黒と蒼の機竜使い   作:無勝の最弱

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決着の回です。


そして、ついにあのひと登場!!!!!!


Episode4 決着と乱入者

「ルクスさん…」

 

リーズシャルテの猛攻を目にしてノクトはつぶやいた。

 

「あっちゃー。もう無理だよー!止めさせないと!」

「まさか、こんな戦いになってしまうとはな――」

 

呟くノクトの隣で慌てているのはティルファー、そして力のない声を出しているのはシャリスである。彼女らは学年こそ一つずつ違うが学園では三和音(トライアド)と呼ばれる幼馴染の三人組だ。

 

彼女たちは目の前の光景を見て後悔していた。

今思えば、あの騒ぎを大きくしてしまったのは自分たちだと。

もちろん装甲機竜(ドラグライド)を使ってしまったために施設を壊してしまって、『やり過ぎ』ということで始末書を書かされた。

 

「すまない、ルクス君…」

 

このまま試合が続けば、どう考えてもルクスは負ける。なにせあのリーズシャルテが全力を出しているのだ。

それに《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》はすでに溜めを完了しいつでも打てるような状態になっている。あんなものの直撃を受ければ、いかに防御特化に改造した汎用機竜でもひとたまりもない。十中八九ルクスの命にかかわる。

 

「あなたが気に病む必要はないですよ、シャリス先輩。あの一件は兄さんの自業自得ですから。まったく、兄さんはほんとにお人好しで単純バカなんですから。そのせいでいつも余計な事件(トラブル)に巻き込まれるんですよ。」

 

不意に隣にいたルクスの妹アイリがシャリスに声をかけ、淡々とそう告げた。

するとシャリスは苦笑を浮かべた。

 

「意外と面白い子だな、君は…」

「でも、どうしようもない兄さんにも、一つだけ、私も認めるいいところがあるんですよ」

「ほう、それは―――」

 

アイリの言に興味深そうな顔を浮かべる三和音(トライアド)の少女たち。

その顔を見てアイリはまるで自慢するかのようにリングを指さし告げた。そのとき、大きなどよめきが起こった―――

 

「一度決めたことは、必ずやり遂げて見せることです」

 

 

「く……!」

 

リーズシャルテの顔には焦燥がはっきり浮かんでいた。

無理もない、計十六基の《空挺要塞(レギオン)》からなる一斉攻撃をルクスは――

 

すべて紙一重でかわしている。

 

一方的に攻撃を仕掛けながらもその攻撃を機竜の基本武装である、ブレード(半壊状態)、ブレスガン、ダガ―、ワイヤーテイルを巧みに使い分け防いでいる。

もちろん攻撃が全く当たっていないわけではないが、倒しきるイメージが浮かばない。

 

(これが、『最弱の無敗』たるゆえんか!)

 

リーズシャルテが本気を出して五分――いや、もう五分だ。模擬戦の時間はあと三分。

神装機竜の本気を汎用機竜で受ければ数十秒も持たないのが通常であるが、ルクスはそれを五分以上持っているのである。

神装機竜はその性能故に使用者の負担が大きい。リーズシャルテは感じていた、自分の体力は三分持たずに尽きることを、ルクスはそれでも残っているということも。

そしてそんな思考の隙をルクスは見逃さない。

ルクスが投げたダガーがリーズシャルテの目の前に迫っていた。

回避は――間に合わない!

 

「舐めるな!」

「……!?」

 

だが、リーズシャルテが機攻殻剣(ソード・デバイス)を振るい、眼前を指すと、ダガ―は見えない力で弾かれたように、地面に落ちた。

 

「いいだろう、『無敗の最弱』!お前の腕に敬意を表し、《ティアマト》の神装を拝ませてやる!」

(神装だって!?)

 

神装は神装機竜だけに秘められた特殊能力のことだ。

 

「神の名の下にひれ伏せ!《天声(スプレッシャー)》!」

 

次の瞬間ルクスは《ワイバーン》ごと地面に落とされた。地面に触れた足の装甲が地面に沈んだことからルクスは《天声(スプレッシャー)》の正体を看破した。

天声(スプレッシャー)》は重力を操る能力のようだ。事実今ルクスは動けない。

だが、いつの間にかルクスの周りは《空艇要塞(レギオン)》が旋回し、逃げ場をふさいでいた。

まぎれもない、詰みだ。

 

「終わりだ、没落王子!」

 

七つの竜頭(セブンスヘッズ)》がルクスを照準に収めていた。

 

(神装まで使ってくるなんて!僕もやるしかない!)

 

ルクスがある覚悟を決めた瞬間―――

 

「ぐッ……!」

 

リーズシャルテが苦悶の声を漏らす。

それを見て、気づいた。今ルクスは動ける。つまり神装《天声(スプレッシャー)》が解除されている。その事実にルクスは背筋が冷えた。

 

装甲機竜(ドラグライド)の操作方法は、自分の手足と力加減を使う肉体操作、機攻殻剣(ソード・デバイス)を経由した思念操作の大きく二つ。二つを使い分けて、通常は操作する。

しかし、使い手の極度の疲労と負担により、そのリズムが崩れると機竜が想定外の行動――暴走が始まる。

神装機竜において一番危険なのは、この暴走だ。

 

決着を急がないとまずいと判断したルクスは推進力を最大にして、飛翔した。

 

「こんなことで…私が負けるかぁぁ!」

 

リーズシャルテはすかさず機攻殻剣(ソード・デバイス)を振った。ルクスの周囲にいた《空挺要塞(レギオン)》は次々落ちていき、ほかの武装に分散させた意識と力を切断し、主砲《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》に全エネルギーを向けるが、一足遅かった。

 

「はぁッ!」

 

ルクスの鋭い斬撃が入る。間違いなくルクスの勝利である。

 

「そこまで!ルクス・アーカディアの勝ち!」

審判役の教官の声を聴いた観客席から大きな歓声が沸いた。

しかし、起きてはならないことが起きた。

 

ギィイイイイイエエエエェエェアァァァアエ!

 

人ならざる闖入者の叫びがこだました。

 

 

遺跡(ルイン)から出てくるのは装甲機竜(ドラグライド)といった兵器だけではない。凶暴な怪物幻神獣(アビス)である。幻神獣(アビス)は出現率こそ低いものの遺跡(ルイン)から出てきては暴れまわり多大な被害をもたらす。さらにその戦闘力は基本機竜使い(ドラグナイト)の数倍。そのため遺跡(ルイン)の近くには砦が築かれ、幻神獣(アビス)が出てくれば連絡が入るようになっている。

 

ここ城塞都市(クロスフィード)も、王都と遺跡(ルイン)の間にあり。防衛拠点でもある。

しかし、幻神獣(アビス)の連絡などなかった。

 

「クッ…!」

 

女教官のライグリィは焦っていた。

彼女自身経験豊富な軍人であるが、観客席のように人が密集している場所で装甲機竜(ドラグライド)を出すのにも時間がかかるのは目に見えている。それにここはあくまで養成する場所。実戦を経験している生徒は少ない。事実、生徒は混乱し、誰も動けていない。

下手に攻撃しようものなら、生徒たちに危険が及ぶ。

 

ギィイイイイイエエエエェエェアァァァアエ!

幻神獣(アビス)が吠える。翼人のフォルムを持つ機械型の幻神獣(アビス)ガーゴイルは翼を広げ、羽根型の光弾をばらまく。ねらいは眼下―観客席。

教官と生徒たちが息をのんだ。

 

刹那、幻神獣(アビス)に切りかかる機体があった。

勝利の宣言を中空で聞いていたルクスである。

加速しガーゴイルに肉薄するルクス、そしてばらまかれた光弾に―――

 

機竜咆哮(ハウリングロア)!」

 

機竜咆哮(ハウリングロア)幻創機核(フォース・コア)で発生させた衝撃波で敵の投擲攻撃を弾く、機竜使い(ドラグナイト)の基本技術。

機竜咆哮(ハウリングロア)で弾かれた光弾は演習場外に降り注ぐ。

 

しかしルクスは気づいていた《ワイバーン》では幻神獣(アビス)を撃破できないことに。

そんな時、竜声(機竜同士を介した通信機能)が届いた。

 

『どうするのかしら?あなたの機体では撃破は難しいでしょう?』

『そうですね、せめて教官が救援に来るまでは時間を稼げればいいですけど、模擬戦のダメージからして難しいです。』

『そうね、王女様も今は動けないし、私が出るわ。私の機体なら撃破できるわ』

 

声の主はわからなかったが、気にしている暇はルクスにはなかった。だが、直感的に味方だと感じた。

 

『だけど、私も観客席に近いところにいるから攻撃するわけにもいかない――』

『わかりました、僕が隙を作ります。攻撃のタイミングは、僕が剣を振りかぶった直後です。』

『了解よ。』

 

竜声を切り、幻神獣(アビス)に迫るルクス。

 

 

 

「やれやれ、候補生らしく突発的な騒動(トラブル)に弱いですね。」

アイリが混乱する生徒たちを鎮めながら帯剣している生徒に指示を出す教官たちを見ながら、ため息をつく。

 

「Yes, ですが、無理もないかと。幻神獣(アビス)一体と汎用機竜で戦闘する場合、上級階級(ハイクラス)の使い手三名、中級(ミドル)なら七人、低級(ロウ)なら十数名以上で以て、撤退か拠点防衛が可能といわれていますが、不意を突かれたこの状況では――」

「確かにね。動揺し、恐怖している兵士は使い物にならないのさ、私の父が言ってたよ。」

「それより、ルクス君大丈夫かな。」

「『無敗の最弱』…。いかに防御に優れているとはいえ、幻神獣(アビス)相手では無理だ。早くほかの教官が救援に来なければ――」

「敵はどうやら一体だけのようですね。」

 

三和音(トライアド)の三人が緊張を帯びた声で話す中、一人落ち着いた声を出すアイリ。

 

「なら、負けませんよ。兄さんなら――」

 

その声には自信が満ちていた。

 

 

 

「ギィエアアァァァァアア!」

ガーゴイルは叫びをあげながらルクスに両腕の爪で猛攻をかける。

しかしルクスもブレードで一つ一つ完璧に防いでいるが、衝撃までは防ぎきれない。回避も最小しかできない、大きな距離を開ければ攻撃の対象を観客席に向けられるかもしれないからだ。

 

しかし、ここでルクスの本質とも呼べる能力が、不意に均衡を打ち破る。

突き出された合金の爪を弾き、その一瞬の隙に完璧なタイミングで、その胸にブレードを突き立てた。――ここに、ルクスのシナリオは完成した。

 

「ギッ…!」

 

今まで防戦一方であったルクスの反撃にガーゴイルが表情を変えた。

 

「…ギイィイィイイ!」

 

ガーゴイルはルクスを強敵と認めたのか唸るような咆哮を上げる。

警戒するルクスだが――――

 

『ルクス・アーカディア!増援が来た!包囲の準備をしてる!もう少し待ってくれ』

 

ライグリィ教官の竜声に一瞬気をそらす。その隙をガーゴイルは見逃さない。

ガーゴイル種は幻神獣(アビス)の中でも高い知能を持つ。

故に……ルクスが観客席をかばいながら戦っていることに気づいた。

 

ガーゴイルが翼を広げ光弾の発射体制に移る。狙いは観客席。

ルクスがさせないと剣を振りかぶる。が――

 

ガーゴイルは体をルクスに向けた。

 

「……ッ!」

 

大ぶりの一撃を回避され、完全な隙をさらしたルクスに合金の爪の一撃が入る。

機竜のシステムがダウンし、ルクスは自由落下を始める。

だが、その瞬間―――

 

「防御の堅い相手が隙をさらしたら、全力を出してでも一撃で仕留めようとするのは当然よね?」

 

銃声が響く、最初に四発の銃声、一拍遅れて一発の計五回。

 

「ギッ……!?」

 

四発の銃撃はガーゴイルに命中し、その体を凍らせる。

そして一拍遅れてやってきた銃撃が凍った体を打ち砕く。

 

(なんとか、守れたかな…)

ルクスはその光景を見てから意識を手放した。

最後に―――

 

「馬鹿ね、小さな王子様」

 

自由落下していたルクスを受け止めた少女のつぶやきをルクスが聞き取れたかは知らないが―――

 




さあ、ついにクルルシファーさん登場です!

オリ展開に持っていったのですが、不自然だったかも…


次回は設定集です。
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