戦場のヴァルキュリア ✖️ おひげのホワイトドール ロランとガリアと月の蝶のおとぎ話 作:溶けない氷
「それで、ロランさんがホワイトドールでトラックを運んでくれてすごく助かったんですよ。
それにこの前ホワイトドールを運転させてくれたときなんかですね・・・」
「あーはいはい、ご馳走様。イサラのノロケ話ならもうお腹一杯よ。
はぁ、私にもいい人現れないかしら。」
こういう風に盛り上がれるのが女二人のいいところだろう。
この場にロランがいたら
『ふぇ?そ、そんな 僕とイサラお嬢さんはそういうんじゃありませんよ!』
とこの三人の中で一番ヒロインっぽく女子力の高いリアクションを返したであろう。
御曹司がときめくはずである。
「そういえば肝心のそのロランは今どこにいるの?」
「あ、ロランさんは今ホワイトドールで国道の橋の撤去作業に行ってるところなんです」
ガリアに到着したロランはこの一ヶ月西に東に
橋の修理、風車の修理、建物の建築に解体、道路の整備、逃げた豚の捜索、鉱山開発
酔っ払いの喧嘩の仲裁、堤防の修理とかとかとか・・・・・
と、毎日忙しく働いていた。ホワイトドールで
ロラン曰く、「ホワイトドールって見た目より器用だから。」だが
まさかイサラもここまで器用で汎用性がある機械だとは思ってもいなかったので
技師としてホワイトドールには興味津々だったのが周囲はそれを
『イサラはロランに恋してる』
としか受け止めなかったのだ。
まぁ半ばあってるようなものだし別にいいだろう。
結論としてはイサラがホワイトドールのことをロランに聞いたり調べたりしても
(ロランはなるべく月光蝶や戦争のことについては省き、詳しく説明したが
IFBD(Iフィールドビームドライブ)「DHGCP」(不連続超振動ゲージ場縮退炉)
などガリアどころか今の地球・月でもロストテクノロジーな技術など分かるはずもない。)わかったのはガリアどころかヨーロッパの技術水準を
はるかにしのぐ精密な機械というだけで
イサラは毎日ロランから手渡されたマニュアルとにらめっっこをしている。
ロランは自分のことをアメリア出身の技師で
自分のホワイトドールで世界探検旅行をしていたら
道に迷ってガリアに来たという恐ろしく苦しい言い訳をしていたが・・・・
まぁガリア義勇軍にはなぜか他の大陸や外国人までもが所属しているので
そういうところわりといい加減なこの国のお国柄が幸いしたのかもしれない。
ヨーロッパ人にとってまず重要なのはその人物がダルクス人かであって
どうみてもロランがダルクスでないのも幸いしたのだろう。
話は戻る・・・・
「そう、橋の撤去作業にね・・」
撤去といえば聞こえはいいが、つまり戦争に備えて橋を破壊するということである。
アリシアもロランはこの一ヶ月ですっかり親しくなったから知っているが
ロランはそういう戦争や人を不幸にすることにつながることにホワイトドールを
使うのを極端に嫌うのだ。
それでも依頼を受けたのは・・・・
(イサラの為・・・でしょうね。あの子そういうとこ一途だから)
依頼主は軍・・・ダルクス嫌いの急先鋒にイサラの家に間借りしているロランが
この依頼を断ってなんらかの嫌がらせを受けることを心配して受けたのだということは
容易に想像がつく。
みればアリシアも義勇軍の制服、いくさ来る・・・・である。
「じゃぁ私もそろそろ周辺のパトロールにいくからイサラも疎開の準備を進めておいてね。」
「はい、アリシアさんもお気をつけて。」
そういって出て行くアリシア。
一人になったイサラは
(戦争が始まって、疎開することになって・・ロランさんもどっか行っちゃうのかなぁ・・・)
と沈んでいたが・・・・
その頃ロランは
「支柱の除去が終わりましたから、爆破します。下がってください」
見れば頑丈そうな鉄骨の橋の解体作業もようやく終わったところだった。
結構な時間がかかってしまったが、MS無しでは帝国の進行前に作業を終えるなど不可能だったろう。
「ご苦労だったな、こいつが約束の金だ。」
とやたら横柄な士官が仕事を終えホワイトドールから降りてきたロランに報酬を渡す。
正直、これほどの大仕事には少ないと思えるが・・・・
軍の依頼であることを考えれば断りにくいのもあるし、
ホワイトドールがほぼメンテナンスフリー・燃料不要であるという
いんちきじみたお財布フレンドリー性能を持っていることを考えれば
一般人からすれば十分大金だろう。
他の作業員も近づいてきて
「いやぁ助かったよ」とか「全く便利な機械だな」とかいう言葉をロランにかけていく
一方で護衛の軍の部隊はいつ帝国が来襲するかと今まで緊張していたのが
作業が終わってほっと一息ついている。
と、皆思い思いに休んでいると軍の車が走ってきて
「ほ、報告します!帝国軍が北方より襲来!戦車を含む部隊がブルールを攻撃しています!
至急増援を!」
と例の士官に報告した
「な、こんなに早くか!」
狼狽する士官 全大戦時よりもはるかに機動力を増した帝国に
旧態依然たるガリア軍は戦術ドクトリンでついていけないのだろう。
くだした結論は
「総員、トラックに乗車!速やかに予備の防衛陣地へと転進する。」
「ま、待ってください!ブルールの町に援軍は無いんですか!」
「相手は戦車を含む部隊だ。歩兵だけで突っ込んで勝てるわけがない!
兵力を無駄に損耗するわけにはいかんのだ。」
確かに戦術的には正しいだろう、この護衛部隊に戦車はない。
それというのもただでさえ少ない戦車は(上層部の引っ張り合いで)
貴族が率いる正規軍にバラバラに配備され
平民の護衛などやっていられるかと温存されてしまっているのだ。
こんなガリアが国家の体をなしているのかと問われれば
正直かなり疑問である。
「ブルールの街ヴィシニティみたいに戦争に巻き込まれるなんて・・・・
すみません、後始末は頼みます!」
そう言ってホワイトドールに飛び乗り走っていくロラン。
「戦争なんて・・・ホワイトドール、また力を貸してくれ。」
だが、ブルールへと到着したロランが見たものは
破壊されたシンボルの風車
瓦礫が散乱する美しかった街並み
そして道道に散乱する人だったもの・・・・・・・
帝国は思わぬ反撃でも食らって一時撤退して行ったのだろうか
死者も破壊された戦車も放置して姿が見えない・・・
大慌てで無人のギュンター家に飛び込むロラン
目に付いたのは床に倒れている帝国兵の屍
思わぬ客に動揺を隠せない
(どうしよう、お嬢さんもマーサさんも逃げてくれてたらいいけど・・・)
だが、テーブルの上のメモに目がとまる、読んでみると
『ロランさんへ
私とマーサさんは兄さんと一緒に町から避難して
首都のランドグリーズヘ疎開します。
この戦争に優しいロランさんは関係ありません
はやく外国へ避難してください。
お元気で』
手紙を見たロランは
(そんな・・・・関係ないなんて・・・・そんなことありませんよ)
思い出すのはかつて参加した戦争
月と地球、女王ディアナとギンガナム
ただ不毛で悲しいだけだった戦争
(僕は身勝手で、エゴイストで我侭です。
何も変わらないかもしれない、悪くなるだけかもしれない。
でも助けられるかもしれない人を見捨てて逃げるなんてやっぱりできません。)
家の外へ出てホワイトドールに乗り込むと
「お前が僕に何をさせたいのか、まだわからない。
だから僕がしたいことをやってもらう。
この家でまたイサラお嬢さんがまた安心して眠れるように・・・」
ホワイトドールは歩き始める、ランドグリーズヘと・・・・
戦火がブルールの街を焼いた後
僕はイサラお嬢さん、アリシアお嬢さんと再会する
でもまさかイサラお嬢さんが戦車兵になってたなんて知らなかったんだ
言っても聞かないイサラお嬢さんとソシエお嬢さんをかぶらせた僕は
勢いでガリアのミリシャに志願する。
でも配備先の第7小隊でまさかいきなり実戦なんて・・・・
次回 おひげと第7小隊
いくさの風向きが変わる