黒と蒼の機竜使い   作:無勝の最弱

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初の連続投稿!

今回はタイトルの通り、ルクス君のターン!


では、どうぞ!


Episode8 黒き英雄

 

クルルシファーの話によると――

 

リーシャたち『騎士団(シヴァレス)』メンバーは大型幻神獣(アビス)との戦闘に入るが、突如として大型幻神獣(アビス)が自爆して大きな被害を受けた。そこに砦の警備部隊長であろう男が現れたが、警備部隊長は突然リーシャを砲撃し、不意を突かれたリーシャが落とされた。その男は強化型飛翔機竜《エクス・ワイバーン》を纏っており、その機体には旧帝国の紋章。

そして、男が小さな黄金の笛を手に取り、笛を吹くと、およそ三十体の幻神獣(アビス)、ガーゴイルが現れた。リーシャは神装機竜《ティアマト》を装着、戦える者たちとともに交戦に入ったとのこと。

 

 

戦況は絶望的だった。

その後ノクトが帰還し、クルルシファーの情報が真実であり、男はアーカディア帝国近衛騎士団長、ベルベット・バルトと名乗ったとのこと。

 

 

(行かないと…)

 

「どこへ行く気ですか、兄さん?」

 

ルクスがある覚悟を決め、格納庫の外に向かおうとするが、アイリが呼び止める。

 

「リーシャ様を、助けに行く」

「ダメです!もう一つの剣も使えない兄さんにできることなんてないんです!」

 

アイリはルクスの前に立ちはだかり、普段のすました表情を捨て、訴える。

ルクスはその意味を知っている。それでも――

 

「私たちは、大義のために戦っていたのではなかったんですか。目的を忘れないでください。ここで死ぬつもりですか?お願いです。私たちは、この国のために――」

「それは違うよ、アイリ」、

 

ルクスはふっと微笑む。

 

「僕の目的は帝国を打つこと、僕から大切なものを奪う、あの敵を倒すことだ」

「………。あの機竜の出力調整は、済んでいます。でも…十分以上の保証は、できません…」

「ありがとう」

 

うつむく妹の絞り出した声に一言、礼を言ったルクスは体をクルルシファーの方に向けた。

 

「クルルシファーさん、頼みがあります。リーシャ様を救出するために《ファフニール》を起動させてください。僕への援護はいりませんから」

「前にも言ったけど、私はユミルからの命で、戦いに出向くわけにはいかないのよ」

 

クルルシファーは冷静に返す。

 

「僕は『黒き英雄』の正体を知っています。取引です。頼みを聞いてくれたら、教えます」

「………。わかったわ」

 

クルルシファーが、一呼吸おいて、頷く。

 

「では、行きましょう」

 

二人は機攻殻剣(ソード・デバイス)を同時に抜いた。

 

 

 

 

 

リーシャたちの戦況は最悪だ。すでにシャリス、ティルファーも撤退を始めており、戦っているのはリーシャ含め、五人もいない。

そして、リーシャもまた《ティアマト》の特殊武装を使えるような体力が残っていない。

対してベルベット率いる反乱軍のもとには、およそ百機の機竜使い(ドラグナイト)幻神獣(アビス)十数体が控えている。

 

戦いのさなか、おそらくべルベットが持つ笛の力で幻神獣を操っている。と、判断したリーシャは最後の力を振り絞り、幻神獣(アビス)たちをかいくぐり、ベルベットに突撃した。

 

迎撃のためベルベットは持っていた大剣を振るうが、リーシャはすんでのところで回避、完全に隙をさらしたベルベットに《キメラティック・ワイバーン》に対応する、二本の機攻殻剣(ソード・デバイス)で切りかかる。

しかし―――

 

「残念だったな、雌犬」

「なッ!?」

 

振り切っていたはずの大剣が、リーシャの双剣よりも早く振るわれる。

 

「く、あ…!」

 

装甲の一部を砕かれ、リーシャが大地に落ちる。

 

『リーシャ様ッ!』

撤退準備中だった『騎士団(シヴァレス)』の仲間が、悲鳴を上げる。

 

だが――行けない。

十数体の幻神獣(アビス)がリーシャと『騎士団(シヴァレス)』の間に壁を作るように、立ちはだかっているのだ。

 

「な、んだ…、今のは…?」

「『神速制御(クイックドロウ)』――。かつての帝国軍に伝わる、機竜使い(ドラグナイト)の三奥義の一つだ。近衛騎士団長になってから、さらに五年もの修練の末に―ようやく俺は、体得(マスター)した」

 

神速制御(クイックドロウ)』。

肉体制御での操作に加え、精神操作の制御。

一連の動作に異なる二系統の操作を完璧に合わせ、一動作のみ、目にも止まらぬ攻撃を繰り出す絶技。

機竜使い(ドラグナイト)の三奥義は、新王国でも伝説として語り継がれており、その一つでも習得した者は、超一流の機竜使い(ドラグナイト)として称えられる。

 

「はははっ!目的は果たせた。あとはお前を人質に、女王と交渉するだけだ」

「くッ…」

 

リーシャ自身に打つ手はもうない、だが――

 

『リーシャ様!あと、少しだけ意識を持っていてください。そうすれば――』

ルクスがリーシャに限定した竜声が聞こえた。

どうやら救出に向かっているようだ。

 

『私のことはいい、見捨ててくれ。だから…最後に私の秘密を聞いてくれ――』

 

 

 

「……ッ!?」

 

竜声でリーシャの秘密を聞いたルクスは息をのむ。

 

リーシャは人質として、帝国に捕らえられていた。しかし、アティスマータ伯はクーデターを起こした。そのため、帝国の暗殺者になるか、自害するかの選択を迫られ、帝国の人間になることを決意。下腹部に紋章を刻まれ、帝国の『所有物』となった。

 

それが、リーシャの秘密。

ルクスは機体の速度をさらに上げた。

 

 

 

 

「と思っていたが、ここにはこれだけの戦力がいる。今さら貴様を利用する必要もないな。だから――死ね」

 

ベルベットは《エクス・ワイバーン》のキャノンを構える。

ドウッ!と、砲撃を放った。

大気が爆ぜ、全てが爆炎に包まれる。

 

終わりだ。

ベルベットをはじめ、彼の後ろに控えていた百名の機竜使い(ドラグナイト)もそう思った。だが――

 

「大丈夫ですか、リーシャ様?」

《ワイバーン》をまとったルクスが障壁を最大出力で展開、衝撃を装甲に流し、リーシャを守っていた。

しかし、砲撃の直撃を受けた《ワイバーン》は、その場で砕け散ってしまう。

 

「ル、クス…。どうして…?」

弱々しい声でリーシャは問う。

 

「あなたを助けるためよ」

 

返答はルクスではなく、別の人物から返ってきた。

 

「クルルシファー…か」

「ちゃんと生きてるわね、王女様」

「生きてて…悪かったな…」

 

皮肉を帯びた声で、まとっていた蒼い神装機竜《ファフニール》を解除したクルルシファーが言う。リーシャはダメージのせいで、そう返すことしかできなかったが。

 

 

「何者かは知らんが、無駄なあがきを――」

 

上空に佇んでいたベルベットは、ルクスたちの姿と生きているリーシャを見て、大剣を構える。

それが合図なのか、機竜使い(ドラグナイト)たちはルクスたちに向け、剣を構える。

 

「すみません、リーシャ様。せっかく直してもらったのに」

 

ルクスはリーシャに背を向けたまま、リーシャに対し詫びを入れる。そして、腰に差していたもう一本の機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜き、唱える。

 

「――顕現せよ、神々の血肉を喰らいし暴竜。黒雲の天を断て、《バハムート》!」

 

瞬間、光の粒子が集まり、形を作る。

現れたのは、黒。

それは、禍々しい殺気と光沢を帯び、ただならぬ威光と気配を出す。

ベルベットやリーシャ、クルルシファーもまた飲まれるほどの圧倒的な存在感。

 

接続(コネクト)開始(オン)

ルクスの前に現れた機竜が無数の装甲と化し、ルクスの全身を包む。

 

「お前は…、まさか――?」

リーシャが目を見開き、呟く。

 

直後、ルクスはベルベット率いる反乱軍の前に立ちはだかる。その手には、闇より深い黒色の大剣が握られていた。

 

反乱軍の機竜使い(ドラグナイト)三機が左右、正面の三方向からルクスに襲いかかる。

その刹那――

 

「時を喰らって加速しろ、《バハムート》」

 

バキン!

 

「――え?」

三機の機竜使い(ドラグナイト)の剣が振り下ろそうとしたその瞬間、男たちが纏っていた装甲機竜(ドラグライド)が、砕け散った。

機竜牙剣(ブレード)を持っていた装甲腕、両肩にある幻創機核(フォース・コア)、そして腰にさしていた機攻殻剣(ソード・デバイス)

攻撃、動力、制御の要である三点が、一瞬で破壊されていた。

それも一度に襲いかかった――三機同時に。

やられた男たちの目には、何が起こったのか、見えていなかった。

ルクスは大剣を目にも止まらぬ速さで振るい、剣を交えたその瞬間に、勝負を決めていた。

 

それを皮切りに、戦場を漆黒の暴竜が蹂躙する。

 

 

 

 

「な、なんだ…?あれは…?」

「……」

 

リーシャとクルルシファーは、襲いかかる機竜使い(ドラグナイト)幻神獣(アビス)を次々落としていく漆黒の機竜をまとったルクスに絶句していた。

 

「《暴食(リロード・オン・ファイア)》――あれが、神装機竜《バハムート》の持つ神装です。その能力は圧縮強化という十秒間の魔法です」

 

絶句していた彼女たちに、ノクトの《ドレイク》からの竜声を介して、アイリが告げる。

 

「先の五秒間、対象に流れる時間を数分の一に減速し、後の五秒間、数倍にまで加速する。故に、敵が攻撃の予備動作を見せた瞬間、加速させた斬撃で容易にそれを追い抜き、破壊する。それが、『即撃』という、兄さんの技です」

 

「なるほど。それが、『無敗の最弱』の戦い方が生まれたきっかけなのね」

「どういうことだ、クルルシファー?」

 

どこか納得した表情で呟くクルルシファーにリーシャが問う。

 

「簡単なことよ。『即撃』をするためには相手の攻撃予備動作を完璧に見抜かなければならない、そのための修練。例えば、試合で一度も攻撃せずに、ひたすら防御に徹するとかね」

「「――!!」」

 

リーシャとノクトが息をのむ。

 

「その通りですよ、クルルシファー先輩。そして、クーデターで帝国軍の機竜使い(ドラグナイト)千二百機をたった一人で破壊した帝国最強の機竜使い(ドラグナイト)――『黒き英雄』。その正体は兄さんです」

 

彼女たちは目の前で戦う少年の正体を知る。

 

 

 

 

 

「馬鹿な!貴様があの『黒き英雄』だと!?」

 

次々と落とされる機竜使い(ドラグナイト)達と敵が纏う漆黒の神装機竜を見て、ベルベットは自身にとって最悪の可能性を口にした。

幻神獣(アビス)はすでに全滅している。

 

『時間稼ぎは無駄です。兄さんの機竜適性値は、私たち女性の基準適正値より、遥かに高いですから』

 

叫ぶベルベットにノクトの《ドレイク》を介した竜声が届く。

 

「何者だ!貴様は!?」

「僕の顔に覚えはないか、ベルベット近衛団長よ」

「な……ッ!?」

 

底冷えのするルクスの視線をうけ、はっとする。

他の機竜使い(ドラグナイト)達も攻撃をやめる。

そして――

 

「なぜだ!第七皇太子ルクス・アーカディア!なぜ我々に剣を向ける!?民のために戦い、英雄にでもなったつもりか!?」

 

ベルベットの憤怒を宿した怒声にルクスは、ベルベットに大剣を向け、宣言する。

 

「僕は、英雄なんかじゃない。帝国を亡ぼす、最弱の機竜使い(ドラグナイト)だ」

 

「…いいだろう」

ルクスが啖呵を切った直後――

 

「ならば死ねい!新たなる帝国の礎として、わが仕えしアーカディア帝国の、大義のもとに朽ち果てろ!」

 

ベルベットを含めた、機竜使い(ドラグナイト)全員が突撃する。

 

「《暴食(リロード・オン・ファイア)》」

 

それをルクスは神装を発動させ、『即撃』で十数機の機竜使い(ドラグナイト)を落とす。

しかし、ベルベットの狙いは部下を囮にして、神装発動直後のルクスを狙うこと。

先ほどまでの戦いで、連続発動できないことは確認済みだ。

 

「あの世で、皇帝陛下に詫びろ!裏切者め!」

 

落とされた部下たちの隙間をかいくぐり、ベルベットは『神速制御(クイックドロウ)』による高速の一閃を、確信をもってルクスに振り下ろす―――

 

ピシッ!

 

「な、にぃぃい…!?」

 

が、機体が砕けたのはベルベットの方だった。

 

「な、なぜだ!?貴様の神装は…まだ使えないはず!?何故、俺の神速制御(クイックドロウ)が敗れ―」

『あなたも無謀な人ですね。いくら神速制御(クイックドロウ)を使えるといっても、それを最初に生み出した人間に、同じ技術で勝てるはずないでしょう?』

 

驚愕するベルベットにアイリの声が響く。

そして戦慄する。この戦いがルクスの戦略の中で動いていたことに。

神装機竜《バハムート》の性能と出力も。

帝国最強を為すルクスの腕も。

一瞬で複数の機竜を落とす、圧縮強化の神装も。

ベルベットが自らの神速制御(クイックドロウ)で『倒せる』と、そう誘き寄せるための、ルクスの戦術に。

 

そして、ある事実に気付く。

 

「馬鹿な!ありえん!編み出しただと!?貴様は当時まだ、十二――」

「さようなら、ベルベット。僕はここで戦う。僕が王子であった帝国でも、あなたたちでもない。僕が認められたいと思う、彼女たちのために――」

 

ルクスが呟く間に《エクス・ワイバーン》は、乾いた大地へと落ちてゆく。

 

ベルベットが落とされ、旧帝国の機竜使い(ドラグナイト)たちもすべての機竜を破壊された。

幻神獣(アビス)を含めた反乱軍はたった一人の機竜使い(ドラグナイト)に敗れたのだった。

 

 

 

 

 




ようやく終わった…。

戦闘シーンってつらいなやっぱ。

とはいえ、一巻の内容は次回で終了予定です。


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