黒の魔剣   作:暁 煌

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無色の派閥

 

 

 

 

 

森の中、少年と少女が向き合っている。

大きな木の下で顔を伏せてしゃがみ込んだ少女はその小さな肩を震わせいて、

少年はそんな少女に気遣わしげな目を向けている。

 

少女は泣き声を出さない様に、少年はかける言葉を見付けられずに、

二人とも無言のまま、幾許かの時間が流れる。

そして、そんな二人に動きを促すかの様に優しい風が通り過ぎた時、

少女がそれまでの雰囲気を吹き飛ばすかの様に、勢い良く立ち上がった。

 

「よっしゃ!ヘコむんは終わりや!!

 こっからはまた、気ぃ入れていくでぇ!!」

 

大きな声でそう言いながら、袖で乱暴に目許を擦る少女。

その突然の行動に少年は驚き、一拍返事が遅れてしまう。

 

「そ、そうですよ!

 振られたって言っても、嫌われた訳じゃありませんし!」

「……。」

「……?」

 

励ます意味も込めて笑顔で告げる少年。

しかし、その台詞は何の慰めにもなっておらず、

むしろ逆に少女のこめかみを引きつらせる結果に終わった。

特に、『振られた』、の部分で。

にも関らず、少年はそれに気付く事無く、にこにこと笑顔を向けている。

 

当然少女はキツイ目を少年に向けるが、

少年の純粋で全く悪気の無い様子が何処と無く想い人とイメージが重なり、

怒りを削がれて溜息を吐く。

そして、ふと何かに気付いた様に考える。

 

「……そういや、そやな。

 恋人にはしてくれへんかったけど、アキラはウチの事、

 好き言うてくれたし……。」

 

そこまで呟くように喋ると、少女は何かに閃いた様に焦り始めた。

 

「こんな事しとる場合やない!

 アキラがウチのもんになる前に、変な虫が付かん様にせんと!!

 ―――行くで、ウィル!!」

「っ!!

 ~~っ、はい!ミユさん!」

 

弾ける様に走り出しながらも、付いて来る様に『名前』で呼びかけるミユ。

今まで頑なに拒絶されていただけに、その喜びはとても大きく、

少年は、ウィルは、涙ぐみながらも綺麗な笑顔で応えた。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

ミユと別れて船に着いた時、その時にはもう事態はかなり進んでいた。

朝早くに行われたという護人会議で、住民たちは集落から当分の間出ない事が決まり、

子供たちに至っては、家の外で遊ぶ事すらできなくなったらしい。

そして当然、アティの青空学校も休校という事に。

 

「う~ん……。尤もな処置と言えばそれまでだけど、大変な事になってきたな。

 ん?学校が休みってのいいとして、家庭教師の方はどうするんだ、アティ?」

 

海賊船の傍に設置されている、簡易テーブルとイス。

そこに腰掛けて、これまでの話をアティに聞いていたが、ふと思い付いた疑問を尋ねてみた。

 

「えっと、それが―――、

 ウィルに『上の空で授業されても困る。それに今にも倒れかねない。』

 と言われて、家庭教師の方も一時休みって事になっちゃって……。」

「あはは。それじゃ、どっちが先生だか判らないな。」

「うぅ。面目ありません。」

 

目を泳がせながら気まずげに答えるアティ。

その様子が面白くて笑って返せば、アティは更にしょげ返って体を小さくした。

……アティを苛めるのって、楽しいかも。

 

俺がそんな事を考えていると、

不意にしょげていたアティが愁いを帯びた表情を浮かべ、呟いた。

 

「……でも、無色の派閥を島から追い出さない限り、

 ずっとこんな毎日が続く事になるんですよね……。

 早く、何とかしないと―――。」

 

その台詞に、俺は笑いを消して尋ねる。

少し目を細めて、アティの反応を見逃さないように。

 

「それで、アティはどうするつもりなんだ?」

「どうって―――。」

 

戸惑いに瞳を揺らすアティに、更に声をかける。

 

「この前見た様子じゃ、無色の派閥は個人の意思なんて無い。

 指導者の掲げる理想を絶対として、それを実現する為だけに機能している機械みたいな物だ。

 アティの言葉は―――多分届かない。」

 

目を逸らさない様にアティの瞳を見詰めて、告げる。

そう、あの暗殺者たちは自分の事を人間だと思ってない。

……思わされていない。

だからきっと、言葉での説得はできない。

最後には目を瞑って、吐息のようにアティに伝える。

 

「解ってます。

 アキラさんの言葉は正しいと思います。割り切らなきゃいけないとも思います。

 でも―――。」

 

返ってきた強い言葉に目を開けると、アティがしっかりと俺の目を見詰め返してきていた。

その訴えかけてくる瞳に、自然と小さな笑みが浮かんだ。

 

「割り切れないんだな、やっぱ。」

「信じたいんです。

 何もかもが結局最後は力によってしか解決できないのなら、

 何の為に言葉が存在しているのか、悲しくなっちゃうから。

 私は……信じたいんです……。」

 

祈る様なその言葉に、最後にもう一度だけ問いかける。

 

「投げかけた言葉が、暴力によって返されるとしても?」

「その時は、私が矢面に立って受け止めます。」

 

迷いも無く、しっかりと即座に返ってきた答え。

その余りにもアティらしい答えに、苦笑が漏れた。

 

「簡単に言ってくれるよ、全く……。

 ま、その時は俺も微力ながら力を貸すけどさ。」

「ありがとうございます、アキラさん。」

 

俺の言葉に満面の笑顔で応えるアティに、俺も笑顔になる。

うん。やっぱりアティには笑顔が似合う。

作り笑いや、愛想笑いや、癖になってるものじゃなく、今みたいな本当の笑顔が。

 

のほほんとそんな事を考えていると、遠くからチビたちの声が聞こえてきた。

どうやらパナシェとスバルの二人が、アティを呼びに来たみたいだ。

 

―――みんなが、襲われてる?

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「ヒヒヒヒッ!大人しくしやがれ化け物がァッ!!」

 

森の中の拓けた一角で、野卑な男の声が上がる。

次々に轟く召喚術の炸裂音。

そして上がる、様々な悲鳴。――悲鳴。―――悲鳴。

 

逃げ惑うのは誰もが人では有り得ない異形。

男が化け物と呼ぶのも頷ける。

しかし、その様はどうだろう?

彼らは弱々しく、ただ逃げ惑い、人間である筈の男が嬉々として襲い掛かる。

これではいったいどちらが“化け物”だと言うのか。

 

その繰り広げられる残酷な光景を止めたのは、冷徹な女性の声。

 

「加減を考えなさい。殺してしまっては元も子もありません。」

「は、はっ!」

 

男は女性の声に畏まり、攻撃を控える。

 

しかし、それは被害者にとって何の救いでもなく、

更なる悲劇をもたらす為の前奏曲でしかなかった。

何故なら逃げ惑う彼らを見る彼女の瞳は、モルモットを見る研究者と同じ色をしていたのだから。

 

その彼女に、鷹揚に、そして傲慢な言葉がかけられる。

 

「よいのだ、ツェリーヌ。

 あれぐらいの攻撃にも耐えられぬなら、採取しておく価値は無い。」

 

尊大な笑みを浮かべ、男は言い捨てた。

『価値は無い』。

自分の利にならないのなら、彼らに『価値は無い』と。

余りにも一方的で、余りにも横暴な、その思想。

 

しかし、周りの者は誰もそれに異を唱えない。

眉を寄せて不快気な老人も、伏目がちな紅い髪の女性も、

やはりその行為を止めようとはしないのだ。

それどころか、その行為を勧めようとする青年が居た。

 

「この先にある集落は、はぐれたちが暮らしている場所の一つです。

 四つの集落を順番に回っていけば、ありとあらゆる種類の標本が豊富に揃う事でしょうね?」

「楽しみだな……。」

 

彼は以前見聞きした知識を、男に伝える。

それは積極的な勧めではなく、悪魔が人を唆す時の様な甘い誘惑。

男はその言葉に、楽しげに目を細めた。

欲望に光る、その瞳を。

 

しかし、その瞳はすぐさま別の意味で細められる事になる。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「そういう訳にはいかないわ!」

 

俺とアティが、スバルとパナシェに教えられた場所の近くまで来た時、

鋭い女性の声と召喚術の炸裂音が前方から聞こえてきた。

たぶん、アルディラだな。

 

「風雷の郷は、我らの第二の故郷……。

 貴様らの様な外道を踏み込ませたりはしない!!」

 

おっと、キュウマも居るのか。

流石、護人。行動が早い。

走る速度を落とさずに内心で感心していると、良く知っている声が聞こえた。

 

「わざわざご苦労様です。護人のお二人さん。」

 

イスラ!!

……やっぱり、『最前戦』に居るんだな。

 

「こやつら、確かこの島の始まりを知るはぐれであったな。

 ふふふ……、これは是非とも採取しておかねばなるまい?」

「貴方がそう望むなら。」

「待ちなさいっ!!」

「そう何もかも、都合良くはいかせねぇよ!!」

 

オルドレイクとツェリーヌが好き勝手言っている間に、

俺とアティは森を抜けて、オルドレイクたちの前に立ちはだかる。

続くように近くの茂みから、アズリア、ヤッファ、ファリエル、そして海賊一家が現れる。

そんな俺たちを見て、イスラは“嬉しそう”に笑った。

 

「ほーら、出てきた?

 本当に解り易いね、君の行動原理はさ。」

「……イスラ。

 俺は前にも言った筈だぞ、そんな安い挑発には乗らないって、な。

 それとも、そんなに“アティ”を怒らせたいのか?」

 

アティに向かって話しかけるイスラ。

それを遮る様に、イスラに声をかけた。

途端、イスラは表情を消して俺を睨みつけてきた。

それから一拍の間を置いて、イスラは皮肉気な笑みを浮かべてみせる。

 

「……あれ?生きてたのかい、アキラ?

 ホント、しぶといねぇ、君って。」

 

……どうやら、ちょっとばかり怒らせたみたいだな。

つまり、図星だった訳だ。

 

俺がそうやってイスラを観察していると、イスラは一度言葉を切ってアズリアに視線を動かした。

 

「それに、姉さん。

 その様子だと、本気で僕とやり合うつもりなんだ?」

「必ずお前を止めてみせる。全ては、そこからだ!」

「ふーん……。」

 

強い意志の篭った瞳でイスラを見据え、熱く宣言するアズリアを、

イスラは冷めた表情で、どうでもいいように応じた。

いや、どうでもいいように振舞った。

 

本当はアズリアの言葉が嬉しかったんだろう。

何故なら、俺は確かに見たからだ。

アズリアの言葉を聞いた瞬間、イスラの瞳がチラリと光ったのを。

 

あれは、思慕と期待。

……アズリアが“願い”を叶えてくれるかもしれない、と思ったんだろう。

そんな事、ある筈が無いのに。

 

まったく……素直じゃない。

さて、この我侭で捻くれたガキを、どうしてくれようか?

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

銀の髪が陽の光に輝きながら戦場を駆ける。

丈夫なブーツに包まれた足が大地を蹴り、風のように敵の間をすり抜ける。

黒い炎の紋様が刻まれた腕が振るわれる度、その手に握られた刀が銀の軌跡を描く。

今、アキラは一人で戦っていた。

 

いつも隣で舞い踊っていた純白の髪は無い。

鋭い金の瞳が敵を睨む事も無いし、威勢の良い関西弁が危険を知らせてくれる事も無い。

ミユが、傍に居ないから。

 

それでもアキラは、いつもと変わらぬ戦果を上げていく。

蒼と黒の瞳で全てを見据え、常人離れした動きで避け、攻撃する。

まるで一人でも大丈夫だと言うように。

まるでミユが居なくても戦えると言うように。

 

それは、きっとミユの為に。

もしこのままミユが還ってしまったとしても、何も心配する事は無いと言ってあげる為に。

怪我をして、あの子を泣かせる事の無いように。

アキラは一人、戦場を駆ける。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「父と母の仇―――っ、思いしれぇぇっ!!」

 

何人目かの敵を叩き伏せたアキラの耳に、ヤードの雄叫びが届く。

初めて聞いたヤードの大きな叫び声に、ちらりとアキラは視線を動かす。

そして一人、敵陣奥深くまで入り込んで、召喚術を放とうとしているヤードの姿を捉えた。

 

相当の無茶をして斬り込んで来たらしく、その姿は既にボロボロだった。

対するオルドレイクは、悠然と反撃用の召喚術を唱えていた。

 

「ヤード!!」

 

危険を察知したアキラが向かおうとするが、その前に次々と敵が立ちはだかり、

思うように近づけないで居る内に、オルドレイクの召喚術が完成してしまう。

 

「弟子が師に敵う筈あるまいに!」

 

言葉と同時に放たれたオルドレイクの召喚術が、

ヤードの召喚術を消し飛ばすだけに止まらず、更にヤードへと襲い掛かる。

 

「ぐ、あ……。」

「ふははははははっ!」

 

ダメージに膝を付き、呻き声を上げるヤードを見て、オルドレイクは高らかに笑い声を上げる。

勝利を確信し、油断しきったその姿に、ヤードはぎらりと瞳を光らせる。

 

「―――今です!!」

「くたばれっ!!!!」

「な―――っ!?」

 

ヤードの合図と共に、オルドレイクの背後から人影が襲い掛かる。

予想外の事にオルドレイクが驚きを顕にする。

しかし、襲撃者のナイフはオルドレイクに届く事無く、

甲高い音と共に刀によって弾かれてしまう。

 

「ちっ!」

 

短い舌打ちをしてヤードの傍に退き、

己の邪魔をした者を鋭く睨みつけた襲撃者―――スカーレル。

油断無くナイフを構えるスカーレルに対し、ウィゼルがゆっくりと刀を向ける。

 

「召喚術は囮か。

 俺さえ居なければ成功したろうがな?」

「まったくね……。」

 

ほんの少しの苛立ちを混ぜて応えるスカーレルの前に、新たに人影が立ちはだかる。

紅い髪が目に鮮やかな彼女は、鋭くスカーレルを睨みつける。

 

「成る程……。追っ手を始末したのは貴様だったか……。

 『珊瑚の毒蛇』、裏切り者め!!」

「ご挨拶だわねぇ!『茨の君』さん!」

 

言い合い、二人は互いにナイフを相手に向ける。

そして、アサシンと元アサシンの切り結びが始まった。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

あっという間に敵に囲まれてしまったスカーレルとヤードを目にし、

アキラは立ちはだかる敵をほとんど無視するように駆け出した。

繰り出される剣やナイフをかわし、或いは受け流し、敵の間を縫う様に二人の下へと走る。

 

攻撃する暇さえ惜しんだその結果、背後からアキラに向けて一本の矢が放たれた。

 

「燃え盛れ、『炎陣符』!!」

 

今まさにアキラの背に刺さろうとしていた矢が、突如として炎に包まれ燃え尽きる。

そして現れたのは、いつもアキラの傍にあった純白。

 

「大丈夫やったか、アキラ?」

「……ミユ。」

 

安否を尋ねるミユを、アキラは呆然とした表情で見詰める。

もしかしたら、もう戻って来ないかもしれないと思っていたから。

まるで家出から戻って来た子供の様に、

気まずい表情をしたミユは躊躇いつつアキラに問いかけた。

 

「一個だけ、聞いてもええ?」

「ああ、いいよ。何が聞きたい?」

 

ふわりと、ここが戦場である事も忘れそうな優しい笑顔でアキラが応える。

その笑顔に励まされる様に、ミユは一歩アキラに近付くと、

不安に揺れる金の瞳でアキラを見詰める。

そして躊躇いがちに口を開いた。

 

「アキラはウチの事、嫌いや無いんやな?」

 

ミユの問いかけに、アキラは呆気に取られた様に目を見開く。

それから、くすっと小さく笑い、見る者全てが安心する様な優しい笑顔で応えた。

 

「勿論。俺はミユが好きだよ。」

 

その笑顔に、その答えに、勢い付いたミユは、アキラの服の裾を掴んで問いかけを重ねる。

 

「ほなウチ……アキラの傍に居ってもええ、よな?」

 

縋るような眼差しで、これこそが重要だと言う様にミユが聞けば、

アキラは優しい笑顔のままで、そっとミユを抱きしめる。

 

「当たり前だろ。ミユは家族も同然なんだから。」

「~~っ、アキラ!!」

 

涙を浮かべ、しがみ付いてくるミユの頭を、アキラは優しく撫でる。

そして自分たちの周りを取り囲んでいる暗殺者たちを見て、不敵に笑う。

アキラに続くように、ミユもぐいっと目許を拭って不敵な笑顔を浮かべる。

 

「さて、ミユも戻って来てくれた事だし。いっちょ派手に―――。」

「やったるでぇ!!」

 

戦場に、二人で一つの嵐が巻き起こる。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「二人とも無事ですか!?」

 

敵を押し退ける様にして駆けつけたアティが、

スカーレルとヤードを背に庇うようにして暗殺者たちと対峙する。

アティに続き、仲間たちも傷付いた二人を中心に円陣を組む。

 

敵の真っ只中に取り残された二人を救う為、全員が強行突破をし続けた結果、

周りは360°敵だらけだ。

その事実に、面倒な事になったとミユが溜息を吐き、それを見たアキラが苦笑する。

他の仲間たちに比べ、この二人はどこか余裕だった。

 

アキラはちらりと振り返り、確認する。

 

「二人とも、まだ戦えるか?」

「大丈夫です。この位……。」

 

応えたのはヤード。

しかし、地に片膝を付いたその姿はぼろぼろで、

今召喚しているピコリットでは、しばらく戦闘に参加できそうにない。

そんなヤードのやせ我慢に、ソノラが噛み付く様に怒鳴る。

 

「何でこんな無茶したの!?

 あいつらを倒すのは、あたしたち全員の目的じゃない!」

「……違うわ。」

 

静かな否定は、スカーレルから。

そして、スカーレルとヤード、二人の過去が語られる。

 

無色の派閥の儀式で壊滅した村。

派閥の構成員として、組織の暗殺者として、教育された子供たち。

そして復讐を誓う二人。

 

語られた二人の過去に驚く仲間たち。

中でもカイルとソノラは愕然としていた。

逆に、話を聞いても、アキラとミユは眉一つ動かさなかった。

 

何故なら、ミユはアキラ以外の人間に関心などないから。

そしてアキラにとっては、スカーレルとヤードの過去が、そして目的がどうあれ、

二人が自分の友人である事に変わりは無かったから。

語られた過去によって、突然二人が別人に変わってしまった訳ではないし、

そんな過去を抱えていた二人と友人になったのだから。

 

だから、アキラとミユの二人だけが冷静に周りを見ていた。

取り囲んだまま動かない暗殺者たちの何処が手薄か、

どうすれば傷付いた仲間たちを守りながら、この場を切り抜けられるかを。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

後一歩と言うところまで追い込んでおきながら、止めを刺す事もできず、

反逆者どもを仲間と合流させてしまった不甲斐無い手駒たちを見て、

オルドレイクがつまらなそうに歩を進める。

 

「やはり、私が直に手を下した方が良さそうだな。」

「オルドレイク様。その前に、僕の事を試してみませんか?」

 

しかし踏み出されたのは一歩のみで、その歩みは横から出てきたイスラに止められてしまう。

 

「……できるのか?」

「はい、恐らくは。」

「ならば、見せてみよ。」

 

少しばかり不興気にオルドレイクは眉をひそめ、イスラに問う。

その問いに、イスラが恭しく頭を下げて肯定を返すと、オルドレイクは尊大に応じる。

もう一度頭を下げて、イスラは前線に立つツェリーヌの傍に歩み寄る。

そして言葉だけは丁寧に、表情には嘲りを込めてツェリーヌに声をかける。

 

「下がってください、ツェリーヌ様?」

「く―――っ。」

 

新参の、それも格下の者からのあからさまな侮蔑。

屈辱に顔を歪ませながらも、主である夫の命令とあれば従うしかない。

苛立たしげに後ろに下がるツェリーヌに代わり、イスラがアティたちの前に立った。

 

「そういう訳で、今度は僕が相手だよ。」

 

人の神経を逆撫でするいつもの不敵な笑みで、イスラはゆっくりとアティたちに近付いていく。

そのイスラに対し、毛を逆立てて威嚇するテコを従えたウィルが、挑戦的に尋ねる。

 

「随分と、自信があるみたいですね……?」

「さあ、どうかな?」

 

ウィルの問いかけなどイスラは意にも介さず、はぐらかしながら歩み続ける。

しかし、ぴたり、とその足が止まる。

原因は傍に立つ老剣士。

 

「……何のつもりです?ウィゼル様。」

「保険だ。」

 

冷たく無表情になったイスラが問いかければ、端的な答えが返ってくる。

少し、ほんの少し苛立ちを混ぜて、イスラは再度問いかける。

 

「何に対しての?」

「あ奴―――あの男は、危険だ。」

 

ウィゼルは、じっとアキラを見詰めていた。

足運び、手の動き、そして静かに凪いだ蒼と黒の瞳を。

その様子にイスラは小さく息を吐く。

 

「……。

 まあ、いいでしょう。行きますよ!?」

 

そして、戦いの第二幕が上げられた。

 

 

 

 

 

 






(-ω-)/ やあ!それなりに頑張ってるよ!

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