島に住む者たちが夕闇の墓標と呼ぶ丘。
そこが帝国軍が指定した決戦の場だった。
誰がそう呼び始めたのか、いつからそう呼ばれ始めたのかは判らない。
ただ、その丘が夕陽に染まる時、点々と存在する自然石がまるで墓標の様に見える丘だった。
間も無く夕暮れとなる時刻、その丘に整然と布陣する帝国軍と対峙する様に小さな集団が現れた。
「来ましたぜ、隊長殿。」
「……。」
自分たちに比べ、十分の一にも満たない人数の癖に、
まるでこちらを怖がりもせず堂々と現れた一団に、ビジュは苦々しげな表情で報告する。
当然、アズリアにもその姿は見えていたが、特に何も語らず、その一団が来るのを待った。
やがて、ある程度距離をとって停止した一団の中から一人、アティだけが歩み出てくる。
それに呼応して、アズリアも軍勢から離れる。
二人は、互いの集団の丁度中間地点で向き合った。
「今回で決着―――ですね、アズリア?」
「ああ。この一戦でケリをつけるとしよう。」
アズリアを前にして、アティはいつもとは違う笑みを浮かべる。
それは好敵手を前にした戦士の笑み。
これから始まるギリギリの戦いに、自然と高揚する心が作り出した笑み。
対するアズリアも、同様の笑みを浮かべている。
「何故この剣が私の所に戻ってきたのかは解らないけど、
この剣も、この島も、帝国には渡せません!
今度こそ、貴女には諦めて帝国に帰ってもらいます!」
「ふ、いいだろう。
お前が自分の願いの為に戦うように、私は、私の未来の為に戦おう。
今日こそ、お前共々剣を持ち帰り、我らの手柄にしてくれる!
お前らの想いと我らの想い。どちらが強いものであるのか……。
この一戦をもって証明してみせる!!」
アティが胸を張って不敵に告げれば、アズリアもにやりと笑って轟然と返す。
そして二人は互いに背を向け、これまでの事を振り返るように、
ゆっくりと歩いて自分の陣営に戻っていった。
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仲間の下へと戻って来たアティには既に不敵な笑みは無く、どこまでも真剣な表情をしていた。
そんなアティに引き込まれるように、仲間たちの表情も引き締まる。
アティは居並ぶ仲間たちを見渡し、指揮官の口調で告げる。
「これから指示を出します。
カイルさん、ヤッファさん、ファリエル、スバルくん、ウィルくんは、
私と一緒に正面から敵中央と左翼を食い止めます。」
「応ともよ!!」
「今回ばかりは、面倒くせぇともいえねぇしな。」
「任せて下さい!」
「う、うん!」
「分かりました。」
力強く笑うカイル、いつもと同じふてぶてしい笑みのヤッファ、
見慣れた鎧姿のファリエル、幾分か緊張しているスバル、
そして、任されたポジションに掛かる責任の重圧に、自然と手に力が入るウィル。
それぞれからの返事を確認し、アティは続けて次の指示を出す。
「ソノラ、アルディラ、マルルゥには、この前線部隊を後方から援護して貰います。」
「任せといて!」
「了解したわ。」
「頑張るですよぅ!」
元気よく返事をするソノラと、静かに了承するアルディラ、
そして空中で一回転して、そのやる気を見せるマルルゥ。
三人の返事に肯き返し、アティは更に指示を続ける。
「ヤードさん、フレイズさんは後方部隊を守りながら、前線部隊の回復をお願いします。」
「承知しました。」
「お嬢さん方を護衛はお任せ下さい。」
真剣な面持ちで返事をするヤードと、朗らかに笑ってみせるフレイズ。
二人の返事を確認して、次の指示を出す。
「アキラさん、ミユちゃん、ミスミ様、クノンは敵右翼を強襲。
できる限り素早く壊滅させて、敵中央の横を突いて下さい。」
「りょ~かい!」
「……ふん。」
「承知した。」
「お任せ下さい。」
何やら楽しげに返事をするアキラと、そっぽを向くミユ、
そして貫禄と共に肯くミスミと、いつも通り何の気負いも感じさせないクノン。
それぞれの顔を見渡し、アティは次の仲間に顔を向ける。
「スカーレル、キュウマさんは、右翼を更に迂回する形で敵の後ろを突いて貰います。
まずは気付かれないように回り込んで、アキラさんたちが敵中央の側面を攻撃し始めたら、
後ろからできるだけ派手に攻撃して下さい。」
「へえ、面白そうじゃない。」
「お任せを。」
不敵な笑みを見せるスカーレルと、重々しく肯くキュウマ。
二人の返事を聞いてからアティは軽く息を吐くと、更に瞳に力を込めて中間たちを見据える。
「まず最初の突撃時は一塊で行きます。
その後、敵と戦闘になる前に、各部隊へと分かれて下さい。」
アティはそこで一息置くと、ゆっくりと全員の顔を見渡す。
そして皆が静かに聴いているのを確かめ、続ける。
「この作戦の成功は、敵中央と左翼を抑えている間に、右翼を撃破し、
側面と後方を同時に突けるかどうかに懸かっています。」
アティの言葉に全員の顔が緊張に引き締まる。
何度も戦って勝ってきたとはいえ、帝国軍は弱くない。
この作戦が失敗すれば自分たちは負けて、アティは剣ごと帝国に連れ去られ、
島は蹂躙されてしまうだろう。
絶対に負けられないという想いが、仲間たちの心を結びつける。
そんな仲間たちの想いに応えるように、アティが力強く宣言する。
「今度こそ、この戦いに決着を付けます!!」
「「「「おお!!」」」」
そして、戦端は開かれた。
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戦いが始まってから数時間。
戦況は、ほぼアティの作戦通りに進んだ。
確かに帝国軍は弱くなかったし、数もアティたちより多かったが、
個々の能力と連携ではアティたちが勝っていた。
見事なチームワークと強さで、アティたち主力部隊が敵の中央と左翼を抑え、
その間にアキラたち強襲部隊が敵右翼を打ち破る。
敵右翼にはアキラたちの倍は人数が居たが、
かつてミユと二人で敵陣を突破したアキラを止められる筈も無く、
更にミスミとクノンという中距離支援が付いていた事もあって、
右翼はあっと言う間に蹴散らされてしまった。
そのまま強襲部隊は、作戦通りに敵中央の側面に襲い掛かったが、一つ不安があった。
それは、スカーレルとキュウマの奇襲部隊である。
他の部隊に比べ、奇襲部隊は敵に気付かれないように後方に廻らなければならない。
その為、どうしても移動に時間がかかる。
しかも、アキラたち強襲部隊は思ったより早く右翼を破ってしまった。
側面と背後を同時に攻撃するのは間に合わないかと思われたが、
スカーレルとキュウマの二人はその特技を活かし、見事に間に合わせてくれた。
二人は帝国兵の視界を避け、地面の起伏や岩の陰を伝い、素早く敵中央の背後へと廻り込み、
アキラたちが側面を攻撃し始めたのを合図に、音と光が派手な召喚術を撃ちまくった。
思わぬ所からの攻撃により、帝国軍は統率を乱し、総崩れとなってしまう。
そこへアティたち主力部隊が、ここぞとばかりに攻撃に転じ、勝敗は決した。
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いつかと同じ様に、アズリアはアティと向かい合っていたが、
次々と部下が打ち倒され、最後に残っていたギャレオがカイルの一撃で地に沈んだ時、
ゆっくりと剣を下ろし、構えを解いた。
「……どうやら、ここまでの様だな。
最後の最後まで……結局、お前には敵わなかったな。」
「アズリア……。」
アズリアは剣を足元に突き立て目を瞑り、息を吐くように敗北を宣言すると、
諦観の笑みをアティに向ける。
負けたというのに、どこかすっきりしたようなその笑みに、
アティもほっとしたような、嬉しそうな笑みを返す。
そんな二人の周りに、まだ動く事のできるそれぞれの仲間たちが集まってくる。
アティの方はアキラを始めとし、仲間たち全員が自分の足で立っているのに対し、
アズリアの方は、自分の足で立っているのはギャレオのみ。
後の帝国兵は互いに支えあっているか、動けずに倒れたままだ。
そのギャレオにしても、立っているのが精一杯といった様子。
部下たちの様子を見て、自分たちの完全な敗北を改めて確認し、
アズリアは少しだけ寂しげな表情を浮かべる。
それが、今まで築き上げてきた功績が崩れ去る事に対してなのか、
自分が鍛え、率いてきた部隊の初めての敗北に対してなのかは、アズリア本人にしか解らない。
そしてアズリアは、アティに向き直る。
「さあ、アティ。煮るなり焼くなり好きにするがいい。
勝者には、それをする権利がある。」
先程までの殊勝な雰囲気とは打って変わり、投げ遣りに言い捨て、
その場にどかりと座り込むアズリア。
そんなアズリアに、アティはにっこりと笑いかける。
「そんな権利なんて、私は知りません。」
「アティ……?」
てっきり剣を諦め、帝国への帰投を命じられると思っていたアズリアは、
アティを困惑の表情で見上げる。
そこへ、楽しそうな顔をしたアキラが割って入ってくる。
「そうそう。そんな権利なんて誰にも無い。
そうじゃないと、誰も彼もが負けられなくなるだろ?」
「!!?
な、何を言っている?負けられないのは当然だろう!?」
憎たらしいまでの笑顔で、今までの自分の常識を否定するアキラに、
アズリアは驚愕し、自分の常識を再確認しようとする。
しかし、そんなアズリアの望みが果たされる事は無かった。
アキラは静かな笑みと、静かな声で、強く語りかける。
「違うよ。負けたっていいんだ。
ただ、自分の一番大切なモノが守れれば。」
「……。」
それは単純な事。とても単純な事だった。
しかし、だからこそ気付き難い真実。
勝たなければ守れないと思っていた。
勝つ事が守る事だと信じていた。
そんなアズリアの思い込みが、アキラの一言で崩れ去る。
今まで、どんな時でも意識的に、そして無意識の内に張られていた、
アズリアの肩の力が、すとん、と抜け落ちる。
そんな気の抜けた様なアズリアに、まるで相手が解らなかった公式の解き方を教える時の様に、
少し得意顔のアティが講釈する。
「そうですよ、アズリア。
勝った方が何でも好きにできたら、負けた方はどうなっちゃうんですか?
ちゃんと負けた方の事も考えなきゃ。」
常識を覆す様な、自分が礎としてきた常識を覆す様な事を、平然と述べるアティに、
アズリアの顔に自然と笑みが浮かぶ。
昔からそうだった。
いつだってそうだった。
この目の前に居る人物は、初めて会った時から己の常識に反してきた。
しかし、それはいつも嫌なものではなかった。
どこか心が暖かくなる、優しい否定。
世の中はそんなに酷い物じゃないと思わせてくれる、優しい言葉。
今もまた、その言葉はアズリアの心を暖かくしてくれる。
「……ふ、そう負け負けと連呼するな。
腹が立つ。」
だから、そんな憎まれ口を叩きつつも、アズリアの顔には笑顔が浮かんでいる。
その楽しげな顔に、アティとアキラも笑顔を見せる。
そしてアティは、座ったままのアズリアに手を差し伸べる。
「剣は渡せないけど、帝国に帰る為の手助けなら私たちにもできると思う。
一緒に探しましょう?
互いの望みを叶える為の方法を。」
「そんな都合のいい話、お前は本当にあると思っているのか?」
まるで夢のような事を言うアティに、差し伸べられた手を掴み、立ち上がりつつも、
アズリアはアティに探る様な目を向ける。
それに対し、アティは純粋な、真っ直ぐな瞳を返す。
「信じなかったら、どんな思いだって叶いっこないよね?
だから―――私は信じます!」
「それに、探してみなきゃ在るか無いか判らないだろ?
探してみれば、案外簡単に見つかるかも。」
アティの力強い言葉の後に、アキラが軽く続ける。
それは尤もで、前向きで、気楽な言葉だったが、
いつもの綺麗な笑みでアキラが言うと、本当にそんな気がしてくる。
だから、アズリアも自分の常識を曲げる気になったのかもしれない。
「敵わんな……お前たちには……。
そう言い切られると、拘っていた自分がバカらしくなってくる。」
呆れた様に、感心した様に呟き、アズリアは小さく笑う。
その言葉にアティは瞳を輝かせてアズリアを見る。
「それじゃ―――。」
「勝者からの和平だ。無碍にする訳にもいくまい?」
その一言に、アズリアの、帝国の降服宣言に、アティたちから、わっ、と歓声が上がる。
これで長かった戦いが終わるのだ。
これで島に平和が戻るのだ。
以前の様に、穏やかで楽しい日々を過ごせるのだと、互いの手を取って喜び合う。
そんな輪の外では、アズリアの前に部下たちが集まりつつあった。
よろめきながら、あるいは肩を貸し合いながら集まった部下たちに、アズリアは静かに告げる。
「聞いての通りだ。
我々は剣の奪還を諦め、島の者たちの協力の下、帝国へ帰還する。」
「そんな―――っ!」
「命令は……任務はどうするのです!?」
アズリアの宣言に、兵たちの間から驚きの声が上がる。
寄せ集めの部隊だった自分たちが、アズリアが隊長になってからは、
まるで帝国の精鋭部隊のように失敗知らずになった。
その自尊心故か、それとも、そんな自分たちにしてくれたアズリアの恩義に報いるためか、
兵たちは口々に任務の続行を上申する。
しかし、そんな申し出をアズリアは一言で封じてしまう。
「我々は負けたのだ。
全力で正々堂々と挑み、打ち負かされたのだ。
これ以上、何ができるというのだ?」
「「「…………。」」」
他の誰でもないアズリアにそう言われてしまっては、兵たちには何も言う事はできない。
無言で悔しそうに俯く兵たちに代わり、ギャレオがアズリアに声をかける。
「隊長……。」
「すまん、ギャレオ。
私は部下たちに、軍人としての死よりも生を与えたいらしい。
……身勝手を笑ってくれ。」
「いいえ!自分は、決して……決して―――っ!!」
上官の弱々しい表情と、初めて聞いた謝罪の言葉に、
ギャレオも言葉を詰まらせ、目の端に涙を浮かべる。
そんなギャレオを見て、アズリアは苦笑する。
「大の男が泣くな。見っとも無い。」
「はいっ、申し訳ありません―――っ!!」
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「あはははは!ははっ、あはははっ、あはははははっ!!」
突然、場の雰囲気に沿ぐわぬ哄笑が響く。
勝利に沸くアティたちも、敗北に泣く帝国軍も、
驚きの表情でその発生源を見遣る中、アキラとミユだけが冷めた目でその人物を捕らえる。
「何だかんだ言って、姉さんは結局、覚悟ができてなかったってワケだ?」
「イスラ……。」
その場に居た全員の注目を集める中、イスラの口から悪意が漏れる。
思っても見なかった弟からの侮蔑に、アズリアが呆然とイスラの名前を呟く。
「ま、仕方ないか。姉さんにとって、その人は大切なオトモダチだものね。」
「―――っ!」
そんなアズリアの様子を、まるで気にしていないかのように、
イスラは嘲笑を浮かべて更なる侮蔑を口にする。
アズリアがその言葉に息を呑み、身を強張らせる。
その姿を見たギャレオが激昂し、ぼろぼろの体で一歩進み出る。
「口をつ―――」
「黙れよ。」
しかし、ギャレオの怒声を冷たい声が遮る。
その声を聞いた者はみんな、余りの冷たさに動きを凍て付かせる。
恐々と、見てはいけないモノを見るように、アティたちは視線を動かす。
その先に居たのは、蒼い瞳に冷たい光を宿し、鋭くイスラを見据えるアキラ。
「前にも言ったぞ?『うんざりだ』。お前の戯言に付き合うのはな。」
言いつつ、アキラは一歩イスラに向けて足を踏み出す。
逆に、アキラから放たれる圧迫感によって、イスラは一歩後退する。
その一歩はどうやら無意識での行動だったらしく、
下がってからイスラは自分が後退した事に気付く。
それがプライドを刺激したのか、イスラは羞恥と怒りを顕にする。
「う、うるさい!何を勝ったつもりでいるのさ!?
『僕は』まだ負けてない!!
そうだろう、ビジュ!?」
「仰るとおりでさぁ、イヒヒヒヒ……。」
「……?」
怒鳴りつけるようにビジュに同意を求めるイスラに、今まで何処で何をしていたのか、
ほとんど怪我らしい怪我もしていないビジュが現れ、追従する。
そんな二人の様子にアキラは怪訝な目を向けるが、疑問の声はギャレオから発せられた。
「貴様ら……どういうつもりだ!?」
「手前ェらの指揮に従うのは、いい加減うんざりって事だよッ!」
ギャレオが詰問した途端、弾かれた様にビジュががなりたてる。
その目には、逆恨みという名の憎悪の炎が踊っていた。
それに対してイスラは味方ができた事で落ち着いたのか、いつもの皮肉気な笑みを浮かべる。
「ここからは、僕らのやりたいようにやらせてもらうよ。
言葉のやり取りなんか必要ない、力だけで決着をつける。明快なやり方でね!」
「何ですって……?」
イスラの言葉に、アティが硬い表情で疑問を口にする。
先程の戦いで、帝国兵たちはみんな、傷付き、疲労している。
イスラがやろうとしている事は、事実上不可能だ。
それとも、一人でアティたち全員と戦おうと言うのか?
同じ考えに至ったアズリアは、イスラを止めようと声を上げる。
「馬鹿な事は止めろ、イスラ!
お前だって解っている筈だ……。我が軍の戦力は、全てこの一戦に費やした。
これ以上、戦いを続けていく事など不可能なんだ!」
「それは姉さんの部隊の話でしょ?僕の部隊は傷一つ付いちゃいないよ。
なにしろ―――ついさっき到着したばかりなんだからねぇ。」
「「「「!?」」」」
アズリアの叫びに、イスラは皮肉気な笑みを深くする。
そして、イスラの口から告げられた言葉に、護人たちが驚く。
何故なら、イスラの言葉、それはつまり、結界に覆われたこの島に、
今、目の前に居る者たちの他にも人間が居て、自分たちはそれに気付かいていなかったという事。
アティたちの前に人間が来た事は無く、アティたちが結界を越える時でさえ、
嵐という徴があった。
それが、今回は何の変異もなく島に侵入していたというのだ。
結界の強力さを、遺跡の力を識っているだけに、俄かには信じられない話だった。
そして、それは他の者たちにしても同じ事だった。
「援軍が……?援軍が来たのか!?」
「そんな……。島の周りには嵐の結界が……。」
「あんなもの、とっくに消えてなくなってるよ。もう出入りは自由さ。
難しく考えなくたって、帰る事なら簡単にできるんだよ。」
不確定ながらも、朗報に沸き立つギャレオ。
即座には信じられず、呆然とするアティ。
そして、人を小馬鹿にした笑みを浮かべるイスラ。
そんなイスラに、肩を震わせながらアズリアが問い質す。
「ならば……ならば、今の死闘は何の意味も無かったと言うのか!?」
「負け戦に意味を求める必要なんて無いじゃない。」
アズリアの叫ぶような問いかけに、イスラは無感動に答える。
まるで当然の事を答える様に、まるで感じる事など何も無いかの様に。
「イスラ、貴方はそれを知っていてどうして……?」
「ふふふふ……。」
そんなイスラに、アティは怪訝な顔を見せるが、イスラはただ不敵に笑うのみ。
そして、戦いが終わるのを待っていたかの様に、出番が来るのを待っていたかの様に、
辺りが夕陽に紅く染まる中、たくさんの人影が整然と行進し、
夕闇の墓標と呼ばれる丘に姿を現した。
(-ω-)/ やあ!戦争だ!もっともっと戦争だよ!