放火騒ぎのあった翌日。
アティたちは、放火したのは本当に帝国軍なのかを確かめる為に、
フレイズの見つけた帝国軍の下へと森の中を歩いていた。
「あ~あ、火を付けたのはアズリアじゃないんだから、聞きに行ったって無駄なのにな~。」
ぞろぞろと森の中を歩く一団の中で、他の者たちが真剣な表情で辺りに気を配っているのに対し、
やる気が無さそうに歩いていた二人の内、銀髪の方がぼやきを漏らす。
どうやらアキラは、単調な森の中の探索に歩き疲れてしまったらしい。
そして、アキラと手を繋いで歩いていたミユも、こくこくと肯いて同意を示す。
「空も曇ってて雨が降りそうだしさ~。遠出には向かない日だよ?」
更にぼやくアキラに、再びミユが、こくこくと肯いて同意を示す。
すると近くを歩いていたカイルが、呆れを含んだ口調で窘める。
「あのな~、そんなモン本人に聞くまで分かんねぇだろうが?
大体、嫌なら付いて来なけりゃイイじねぇか。」
「あ、それは無理。俺も久しぶりにアズリアに会いたいし!」
笑顔で言い放つアキラに、カイルは溜め息を吐く事で応えるに留まったが、
先程までとは逆に、ミユは眉をしかめて不平を述べようとした。
「どういう―――。」
「ちょおっと!?敵の親玉に会いたいって、どういう事よ、アキラ!」
ミユを遮り大声を出したのは、ずっと兄とばかり話しているアキラに頬を膨らませていたソノラ。
お蔭で更にミユの機嫌は急降下したらしく、眉間の皺が深くなる。
そしてミユはソノラを睨み付けるが、ソノラは全く気付かずにアキラに更に詰め寄る。
「まさか、あの女隊長に誑かされたんじゃないでしょうね!?」
「誰がするか、そんな事!」
ソノラの追求に吼える様に答えたのは、アキラではなく別の誰か。
多大な怒りと多少の恥ずかしさを含んだその声の主は、こほんと咳払いをして、その姿を現す。
「久しぶりだな、アティ、アキラ。」
森の中から姿を現し、声をかけてきたのは渦中の人物、アズリア。
そんな今回の騒動の張本人に、アティとアキラは親しげに挨拶を返すが、
他の者は警戒心も露わにアズリアを睨み付ける。
ソノラがアキラを背に庇うように、もしくは二人の間を遮るように、
一歩前に出てアズリアに銃を向ける。
「ふふーん、だ。飛んで火に入る夏の虫とはアンタの事ね!
さあ、キリキリと白状して貰いましょうか!
……って、どうして私たちの場所が判ったのよ?」
「あれだけ喚けば、見つけてくれと言っている様なものだと思うが?」
勢いに乗ってソノラは啖呵をきったが、ふと疑問が口をついて出る。
その答えをアズリアに、さも当然と言われた事に、ソノラの頬が恥ずかしさに赤く染まる。
そんなソノラを気にした風もなく、アズリアはアキラに目を向ける。
「それで、お前たちはこんな所で何をしているんだ?」
恥ずかしさで体を震わせ、今にも銃を乱射しそうなソノラの肩に手を置き、
アキラが入れ替わるように前に出てアズリアと向かい合う。
そして「ちょっと困ってるんだ。」と笑いながら話し始めた。
「実は集落が放火されてさ、その犯人を捜してるんだ。
アズリアは怪しいヤツ、見なかった?」
全く疑いを向ける事なく尋ねてくるアキラと、自分を睨んでいる他の者たちを見て、
アズリアは苦笑を浮かべる。
「他の者たちは我々を疑っているようだが?」
「アズリアの仕業じゃない、って言ったんですけどね。」
と、アティも苦笑を浮かべながら会話に加わる。
今度はアティが心当たりを尋ねるが、アズリアから情報を得る事はできなかった。
すると、その話はどうでもいいとばかりに、アキラがアズリアに話しかける。
「ところで、アズリアはどこに行く途中だったんだ?」
「お前に答える必要はなかろう?」
まるで突き放すかのようなその言い方に、アティは少し目をきつくしてアズリアを見る。
「アズリア!また、そんな言い方をして!
だから、貴女はよく誤解されるんですよ。」
「……ふん。我々は急いでいるのでな。これで失礼する。」
アティに子供のように叱られ、アズリアは気恥ずかしさに頬を染めて視線を逸らすと、
足早にその場を去っていった。
照れを隠そうとするその姿を、アティは苦笑しながら、アキラは微笑みながら見送る。
それに対しウィルが声を荒げる。
「先生!兄さん!いいの!?」
「ええ。
『自分のした事には責任を持つ。けして誤魔化したり逃げたりしない。』
彼女の口癖でしたからね。」
「俺は最初からアズリアは犯人じゃないって言ってるだろ、ウィル?」
憮然として黙り込むウィルに代わり、カイルが答える。
「そうみてえだな。あんな様子じゃ、火をつけて回るなんて出来なさそうだぜ。」
「だとしたら、あの火は一体誰が……。」
その場の全員が、アズリアは犯人ではないのかもしれない、と意見を傾ける中、
キュウマが疑問を口にする。
その疑問に、ヤードがこの事件に対して憶測を述べ始める。
帝国軍に疑いの目を向けさせる事が、火をつけて回った犯人の本当の狙いだったとしたら、と。
みんなが一様に不安に駆られ始めた時、まるで見計らったようにマルルゥが飛んで来た。
「たたっ大変っ!大変ですよぉ~っ!」
いつもと違い、切羽詰まったように慌てるマルルゥ。
ヤッファが何とか落ち着かせようとするが、マルルゥは変わらず話し続ける。
「ややっ、ヤンチャさん!
ヤンチャさんが……捕まっちゃったですよぉーっ!!」
マルルゥの叫びに全員が驚きに包まれる中、まるで不安を煽るように、雨が、降り始めた。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
激しくは無いが、決して止む事のない雨が風雷の郷に降っている。
そんな雨の中、郷の者たちが一カ所に集められ、兵士たちに武器を突きつけられていた。
ゲンジやパナシェといった見知った顔も見受けられる。
しかし、郷長の息子のスバルは一人、顔に刺青をした兵士ビジュに囚われ、
他の者たちから離されていた。
「ほォれ、どうした?
さっさとあの野郎を連れて来ねえと、ガキの命はねェぞ?」
脅迫と共に頸元にナイフが突きつけられ、スバルが呻き声を漏らす。
その光景にパナシェがスバルの下へ駆け出そうとするが、
ゲンジに押し止められその場に泣き崩れる。
声を上げて泣き続けるパナシェに、囚われの身ながらもスバルが気丈な声を出す。
そして、その震える声に応えるように、森からアティたちが飛び出して来た。
「スバルくん!?」
「ヒヒッ、よく来たな?待ちかねたぜェ……。」
アティに応えたのは囚われのスバルではなく、どこか酷く醜く歪んだ笑みを浮かべるビジュ。
そのビジュに侮蔑の視線を投げかけ、ウィルが吐き捨てるように言い放つ。
「また人質だなんて、つくづく進歩ないやり方だね……。」
ウィルの侮蔑も全く気にした風もなく、何がおかしいのかビジュは笑い声をあげる。
「ヒヒヒヒッ。まあ、半分はオレ様の提案だがなァ?」
「半分だと?」
勿体ぶった言い方をするビジュにカイルが問い返す。
しかし答えはビジュからではなく、思いも寄らぬ人物の口から語られる。
「今回の作戦は、僕が指示したんだよ。
確実に剣を手に入れる為に、ね……。」
みんなが物陰から現れたイスラに驚き、その自白に息を飲む中、イスラは笑みを浮かべて続ける。
「ふふっ、みんな何て顔をしてるのさ?
仲間同士疑う事をしない君たちだから、こんな不覚をとるのさ。
もっとも、気付いていた人も居るみたいだけど。」
最後の言葉と共に、その視線がアキラへと向けられる。
それにつられるように、みんながアキラの方を向くと、
そこには蒼い瞳に冷たい光を宿し、他の表情を一切なくしたアキラがイスラを見ていた。
睨み付けるでなく、ただ、その冷たい視線を向けていた。
普段見た事のないアキラの様子にみんなが呆然となる。
その時、アキラが静かに口を開いた。
「……イスラ。」
冷たい。
あまりにも冷たい声。
そこには一片の温もりも無く、身を切るような冷たい害意だけが籠められている。
「お前は最後の警告も無視し、今、俺の仲間たちに手をかけようとしている。
……解るな、この意味が?」
アキラの問いかけに昨夜の事を思いだし、イスラの手が恐怖に震える。
イスラは拳を握りしめ震えを止めると、無理矢理に笑みを浮かべる。
「は、ははは。強がったってダメだよ。こっちには人質が居るんだからね。」
そう言ってイスラが手を上げると、兵士たちが一斉に人質たちに剣を向ける。
その光景に、キュウマが歯噛みをし、剣を向けられたゲンジが唸る。
「郷の者たちに手を出すつもりか!?」
「卑劣な……っ。」
二人の様子に調子を取り戻したイスラが、不敵に笑う。
「目的のためなら手段なんて選ばない。
敵の弱みをついて、いかに早く確実に勝つかが大事なんだ。
そうだろ、姉さん?」
確認を取るように発せられたイスラの声に無言で応じたのは、竹林から現れたアズリアだった。
「姉さん、って……。」
「まさか!?」
アズリアの登場に、ウィルとアティが驚きの声をあげる。
「あっははははは……。
これで、僕がどうしてこんな事をしたのか理解できただろう?
そうさ、僕の名前はイスラ・レヴィノス。
帝国軍諜報部の工作員であり―――アズリアの弟さ!」
次第に強くなる雨の中、遂に雷が混じり始める。
その雷に後押しされるように、イスラが声高に自分の素性を明かす。
噂でしか知らなかったアズリアの弟がイスラだと知り、
アティの口から「そんな……」と呟きが漏れた。
アズリアは無言のままイスラへと歩み寄ると、辛辣な声で話しかける。
「まさか、お前がビジュと接触していたとは思わなかったぞ、イスラ……。」
「秘密を守るのは諜報部の鉄則だからね。
計画を実行するまでは、姉さんにも話す事はではなかったんだよ。」
しかしイスラは全く気にした風もなく、仕方ないとばかりに軽く肩を竦めて答えた。
「選択の余地は無し、か。」
諜報部の仕事がどのような物か理解しているアズリアは、
まるで諦めにも似た口調でイスラの言葉を肯定した。
そこに籠められた感情を察して、イスラがアズリアを諫める。
「対面を気にするあまり、失敗を失墜にしてしまったら、それこそ本末転倒でしょう?
汚れ役は僕が全部引き受けるよ。
姉さんは、ただ黙認してくれればいい。」
最後の姉を気遣うような台詞に、アズリアは小さく「解った……。」とだけ口にした。
「それじゃあ取引といこうか?」
アズリアとの会話を終え、イスラがアティへと向き直る。
剣を渡せばいいのだとは解るが、アティは躊躇う。
剣を渡すためには、剣を喚ばなければならない。
もし剣を喚んで、またアキラが倒れたら?
迷い、視線を向けてくるアティに、アキラは力強く肯いてみせる。
そして、アティが意を決して抜剣する。
途端、アキラを襲う強烈な頭痛。
しかし、敵の前で倒れる訳にはいかず、アキラは歯を噛いしばって耐える。
アキラも最初の頃に比べれば、この頭痛にも随分と慣れたようで、
よろめきながらも意識を失わずに立っている。
そして、やはり聞こえてくる『声』。
アキラは、剣を持ってイスラに近づくアティを見ながら『声』に耳を傾ける。
――器、黒い器、私の体
――お前は私で満たされ、私はお前に満ちた
――後は鍵を手にして、お前を壊すだけ
――器、黒い器、私の体
――お前は私の物だ
勝手な事を言う『声』に、アキラが心の中で悪態を吐いたと同時に、
突然『声』が聞こえなくなった。
それは同時に、アティの手から剣が奪われた時だった。
「ほら、もう二度と手放したらダメだよ。」
「……っ。」
イスラの皮肉にアズリアの柳眉が逆立つが、何かを言う前にアティが人質の解放を求める。
「さあ、これで文句は無い筈です……。みんなを解放して下さい!」
「ああ、いいとも。」
「ほらよッ!」
アティの求めに応じ、イスラがビジュに合図を送ると、
スバルが突き飛ばされるように解放される。
「せんせえっ!」
自由になった安堵から、スバルはアティに抱きつき泣き始める。
アティは優しくスバルの頭を撫で、慰めてやった。
そんなアティを横目に、帝国軍の卑怯なやり方に我慢できないといった風に、
ソノラが未だに郷の者たちに武器を向け動かない兵士たちを怒鳴り散らす。
「ほら、あんたたちも、さっさとそこを退きなさいってば!」
しかし、無防備に近づくソノラに帝国軍の斧が降り降ろされる。
「―――危ないっ!!」
「え……って、ひゃああああっ!?」
キュウマの叫びで、ソノラは自分に向かって降り降ろされる斧に気付くが、
避ける事もできず反射的に頭を手で庇い、目を瞑った。
「……?」
しかし、いつまで経っても覚悟した痛みが襲ってこず、ソノラが恐々と目を開けると、
そこには鞘に差したままの刀で斧を受け止めるアキラの姿があった。
無言のまま、帝国軍を睨み付けるアキラに代わり、ファルゼンがイスラを問いつめる。
「ナンノ、マネダ……。」
「品物一つに対して人質が一人……。
正当な対価でしょう?」
予想しなかったイスラの言葉にみんな愕然となる。
そこに、ふてぶてしくイスラが追い打ちをかける。
「全員を解放して欲しいんだったら、また別の対価を用意して貰わないとね。」
その傲慢さにアティが激昂する。
「これ以上、何を望むんですか!?」
「そうだね……。
君の命、かな?」
軽く言われた言葉の意味にみんなが息を飲む中、
アキラは押し止めていた斧を弾き飛ばし、イスラを見据える。
その無言の圧力に、イスラは周りに判らないように唾を飲む。
そして、努めて軽く聞こえるように言葉を接ぐ。
「何度言えば解るのかなあ?
こっちには人質が居るんだから、大人しくしてなよ。」
イスラの軽口にアキラは何も応えず、ただその冷たい瞳を向け続けた。
その視線にイスラがキレかけた瞬間、アズリアが“命令”を出す。
「イスラっ!アティは殺さずに連れて帰るんだ。いいな?」
「……何を言ってるのさ?
使い手が死ねば、もうこの剣の力に脅えなくていい。
違いますか!?」
「ヒヒヒッ、隊長殿。まさか、イヤだとかぬかしたりしないでしょうねェ?」
アズリアのおかげで何とか声を荒げずに済んだイスラは、その命令に異議を唱える。
そして、ここぞとばかりにビジュが追随する。
アズリアが反論できずに押し黙ると、イスラは不適な笑みを浮かべてアティに話しかける。
「みんなの為に犠牲になれるんだ。
アティ、いかにも君にふさわしい結末だと僕は思うけど?
それとも、やっぱり自分の身の方が可愛いかな?」
そのあからさまな挑発に、アティは自分を差し出す事を承諾してしまう。
仲間たちは何とかアティを止めようとするが、アティは泣き笑いのような表情で謝る。
「ごめんね。自分でもバカだなあ、って思ってはいるんです。
でも……私には、やっぱりあの人たちを見捨てる事はできないから。」
それを聞いたイスラは一瞬、ほんの一瞬だけ、辛そうな表情を見せる。
しかし、すぐに酷薄な笑みを浮かべ直し、剣を抜き放つ。
「ふふふっ、本当に君は僕の期待した通りに動いてくれる。
ありがとう……そして―――さよなら!!」
目を瞑って項垂れるアティに、イスラが剣を大きく振りかぶった瞬間、
アキラが刀を抜いて二人の間に割って入り、剣を受け止める。
突然響き渡った剣戟の音に、アティが驚き目を開ける。
そして、同じように驚いているイスラが忌々しげに声を絞り出す。
「どういうつもりだい?
アキラ……。」
「もう、お前の言う事を聞くのは止めだ。
うんざりだよ。お前のやる事には。」
雷光が煌めき、アキラの冷たい表情を照らす。
怒りも侮蔑も篭っていない、ただ無機質な蒼い瞳にイスラの姿が映っている。
それを見たイスラが、悲鳴をあげるように命令を下す。
「ひ、人質を殺すんだ!」
別にイオスラには本当に人質を殺すつもりはなく、
そう命じる事によってアキラに隙ができるのを狙ったのだが、
アキラは微塵も動揺する事なく護衛獣の名を呼ぶ。
「ミユ!!」
「任しとき!」
力強い返事が返ってきたのは、囚われた郷の者たちの円の中から。
いつからそんな所に潜り込んでいたのか、
返事を返すのと同時に、ミユは準備を終えていた術を発動させる。
「護法火円陣!」
言葉と共に地面に右手を叩き付け、ミユを中心とした炎の壁で、郷の者たちと帝国兵の間を遮る。
郷の者たちに武器を向けていた帝国兵たちは、突然現れた炎に怯み、包囲を崩してしまう。
突然の形成逆転に動揺が生まれたイスラは、アキラに剣を弾き飛ばされてしまう。
剣を弾かれた時に捻ったのか、痛む手を押さえながら悔しげに唇を噛むイスラに、
アキラが刀を振り上げ冷たく言い捨てる。
「『さよなら』。」
自分がアティに告げたのと同じ言葉。
その皮肉に、イスラは小さな後悔と大きな屈辱を感じながら迫りくる刀を凝視する。
しかし、後10cmという所で、横から突き出された剣により刀が止まる。
「姉さん……。」
呆然としているイスラに強烈な殺気を送りながら、アキラがアズリアに目を向ける。
「どういうつもりだ、アズリア?」
「ふ。こんな奴でも私の弟だからな。
……見殺しには、できまい?」
その答えに沈黙するアキラを牽制しながら、アズリアが兵たちに新たな指示を出す。
「剣は手には入った。これ以上の戦闘は無用だ。撤退する!」
アズリアの命令に、兵たちは包囲を解いて森の中に逃げようとする。
しかし、森に入る直前で風が巻き起こり、帝国兵たちの行く手を塞ぐ。
驚き、慌てる帝国兵たちを見ながら、キュウマとスバルが顔を見合わする。
「これは―――。」
「母上の『風』だ!」
さらに風は強くなり、帝国兵たちをその場に釘付けにする。
そして、その風にのって声が響く。
「重ね重ねの非道の数々、もはやこのまま見捨ててはおけぬわ。
白南風の鬼姫ミスミ、これより参戦仕る。
……覚悟しやれや!外道ども!!」
清冽な啖呵を切って現れたミスミが槍を帝国軍に向けて構える。
風の壁によって逃げ場を失い、はぐれたちを突破しなければならなくなった帝国兵に、
アキラから距離を取ったイスラが戦意を煽るような指示を下す。
「人質がいなくたって何も問題は無いさ。
あいつらは、もう剣の力を頼る事はできないんだからね。
さあ、返り討ちにしやるんだ!!」
イスラの指揮で帝国兵が猛然と突撃する中、アズリアはギャレオと少数の兵を従えて後方に居た。
この戦闘には参加する気はないのか、乱戦となった戦場を冷静に見据え続ける。
そして帝国側が押され始めた時、全軍に向けて号令を下した。
「これより包囲網を突破する!
残存部隊は負傷者を回収、戦闘部隊で動ける者は自力でついて来い!
行くぞ!!」
アズリアを先頭に、残っていた帝国兵たちが戦場になだれ込む。
そしてアズリアが道を切り開き、帝国兵が戦場を駆け抜けた後には、アティたちだけが残された。
「逃げられてしもたな。」
「……そうだな。」
いつの間にか隣に来ていたミユに、アキラが静かに応える。
そして戦場を見渡すと、いつもの優しい笑顔を浮かべ、明るく告げた。
「ま、誰も死ななかったみたいだし、結果オーライだろ。」
(-ω-)/ やあ!魔剣が奪われたよ!でも気にしない!