温厚な龍が異世界からやって来るそうですよ?   作:イェス

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№18 神神隠し

ルイオスを一通りタコ殴りにした氷草は、気分転換に街中をぶらついていた。

飛鳥はゲームに参加するらしいが、角杖を試すには人の目があるなどと、適当に言い訳をして逃げてきていた。

彼にはある心配事があった。

 

“神隠し”

 

それをまんまとやってのけてしまう身内がいたからだ。

名前を全面的に押し出していないから彼女が、犯人だった場合“単なる遊び”てしかない。

イェスと名乗った妹が、それこそほんとの名前で遊びに全力を尽くしている。

無事に返すのと、突然飽きてさらった子供をどこかにほおりだしてしまう可能性は五分五分。

子供をおいている場所が亜空間なら飽きると同時に子供は爆死霧散だ。

 

そこで氷草は、ある疑問を発見する。

 

(あれ?僕いつから拐われたのが子供だなんて。…………ひ、秘密の暴露?秘密の暴露だこれ!まさか、…………僕が犯人?)

 

そんな馬鹿なことを考えながら歩いていると、目の前を見知らぬだれかさんと十六夜が 横切っていった。

 

「なんだったんだ?いったい。っ!」

 

そこで氷草は、得たいの知れない恐怖に教われた。

 

(なにこれ?やな気しかしない。後ろ?)

 

氷草が振り返った先になにもなかった。

なにもない真っ黒な空間が広がっていた。

深淵の闇。

 

「え?」

 

氷草の足元まで迫っていた闇に引きずり込まれる。

そのまま氷草は、落ちた。

 

・・

 

氷草が目を目を覚ましたとき、一番最初に見た人物は蛟劉だった。

 

「うん?」

「起きたか。久しぶりやね。」

「?久しぶりです。」

 

蛟劉の回りには少年二人。戦士っぽい風体の男が四人。火竜が六人。

そして枕元……頭の下に月亭がいた。

 

「ここは洞窟?」

「いえ、地下室にございますね。」

 

体を起こしてみれば、教室ほどの大きさの空間が広がっていた。

床は真っ赤な絨毯がひかれていて、大きな時計も見える。

デジタル時計で、23;33と表示されていた。

天井にはランプが吊り下げられている。

白い光を放つ炎が中に灯されていて、氷草は白い明かりに懐かしさを感じていた。

懐かしさを感じている氷草のとなりで月亭が蛟劉と話し込んでいる。

 

「この炎には覚えがあるのですが。」

「覚えがある?」

「えぇ。我が主がよく使用していました。白い光が好き。とのことで。」

 

主。

月亭がいう主は氷草の弟、幻夜が使う色だ。

イメージカラー的なもので氷草やこの前まで魔王をやっていた妹、現夢だって出せる。

 

「うーん。その事で、なにかわかることがあればええんやけどね。」

「?どういうことですか?」

 

氷草は訳が分からず蛟劉にそうきいた。

 

「魔王のギフトゲームのゲーム盤の中らしいんや。」

 

蛟劉はそう言って部屋の真ん中を指差す。

部屋の真ん中には机がひとつだけあり、その机の上に黒い契約書類(ギアスロール)が小さな鏡を重石に置かれていた。

氷草さ契約書類(ギアスロール)を見た。

 

 

ギフトゲーム “巡る朔夜”

 

参加条件

闇に魅入られた者

 

プレーヤー側勝利条件

一、“二日目の夜”を迎える。

ニ、夜空に指定道具で太陽の光を届ける。

 

プレーヤー側敗北条件

・禁止事項を冒した場合のみ(死亡を敗北とは認めない)

 

指定道具

“夜の太陽”

 

禁止事項

・夜の太陽の作成

・PvP

・自害

・建造物の破壊

 

注意事項

 

ゲーム盤の諸事情により、火災が発生します。

そのためゲーム中は魂を預かることによるプレーヤーの安全性を確保しております。

このゲーム中に死亡した場合のみ、復活します。

 

宣誓

参加条件に満たした者に限り、この試練が正当なものであることを保証します。

 

印竜使現夢

印ミラ=Nyarlathotep

 

 

「なんのことだかさっぱりわかんないんや。」

「……そうですね。あの子、意地悪ですから。室内じゃ無理です。」

「やっぱり身内やね。」

「まあ。……二つ目の印の人物を考えてゲームクリアは二人で行いましょう。」

 

彼には思い当たることがある。

まず外にでなければならない。

地下室というならどこかに出入り口があるはずなのだ。

まずそれから探さなければならない。

 

「どこかに出入り口があるはずです。」

「あぁ。除き穴のあるドアはあるんや。ただどうやっても開かない。

穴をのぞき込んでみたらなにやら奥に目玉があるんや。」

「目玉?」

「こっちや。除きこんでみ。」

 

蛟劉につれられ氷草が部屋の隅に歩いていくと、扉があった。

蛟劉のいった通りそこそこ大きな穴があり、除き混んで見ると真っ赤な目をした眼球がこちらを見ていた。

 

ギョロギョロとしているかと思えば、オブジェのようだった。

よく見てみれば除き穴も穴を瞳孔に目玉のようになる模様が彫られている。

 

「これ、水晶体でないでしょうか?」

「水晶体?」

「えぇ。光センサーで開くかも。たぶんこれ、機械でロックをかけてるんだと思います。」

「どういうことや?」

「眼って、光から情報を得てモノを見るでしょう?

奥の目はセンサーとヒントを兼ね揃えていて、どうにかして光をあそこに届ければロックが解除されると思うんです。」

 

氷草は辺りを見回して、壁の模様に気がついた。

落書きのように目の断面図と線がかかれている。

目の仕組みを教える図をさらに簡単にしたもの。

 

「じゃあ、ドアの真上の光源だけ形が違うのも関係してるんか?」

 

蛟劉にそう聞かれて氷草は、上を向いた。

 

白熱灯。

それだけ炎ではなく白熱灯だった。

 

(電気が通ってる?

そうか!

この人たちは知らない可能性がある。

この前の魔王のゲームで人工衛星を知る人物はかなり少なかった。1957だったけど、電球が出来てきたのは1800代。たかが200年。されど200年。光センサーなんてもっとあとだ。)

 

「うん。このゲームはかなり最近箱庭にきたものが作ったゲームだ。

難易度は簡単なんだ。」

 

氷草は、ハッキリとそう言った。

その言葉を聞いて、戦士風の男が氷草に苛立った声をあげた。

 

「簡単?馬鹿いうんじゃねぇよ。それだったらこの坊主がクリアしてる。

俺ももう3日目だぞ!」

「ああ!クリアさせる気がねぇんだ!」

 

その勢いに圧倒された氷草は、階級支配者(フロアマスター)の蛟劉の後ろに隠れる。

 

「ちょっ、なにやっとるん?説明しなきやまあかんよ?」

 

そんな氷草を蛟劉が無理矢理前に出そうとする。

が、氷草は負けじと蛟劉の背中にしがみ付いてそうさせない。

 

「力強っ!ほら氷草。このゲームのクリア方法わかっとるんやろ?説明せないかんよ?」

 

他の面々が、その台詞にざわめきたち、蛟劉に説明しろと声が上がる。

そこで氷草は渋々、話始める。

 

「……ここは避難場だと思う。注意事項の火事から逃げるための。」

「避難場?そんなもの作るか?」

「だからクリアを前提に作られてるんだって。」

「でも出方がわからねぇよ!」

「鍵の解除方は嘉部にかいてあったよ!たぶん重石がわりにしてある鏡を使うんだ。」

 

氷草は、部屋の中心にある鏡をとって、白熱灯の光をドアの穴の向こうの目玉に当てる。

数秒後ガチャ。と鍵のあく音が地下室に響き渡った。

 

「禁止事項の建物の破壊は、この“壁の中”の回路、この部屋から出るための仕掛けを守るため。完全な避難場にするために、空間を切り離してるんだともおう。唯一の扉はこのドアだけ。」

「どうしてそんなこと思ったんだ?」

「制作者の性格を考えてだ。」

 

一同は地下室から外に出る。

そこは森だった。真っ暗で空を見上げれば星が美しい空だが、月は出ていなかった。

どこか怪しい雰囲気の漂う森で、何とか聞いたことのある怪鳥の声や、空飛ぶ蛇を見たが、氷草は見なかったことにして話を始める。

 

「クリア条件のひとつ、二日目の夜を迎えるっていうのは、三日月を見なきゃいけないんやろ?」

「そう。ゲーム名から新月の夜が続いているんだと思う。」

「えぇ。朔とは新月をさし、一日目とされてきていました。現夢嬢はおそらくそれにかけているのでしょう。

そして、ミラ殿。彼はNyarlathotepですから地上は阿鼻叫喚になるかもしれませんね。」

 

そこで戦士風の男が話にはいる。

 

「この平石も関係しているのか?」

 

氷草は平石と聞いて、不安に思う。

森に火事、怪鳥に空飛ぶ蛇。

この時点である程度の予想は立てられている。

そしてこのゲームの関係者にNyarlathotepがいることで、ほぼ確信ついているのだ。

氷草は、平石をみてこの場所が、()()()どだかわかった。

平石には、無定形の顔のない者の似姿が描かれていたからだ。

 

(……そっか。やっぱりここはンガイの森を複製してるんだ。月の下には森が似合うっていってたもんな。

そして火事はCthughaの火の精がやって来るせい。)

 

ン・ガイの森。

Nyarlathotepの住処の一つで、1940年にNyarlathotepの天敵であるCthughaの部下たる火の精によって焼き払われた森だ。

 

このゲームを作った際に、氷草の妹である現夢は相棒のミラと名乗るNyarlathotepの力を借りて、夜の森という舞台を作りあげた。

ミラは記憶を忠実に再現し伝えたため、ンガイの森が細部に至るまで再現されてしまっていた。

クトゥグアの部下たる火の精霊がやってくることまでもが。

“諸事情により、火災が発生します。”というのはこのことで、一種の演出として取り込むことにしたのだ。

 

「これはHowler in the Dark。夜に吠ゆるもの、もしくは月に吠ゆるのと呼ばれている、Nyarlathotepの顔の一つ。たぶんここら辺に指定道具“夜の太陽”が隠されている。」

「また、月やね。夜の太陽も月に関係しとるん?」

「うん。たぶん、月を夜の太陽といってるんだと思う。」

「なら、月を探すんか?」

「いや、探すのは鏡だよ。月は太陽の光で光ってて、月が光って見えるのは太陽の反射光なんだ。下でロックを解除したのも反射光を利用して。

だから探すのは、“夜の太陽”は鏡だ。」

 

そう、宣言したと同時に背後で爆音がした。

これまで真っ暗なか、平石を照らす松明だけの真っ暗な場所に、昼になったかのような光量が押し寄せ、誰もが目をつぶった。

不気味な声が上がると同時に森全体が焼けていくような嫌な音がする。

視界を閉じているため、より鮮明に、そして印象的に声と焼ける音が聞こえてきた。

 

「なっ、なんだ!」

「森が!」

 

皆、目を開け棒立ちしていた。

森がだんだん燃えていき火の粉が襲いかかってくる。

森では動物の叫び声が、怪物の呻き声が聞こえていた。

すぐに空から火の玉が降りてきて、熱風が氷草たちを襲った。

瞬く間に焼け野はらとなった森を氷草たちは呆然と見ているだけだった。

 

ただ、変化はそれだけじゃなかった。

周りの景色の色が失われて、焼けたはずの森が蘇り、火の玉が空に戻っていき、逃げている鳥が巻き戻るように戻っていった。

 

そして気がつけばまた地下室にいるのだった。

 

状況が飲み込めないでいる氷草、月亭、蛟劉以外の面々は顔を真っ青にして狼狽たり震えるものがいた。

地下室の時計を見れば、時刻は20:00をと表示されている。

 

「リセットされてると考えると、外を動けるのは四時間ってことだね。地上がミラだけ作ってたら迷宮とか迷路のなかにあるかもしれない。隠してあると思うし。」

「ヤバイんか?ミラってのは?」

 

「……。」

「……。」

 

「「どっちもヤバイ。」」

「現夢は即死トラップや地下室が大好きだ。」

「ミラ殿は、自滅や仲間割れを起こすような仕掛けが大好きです。」

「……それだったら、迷宮や迷路があってもトラップとしてみた方がええんやね?」

「うん。難易度はかなり簡単なはずだから、死んでも生き返るというのを利用して、遊びとして取り入れてると思う。」

「遊びか。氷草君と違って、ずいぶん物騒な遊びやね。」

「いや、僕も好きだよ。ただ、僕は即死系じゃなく救いがある系だけどね。」

 

氷草はもう一度ドアのロックを外す。

動けるのは蛟劉と月亭と自身程度であるのを確認し、そのメンツで外に出た。

 

怪鳥や空飛ぶ蛇が見えるなか、手掛かりを探すために3人で見渡す。

 

「ヒントは無さそうやね。」

「……隠されてるのかもしれない。」

「探すにしても、ンガイの森はクリーチャーが多いと思われます。」

「どんなもんがいるんや?」

 

氷草はざっと思い出して、7種いるかな?と予想をたててみた。

 

「まず、あのこの能力で、闇に吠ゆるものに限りなく似せた、擬似闇に吠えゆるもの。

僕は愛称がよくない。ミラと言う訳じゃなくて、ミラとは違うやつだから理性はないよ。きっとね。

次に、あのこの眷属。

真っ赤な液体生物で、赤い液体があればあるほど増殖するのがやっかいなんだ。

殺した生物の血からまた生まれて、ねずみ算式に増えていく。

次に、龍としての眷属だ。僕なら統制がとれるし、特に問題はないと思うけど、このンガイのクリーチャーはあまり融通がきかない。

せいぜいあの、空飛ぶ蛇ぐらいだね。」

 

氷草が指差す方向に、空飛ぶ蛇。

忌まわしき狩人がいる。

 

「あれは、忌まわしき狩人。弱点は光で、閉め攻撃がヤバイ。

次に、あれ。」

 

氷草が怪鳥を指差す。

 

「あれは、シャンタク鳥。持ち上げとかやばい。

で、あれ。あれはあまり好きじゃない。」

 

氷草が指差す方に、ヒキガエルに似た触手を持ち合わせたクリーチャーがこちらを向いていた。

 

「あれは虐殺好きで、ムーンビーストというんだ。楽しむためだけに人間をいたぶり殺す。」

「みとるけど……。」

「狙ってるね。あの触手で千切っては投げ、えぐって啜り出すんだよ。」

 

突進してくるムーンビーストを飛び退いて避けた3人は、ムーンビーストの背をみて焦った顔をする。

 

「手負いのムーンビーストだ!背中に鏡が刺さってるぞ!」

「……ここで、ここで見失えば終わりや!なんとしても倒して鏡を手にいれる必要があるちゅことやね!」

 

月のない闇夜。

灯りは平石を照らしている松明一本だけ。

かろうじて見えるものの、普通にみるのであれば戦いにくい。

 

「月亭!お前は潜ってろ!」

「はい!」

 

氷草はンガイの森の木に飛び乗ろうとしたが、現夢の眷属が口を大きく開いているのを目視し、翼を出現させ羽ばたいた。

氷草はぐるりと周りを見渡し、眷属の数を確認し、蛟劉に叫ぶ。

 

「木に乗らないで!あのこの眷属がいる!あれは、切り裂いても分裂する!」

 

空からはシャンタク鳥が氷草に襲いかかって来ていた。

 

「(空にはシャンタク。木には眷属、地上にムーンビーストか。やばいな。)」

 

シャンタクがガラスを引っ掻いたような不快な鳴き声を発し、氷草は耳を押さえた。

 

「な、なんや!?今の音は?」

「シャンタクだよ!上からの攻撃にも気を付けて!」

 

低空に移動した氷草につられ、シャンタクも低空に降りてくる。

氷草はシャンタクの鬣をつかんで地面に叩きつける。

叩きつけて好きが生まれた所に、ピンク色した触手が伸びるが、蛟劉がムーンビーストを蹴り飛ばしたことにより、触手はシャンタクをつかんでシャンタクの翼をもいだ。

 

「なんや?仲間を拷問しとるん?」

「そういう種族なんだ。今のうちに鏡を引き抜こう。」

 

氷草はそういって、ムーンビーストの背中に手を伸ばした。

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