「ヤホホホ、さっき我々のとは違う地獄の炎を見ましたが……もしや、背負ってるのは魔王イェス?」
「そうだよ。」
「そうもいかないかも。当然、氷草は“ギフトカード”持ってるよね?」
「持ってるけど?え?」
氷草はギフトカードを見て、いつもと違うものが見えた。
それを見て、魔王経験のあるイェスが説明をする。
「それはペナルティ宣言。主催者側からそれを侵したものへの目印よ。
条項を見る限り、串刺し、磔刑、焚刑。
串刺しと焚刑なら、動けるわね。焚刑なら更によし。参加資格も停止しないようだし。私はなってないようだけど、あの龍なんじゃない?
でも、」
氷草から飛び降りたイェスは、皆の前に立ち、ニタリと笑った。
「どのみち、真っ赤な雨が降るわね。それはもう――」
「やめなさい。どうせ下がるようなことを言うんでしょ?」
・・
翌朝
「いいか、氷草。対魔王を掲げるなら持久戦のたくわえがなきゃいけねぇ。それいぜんにこの箱庭じゃ、どんなアクシデントがあるかわからないからな。」
ガロロとジャックによる水と食料の提供。
イェスによる肉壁の風遮断。
氷草による植物の突然変異による発熱するカイロのようなものを作り出した。
古城とはいて、すきま風は上空に浮いているためか地上より半端なかった。
その場にイェスは居なかった。
イェスは分身を作ることができ、常時記憶共有できるので、分身を下に回したのだが、本体がここを探索しにいってしまったからだ。
それが心配だ。
十六夜なら問題など簡単にクリアできるが、連携が取りづらい。
そんな氷草の心境も知らずに、イェス不在で、話はゲーム攻略会議に移り変わった。
最悪口頭で教えなければならない。リアルタイムでないので都合が悪いのだ。
「浮遊城、魔王。まるでRPGだ。それにゲーム訳、太陽同期軌道。」
「なにそれ?」
氷草の心配は杞憂に終わり、なに変わりないイェスにひと安心していた。
「軌道の中心となる重力体の自転周期と軌道を描く物体の公転周期が同一になる軌道だよ。」
「よくわかんない。中学生だもん。」
「それに太陽が加わると、地球を周回する人工衛星の軌道のうち、太陽光線と衛星の軌道面とのなす角が常に一定となる軌道になる。通称SSOだよ。君の方が詳しそうだけど?」
「私は私の知ってる情報から作り出すの。無意識下でその情報は氷草が知ってるなら、知ってるの。それにwikiせんせいじゃない。ここからでも知れるのよ。
それを私が理解できるように説明してっていってるの。」
「ざっくり言えば、太陽関係の特定角度を保つ動きをしてる衛星さ。」
「それを早く言ってよ。つまりここってこと?でもここ宇宙じゃないよ。」
そこでジャックが驚いたように声をあげた。
「人工衛星ですか?」
「知ってるの?」
「えぇ、1960年代ですからね。ここに来たのは。」
「なら、アメリカかソビエト連邦の?」
「えぇ。もしかしたら吸血鬼の一族というのは、遥か未来から来てのかもしれませんねぇ。」
「人工衛星類いだけならそうとは言えないわ。こんなもの、私だってできるもの。これは衛星じゃなくて浮遊城とでもいえるわよ?」
その会話は限定的だった。
彼ら以外衛星を知らないのだ。
「太陽と軌道とかって、
「そう。仮定ならできるけどね?」
そこまでなら氷草は予測できていた。
迷っているのは実際の黄道か、黄道十二宮かでだ。
「天体を三十度ずつずらして分割したものですが――」
「それだ!」
ジャックとガロロが盛り上がるなか、氷草とイェスは
「ただされたね?」
「一度13になって戻ったのを正されたか、黄道上にある十三目を含めて正しいとするか、悩みどころね。」
二人は自身が龍なため、星座早見表をみて、来る前から印象に残っていた。
それから展開は早かった。
ジャックが子供たちに交渉し、総勢54名が、雲ひとつない空に浮かぶ浮遊城……浮遊島で探索を始めていた。
情報によれば十二分割されていると聞き、彼とイェスは蛇使い座は不要と考えて各地域を探していた。
瓦礫で進めないところを、冒涜的に近い姿に変わっていたイェスに冷や汗を浮かべていた。
「(
数時間すれば、十二の欠片が集まった。
が、その他にも欠片はあった。
各々、ミスリードだの、無駄等と騒ぎ立てるなか、アーシャがなにかに気がついたように声をあげた。
「わかったぞ!砕かれた星空はこれだ!きっとこの欠片を会わせれば天球儀になるはずだ!そして太陽の軌道から黄道の欠片を捧げればいいんだ!」
その場は希望で満たされた。
それに対し氷草は“足りないかもしれない”と言えないでいた。
肝心なところで、情けないのだ。
それにたいしてイェスが小突くが、頭を横に降るだけだった。
「氷草……いや、氷草お兄ちゃん。
これは妹からの正式な文句よ。」
「正式って。」
「お兄ちゃんはイェスたち7人兄弟が掲げる唯一の善神にして常識人だったはずよ。シュブ=ニグラス様の性質を、お姉ちゃんの性質を借りて善神がブレてんじゃないの?」
それは本気の目だった。遊びやおちゃらけた文句でなく不満な部分を素直に伝えてきていた。
「そんなことない。僕は僕を見失なうことなんてない。イェスにも僕はわからない。」
「今ある希望に満ちた顔を壊したくないんでしょ?
でも、言うべきなんだ。“天球にしても今のままの黄道は輪ならない”って。
お兄ちゃんもプレイヤーよ。」
向き合って居た二人だったが、 目の前からイェスが消える。
氷草はイェスに敵わない。
速さも、知識も、体格も、腕力もイェスに勝っているのいうのにだ。
足で尻を蹴られ、強制的に前にダサセル。
どうして“兄”は“妹”に敵わなかったのか?
氷草はやっと気がついた。
(あぁ、そっか。)
氷草は参加者を助けようとした。
イェスは負傷者の変わりに戦っていた。
氷草は知ってることだけを言っただけだった。
イェスは知らないことをかき集めて知ろうとしていた。
氷草は探し物をする子供たちやイェスを心配していた。
イェスは他の人と共に探し物をしていた。
(助けようと思ってただけだった。
意識の違いってやつ。
一番することはゲームクリアだ。)
助ける。と言うことばかり、慕ってくれたンナンナフ達、鮮血の瞳達の信仰によってた。
(まったくもって、竜使らしからぬ行為だって言いたかったんだ。)
かなり強引に勇気付けられた氷草は喜ぶ一団に向かって待ったをかけた。
「ん?どうしたんだ?氷草。」
「天球といってたけど、黄道にはもうひとつ星座があるんだ。蛇使い座が。」
「……どこにあるんだ?」
「組み立てればわかる。」
・・
同日朝
アンダーウッド
十六夜達はゲーム攻略のため参加者を募っていた。
そして数十匹集めることができていた。
鮮血の瞳のメンバーで空を飛べるものがンナンナフ以外いないため、鮮血の瞳は地上の防衛に回ることになった。
十六夜のとなりでは、幻獣などと仲良くなろうと意気込む耀が目を輝かせていた。
「そういや、原典は見つかったのか?」
その一言で耀の表情が一変する。
「その。なぜか私の枕に。」
「やっぱりか。」
「わかってたの?」
「ヤハハ、三毛猫は全力で謝らなきゃいけないと思うがな。ヤバかったぜ。!」
十六夜は空から降ってくる人影を見た。
よく見てみれば、金髪の人影とわかる。
「ヤハハ、魔王のおでましか?」
すぐとなりの黒ウサギも警戒していた。
が、先に喋り出した魔王は気さくそうな声だった。
「あなたが十六夜?」
「そうだが?俺の名前をどこで聞いた?」
「上の参加者、竜使氷草。」
「あいつがか。で、何しにきた?」
「私は通信役らしい。説明が面倒際から省くけど。」
「まぁ、遅かったな。俺たちは今から乗り込みにいく。」
「へぇ。」
二人で話し込んでいると後ろから威圧的な声が聞こえてきた。
「空も飛べない猿が指揮をとるのか?」
「爪も牙もないみすぼらしい小僧と小娘ではないか。」
「あいつら、人の言葉を?」
「ぁ、ごめん。私の性質ね。あんな四足歩行しかできない混血種のことはほっときましょ。」
氷草の妹、イェスも当然龍の純血。
最強種なのだ。
「そこの箱庭の貴族、あの馬はどこのわかるかしら?」
「へ?“ニ翼”の長にご、ございますよ」
そんな彼女もプライドというものがある。
ヒッポグリフ程度に貶された。
子供なイェスは気に入らなかった。
きっと彼女の次のターゲットは彼らだろう。