温厚な龍が異世界からやって来るそうですよ?   作:イェス

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№16 同盟結成

蛟劉による武勇伝を聞いた翌日、氷草は同盟の締結のために、四つのコミュニティが終結していた。

“ノーネーム”からはジン=ラッセルのペストが。

“六本傷”からはポロロ=ガンダックが。

“ウィル・オ・ウィスプ”からはジャック・オー・ランタンとアーシャが。

“鮮血の瞳”からは氷草が。

 

円卓のテーブルを囲むように向かい合った氷草らは、それぞれの望むものを示した契約書を取り出した。

始めにポロロが取り、砕けた調子で告げる。

 

「ま、堅苦しい物言いはやめようぜ。端的な確認でいいよな?」

「僕はそれでいいよ。」

「右に同じ。」

 

「ヤホホ!私もそれで構いませんよ!」

「おぉ、土地の権利を持つ“ノーネーム”と、採掘作業を行う“六本傷”と、鉱石の精錬を行う“ウィル・オ・ウィスプ”各地への広告活動は“鮮血の瞳”。特注品の扱いは別として、利益分配は5:2:2:1でいいか?」

 

それに皆が同意する。

 

「広告活動ってどんなことをするんだ?」

「ん、東西南北にさまざまな支部が“鮮血の瞳”には存在するんだ。無論五桁や六桁、七桁にもね。」

「ほぉ。じゃ、今の内容でいいとして、」

 

ポロロは少し声のトーンを落として、

 

「話しにくい話だが、“連盟権限(ゲストマスター)”の扱いをどうするか。」

 

その話題にジンとジャックは表情を固くする。

そんな中、氷草とポロロは決めていることがあるようで、ポロロは立ち上がりはっきりと断言した。

 

「先に宣言させてもらう。我々“六本傷”は勝算なきゲームに救援を送るつもりはない。同盟は地の契約ではあるが、血は流せば傷は塞がるもの。不名誉と罵られることになろうとも、同士の命とは変えられない。」

 

侮蔑覚悟でそう、宣言した。

“六本傷”は数こそ多いものの、戦闘力に欠ける。それをジンもジャックも知っているからこそ、侮蔑の言葉を言わず、受け入れた。

 

「私も同感です。ですが、“勝算さえあれば、救援を送ってくれる”のでしょう?」

「目ざといな。いいぜ。そのときは万難を排して救援に向かう。」

 

皆うなずき、次に氷草が宣言する。

 

「僕のコミュニティは四桁だけど、各地の傘下はここにいるコミュニティの実力の、足元にも及ばない者共が多いだろうから、基本、近くの幹部又は実力者と僕ぐらいが戦闘に参加するよ。他は後援に回させて貰う。でも、ノーネームが参加するものだけだ。あとは後援メインだよ。」

「ノーネームと参加?」

「今、僕はノーネームにも所属してるからね。ノーネームと行動を共にする。僕はね

。他の配下は違うから駆けつけるのも遅れるかも。」

 

ジャックもポロロも快諾して、ジンは立ち上がる。

 

「方針はそれで構いません。我々は貴方達の協力次第であらゆるゲームに参加する心得でいます。」

 

「何?」

 

ポロロが怪訝そうな声をあげる。

ジンは言葉巧みに自軍をアピールし、強化の設計を語り、武具を作る約束を取り付けた。

 

「ジン=ラッセル殿。」

「は、はい。」

「我々は、“マクスウェルの魔王”に付け狙われています。それでもですか?」

「はい。“ウィル・オ・ウィスプ”が至高の武具を用意してくれるのならば、我々は蒼炎の旗印の元に馳せ参じます。」

 

四人は固く握手をした。

 

「氷草さん、一ついいですか?」

「何?」

「貴方の妹さんは魔王連盟に参加されてるのですか?」

 

それを聞いた氷草は、にこりと笑って嬉しそうに話し出す。

 

「あのこはそんな物に参加しないよ。そしてあのこはここを出るときにこう、僕に言ったんだ。“ピンチのときには、魔王としてじゃなく、一人の妹として救援に行く。”ってね。」

 

・・

 

締結して数十分後、氷草はヒッポカンプの騎手の会場に来ていた。

そこでジンとまたあって、思いもよらないことを告げられた。

 

“優勝者が階層支配者(フロアマスター)を使命する”と。

 

それに他の三人は乗り気になって、氷草に騎馬を頼んで、氷草は頼まれた。

一度は断ったものの、運営側としても推奨されたので、仕方なく飛鳥をのせて参加することになった。

 

《視線がヤバイな。》

「珍しいのよ。もっとシャンとしないと。」

《やだなぁ。》

「口調戻ってるわよ?」

《もういいよ。すごい緊張する。たぶん大丈夫だと思うけど、ちゃんと捕まっててよ?》

「えぇ。もちろんよ。」

 

「それではヒッポカンプの騎手の開催を宣言する。」

 

そう、宣言がされたとたん、氷草(ドラゴン)が水面を蹴り、大きく波を起こさせる。

 

フェイス・レスも参加しているようで、フェイスは水着を切り裂いて参加者を減らしていっている。

およそ5mながら、周りのヒッポカンプを凌ぐ機動力で水面をかけていき、樹海の分岐路に差し掛かった。

それを氷草は、水を樹海の上に持ち上げて、 それに向けて跳んでいく。

飛行ではなく、跳んでいるため、ルール違反にはならない。

 

フェイスの攻撃を氷草自体の体で守りながら突き進んでいく。

無事、折り返し地点に来たときに、氷草はある人物を見つけた。

 

《蛟劉。》

「ん?その声は氷草やね?騎馬なん?」

《あぁ、そうだけど?負けることはできないから。》

 

「あぁ。そうだ。」

 

サポーターたる十六夜が出てきて蛟劉の相手を買って出る。

 

「えぇんか?」

《うちの十六夜なら平気で勝っちゃうかもよ?》

 

氷草は飛鳥を背にのせるとすぐにフェイスのあとを追っていく。

滝を飛び降りる際に、大きな風を巻き起こして相手の騎馬の軌道を大きくずらし、、飛鳥が木々から蔦を伸ばしたので、ワンクッションそこでおいて水面に着地する。

フェイス・レスは既に着地して走っているので、氷草は急いで水面を走った。

 

《飛鳥!しっかり捕まってて!》

 

これまで氷草は安全に飛鳥を運ぶために、バリア的なものを自らの回りに張っていた。

そのぶん、速度は落ちるが、失格になる可能性が低まっていた。

が、もうここでそんなことは言ってられなくなっていた。

 

氷草はバリア的なものを外し走ることだけに専念する。

今まである程度の進路を決めていたものを、完全に飛鳥に委ねて。

 

「すごい。」

 

会場の観客たちはその一言だけだった。

彗星のようにゴールに向かう様を見て、誰もが言葉を、その一言さえ飲み込んだ。

 

「ごきげんよう、仮面の騎士様!“ヒッポカンプの騎士”は……私たちの勝利よ!」

 

《やったー!勝った!》

 

会場の観客たちから地が揺れるほどの喝采が贈られた。

黒ウサギは司会役を投げ出し、飛鳥と氷草はに抱きついた。

 

「飛鳥さん、氷草さん。優勝おめでとうございます!」

 

黒ウサギが抱きついたことによって、飛鳥と黒ウサギだけが水に落ちていく。

かなり大きめな水飛沫を上げて落ちていったので観客たちから笑い声が上がった。

 

「“ヒッポカンプの騎手”の勝者を“ノーネーム”出身・久遠飛鳥とその同士たちと宣言する!さぁ、勝者を舞台へ担いで運べ!恩恵の授与と……宴の続きをするぞ!」

 

その声で氷草は二人を尻尾で掬い上げ、背にのせた。

そして“アンダーウッド”の地下都市に向かうため、ゆっくり歩き出した。

 

・・

 

大会後、満足するほどたらふく食べた氷草は、ある人物に話しかけた。

 

“覆海大聖”の蛟劉。

 

「大会、お疲れさまです。どうでしたか?僕の同士は。」

「お疲れ。なに、すごい同士がいたもんやね。久しぶりに楽しい戦いやった。本気を出してもうた。」

 

その言葉に、氷草は嬉しそうに返す。

彼は、まるで自分のことのように喜ぶのだ。

 

「十六夜は“ノーネーム”の最高戦力。僕より強いからね。」

「下層に君みたいな純血や少年みたいなのがいるとは、まだまだ下層は侮れないっちゅうことやね。」

「ふへへ、十六夜をそんな評価なままの蛟劉が代理になるなら東は安全だ。」

「……まさか、白夜叉とグル?仕込んでたんやね。」

「へへ。」

 

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