温厚な龍が異世界からやって来るそうですよ?   作:イェス

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№13 勝利

吸血鬼の古城

 

氷草の申し出により、天球儀らしき欠片を組み立てることになった。

アーシャが組み立てていくと氷草とイェスの思った通り、輪にならず、視力検査の模様のようになった。

「蠍座と射手座、その間に――」

「そこまでだ!」

「っ!」

 

キリノの隣に黒いグリフォンが現れ、一番近くにいたイェスが翼に噛みついた。

 

「ぐああぁ!」

 

噛みついた箇所をえぐったが、イェスは吹き飛ばされる。

氷草が抱き止め、地面を割って石片を飛ばす。

 

すぐに敵が氷草の目の前に現れ、鉤爪を振りかざしてくる。

それを腕で受け止め、心臓があると予想する部分をイェスが触手で突き刺す。

 

「っ、なにそれ?」

「触手。お兄ちゃんもあるでしょ?」

「でも、僕らは龍神だよ?純血種の。」

「龍は龍でも䰱。私たちは設定つけられる前の、不可思議で奇妙で神聖な力。簡単にしてるだけで、私たちは䰱神よ。」

 

氷草は困惑しているが、敵は優しくない。

雄叫びをあげ、二人に襲いかかってきていた。

その敵は、グリフォンながら龍角をもち、耀の物に似た生命の目録を胸元に埋め込んでいた。

 

「龍角を持つ兄妹か。我が名はグライア=グライフ!」

 

ある単語にざわめきが生まれたが、二人はそんなこと気にしてなどいなかった。

 

「皆!蛇使い座をたのんだ!」

 

・・

 

アンダーウッド・根元

 

耀は目の前の魔王を不思議そうに見ていた。

 

(すぐに殺すとか、このゲームを不利に進めようとしてる訳じゃないのかな?)

 

十六夜は耀より2つか3つほど年下だが、実力は耀より上だと判断していた。

 

「上は勝利条件の一つ、掲げるヤツのゲームクリアを目指すみたい。上にあるのはアンダーウッドの木霊。ガロロ=ガンダック、ウィル・オ・ウィスプのジャック、アーシャ、多数の負傷者、氷草だね。

なにか伝えることは?」

「それとなくこっちも動くと言ってくれ。」

「わかった。ん?」

 

耀と目があったイェスは耀に近づいてストレートな言葉を放った。

 

「氷草の原典を盗ませたの?」

「へ?何で知って?」

「セキュリティ。見えてたから。私の目のひとつだしね。」

 

耀はイェスの真っ赤な瞳を見て固まる。

 

(氷草みたいな目。)

 

負い目があるぶん、にている少女にたいして、なぜか罪悪感が生まれてしまっていた。

 

「初めまして。春日部耀さん。罪の槍、イェス=トゥ・ティ・レヴィアニタル。」

「は、初めまして。」

「今回ばかりは魔王をのよ。機会があったら、ちゃんとゲームをしてみたいわ。」

 

ニタァ。と笑った時、出発するぞ。と十六夜から声がかかった。

 

・・

 

上空1000メートル。

十六夜の頬を激しい風が撫でる。

十六夜はグリーに騎乗し乗り心地に感動していた。

イェスは炎翼を羽ばたかせているサラのとなりでこれぞドラゴンという感じの翼を羽ばたかせている。

不真面目に騒いでるグリーと十六夜を横目に、それとなく警戒しながらイェスは飛んでいた。

 

「……不思議な光景だ。地平線が見えやがる。」

「それほどここが大きい。太陽の何倍もあったよね?地球と違って壊すにも壊しきれなさそう。」

「こんな宝箱みてぇなここを壊すなんて勿体ない。」

「当然よ。……っ!」

 

すぐにサラが絶叫のような退避命令を出した。

黒い円盤。

怨嗟と殺意。

無理やり現れた雷鳴を背にした黄金の御髪を持つ魔王レティシア。

サラの目の前が金髪頭で一杯になる。

 

サラは死を覚悟した。

が、サラは死ななかった。

 

人場外の速度で投げつけられた長槍は、イェスの心臓部を確実に貫いていたからだ。

 

「……な。なぜ?」

「後陣!退避ー!退避ー!」

 

心臓を貫かれている。

が、元気に叫んでいた。

それ以前にかばう行為がわからなかった。

 

「大丈夫なの……か?」

「ええ。魔王だから。それより、たくさん来るよ!」

「なにか!なにか!長い武器はあるか?頑丈なやつ!」

「あるぞ!」

 

サラはギフトカードから三叉の槍をとりだし、十六夜に渡す。十六夜は受け取り、グリーの上にたった。

 

「あれは影ね。」

「影?」

「なっ!」

「どうした?」

「あれを!」

 

イェスかま指差す方を十六夜は見た。

巨人族の大軍勢だ。

 

「おい、魔王サマ。なんとかできないのか?」

「全滅は無理よ。あの城がじゃま。

……アザトースを召喚するなら話は別だけどね。」

「やめろ。」

 

白痴の魔王の名前を出されて、十六夜はさすがに冷や汗がでる。

 

「まぁ、したにはミラがいるし。」

「ミラ?」

「えぇ。Nyarlathotepよ。」

「……ヤハハ、絶対に戦いたくねぇな。お前らとは。」

「同意ね。あなたたちとは戦いたくない。【槍の雨】!」

 

数万、数億ほどの槍が巨人の大軍に降りかかる。

名の通り、槍の雨だった。

 

「さすがだな。お前って氷草の妹だったりするのか?」

「ん?なんで?」

「顔とかそっくりだからよ。」

「さぁ?どうだろうね。」

 

・・

 

火花を散らし、三つの翼が高速で飛翔する。

魔王レティシア、空の王者(グリフォン)、龍神イェス。

 

レティシアからの攻撃をイェスが弾いているから同等に渡り合えているものの、神格にたいしてやや劣る。

グリーは一度降下して距離をとり、口惜しそうにレティシアを睨んだ。

一緒に来ているなかで、イェスの捨て身の攻撃より、耀だけは古城に上陸させることはできた。が、それいこう誰も上陸できていない。

 

「クッ、なんというやつだ!上陸する隙がまるでない!」

「専守防衛ってのがこうもめんどくさいとわな。」

「追っ手が後ろからの出てこないのがまだいい。下手するとスポーンし続けるのもあるから。……あ、飛び具!」

 

そこで十六夜は目を疑った。自身の頭がいかれたかとも思った。

飛び具。

そう言って取り出されたのは、火縄銃や投げ槍といったものでなく、モロ銃だった。

 

「おいおいおいおい!何でそんなもんがここにあんだよ!」

「安心して!外宇宙的かつハイテクノロジーな強化プラスチックで作られた水鉄砲(ウォーターガン)だから!弾は(アンリミデット)だけど。」

 

外宇宙的かつハイテクノロジーな強化プラスチックってなんだよ。

と、十六夜はツッコミたくなった。

コルト・パイソンハンター型の水鉄砲を構えて、狙いを定めているよで声はかけなかったが、この世界では反則だ。と心のなかで吐き捨てた。

 

「本体が交戦中。あの古城は十二分割されていて、今は本体と氷草以外の者が蛇使い座の欠片を探している。」

「わかったのか?謎。」

「うん。だけど、なんか。」

 

躊躇い。銃を撃つことでなく、全く別の何かに不安があるようなイェスの表情。

十六夜はそれが気になった。

 

「なんか?」

「これは私の思い込みかもしれないけど、レティシア?はとっても死にたがり。

一と二と四が全く内容が一緒。今、革命者の前に私がいるんどけど、レティシアなのよ。」

 

一発、イェスが撃った。

レティシアもどきの肩に当たる。

感心しつつ、イェスの言葉に耳を傾ける。

 

「どういうことだ?また分身か?」

「そうだけど、なんか言葉に言い表せないけど、ちょっと先の時間でなんか、空が開く?」

 

(空が開く?)

 

十六夜は空を見上げた。

 

・・

 

古城

 

「あぁ!もう!」

 

イェスの金髪は白に変色、と言うより戻っていたが正しいだろう。

黒ウサギみたいだと少し、笑ってしまう。

ここは太陽の苦手な主のために天幕が張られているからこそ、イェスは力のすべてを攻撃に回ることができる。

 

古来より、白は神の使いや神性を帯びていた。

イェスは先天的な病気だったが、信仰も少しながら力になる。その力で色素を作り出すというとんでもないことをしでかしていたが、その力さえ攻撃に回していた。

少し笑ってはいたものの、氷草は天幕の下であっても早く敵を倒して日陰に連れていきたいと思っていた。

それでも、敵は敵で手強い。

子供の遊びっぽく敵に食って掛かるイェスを見ながら、彼は今できる限りのため攻撃のために力を溜めている。

その余波で氷草達がいる高度の一部分のみ、雪又は霰が現れているが、敵はイェスの細々とした攻撃を、避けることで気が大きくなっていて、気が付かない。

黒いドラゴンに成り変わった敵、グライア。

(なんか。リザードマンみたい。)

 

氷草がそれに抱いた感想と言えば、そんなものだ。

姿に対する驚きも、恐怖もなかった。

グライフは誇らしげにギフトを語り、さまざまな姿を氷草とイェスに見せびらかしてはいたが、氷草もイェスも羨ましい等とは微塵も思ってなかった。

テレビで見たミミックオクトパスの方がすごかった。と二人とも思っていた。

 

「イェス。」

 

氷草の声で、イェスがグライフから距離を取った。

そして、氷草のため攻撃がグライフに向けて放たれた。

 

「擬似流星!」

 

放たれた氷のつぶては、原理を無視して流れ星となり、グライフにぶち当たり吹き飛んでいく。

そこで契約書類(ギアスロール)に勝利宣言がにされた。

 

【ギフトゲーム:SUN SYNCHRONOUS ORBIT inVANPIRI KING

勝者、参加コミュニティ“ノーネーム”

敗者、主催者側コミュニティ“ ”

上記の結果を持ちまして、今ゲーム終了となります。

尚、第三勝利条件の達成にともなって12分後・大天幕の解放を行います。それまではロスタイムとさせていただきますので、何卒ご了承ください。夜行種は死の恐れもありますので、7759175外門より退避して下さい。参加者の皆様はお疲れさまでした。】

「ロスタイム?」

 

二人が困惑する真横に、巨龍が現れる。

 

「耀がゲームクリアした。

でも、このままじゃレティシアは死んじゃうみたい。

レティシアの本体は巨龍。

このゲームは初めからどの勝利条件を満たしてもレティシアが死ぬことが決定つけられていた。

耀は巨龍の心臓を撃つみたい。」

 

イェスは分体が聞いている言葉を所々摘み取って喋る。

そう喋っている間にも巨龍は下へと向かっていっていた。

 

氷草は慌ててもとの姿……氷草がもとの姿と認識する姿になり、氷草も急降下を始める。

だか、追い付けない。

龍神といっても幼龍。二十年も生きていない氷草は重力の力を借りたとしても、巨龍に追い付けなかった。

 

《クソ!間に合わない!ん!》

 

「DEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeeeN!!!!」

 

赤い鉄人形が巨龍に突進していく。

なんとか持ちこたえているようだが、損傷がみられていて痛々しい。

 

「止まれええええええええぇぇええええ‼」

 

飛鳥の声、それと共に新しい悲鳴も聞こえた。

 

 

ディーンは食らいつかれていない左腕でアッパーカットを決める。

巨龍の頭が大樹の頭上まで持ち上がり、ディーンの半身を食い千切って氷草の方に来た。

消して逃がさないように、氷草は巨龍に絡み付く。

空から落ちてくる十六夜が心臓を撃ちやすいように整えて。

 

巨龍と共に現れていた暗雲が太陽の陽射しを受けて霧散していく。

巨龍は陽射しに溶けるように透けていく。

 

「見つけたぞ!十三番目の太陽!」

 

耀と十六夜が突っ込んでいく。

巨龍の断末魔はなく、光のなかに溶けていった。

心臓からレティシアが溢れたように落ち、耀が日光から庇うように抱き止めていた。

 

ディーンが食いちぎられたとき投げ出された飛鳥を尾で受け止め、振ってきた十六夜を掴み、耀とレティシアを腹で受け止める。

 

(イェスにみっともないと文句を言われるだろうな。)

 

そして氷草の頭にイェスが落ちてきた。

 

《しまった!上はもろ直射、イェスウウウウウウ‼》

 

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