん中にいたら邪魔だろ!!」

 

 

「爺さん!門が開いてるんだよ!!しかも潜水艦!伊400が入ってきてるんだよ!!」

 

 

 

自転車に乗ってきた80代くらいの老人が少年に注意したが、少年ははしゃぎながら潜水艦が来た事を伝えた。ちなみにこの二人今出会ったばかりの赤の他人である。

 

 

 

「てかなんだその400って?なんかの番号か?」

 

 

「違う!大昔の旧日本海軍が造った幻の潜水艦!!そんな歳で知らないの!?」

 

 

「ワシゆとり世代の爺だから何にも知らん!!」

 

 

「あっそう!!けどあの潜水艦なんか変なんだ。」

 

 

「何がだ?」

 

 

「いやあの400型青いんだ。普通ならネズミ色何だけど。しかも変形して人みたいなのが出てきてるし。」

 

 

「は?」

 

 

 

少年の言ってる事が、ますますわからなくなった老人は少年の横に並んで海を眺めた。

 

 

 

 

「ありゃ艦娘だ!!」

 

 

「かんむす?何の具が入ったおむすび?」

 

 

「坊主!その歳で艦娘も知らねーのかぁ!!」

 

 

「知るわけねーだろぉ!!何だよ艦娘って!?」

 

 

「艦娘ってのは・・・・ワシら人間の希望じゃ。」

 

 

 

彼等が見たのは、群像司令官率いる『蒼き艦隊』存在だった。しかも既に『観艦式』は始まっており、横縦陣で横前列から戦艦、正規空母、重巡洋艦、軽空母、軽巡洋艦、一列六隻で駆逐艦の艦艇群、その後方に401が並んで航行していた。更に401の甲板上に海原群像と特型駆逐艦 吹雪の姿があった。

 

 

 

「あの司令官。やっぱり私も出撃した方が良かったんじゃ?」

 

 

「それは困る。上陰次官補や松永中将に俺達二人が『旧白き鋼』だと言うことを認識させる必要がある。しばらく俺の傍にいてくれ。」

 

 

「はいっ!」

 

 

 

この『観艦式』が後に横須賀の・・・・いや日本全土に『蒼き艦隊』の名が知れ渡るきっかけになるとは群像も気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三笠公園」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえお母さん!あれ何!」

 

 

「あら艦娘ね!」

 

 

「カンムス?」

 

 

「海の平和を護ってくれるお姉さん達よ!」

 

 

 

「三笠記念館」から『蒼き艦隊』を眺める親子の姿があった。蘇る懐かしい日々と初めて見る光景に感銘を受けていた。

 

 

 

「お客様。当国は間もなく防護壁が解体され、平和な海が訪れるでしょう。」

 

 

「それは・・・・どういうことでしょうか?」

 

 

「希望の光が現れたからです。」

 

 

 

記念館のガイドが何故そんな事を言うのか親子にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海洋技術総合学院」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海洋技術総合学院でも、実習を受けているクラス以外は自習で、指導教官全員が『蒼き艦隊』の存在に対策会議を行っていた。だが生徒達は気になるのか、自習するつもりもなく、教室の窓に群がっていた。

 

 

 

 

「ちょっとあなた達何してるの!!教官から大人しく自習しろと命令あったでしょ!!」

 

 

 

赤色のポニーテールに紫のリボンをした少女が突然怒鳴りながら教室に入った。彼女は学生長でもあるため、クラス全員をまとめる、義務と責任があるのだ。だが今回の『蒼き艦隊』の騒動で全員を宥めるのは難しそうだった。

 

 

 

 

「セイラ!」

 

 

 

慌てて茶髪のロングヘアーの少女と、青いサイドテールで水色のシュシュを付けた少女は、慌てて振り向いた。

 

 

 

「蘭にあおいまで何やってるの!」

 

 

「ごめん。でもやっぱり気になっちゃって。」

 

 

「あの艦娘が12年ぶりに帰ってきたんだからな!」

 

 

 

 

その話を聞いて、セイラと呼ばれる少女も注意しておきながら窓の外を見た。彼女はある艦娘を探し見つけた。

 

 

 

 

 

「戦艦・・・・長門。」

 

 

 

 

少女は彼女に何の思いれがあるのか、彼女と長門との関係は何れ二人の口から明らかになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「横須賀基地 地下ドッグ入口前」

 

 

 

 

 

 

 

『司令官。上陰次官補より入電。海原群像、海原翔像、特型駆逐艦 吹雪、戦艦 長門の面会を所望しています。』

 

 

「海原翔像とは同行にあらず。代わりに戦艦 大和の同席を望むと返信してくれ。」

 

 

『了解しました。』

 

 

 

群像はインカムから静との通信を切った。そして401は地下ドッグの入口に入港した。固定アームで401をロックし、海水が排水され、そのままエスカレーターで地下まで降りた。『第三次防衛戦』後、深海棲艦 からの攻撃から身を守るため、生き残った艦艇をこの地下ドッグに集結させているのだ。ドッグに入った401に折りたたみ式になっていた橋が架けられた。そこから群像、吹雪、長門、大和が渡ってきた。そして橋を渡りきった彼らの前に現れたのは上陰だった。

 

 

 

 

「随分と派手なパレードだったが、あれでは「狙ってくれ」と言っているようなものだ。」

 

 

「お気に召したでしょうか。」

 

 

「いい迷惑だ。お陰で一から手続きをしなければならない。」

 

 

「まあそう言うな。こちらもいろいろとあったんだ。仕方ないと思ってくれ。」

 

 

 

群像と上陰の話に長門が割り込んできた。だが何故か上陰は長門を見て敬礼をしたのだ。

 

 

 

「久方ぶりです戦艦長門殿。12年ぶりの帰投でしょうか。」

 

 

「そうだな。お前は変わらないな上陰二等海兵。いや今は次官補だったか?」

 

 

「恐れながら既に次官への昇進が決まりました。明日からそちらの席に身を寄せるつもりです。」

 

 

「まだ出世するのかお前は。」

 

 

「あなた方が此処を発って12年、私もただ手をこまねいていた訳ではありませんよ。」

 

 

 

二人はかつて松永中将旗下に所属していて、上陰は松永の部下として、長門はかつて松永指揮下の艦娘として共に戦っていたのだ。だがそれは長門に限らず、『蒼き艦隊』の殆どは松永中将に所属していた艦娘達なのだ。

 

 

 

「君が戦艦 大和かね。」

 

 

 

大和の姿を確認した上陰が彼女に問いかけると大和もそれに答えた。

 

 

 

 

「お初にお目にかかります上陰次官補。大和型一番艦大和です。」

 

 

「軍務省次官補の上陰龍次郎だ。戦艦大和。いや・・・・ここでは『大和桜』と呼んだほうがいいかな。」

 

 

 

群像達の表情が一変した。大和が桜と言う偽名を使っていた事を知っているのは『蒼き艦隊』にしか知らない情報だからだ。何故上陰がその事を知っているのか。それは彼の口から語られた。

 

 

 

 

「『第四研究所爆破事件』は、当時私も担当していてね、その時に地下施設を発見した。そこは開発された艦娘の装備品の保管庫の形跡があった。そこで戦艦 大和の艤装らしき物が置かれていたのも確認している。行方不明だった大和桜と何らかの関係があるのではないのかと君の経歴を調べてみた結果、『海洋技術総合学院 中等部』入学以前の記録が偽造という事がわかった。そこから大和桜が戦艦大和の艦娘だという疑惑が持ち上がったのだよ。」

 

 

 

群像は上陰がこれ程の情報収集能力があった事を恐れた。味方にすれば頼もしいが、敵に回せば危険な人物だと言う事を再認識させられ、今後彼の扱いには十分に注意が必要だと考えていた。

 

 

 

「Hey!リュウジロー!!12年ぶりネ!!」

 

 

 

緊迫していた空気を壊すかのように金剛が何故か降りてきていた。蒔絵の『振動弾頭』の調整に、彼女の護衛役として金剛型全艦が抜擢されたのだ。

 

 

 

「あの人は相変わらずのようだ。」

 

 

 

だがその後が問題だった。

 

 

 

「あれ?龍ちゃん!」

 

 

「お久しぶりですね!龍ちゃん!」

 

 

 

後から降りてきた比叡と榛名は、何故か上陰を可愛らしいアダ名で呼んでいた。

 

 

 

「お二方・・・・その呼び方はやめてもらえますか。」

 

 

「え?なに?嬉しくないの?」

 

 

「その呼び方が無ければ心から喜んでいましたよ。」

 

 

「そう言わないで下さい。比叡お姉様も榛名も、貴方と再会出来て嬉しいのよ。」

 

 

 

更に霧島が蒔絵と一緒に合流した。上陰は金剛型四姉妹のテンションに付いて行けず苦悩していた。

 

 

 

「それにしてもお久しぶりですね、上陰()()()。」

 

 

「今は()()()ですよ()()()()さん。」

 

 

「あら?あなた何故私の偽名をご存知で?」

 

 

「当時、刑部藤十郎博士からあなた方が刑部邸に使用人として入り込んだと連絡がありまして、一様害は無いと報告しました。」

 

 

「なるほど、それで今まで詮索されなかったと言う訳ですか。」

 

 

 

霧島が納得したとこで、金剛達は蒔絵を連れて研究所に向かった。

 

 

 

 

「じゃあ提督!行ってくるネ!」

 

 

「ああ。蒔絵の事頼んだぞ。」

 

 

 

金剛達が行った後、群像達は上陰の案内である所へ連れて行かれた。それは、松永達がいる『第二提督室』だった。

 

 

 

「それと海原群像君。ある御方が君と話がしたいそうだ。」

 

 

「俺に・・・・ですか。」

 

 

 

 

提督室のドアが開き中に入ると、そこには松永中将、北代議士とある人物であった。

 

 

 

『初めまして海原群像司令長官。』

 

 

「中央管理区首相・・・楓信義!」

 

 

 

中央管理区首相が、わざわざ自分たちの為に会いに来るとは群像達も思っても見なかったのだ。だが楓を含め彼等は『蒼き艦隊』の戦いを上陰を通じてその一部を観ていた。その時楓は、政治に邪魔な存在だった群像に興味が湧いていた。

 

 

 

 

「ご苦労だったな群像。それに長門、よく帰ってきたな。」

 

 

「松永中将もご無事で何よりでした。」

 

 

 

松永も長門もお互いの無事に安心したのかほっとしたような顔をしていた。だがそれに水をさすように、楓は群像に翔像について訪ねた。

 

 

 

『ところで海原群像君。海原翔像はいっしょではないのかい。』

 

 

 

彼の名前が出たとたん、群像達の表情はまた暗くなった。異変に気づいた吹雪も不安そうにしていたが、彼女や401クルー、蒔絵に榛名、霧島には、まだ父島で起こった出来事を話していないので知らないのも無理ないのだ。吹雪は不安そうに群像を見ていたが、彼の口が開いた。

 

 

 

 

「海原翔像は、3日前に小笠原で病死しました。」

 

 

 

群像は小笠原での出来事を全て語った。勿論、翔像から渡された手紙の内容も最後の記述を除いて全てが語られた。だが北も松永も、そして楓も、後悔と無念だけが残るだけだった。翔像がこれまでやってきた12年は全て無駄だったと悟ってしまったのだ。

 

 

 

「何かあるのは気づいていたが、まさかそんな大規模作戦をやろうとしてたとは。」

 

 

 

 

松永は翔像の奇妙な行動に気付いてはいたがそれを詮索するつもりはなかった。だが調べるべきだったと今になって後悔していた。その話を初めて聞いた長門や大和は、当然不服そうに北を睨みつけていた

 

 

そんな時、楓がこんな事を聞いてきた。

 

 

 

 

『海原群像君。これから君達は何処へ向かう。何をするつもりだ。』

 

 

「もちろん、振動弾頭の輸送任務を継続します。ですがその前にある島を奪還します。」

 

 

『ある島だと?』

 

 

「父や北代議士が成し遂げられなかった『ハワイ島』です。」

 

 

 

二人共驚いていた。何故敵地である島をわざわざ目指すのか、その理由が群像から語られた。

 

 

 

「振動弾頭の輸送先はアメリカ 「サンディエゴ港」。その輸送ルートには「ミッドウェー海域」や「ハワイ諸島」を通過しなくてはなりません。勿論、そこは深海棲艦 の主力基地です。俺達『蒼き艦隊』はまずこの主力基地を叩き、南方海域を開放。そのまま「サンディエゴ港」に向かいます。」

 

 

『君の行き先に活路は見いだせるのかい。』

 

 

「俺達の航路は、俺達が切り拓く。」

 

 

 

そう言って彼等の話は終わった。その後『振動弾頭』の調整と積み込み作業が完了し、401は横須賀を出港した。

 

 

 

「本艦はこれより『蒼き艦隊』の本拠地「硫黄島」へ向かう。」

 

 

 

群像は横須賀に来て、月日が経ったように感じ、「小笠原」での出来事がすごく長く感じた。だが、これは『蒼き艦隊』の長い戦いの始まりに過ぎない。それは『蒼き鋼の航海記』の終わりを意味し、新たな航海記の始まりの予兆でもあった。それを知らずに群像はホッとしたのか、そのまま眠りについてしまった。

 

 

 

 




何故か『ジパング』『空母いぶき』『ハイスクールフリート』の内容や設定まで入れちゃいました。しかも『みらい』『いぶき』『晴風』が深海棲艦 で登場、彼女達の今後の活躍も目が離せません。


次回の話で『蒼き鋼の航海記』は終わり、新章に突入します。なるべく投稿期間を早めるようにしたいと思います。
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