戦場のヴァルキュリア ✖️ おひげのホワイトドール ロランとガリアと月の蝶のおとぎ話   作:溶けない氷

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第7話 おひげと森

木々は緑深く、空は青く澄み渡る。

「ウェルキン少尉、ガリアってとってもいいところですね。」

「ロラン君もそう思ってくれるかい?このクローデンの森は生態系が豊富でね、ガリアの天然記念物としても指定されてるんだ。」

「こんないいところで、なんで戦争なんかしなくちゃならないんでしょうか・・・」

ロランはそう思う、不毛な月に比べれば地球はとても暖かくて過ごしやすくて豊かだ。

人は争わなくても生きていけるのに・・・

 

 

ヴァーゼル橋を奪還した結果、帝国軍に打撃を与えガリア軍の戦線は上昇、中部戦線が最前線となった。

その前線は正規軍が奪還作戦を開始しており、義勇軍は正規軍の援護に回ることになった。

クローデンの森の中にある補給基地制圧のため正規軍が攻撃したところ、反撃に合い壊滅的被害を被った。

指揮を取っていたのは例によってダモンだ。

正直、またもや前線指揮をとらせた上層部の正気を疑う。

結果上層部は戦果を挙げる義勇軍にこの任務を付与した。

だが森林戦で火力の劣る民兵にすぎない義勇軍は敵の防衛戦の前に前進できず釘付けになっていた。

そこで敵の側面をつくルートを探索するため第7小隊がこうして斥候中なのだ。

「けど、こう森林が濃いと方向感覚が狂いそうですね。」

「上から見てどうですか?何か見つかりませんか?」

イサラがエーデルワイスから話しかける。大柄な戦車の視界は狭くそもそも森林戦には向いていないのだ。

ロランのホワイトドールも20mの高さを生かしてカメラをあちらこちらに向けるが森林は広大で木々が熱も視界も遮るためセンサーもなかなか目標を見つけられない。

自然環境に溶け込んだ陣地作りをするとしているのならここの指揮官の腕前は見事としか言いようがない。

MSとて万能ではないのだ。

すると、ウェルキン隊長も出てきて休憩するよう指示をだしたんだけど。

皆が一息ついている所、ウェルキン隊長は地面に注視しながら何かをさがしたんだ

「どうしたの、ウェルキン?」

それを不思議に思ったのか、アリシアさんが声をかけると

「・・・・あったぞ!」

何かを見つけたか、それをアリシアさんに見せて渡す。

その手の平には小さく黒い丸い物体があった

「なにこれ?」

尋ねると

「クローデンヒゲナガヤギのフンだよ」

探しながら答えるが、アリシアさんはキャッとフンを投げ捨て、怒り出しちゃった。隊長・・・女の人にフンを渡すのってどうなんですか

「隊長、フンがどうかしましたか」

そう尋ねると

「そう、動物のフンがあるということは・・・」

指さすとそこにはかすかだが草が倒れた場所が続いていた。

「獣道だよ、獣達は移動に適したコースを探し出してそこを通り道にする。道ができるぐらいの獣が行く先は水場や餌場などがあるんだ」

「へぇ、なるほど。そうか動物の生態を観察してこういうこともできるんだな・・」

僕は素直に感心した、周囲の地形や知識を活用して答えを出すなんて地球の人たちは本当に素晴らしい知識を持ってる。

「動物が通るということは水源も近くにあるから、この近くに補給基地がある可能性が高い。全員気を引き締めて……」

喋っている途中に突然茂みがガサガサと音をたて動いた。

皆が茂みへと銃を向けるとそこに居たのは羽の生えた子ブタだった。

ブタ・・・農場・・・・ホワイトドール・・・なんだろう、すごく懐かしいや。

「きみ。どうしたの?お母さんとはぐれちゃったの?」

アリシアお嬢さんが、羽ブタを抱きかかえる

マリーナさんが森の奥を見てくると戻って来た

「森の奥にブタの死骸が・・こいつの親だろう。流れ弾に当たったらしい。」

そう報告するとアリシお嬢さんは哀しそうに羽ブタの頭を撫でた

「きみも家族がいなくなっちゃったの?ひとりぼっち?」

すると隊長が

「アリシア、一緒にその子を連れてくかい?」

隊長、やさしいなぁ。するとアリシアお嬢さんも驚いたけど

「良かったね!今日からきみも第7小隊の仲間だよ」

自分のことのようにアリシアお嬢さんが喜ぶと、羽ブタも鳴き声を上げた。その鳴き声は先程のにくらべ嬉しそうだった。

_______

僕たち第7小隊はようやく敵の補給基地を発見した。

けど、前面には地雷や大砲が設置されていて支援兵が排除しようとすると

機関銃が邪魔をするせいで身動きが取れなくなってしまった。

「くそ!隊長さんよぉ!敵の基地を発見したはいいが向こうの戦力はこっちの倍以上はあるんじゃないか?」

戦車に対戦車槍を発射して突破口を開こうとするラルゴさん。

でも、敵は戦車を地面の防御陣地に据え付けてるせいでなかなか破壊できない。

対岸からは大砲が絶え間なく砲撃してくるせいで突撃兵のイーディーさんやロージーさんも土嚢に隠れたままで身動きが取れない。

「くっ!嫌になる程分厚い防御陣地だね・・・ここは迂回するしかないが・・・」

そう簡単に言っても迂回するにはまず敵の防御陣地からの砲撃をやめさせないと誰も身動きができない・・

「僕が行きます!少尉はここで敵に牽制射撃をお願いします。」

「だがロラン君!君のホワイトドールじゃ砲撃が直撃したらもたないぞ!」

「当たらなければ、どうということはありません!ロラン・セアック、行きます!」

そう言って僕はホワイトドールを森の中の弾薬集積場所から飛び出させた。

突然飛び出してきたMSにびっくりして帝国兵が射撃してくるけど

僕はホワイトドールの回避パターンを前進しつつオートで回避に設定する。

「Iフィールドの出力を駆動に集中セット、オートリアクションで砲弾を回避。」

接近させまいと砲撃する帝国軍の大砲だがその砲弾をホワイトドールはセンサーで感知し最適な行動で回避しつつ大砲に接近する。

「よし、これで!・・・そこの帝国兵!そこをどけ!今からこいつを破壊する!」

僕はホワイトドールに大砲の砲身をつかませると振り回して湖に投げ込んだ。

こんな綺麗なところでこんな戦争の道具を使っちゃいけないんだ。

大砲が壊されると帝国軍は及び腰になったのか

義勇軍の射撃の前にじりじりと後退していく。

そこに隊長はアリシアさんをはじめとする義勇兵の面々を迂回させて帝国軍を背後から強襲した。

挟み撃ちにあった帝国軍は後退するかと思われたが・・・・

「隊長!戦車だ!新手の大型が接近!」

第7小隊のみんなはこのタイミングで現れた戦車に驚き、物陰に隠れる

ラルゴさんとヤンさんが対戦車槍を構えて撃つ

「往生せいや〜!」

だけど、新型重戦車の装甲は恐ろしく分厚くことごとく攻撃をはじき返してしまう

そして砲撃音が響くと、砲弾は真っ直ぐ飛んでいき。

イサラお嬢さんのエーデルワイス号に直撃した。車内が激しく揺れてイサラお嬢さんの悲鳴が聞こえる。

「お嬢さん!今行きます!」

「損害報告!」

ウェルキン隊長が急いで状況を確認していく

「 正面装甲中破!更に今の攻撃で出力に異常が発生!機動力低下!」

イサラが状況報告をしていると驚いた表情になった、一撃でエーデルワイス号の装甲を破壊された上に駆動系統をやられてしまったのだ。

「う、動けません!もう一度攻撃されたら持ちません!兄さん!」

イサラの悲鳴のような報告が届く、大ピンチだ

「おいおい、今のは完全にアウトだったろ。全く大した戦車だな。

だが次でゲームセットだ。これで!」

イェーガー将軍はそう呟くと徹甲弾を込めて再度エーデルワイスに照準する

今のエーデルワイスでは回避できず同じ箇所に直撃を食らったら撃破は免れない

僕はホワイトドールを全力で走らせてエーデルワイスの前に飛び出させる

「ロランさん!危ない!」

イサラお嬢さんが悲鳴をあげるけど、ごめんなさい!でもどけないんです!

「あいつ!例の白ひげってやつか。仲間をかばうとは見上げたもんだが・・・こっちも仕事なんでね、悪く思うなよ!」

そういってヴォルフ戦車から放たれる砲弾を僕は

「Iフィールド全開!お嬢さんはやらせません!」

Iフィールドを全開にして受け止めようとしたんだ。

「な!光で砲弾を受け止めただぁ!?おいおい芸達者にも程があるだろ白ひげさんよぉ」

呆然とするイェーガー、だがその隙に肉薄した対戦車兵の攻撃でラジエーターを損傷し・・・

「ありゃりゃりゃりゃ、こりゃ潮時だな。全軍に撤退命令を出せ。

武器弾薬の撤収も忘れるなよ、一目散に逃げ出したと思われたら癪だからな。」

そういって戦車を後退させると同時に敵の歩兵隊も撤退していく。

次々と補給トラックが基地から撤退していくが義勇軍には追撃するだけの機動力も火力もなかった。

結果、敵の基地を破壊することには成功した。

けれども正規軍の甚大な損害、他の義勇軍の死傷者の事も考えれば

勝利とは言い難かったらしいんだ。

また気が重くなるなぁ・・・

「なぁにしけた顔してんだよ、ロラン!」

ぽんと僕の背を叩くロージーさん

「本当ですよ、ロランさんのおかげでまた助かったんですからそんな落ち込まないでください。」

スージーお嬢さんも慰めてくれる。

「全く、キミには苦労ばっかりかけるよね・・・だが本当にありがとう。

僕からもイサラからもお礼するよ。」

「ロランさん、本当にありがとうございました。あんな風にかばってくれるなんて・・・でも、もう無茶しちゃいけませんよ」

こうやって僕たちは基地へと帰還する道中で今回のことについていろいろ話し合った。

中でも僕がエーデルワイスをかばった事はみんなの間でも話題になり

「ホント、ロランちゃんはイサラちゃんのナイトね!もう、うらやましいったらないわぁ。」

ってヤンさんにまでからかわれちゃった。

 

・・・・・・

一方第1小隊のファルディオ少尉は目撃したホワイトドールの光の壁について考えていた・・・

(あの光・・・虹色の光・・・伝説にある月の蝶・・・天使とヴァルキュリア人との戦い・・・いやでも・・・そのうち確かめないとな・・・)

 

________________

クローデンの森の補給を断つ事に成功した第7小隊

ところが成功する僕たちをうとましく思ったのか

司令部は今度はなにも無い砂漠の遺跡に行けって言うんだ

でも僕は興味を持った 古代の遺跡なら

黒歴史に封印されたターンエーについての何かが得られるかもしれない。

次回 おひげと砂漠

砂漠に蒼の風が吹く

 

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