黒の魔剣   作:暁 煌

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開かれる扉

 

 

 

 

 

雲も無く晴れ渡る空、涼やかに吹き抜ける風。

今日も島は気持ち良い天気だったが、それとは全く逆の雰囲気を漂わせている人物が居た。

その人物は、借りている船室のベットに力無く座り、酷く落ち込んでいた。

 

原因は昨日の事。

 

軍学校時代からの親友の、絶縁状とも言える拒絶の言葉。

そして、どうやら自分のせいで倒れてしまったらしい、最近できた優しい友人。

この二重の衝撃に、ただひたすら自己嫌悪に陥っていた。

 

 

 

 

 

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その頃、船長室では海賊たちと少年が話し合っていた。

 

「ねぇー、先生の事どうにかできないの?」

「どうにかって言ってもよー、ありゃ女隊長サンかアキラじゃなきゃ無理だぜ。」

 

頬を膨らませて不満を漏らす妹に、兄は苦り切った表情で答える。

 

「そうですね。私たちが行っても、無理に笑顔を浮かべられるだけですし……。」

「あの人は我慢し過ぎだよ。」

 

手がないのは召喚士も少年も同じようで、一様に暗い表情をしている。

 

「隊長サンの方は無理だから、アキラが良くなるのに賭けるしかないわね。」

 

一番人生経験のありそうな彼にそう言われ、一同は押し黙る。

 

「アキラ……大丈夫かな……。」

 

少女の呟きは壁に当たって消えた。

 

 

 

 

 

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昨日、アキラは倒れてからすぐにリペアセンターに運ばれて綿密な検査を受けた後、

点滴をつけられ寝かされていた。

 

「……アキラ様。」

 

今、アキラの側にはクノンが一人、その目覚めを待って佇んでいる。

検査は既に終了し、結果も出ている。

昏睡の原因について、アルディラは一つの推測を立てていたが、

今回の事件と検査がそれを確証した。

 

すなわち、アキラの異状には遺跡が関係している、と。

 

 

 

 

 

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喚起の門は、自動召喚の門である。

では召喚のための魔力は、どこからきているのか?

 

世界からである。

 

喚起の門は、その付属する施設によって世界に漂う微量の魔力を集め、召喚に使用している。

それと同じ現象がアキラの体にも起きていた。

辺りに漂う魔力が、何らかの方法でアキラに注ぎ込まれているのだ。

 

アキラが元からそのような体質だったのか、召喚された際に偶然そうなったのか、

あるいは遺跡に手を加えられたのか。

 

封印の剣に反応を示した事から、遺跡が何かしたのはまず間違いないだろう。

 

しかし昏睡の直接の原因になっているのは、その魔力の摂取量だった。

 

己の限界を超えて取り入れられ続ける魔力にアキラの体は耐えきれず、

強制的な眠りに入って体力を温存し、それによって現在の状況に対し適応しようとしていた。

 

その結果が髪と瞳の変質であり、運動能力の向上であった。

 

これはアティの抜剣時と同じ状態である。

原因は明らかになったが、だからと言って有効な治療法がある訳ではなく、

現在はどうすれば良いのかアルディラが検討している。

 

アキラは今、遠く離れた紅き女性の後悔にも、近くに佇む機械の少女の心配にも気付かず、

ただ、眠り続けている。

 

 

 

 

 

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私が、もっとしっかりしていれば……。

私が、もっと強ければ……。

アズリアに嫌われる事も、アキラさんを傷つける事も無かったのに……ッ!

 

 

 

カーテンを閉め、薄暗くなっている船室のベッドで、紅き女性(ひと)は膝を抱きしめ顔を埋めていた。

誰かが様子を伺いに来れば笑顔を造るが、食事には手を付けず、

用事がある時以外はずっと船室に引きこもっている様は、とても放っておけるものでは無かった。

 

しかし、海賊たちにも少年にも有効な手だては無く、

ただ一人、この状況を打開できる青年を待っていた。

 

 

 

 

 

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私が暗い船室でうずくまっていると、不意に外が騒がしくなりました。

また、誰かが様子を見に来たのでしょうか?

 

だったら笑わないと……。

 

みんなが心配するから、笑顔を見せなくちゃ。

でも、トタトタと、できるだけ静かに歩こうとするこの足音は……?

 

いいえ、そんな筈ありません。

あの人は今もまだ眠っている筈です。

 

……私の、せいで。

 

足音が私の船室の前で止まると同時に、ドアが勢いよく開かれました。

開かれたドアの向こう、明るい昼の日差しの中には、私のせいで倒れてしまったあの人が、

私の心の半分を占めていたあの人が、いました。

 

「おはよう、アティ!」

「アキラ、さん……?」

 

予想外に元気なアキラさんの声と姿に私が呆然としていると、

当の本人はずかずかと船室に入って来てカーテンを押し開きました。

 

「どうしたんだよ、こんなに部屋を暗くして?これじゃ病気になるよ?」

「あの、それは……その……」

 

私が半ばパニックになって、しどろもどろしていると、

アキラさんはその場でクルリと一回転して笑顔で聞いてきました。

 

「どう、この服?ヤッファに貰ったんだ。」

 

そう言われて、初めてアキラさんの服が変わっている事に気付きました。

下は以前と同じ、ジーンズと丈夫そうなブーツでしたが、

上は黒いタンクトップと、ヤッファさんの物と似たようなメイトルパのベストでした。

 

「どう?似合う?」

 

笑顔で尋ねてくるアキラさんは、どこか初めて服を買って貰った子供のようで、

つい『笑って』しまいました。

 

「クス。ええ、よく似合ってます、よ……って、そうじゃありません!

 私、アキラさんに謝らないと!」

 

そうです!ビックリし過ぎて忘れてました。

アキラさんは私のせいで倒れてしまったんです。

 

私の、せいで……。

 

「謝るって―――何を?」

「え?」

 

顔を上げると、そこには不思議そうに首を傾げたアキラさんがいました。

 

「だ、だって、私が剣を喚んだからアキラさんが―――。」

「ああ、別にいいよ。アティが剣を喚ばなくても、どうせ眠っちゃう時間だったし。」

「で、でも!」

 

アキラさんは軽い事みたいに言ってくれましたけど、それじゃ私の気が済みません。

そう思って言葉を続けようとしたら、とんでもない一言がアキラさんの口から出ました。

 

「じゃあさ、デートしよう!」

「はぇ?」

 

デート。

親しい男女、主に恋人が一緒に遊びに出かける事。

 

…………。

………………。

 

「って、ええぇえぇぇ!!?デ、デートって、私とアキラさんが!?」

「そ!アティは俺にお詫びがしたいんだろ?

 だから、今日一日デートしてくれたら許してあげるよ。」

「それは、その……でも……///」

 

あわわ、ど・どうしましょう?

顔が熱い。きっと真っ赤になってます。

 

「俺と一緒じゃ……イヤ、か?」

 

……っ!

アキラさんが悲しそうに顔を俯けました。

その表情(かお)は、反則です!

 

「い、イヤじゃありません!デートします、しますから!」

 

私が慌てて言うと、アキラさんはパッと顔を上げて笑顔を浮かべました。

 

「よっしゃ!善は急げ、だ。行こう、アティ!」

 

アキラさんはそう言うと、私の手を掴んで駆け出しました。

少し眩しい日差しに目を細めます。

 

ああ、どうして貴方はそんなに凄いんですか?

 

貴方はとても自然に、私に光をくれる。

光の下に連れ出してくれる。

このままじゃ、私は貴方から離れられなくなりそうです。

 

アキラさん。

 

 

 

 

 

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俺は少し強引にアティの手を掴んで船室から飛び出した。

行き先はまだ決めてないけど、今は何故だか走りたい気分。

 

何処がいいかな?

 

妖精の花園に行ってもいいし、魔晶の台地でも綺麗な所をこの前見つけた。

畳の上でのんびりしてもいいし、ここじゃない場所の映像を見せて貰うのも楽しい。

 

アティは何処が好きかな?

いっその事、全部廻ろうか?

 

さっき船を降りる時、カイルに「アティとデートに行って来る」と言ったら、

「おう、バシッと決めてこい!」と言ってくれたから、

少しくらいなら遅くなっても問題ないだろう。

その後、「ちょっ!?デートってどういう事!?アキラー!先生ーー!?」

って聞こえたような気がするけど、多分気のせいだろ。うん。

 

「ま、待って下さい、アキラさん!そんなに急いで何処に行くんですか?」

 

逸る気持ちのままに走っていた俺は、アティの声で我に返り足を止める。

 

「ご、ごめん、アティ。俺、つい嬉しくて。」

 

慌てて謝る俺に、アティは柔らかな笑顔で「いえ、いいんです。」と言ってくれた。

その笑顔にちょっと落ち着いて、アティの顔を窺う。

 

「えと、アティは何処か行きたい所ある?」

「いえ、特には。アキラさんにお任せします。」

 

ここまで走って来たせいか、顔を赤くしているアティにエスコート役を仰せつかって、

行き先を考え出した時、大事な事を思い出した。

 

「あ!そうだ。まずはラトリクスに行かなきゃいけないんだった。」

「どうしてですか?」

「アティにアルディラから伝言があるんだ。

 『貴女が拾ってきた彼、気が付いたわよ。』だってさ。」

 

俺が伝言を伝えてからしばらくの間、アティは首を傾げていたが、

ようやく合点がいったのか「ああ!」と手を合わせた。

 

「思い出したとこで、ラトリクスに行こうか?」

 

そう言って手を差し伸べると、アティは「はい。」という返事と共に自然に俺の手を取る。

 

そして俺たちの手は、ラトリクスに着くまで繋がれたままだった。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「あら、アティ。いらっしゃい。

 ……ところで、どうして貴方たちは手を繋いでるのかしら?」

 

『その時、場は極寒の冷気に包まれた気がしマシタ。』(アキラ談)

 

 

 

アキラったら、どういうつもりなの!?

クノンの前で他の女と手を繋ぐなんて!

 

「あ、あの、アルディラ。あの人が目を覚ましたって聞いたんだけど?」

 

慌てて手を離したのはいいけど、赤くなった頬が気に入らないわね。

何か二人の間に進展でもあったのかしら?

 

……まあ、いいわ。

 

後でアキラに言い聞かせれば、何とかなるわ。

それに、今はアティの拾って来た人間の事もあるし。

 

「……ええ、目は覚めたんだけど、ちょっと問題があるのよ。」

「問題、ですか?」

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「記憶の混乱、って、どういうことです?だって、検査の結果は異常ないって……。」

「その通りです。再検査でも、なんら肉体的な異常は発見されませんでした。

 推測される可能性は、おそらく……。」

「心因性のもの。そう言いたいのね、クノン?」

「はい……。

 会話によるリハビリが、あの患者を完治させる最良の方法なのだとは解っています。

 ですが、私には……それを達成するだけの機能がありません。

 そこでアティ様の力を借りるのが最良と判断したのです。」

 

そう、私には『ココロ』が解らない。

アルディラ様にゆっくり考えるように言われたけれど、まだ解らない。

やはり、機械人形には解らないのでしょうか?

 

「分かりました。そういう事なら―――。」

「駄目!アティはこれから俺とデートだから。」

 

アティ様の言葉をアキラ様が途中で遮りました。

 

……デート?

親しい男女、主に恋人が(以下略)。

 

「……お二人は、恋人になられたのですか?」

 

おかしい。

体にはどこも損傷は無い筈なのに、大きな穴が空いてしまったように感じる。

センサーの故障だろうか……?

 

「ち、違います!恋人になったとかじゃなくて、

 二人で遊びに行こうって言ってただけです!ね、アキラさん!?」

「ん~。まあ、そう言う事にしておきますか。」

 

お二人が恋人でないと聞いて、何故か私は『安心』しています。

先ほど感じた大きな穴も、なくなったような気がします。

―――やはり後でチェックを行った方がいいかもしれません。

 

 

 

 

 






(-ω-)/ やあ!端折った部分はゲームで確認してくれ!

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