黒の魔剣   作:暁 煌

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一難去ってまた一難

 

 

 

 

 

昼も大分過ぎた頃、海賊船の前に人だかりができていた。

アティたち、遺跡を封印に行った者を出迎えようとする面々である。

じっと森を見つめる一同の視界に、三つの人影が映る。

 

それはやはり、期待通りにアティ、アルディラ、ファルゼンの三人組で、

ざわめく仲間たちに迎えられながら、三人は船内へと進んでいく。

船長室が、護人たちとアティ、

そして見張りの為に外に残ったスカーレル以外の海賊たちでいっぱいになる。

 

「全部―――終わりました。」

 

幾分か疲れた表情をしたアティが、それでも笑顔を浮かべ達成感に満ちた声で告げる。

 

「そうか……。」

「ご苦労様でした。」

 

すると、一同を代表するようにカイルが感慨深げに肯き、ヤードが労いの言葉をかける。

 

「「…………。」」

 

その様子を一歩後ろから、アルディラとファルゼンが黙って眺めていると、

二つの影が二人に近づいて来る。

二人がその影に気づいて振り向くと、そこには随分古くからの同僚たちの笑顔があった。

 

「詳しい話は後でしっかりと聞かせて貰うからな……お二人さんよ?」

「とりあえず、今日のところはゆっくりと休んで下さい。」

 

ヤッファがどこか嬉しそうな響きを持たせながらも問いつめるように言うと、

それをフォローするようにキュウマが労りの言葉をかける。

アルディラとファルゼンは、二人の言葉をただ黙って有り難く受け入れた。

 

「やれやれ、こんなのはもう二度とゴメンだよ。」

 

和やかな雰囲気に包まれた一同を見渡し、ウィルがアティに向かい苦笑いを見せると、

アティも申し訳なさそうに笑って返す。

 

しかしアティは、ふと何かに気づいたように視線を左右に巡らせる。

やがて一通り見渡したアティは、目当てのモノが見つけられなかったのか、誰ともなく尋ねた。

 

「あの、アキラさんは……?」

 

その一言に、今まで談笑していた留守番組がぴたりと押し黙る。

突然の沈黙に封印組が慌て出す。

 

「まさかアキラさんに何かあったんですか!?」

「ヤッファ!キュウマ!貴方たちが付いていながら、どういう事なの!?」

「―――!」

 

アティとアルディラばかりか、ファルゼンにまで詰め寄られ、ヤッファとキュウマが後ずさる。

たじたじとなる二人に代わり、カイルが前に出ると手を挙げて三人を押し止める。

 

「おいおい、落ち着けよ。アキラなら無事だ。」

 

その言葉に安堵の表情を見せる三人だが、続く目を伏せたソノラの言葉に再び慌て出す。

 

「……また、寝ちゃってるけどね。」

「そんな―――っ!?結界が効かなかったんですか!?」

 

心なしか青ざめて叫ぶアティに、キュウマが淡々とした口調で答える。

 

「いえ、結界は間違いなく機能していました。しかし―――。」

「遺跡の方が一枚上手だったって事さ。」

 

言い淀んだキュウマに代わり、ヤッファが自嘲するように続けた言葉に全員が重く沈む。

その沈黙を破るように、アルディラがいつもの冷静な声でクノンに問いかける。

 

「クノン、アキラはいつもの昏睡に陥っただけなのね?」

「はい。生命・身体共に異常ありません。」

 

すかさず、いつもの感情の動きが見えない平坦な声の返答がくる。

 

そう。アキラには何の異常もなかった。

少なくとも、封印を行う前と比べては。

事実、今もアキラはベッドで静かに寝ている。

“銀髪”のアキラが。

 

「そう。なら遺跡は封印した事だし、今回の作戦は成功というところね。」

 

アルディラが重苦しい雰囲気を消そうと、笑顔で明るく振る舞うが、

同じタイミングで部屋に入ってきたスカーレルが水を差す。

 

「だったら、良かったんだけどねぇ……。」

「どういう事よ?」

 

意味が掴めず尋ねるソノラに、スカーレルがうんざりしたように答える。

 

「外を見ればイヤでも解るわよ。」

「まさか―――!」

 

その言葉に弾かれたように、アティは船外に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「隊長殿ォ、何でさっさと仕掛けようとしねェんですか?

 今なら船ごと火ィつけちまえば、全滅できるでしょうに!」

 

海賊船をぐるりと包囲した帝国軍の先頭で、

ビジュが不満を隠そうともしないでアズリアに詰め寄る。

 

「言った筈だぞ。

 軽々しく火攻めを行うのは止めろ、と。

 使い手ごと剣を手に入れる、ともな。

 それに、剣が喚ばれていない状態で使い手が死んだ時、

 剣がどうなるのかは誰にも解らんのだからな。」

 

しかし、アズリアはビジュの方を見る事もなく、その不満をあっさりと斬り捨てる。

まるで無視するかのようなその対応に、ビジュの顔が一瞬怒りに染まるが、

すぐにいやらしい笑いを浮かべると、なおもアズリアに纏わり付く。

 

「成る程……。

 ですが、本当にそれだけが理由なんですかねェ……。」

 

何か含むようなビジュの言葉に、アズリアは目を細め、初めてビジュの方を向く。

 

「ほう?何か言いたそうだな、ビジュ?

 言いたい事があるなら言ってみるがいい。

 貴様ごときが、私に、何か言えるのならな!」

「―――くっ!」

 

凄まじい侮蔑が込められた言葉とプレッシャーに、思わずビジュの足が一歩下がる。

そこへギャレオが現れ、アズリアに報告を入れると共に、船の一角を指さす。

 

「隊長、奴らが来ました!」

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

船から出てきたアティたちが見たのは、辺りを埋め尽くすような帝国軍の陣容だった。

 

「性懲りもなく来やがって。」

 

アティと共に出てきたカイルが忌々しそうに言い捨てる。

その後に仲間たちがぞろぞろと現れ、帝国軍と相対する。

その様子を黙って眺めていたアズリアが、揃った面々を見て尋ねる。

 

「……アキラの姿が見えんな?」

「へっへーんだ!残念でした!今回アキラはお留守番だよ!」

「お前らの相手は、オレらだけで十分だ!」

「なんだとぉ!?」

 

アズリアの問いかけにソノラとカイルが挑発混じりに答えると、

気の短いギャレオが身を乗り出すが、アズリアが片手を上げる事で制する。

 

「……ふん。アキラが参戦しないのならば、こちらにとっても好都合だ。

 これ以上、時間の浪費を繰り返すのは不本意なのでな。

 今日こそお前を連れて帰る!」

 

一瞬、ほんの一瞬だが、アズリアは気遣わしげに船を見た後、

表情を不敵な笑みに変えてアティに宣戦を布告する。

 

「そんな事をしても、もう無意味です。」

「なんだと?」

 

その布告に対し、アティは穏やかな笑みで戦わない事を告げる。

当然、思いも寄らなかった事にギャレオが疑問の声をあげた。

そしてアティは静かな声で、その疑問に答える。

 

「あの剣は封印しました。島の遺跡ごと。」

「―――っ!」

 

告げられた事実に、アズリアが息を飲んでアティを凝視する。

そんなアズリアを見返しながら、アティが嬉しそうに話しかける。

 

「だから、もう争いを続ける理由なんて無い。

 渡せと言われたって、剣はもう無いもの。」

 

アティと付き合いが長いアズリアは、それが本当の事なのだろうと思い、目を瞑り黙考し始める。

そんなアズリアの様子を見ていたギャレオが、何も言わない上司に代わり声を荒げる。

 

「―――デタラメを言うな!」

「ホントだってば。

 あんまりしつこいと嫌われるよ、オジさん。」

「む、ぐぐぐ……。」

 

しかし、一回りも年下の娘に軽くあしらわれ、口を噤む。

その時、黙考を続けていたアズリアが目を開き、アティに決然と告げる。

 

「ならばなおの事、お前を手に入れねばならんな。」

「え!?」

 

その言葉に驚くアティとは対照的に、スカーレルが相手の真意を見抜く。

 

「成る程……センセに封印を解かせるつもりね。

 ま、そうしないとアンタたちは帝国に帰る事もできないんだし、当然よね~。」

 

スカーレルの言葉を聞いて、アティは初めてその事実に気づき、眉を寄せる。

そんなアティを気遣うように、ヤードが声をかける。

 

「どちらかが勝てば、もう片方は負ける。

 それが、世の理ですからね……。」

 

アズリアは、アティの苦しそうな様子に気づかぬフリをしながら、冷たく言葉を紡ぐ。

 

「封印されたのなら、解き放てばいい。

 そして、封印した者ならば、その解き方も知っているのが道理。

 今度こそ貴様らを叩きのめし、全てを手に入れてみせるッ!!」

 

最後は剣を抜きながら言い放ったアズリアに、カイルが荒々しい笑いで応える。

 

「おもしれぇ……。やって貰おうじゃねえかよ!」

 

ぴりぴりとした一触即発の雰囲気に、ウィルが不安げにアティを見上げる。

 

「先生……。」

 

ウィルの声に、アティは一度目を閉じて深く息を吐く。

そして厳しい表情で帝国軍を見遣る。

 

「みんなが辛い思いをして、ようやく手に入れた平穏だもの。

 その想いを―――無駄にする訳にはいきません!!」

 

戦う意志を固めたアティに、ビジュがいやらしい笑みを向ける。

 

「いいのかァ?剣の力にゃあ、もォ頼れねェんだろォ?」

 

そしてギャレオが今までの鬱憤を晴らすように、気合いに満ちた声をあげる。

 

「互角の条件での戦いならば、我らが不覚を取る事は無い!」

「く―――っ。」

 

その勢いに怯むアティを庇うように、涼やかな声と共にアルディラが前に進み出る。

 

「そう都合良くいくものかしらね?」

「あるでぃら……。」

 

今までのアルディラからは予想できない行動に、ファルゼンが呆然とその名前を呟く。

すると、アルディラが微笑みと共にファルゼンに話しかける。

 

「島の平穏を乱す者は絶対許さない。それが護人の務め。

 そうでしょう?ねえ、ファルゼン。」

「……アア!」

 

その問いかけに、ファルゼンが高揚した声で応える。

すると、仲間たちの中からヤッファとキュウマも進み出て、不敵な笑みを見せる。

 

「やれやれ……。そんじゃ、オレらも―――。」

「負けずに務めを果たしましょう!!」

「……いきます!!」

 

そんな護人たちに励まされたように、アティも再び毅然とした表情で告げる。

そして戦闘が始まった。

 

 

 

 

 






(-ω-)/ やあ!オリ主不在で事態は進んいくよ!

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