「あ。」
グリーの隣で飛ぶ氷草は、眼下の町を見て声を漏らした。
半球体状に掘られた地下都市は、木の根を基準として開拓されていた。氾濫や嵐でも水樹の根が守ってくれるように開拓されている。
それを氷草は目を輝かせて眺めていた。
が、氷草は根に違和感を感じた。
どこか、元気じゃないと。
「怪我してる?」
「あぁ。魔王にやられてな。やっと景観を多くのコミュニティの協力のもと取り戻したところだ。今回の収穫祭は復興記念を兼ねていてな。失敗は出来ない。」
真剣なグリーの表情と水樹を交互に見て、氷草は確信こそないが、大丈夫と判断した。
グリーと共に氷草は、街に降り立つ。
飛鳥と十六夜、黒ウサギとジンを下ろすと、グリーはペリュドンを追い払うと告げて行ってしまった。
さて、楽しもうか。という雰囲気になりかけた時、頭上から知った声が聞こえた。
「あ!誰だと思ったら、氷草じゃん!何?お前らも収穫祭に?」
「アーシャ。そんな言葉遣いさ教えていませんよ。」
氷草らが上を見上げれば、建物の窓から身をのりだして手を振る“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャとジャックがいた。
アーシャは窓から飛び降りて、氷草の前に降り立った。
「久しぶり。」
「おう、久しぶりだな。」
ジャックはゆっくりと、ジンの前に降り立ち、会話を始めた。氷草が聞こえた感じ、この収穫祭が終わった頃に注文品が届くようだ。
二人が出てきたのは氷草達も泊まる貴賓客用の宿舎らしく、土壁と木造の宿舎だ。
談話室では水樹の根が椅子としても使われていて、氷草は内心、天然の加湿器みたい。と面白がっていた。
「ヤホホ、我々はこれから“
「YES!ご一緒するのですよ!」
「そうだね。荷物を置いてきますから少しだけ待っててください。」
ジンが立ち上がろうとした時、スッと扉の影から人影が出てきた。
「それには及びませんよ。ジンさん。このンナンナフ、すでに運んであります。そして、こちらが部屋割りになります。」
ビシッと敬礼をして一枚の紙を広げる。
ンナンナフ、かれはこっちの方の鮮血の瞳の幹部だ。
「あ、貴方はたしか。」
「はい。鮮血の瞳、南支部在住ンナンナフにございます。
お久しぶりです。氷草様。ジンさん、飛鳥さん、十六夜さんもお久しぶりなのです。」
「あ、ありがとうございます。」
・・
原始的なエレベーターを使って本陣まで行くと旗印が見えた。
見えたといっても、通路の先の方にあり、よくは見えない。
木造の通路を歩いていけば、近くなってくるので近づいて、“7枚の旗印”を確認することができた。
「7つのコミュニティが主催してんのか?それか、同盟旗的なもんがあるのか
?」
「後者にございますね。ちなみに連盟旗というのでございますよ。」
話し込み始めたので、黒ウサギと十六夜、飛鳥をほっといて受け付けに入場届けを出すことにした。
「“ウィル・オ・ウィスプ”のジャックとアーシャです。」
「“ノーネーム”のジン=ラッセルです。」
「“ノーネーム”蒹“鮮血の瞳”竜使氷草です。」
「はい。“ウィル・オ・ウィスプ”と“ノーネーム”、“鮮血の瞳”……あ、」
受付の少女かはっと顔をあげる。
「もしや、久遠飛鳥様が……。」
「あぁ、飛鳥ー!」
「あら?なにかしら。」
「この子が。」
お互い、わたわたと先日の誕生祭のことで話をしているようだ。
微笑ましそうに眺めていた氷草だったが、彼女らの会話から目を話して、氷草は招待状を見た。
“サラ=ドルトレイク”
何処かで聞いた名前に、ジンにこっそり聞いた。
「サンドラの姉である、長女サラ様ですが…………もしやあの回廊の技術も流出させたのも。」
「回廊?」
「聞いてなかったんですね。……氷草さん?」
氷草は、後ろをじっと見ていた。
それを疑問に思ったのか、 ジンも後ろを向く。
熱風が木々を揺らす。
熱風にジンが押され、倒れかけたが、氷草が掴んでたたせた。
そこには炎翼を背負った女性が立っていた。
「さ、サラ様!」
「久しいなジン。会える日を待っていた。後ろの“箱庭の貴族”殿とは、初対面かな?」
翼を消失させ、樹の幹に舞い降りたサラ=ドルトレイク。
赤い髪を長く靡かせ、褐色の肌を大胆に露出させている。
「ようこそ。“ノーネーム”“ウィル・オ・ウィスプ”そして“鮮血の瞳”下層で噂のコミュニティと祭神の代替わりで再出発した、豊穣を掲げたコミュニティを招けて、鼻高々だな。君は使いのものかい?そこの角の君。」
その言葉に、眉を潜めたが、言葉にまで氷草は出さなかった。許容範囲ないであるから、怒りはしない。
「立ち話もなんだ。中に入れ。」
招かれたのは貴賓室だった。
大樹の中心に位置する場所で、窓から覗ば網目模様に覆われた“アンダーウッド”の地下都市が見えた。
サラは“一本角”の旗が飾られた席に座り、氷草達に座るように促した。
「改めて、“一本角”の頭首を務めるサラ=ドルトレイクだ。」
・・
“ノーネーム”本拠地
食事を終えた耀は一人、ベットに身を投げ出していた。
祭りに初日からできなかった耀は、落ち込んでいるだけじゃなかった。
同士、氷草の為に子供達と共に無くなった【原典】を探していたのだ。
少しでも、同士のためになりたいと思って。
「…………たしか、星?があったよね。いかにも魔術書って感じで、…………紙じゃなくて、布っぽいような?皮?牛皮でもないし……。なんか、ヤバイものだったきがする。……?」
耀は頭に違和感を感じた。
頭に。
頭の下。
耀は枕を持ち上げてみた。
それを見て、耀の頭が真っ白になった。
「――――ッ!」
目玉だ。
(な、なに――これ?――魔物…………じゃない?)
星のように見えるマーク……反転した旧き印の真ん中、そこから氷草とそっくりな目玉が見えていた。
(これが、防御術式?)
『アレには防御術式を組んでいる。消して読んではいけない。直接触れてはいけない。消してページを触ってはいけない。防御術式が発動していた場合、
氷草が出る前に耀を含めた子供らに伝えた言葉。
(目を合わせてしまった!どうすれば、どうすればいい?何が起こるというの?)
「耀!」
「…………月亭。」
・・
“アンダーウッド”貴賓宿舎
目を閉じていた氷草は、目を見開いた。
その反応に、隣にいた十六夜が少し驚いている。
「おい。」
先程から彼らの体には、けして小さくない震動が伝わってきていた。
それでも氷草、彼は同様せずに立ち上がろうとしていた。
そして東を睨み付けた。
「畜生め。」
ただ、あの十六夜ですら血の気が引いてしまうような声と殺気。
それを含んだ睨みだった。
防御術式ので産み出された目は、特別な回線を通って、氷草の元に痛覚以外の物を適切な形に伝える。
そして目は、目を合わせたものを釘付けにする。
これは彼が師匠から教わった技術のひとつだ。
そして彼は、犯人が分かったことにより、興奮状態になっていた。
そして今度は別の方角、壁を見つめて立ち上がった。
そして今日、十六夜は改めて、“最強種”を理解する。
「目障りなやつらだ。…………地表に出るが吉。」
宿舎の壁をぶち抜き、巨大な腕が十六夜と氷草の目の前に現れた。
ここまでなら、十六夜にも予想は出来ていて、対抗するために身構えていた。
全長30尺、約9M程の巨躯。
人類の幻獣だ。
が、そんな彼らも人類だ。
「人類ごときが僕の邪魔をするなんて!」
氷草は拳を受け止めるどころか、粉砕した。
辺りにおびただしい量の血が吹きかかったが、不自然に氷草と十六夜だけ汚さない。
「十六夜。地上だ。」
「やはは、ヤル気満々じゃねーか。」
「はは、ちょっとテンション上がってるんだ。今は殺したくてうずうずしてるね。魔神でも邪神でもないのにさ。
なに、心配しなくても、邪神の性質は借りないで、配下を呼び出すからさ。」
いつもと違い、邪悪な笑みをうかべる氷草を、十六夜は不安に思った。
氷草の性格を知っている彼は、心の底に掴みきれない不安があった。
そんなことを気にしない氷草は、そっと十六夜の肩に触れて移転した。
およそ200程度。
氷草と十六夜の眼下にあるのが見えた。
一人にたいして味方が10程で対応しており、それでも足止めしている程度だ。
「援護射撃のほうがいいかな?」
「さぁ?あいつら…………巨人してるな。」
氷草が目を凝らすと飛鳥と冠を被った割りと小さな巨人が戦っていた。
巨人が飛鳥に拳を振るうのを見て、氷草は一瞬身を縮めてしまった。
が、そこで動けなくなってしまうほど氷草は弱くない。
「天候操作:雷。」
そう呟くだけで、アンダーウッドの上空にどす黒い雲が。素人からも雷が落ちるとわかる雲が現れる。
その代わり、周りの水分がかなり奪われた、そんな感じがした。
アンダーウッドの地上に居るものに、眩しくて前がみえないほどの光が襲った。
「!?」
一瞬、十六夜は地震かと思った。
が、地震の音じゃないとすぐわかった。
至るところに光の柱が立っていたからだ。
「おいおい、やりすぎじゃねぇか?空を飛んでる味方に当たって――――」
そこで十六夜の言葉は止まった。
光の柱、雷が消え失せ雲が晴れて周りをみれば、巨人以外に真っ黒焦げな死体はひとつたりともなかった。
雷は“確実に狙った物”に誘導されている。
「残りは任せる。」
「……空気中の水分のほとんどを雲に変えたのか?」
「あぁ。ここまでははじめてだったけど、水樹のお陰さ。他の土地じゃ、周りを巻き込むからね。でも、しばらく撃てないよ。快晴だからね。」
「ヤハハ、ぶっ飛んでるな。」