カーテンを透して淡くなった朝日を瞼に感じながら、腕の中の温もりを抱きしめ微睡む。
そんな朝の至福の時は、ソノラの甲高い怒鳴り声で破られた。
「アキラ、おはよー……って、どうしてミユが一緒に寝てるのよー!?」
寝覚め最悪。
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「だからー、ベッドが一つしか無かったんだから仕方ないじゃん。
それとも何?俺に床で寝ろとでも?」
アタシはあの後、部屋から放り出されて、今は食堂でアキラにさっきの事を詰め寄ってたトコ。
う~、笑顔だけど目が笑ってない。
怒ってるアキラって怖いよ~。
「で、でもさ!だったらアニキの部屋に行くとか―――。」
「嫌。いくらカイルでも、男なんかと寝る趣味は無い。」
そう言ってパンを千切り口に運ぶアキラは、不機嫌さが滲み出て取り付くシマも無いって感じ。
どうしよ~。
「アキラ、そろそろ行こや。」
「ん、もういいのか?」
「もう、お腹いっぱいや。」
「よし、じゃあ行くか。」
「ちょ、ちょっと!どこに行くのよ?」
席を立ち、ミユを連れて出かけようとするアキラに声をかけたら、
意地の悪い笑顔で「内緒。」って言われた。
ぶーぶー、教えてくれたっていいじゃん。
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ミユを喚び出した翌日、島の案内とミユの紹介とを兼ねて集落を廻る事にした。
「さて、ミユはどこから廻りたい?」
傍らのミユを見下ろして尋ねると、金色の綺麗な瞳と目が合う。
その瞳を楽しそうに細めてミユは言う。
「ウチ、最初はシルターンの人らに挨拶したい!」
その微笑ましい様子に、俺も笑顔を浮かべて応える。
「よし、じゃあ風雷の郷から行くぞ!」
「うん!」
満面の笑顔のミユを腕にぶら下げながら、俺は風雷の郷に向かって歩き出した。
何だかこっちでも妹ができたみたいだなぁ。
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アキラが狐の小娘を連れてきおった。
護衛獣として喚んだらしい。
言うてくれれば、わらわがいくらでも成ってやったものを。
「アキラの護衛獣になったミユ言います。よろしゅう。」
「ミスミじゃ。この郷を束ねておる。よろしくな。」
「自分はキュウマです。この郷の護人をしています。
何か困った事があれば、いつでも言って下さい。」
小娘には適当に挨拶を済ませ、キュウマが挨拶をしている内に、アキラに向き直り笑顔を見せる。
「この後は暇か?茶でも飲んでいかぬか?」
「あ~、ごめん。他の集落も廻らないとならないんだ。
お茶は、また今度頼むよ。」
「そうか……ならば仕方あるまい。」
残念じゃな……ん?小娘がこちらを見ておるな。
っ!!
わ、笑いおった!?わらわを見て笑いおったな!?
まさか小娘……。
「アキラ、早よ次の集落行こ!ゆっくりしとったら、日が暮れてしまうで。」
ああ!アキラの腕にしがみつくでないわ、小娘!
……ふ、ふふ。成る程、よぉく解った。
わらわに宣戦布告という訳か。
よかろう!受けて立ってやるわ、小狐が!!
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「ミユ、次はどこに行こうか?」
「別にどこでもええよ。」
次の行き先はアキラに任せて、さっきの事を考える。
まさか
まあ、アキラは男前やし、しゃあないやろ。
せやけどウチは負けへんで!
「よし、じゃあ次はラトリクスに行こう。」
ウチが気合いを入れとる間に、次の行き先が決まったらしい。
確かラトリクス言うんは機界の集落やった筈。
「ええけど……何でソコなん?」
「俺が最初に世話になった所で、命の恩人が居るからかな。」
ウチの質問にアキラは少し照れて答える。
照れたアキラも男前や!
「アキラの恩人やったら、ウチの恩人も同然や。早よ行こ!」
組んだ腕をぎゅっと抱きしめ、アキラを引っ張るように歩き出す。
ラトリクスまで遠いとええな。
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「何?何なの、その娘?早く元の場所に捨てて来なさい!」
まったく、アキラったら何を考えてるのかしら。
恋人(クノン:アルディラ主観)の所に他の女の子を連れて来るなんて!
「アルディラ、犬や猫じゃないんだから……。」
狐だって一緒よ!
どうして男っていうのは女心を理解しないのかしら!?
クノンが可哀想じゃない!
「どうぞクノンとお呼び下さい。」
「ウチはミユ。よろしゅう。」
……あら?
クノンったら、全然気にしてないわね。
そう!そうよね!
ぽっと出の小娘に、私の可愛くて素直で優しいクノンが負ける訳ないわ!
「お~い、アルディラ?」
クノンの可愛さに比べれば、月とスッポン、
アイギスにダークレギオン(?)よ!
「……駄目っぽいな。次に行くか。じゃあクノンさん、また今度。」
「はい。お待ちしております。」
アイギスの咆哮に掛かれば、あんな小娘の一人や二人。
あっと言う間に消し飛んで<以下略>
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初めは眼鏡の姐さんが敵かと思たけど、アレはちゃうな。
問題は看護士の娘の方や。
アキラは恩人や、ゆーてたから結構差を付けられとる。
ウチももっと頑張らな!
「後はユクレスと狭間の領域か……。
先に狭間の領域に行って、今日はユクレスで泊めて貰うか。」
ん?ウチが気合い入れとる間に、予定決まったみたいやな。
……って、アレ?昨日は船で寝たのに、今日は帰らんでええんかな?
「アキラ、急に行って寝るトコ貸して貰えるんか?」
「ああ、それは大丈夫。俺って各集落に寝場所持ってるから。」
「そうなんか。ソレやったら安心やな!」
何でそんなに寝場所持ってんのか分からへんけど、
アキラが大丈夫言うんやから気にせんでええやろ。
そう考えて、ウチはアキラの腕を抱く力を強める。
―――ウチら、恋人に見えるかな?
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せっかくアキラさんが私に会いに来てくれたというのに、
何なんですかね……このお嬢さんは!?
「二人とも、今度俺の護衛獣になったミユだ。仲良くしてやって。」
ご、護衛獣ですって!?アキラさんの!?
くっ、何て羨ましい!
「冥界ノ騎士、ファルゼン。」
「……副官のフレイズです。ヨロシク、お嬢さん。」
「ミユです。よろしゅう。」
ぺこりと頭を下げる様子は可愛らしいですが、こんなお嬢さんに護衛獣が務まるとは思えません。
アキラさんには考え直して貰いませんと。
「アキラさん、敵は帝国軍人です。このような、お嬢さんには荷が重いのでは?」
「そうですか?ミユはかなり強いと思いますけど……。」
アキラさんに言われて、もう一度お嬢さんを見てみる。
っ!!
成る程……かなり強い魔力を持っているようですね。
ですが!
「まあ、フレイズさんに比べれば、まだまだかもしれませんが。」
―――あ、ああ!!
アキラさんが私の事を考えてくれていたなんて!
私は、私はもう幸せで胸がいっぱいです!!
「……アキラ、早よ次に行こ。ココに居ったらあかん。」
「え?あ、うん。じゃあファルゼン、またな。」
「……ウム。」
ああ、アキラさん!私はこの喜びをどうやって伝えたらいいのですか!?
例え三度生まれ変わろうと、私は忘れません!
アキラさーん!!
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危ないトコやった……。
まさか、あんな変態が居るやなんて。
ウチがアキラをしっかり守らんと。
「最後はユクレスだな。あそこはミユも気に入るんじゃないかな?」
「何でや?何か面白いモンでもあるんか?」
アキラの言葉に考えんのを中断して聞いてみると、楽しそうな笑顔で返される。
「行ってみれば分かるよ。」
「ふ~ん。」
何や分からんけど楽しみやな。
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「何で~!?どうしてですか~!?どうしてマルルゥを追いかけるですか~!!?」
アキラさんが久しぶりに来て、一緒に遊んで貰えると思ったのに、
傍に居た狐さんが突然襲いかかってきたですよ~。
「こら、ミユ。マルルゥが嫌がってるだろ?止めなさい。」
アキラさんに後ろから抱きしめられるように捕まえられて、
狐さんはやっと止まってくれたですよ。
「うぅ~、すまん。ウチ、小そうてチョロチョロしとるの見ると、つい―――。」
ち・小さい!?
ま・マルルゥは、マルルゥは―――。
「小さくなんかないのですー!」
そう叫んで飛びかかろうとしたら、マルルゥは大きな手に捕まってしまったのです。
「お前は小さいし、そっちの嬢ちゃんのは本能だ。
どっちも仕方ねぇだろ。」
し、シマシマさんまで~!
何とか自由になろうとじたばたしていたら、アキラさんにちょっと困った笑顔を向けられました。
「ごめんな、マルルゥ。ミユにも悪気は無いんだよ。」
はっ!そうなのですよ!
せっかくアキラさんが来てくれてるのです。遊んで貰わないと!
マルルゥがぴたっと動きを止めると、シマシマさんは手を離してくれました。
マルルゥはすぐにアキラさんの方に飛んで、その頭に乗ります。
ここはマルルゥの指定席なのですよ。
「それで、そっちの嬢ちゃんは何者なんだ、アキラ?」
「ああ、昨日俺の護衛獣になったミユだ。仲良くしてやってくれ。」
そう言うと、アキラさんは狐さんの背中を押してアキラさんの前に立たせたですよ。
「ミユ言います。よろしゅう。」
「俺はヤッファ。一応ここの護人だ。ま、よろしくな。」
「マルルゥはマルルゥですよ~。」
ご挨拶が済んで、狐さんをよく見てみました。
真っ白な毛並みと、金色に光る瞳がとっても綺麗なのですよ~。
でも、急に金の瞳がマルルゥを睨んだのです。
「アンタ、いつまでウチのアキラに乗ってるんや!?早よ、降りぃ!」
「アキラさんはマルルゥのアキラさんなのです!狐さんのじゃありません!」
「何やてー!?がうっ!」
飛びかかってくる狐さんをかわして逃げ回るマルルゥの耳に、
アキラさんとシマシマさんの話し声が聞こえてきました。
「なあ、ヤッファ……何時から俺は誰かのモノになったんだろ?」
「……さあな。」
そんなの決まってますですよ。
初めて会った、その瞬間からなのです!
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あのちびっ子を追いかけ回した後、縞のオッサンに食事をご馳走してもろた。
野菜や果物ばっかりで何や味気なかったけど、そこそこ美味かった。
そんで今は、ふかふかでええ匂いのする草を敷き詰めたテントの中で、
アキラの腕に包まれて丸ぅなってる。
気持ちええなぁ。
それにしても、どこに行ってもウチの敵が居る。
船には
鉄の街では
せやけどアキラは渡さへん。
渡せる訳、あらへん。
長いコト生きてきたけど、
召喚獣の都合や心を優先しようとした人間は初めてや。
この機会を逃したら、もう二度とこんな奴には会われへん。
アキラの笑顔は暖かい気持ちになる。
アキラの声を聞くと安心する。
アキラの傍に居ると落ち着く。
アキラの腕に抱かれると幸せになる。
ウチはアキラが好きや。
誰にも渡したあらへん。
ウチだけのモンにしたい。
……けど、そんなん無理やて解ってる。
アキラは仲間を大事にしとるし、ウチは人間やあらへん。
せやけど、今、この夜、この瞬間は、ウチだけのアキラや。
だから、少しでもこの瞬間が続くように、少しでも一緒に居られるように、ウチはアキラを護る。
護り続ける。
好きやで、アキラ。
(-ω-)/ やあ!ナニが誰の縄張りかは言わないよ!