温厚な龍が異世界からやって来るそうですよ?   作:イェス

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№1 すれ違い

 

時間は遡って、五分前。

氷草はその場のノリで十六夜に付いていき、ギフトゲームに巻き込まれた。

 

「小僧共よくやるな。」

 

(あぁ!蛇神だよ。奴等沸点低いんだから!)

 

彼は、その上位種でその上位種でも沸点が低いことを気づかない氷草だ。

そして若干落ち込んでいた。

 

(僕ってそんな神格ない?)

 

神格持ち、だとかの言葉と違って、この言葉は人間の、【影か薄い】の意味になるが、目の前の蛇神はそれどころじゃないので気づいていないだけだ。

 

「おい!氷草!」

 

「ふぶぇ?!」

 

氷草の顔、いやからだ全体にビタン!と蛇神の尻尾が当たった。

 

「「え?」」

 

蛇神も十六夜も驚愕の表情を浮かべていた。いくら軽いものでも、全身に不意打ちでものが当たれば、よろめくものだ。

当たったとして大丈夫そうなのはせいぜい綿の塊か巨大なディッシュくらいだろう。

それなのに、受け止めたのだ。

 

「あぁ――――――!?!?!?」

 

蛇神が声にならない悲鳴をあげる。

 

「あ、あの。」

「なにもしてないのに。」

「はぃ!」

「なにもしてないのに殴った!」

 

龍神も沸点が低く、温厚な彼も沸点が低い。

 

「許さない!」

「あ、あ。」

 

顔は赤くなっていて涙目の氷草は拳を握りしめた。

見事なアッパーカットを撃って蛇神の顎にクリーンヒットさせる。

 

「バカぁ!」

 

幼児のように怒って十六夜の肩を掴んだ。

 

「おい?」

「帰るよ世界の果てを見たでしょ!」

 

月亭の居場所を彼はわかるようにしておいたので、そこにテレポーテーションするようだ。

報酬は受け取っていないが、そんなの眼中になく氷草は不機嫌だった。

二人の視界がすぐにかわって、はねっ毛ダボダボローブの少年とその他と合流した。

まったく黒ウサギの追い損である。

 

「あら?黒ウサギはどうしたのかしら?」

「ヤハハ、テレポートとは。」

 

突然現れた二人に驚いた様子だったが、すぐに氷草が誰だこいつ?的な視線をはねっ毛ダボダボローブの少年に向けていたので、その少年が自己紹介を始める。

少しばかりか氷草のテンションが上がっている。

 

「コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。」

「私は久遠飛鳥。猫を抱えてるのが、」

「春日部耀。」

「僕が竜使氷草で、」

「俺が逆廻十六夜だ。」

「わたくしめが、玉兎の月亭にございます。」

 

 

ジンは外門からなかにはいって近くの喫茶店に入った。

月亭も食べれるようにと、外側の席に座り、ウェイターさんに注文をする。

 

「紅茶二つに抹茶を一つ。氷草さんは?」

「僕はこのブレンドブラッドっていうのを。」

「あとはこれとこれとこれ。」

にゃー。(ねこまんまを。)

「フレッシュサラダを。」

 

「はいはーい。ティーセット三つ、ブレンドブラッドセット一つ、ねこまんま一つ、フレッシュが一つですね。」

 

ん?とジンと飛鳥、十六夜が首を傾げる。

 

「君って猫?」

「そうですよー。貴方、わかるんですか?珍しいですね。」

「はは、必須項目ですから。」

「?」

 

店員と話していると、隣で耀と飛鳥、ジンもそのようなことを話していた。

 

「玉兎のように言語を与えられているのならば人間との意思疏通は容易いものですが、普通のうさぎなどは無理ですね。」

「ふぅん。」

「そちらの耀どのはそのようなギフトをお持ちなのでしょう。言語の壁と言うものはかなり高いものですからね。」

 

店員が引っ込むとジンが話を振っていく。

 

「氷草さんはどんな能力を?」

「神仏から与えられた者だろ?よくわからないんだ。生まれたときからあったし。そういうのって、鳥が飛ぶのも飛行のギフトかなにかなのか?人間がしゃべるとか歩くとか。」

「それは違いますね。」

「ふぅん。」

 

ふと、氷草の手元が暗くなり、後ろにある気配が止まる。

歩く気配はいくらでもあって、入り口なので後ろから近づく気配もあったが、それは止まった。

氷草は警戒しながら後ろを振り向けば、変態がいた。

ピチピチタキシードの男だ。

 

「おんやぁ?誰かと思えば最底辺コミュ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジンくんじゃないですか。今日はお守役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

浅黒いはだ、オレンジがかった髪の大男がジンにたいして話しかけた。

 

「僕等のコミュニティは“ノーネーム”です。“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー。」

 

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人員を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。

そう思わないかい?皆様方。」

 

ガルドと呼ばれたその男は他のテーブルから椅子を拝借し、勢いよく座る。

愛想笑いをジン以外に向けるが、あまり好印象は持てなさそうだ。

そう判断した氷草は聞いてる体を装ってボーとし始める。

 

(こいつの種族はワータイガーかな?)

 

・・

 

「俺もそうだぜ。氷草はどうなんだ?」

「あぁ、僕もそうだ。」

 

氷草はキリッとした表情で答えたものの、なにがなんだかわかっていない。

 

「どうしてそのような?」

 

話した全てを月亭から取得した氷草は、にこりと笑ってこう言った。

 

「なにもないところから這い上がった方が楽しいよね?ただそれだけさ。誰のはいかにもならないよワータイガーさん。気に入らないならゲームをしようじゃないか。“フォレス・ガロ”の存命と“ノーネーム”の魂を賭けて。」

 

 

・・

 

「もう!黒ウサギの幸せ気分を返してくださいよ!」

 

噴水の前で黒ウサギと合流したのはいいが、氷草はかなり怒られていた。

 

「大丈夫だよ。ゲームが一人でもできるものならこの僕がやるし。」

「あのですね!」

 

さらに怒りそうな黒ウサギをとめたのは十六夜だった。

 

「氷草が売って奴等が買ったんだ。俺たちが手を出すのは無粋と言うものだ。それにこいつなら大丈夫だろ?」

 

水樹の苗というものを抱えた黒ウサギは嬉々として皆に見せる。

 

「見てください!こんなに大きな水樹の苗を十六夜さんが手に入れてくれました!」

「それは氷草だ。」

「へ?氷草さんがですか?そうでしたか!ありがとうございます!」

 

今まで買うか、遠いところまでくみに行かなければならなかったものが、簡単に手に入るとなり、黒ウサギとジンは嬉しそうにしている。

元々の世界は水が豊かで、島国とあって、水不足何てものは珍しいものだった。氷草が住むところもすみわたった水が豊富にある上、空気中から集めることもできたので水不足自体、経験したことがない。

 

「今日はこれでコミュニティに帰るの?」

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームがあるのですから“サウザンドアイズ”に用がありますから。」

 

それに氷草たち四人が首を傾げた。

四人の気持ちを代弁するように十六夜が黒ウサギに話しかける。

 

「それってコミュニティ名なのか?」

「YES。サウザンドアイズは特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし。」

「そこで何を?」

「ギフトを鑑定いたします。わかった方がよろしいでしょう?」

 

黒ウサギに案内され、青い生地に女神がおられている旗が掲げられている。

 

「まっ―」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません。」

 

……ストップをかける事も出来なかった。

さすがは大手商業コミュニティだ。押し入り対策の教育がされている。

 

「なんて商売っ気のない店なのかしら!」

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

「しょうがないよ。五分前にくる僕たちも悪いし。」

 

騒ぎ立てる黒ウサギと飛鳥をなだめて、氷草は店員に一言謝罪する。

 

「いえいえ、わ――」

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

「きゃあーーー‥‥‥……!」

 

遠くなる悲鳴が聞こえたあと、ポチャンと音がした。

突然とのことに氷草は身構え、店員は頭を抱えた。

 

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非!」

「ありません。」

「なんなら有料でも!」

「やりません。」

 

氷草には真っ白い髪の少女が見えた。彼には二人妹がいるが、片方の妹がアルビノなので一瞬勘違いをしてしまったが、声質がまったくことなり、同族の気配もないので身構えを解く。

黒ウサギに飛び付いている少女は黒ウサギに強引に引き剥がされて、転がる。

 

「まぁ、なんだ。入れ。」

「よろしいのですか?」

「なぁに、個人的な知人だ。それならいいだろう?」

 

私室に案内され、下座に腰を下ろす。

月亭は通常サイズに変化していて氷草の胡座の上で鼻をひくひくとさせている。

 

「畳ですな。」

 

少女が一つ、咳払いをする。

 

「 まず、自己紹介しておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構える“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ。

むー、その黒ウサギが持っておる水樹の苗はいったい誰がどのようなゲームで勝ったのだ?」

「えーと?」

「この俺のとなりにいる氷草が素手で倒した。」

 

十六夜は自分も参加しておきながらも功績の全てを氷草に預けるかのように紹介する。

 

「なんと!神格持ちとは思えんが……種族的な特異点か?」

「蛇の上位種は存在しますか?」

「あぁ、蛇神がそれだが、昔は上位種族として龍神もいたそうだかな。」

「そうですか。(こっちに血族はいないみたいだ。名を持つものなら目立つしふくくか持たないものはすぐに上位である僕に接触してくるはずだ。それに僕の神格が伝わっていないなら、意味が違うのかもしれない。)……ありがとうございます。」

 

氷草の予想通り、神格は生来の神そのものではなく、種の最高のランクに体を変化させるギフトのこと。

氷草自身、しれわたる現人神(あらびとがみ)とは違い、この世に人間の姿で現れた神の意味を持つ明神(あきつみかみ)だ。

 

 

「へぇ、話からして、あのヘビより強いのか?」

「ふふん、当然だ。私は東側の“階層支配者”だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者(ホスト)だからの。」

 

その言葉に、十六夜、飛鳥、耀が瞳を輝かせた。

 

「そう……ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

「抜け目ないのう。まぁ、そうなるじゃろう。」

「え? ちょ、ちょっと御三方!?」

 

慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

「ノリがいいわね。そういうのは好きよ。」

「ふふ、そうか。――しかしゲームの前に一つ、確認しておくことがある。」

「なんだ?」

 

 

白夜叉は着物の裾から“サウザンドアイズ”の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出す。

 

「おんしらが望むのは“挑戦”か―――もしくは、“決闘”か?」

 

氷草は流れてくる情報を処理しようと目を閉じた。

そして目を開けると、白い雪原と凍る湖畔。

白夜の空が広がっている。

他の奴等は唖然と立ちすくんでいた。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か? それとも対等な“決闘”か?」

 

それを見て、三人は実力差を見せつけられたようだ。

各々強がりながら挑戦を選んだ。

 

「おんしはどうする?」

「なら僕も挑戦で。」

 

その時、遠くの山脈方面から甲高い声が聞こえた。

その声を聞いて白夜叉が何かを呟くとその声に向かって手招きをした。

すると体長五メートルほどのグリフォンが現れ、氷上に舞い降りた。

 

「グリフォン・・・・・・うそ、本物!?」

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力”“知恵”“勇気”の全てを備えたギフトゲームを代表する獣だ。肝心の試練だがの。おんしら四人とこのグリフォンで“力”“知恵”“勇気”の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞うことが出来ればクリア、という事にしようか。」

 

虚空から“主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れ、白夜叉が白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。

 

[ギフトゲーム名“鷲獅子の手綱”

 ・プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

久遠 飛鳥

  春日部 耀

竜使 氷草

・クリア条件 

グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

・クリア方法

“力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

・敗北条件 

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホス トマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                      “サウザンドアイズ”印 ]

 

それを読み終わるや否や、耀が名乗りをあげる。

 

「私がやる。」

 

回りが心配そうに声をかけるが、やめそうにもないので、氷の椅子を作り出して氷草は座る。

うまく水分と冷気を調和させたのだ。

 

「ふぁぁああ。頑張って。」

 

一つ、あくびをして氷草は眠りについた。

 

 

「凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ!」

 

その声に氷草は驚き、椅子から転落する。

氷せいにも関わらずガタガタと音を立ててずり落ちたのだが、興奮した白夜叉の声に掻き消され目立つことはなかった。

 

「で、どんなギフトなんだ?」

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話できるのと、友になった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう。」

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

その声に、ゲッ、と気まずそうな顔をする白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがのぉ。」

 

ゲームの褒章として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。

白夜叉は困ったように白髪を掻きあげ、着物の裾を引きずりながら四人の顔を両手で包んで見つめる。

 

「どれどれ……ふむふむ……うむ、四人ともに素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトをどの程度に把握している?」

「企業秘密」

「右に同じ」

「以下同文」

「ギフトかどうかの問題。」

「氷草……だったか?それ以外はある程度わかっておるようじゃが、話が進まんだろうに。……むぅ、少々贅沢だが――」

 

白夜叉が柏手(かしわで)を打つと、四人の前に光輝くカードが1枚ずつ現れる。

 

「復興の前祝いとしてはちょうどいいのだろう。」

 

カードには名前と体に宿るギフトを表すネームが記されていた。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の目録(ゲノム・ツリー)”“ノーフォーマー”

 

ゴールデンオレンジのカードに“龍神”竜使氷草・ギフトネーム“終着点(オリジノロスト)”“ネイチャーフェイス”

 

「ギフトカード!ギフトを収納できる高価なアイテムじゃないですか!」

「あぁ。そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった”恩恵”の名称。鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの……氷草、よく見せてくれるか?」

「?」

 

氷草が白夜叉にギフトカードを見せると、白夜叉は黙り混んでしまう。

氷草は訳がわからないまま言葉を待つ。

どこか不安になる間が空いたあと白夜叉が口を開いた。

 

「おぬし、種族名はなんだ?」

「龍。」

「…………………………なに?」

「龍、ドラゴンどっちでもいいよ?下位のやつのなかにはドラゴンしてるのもいるし。生まれたばかりのおちびちゃんだからあまり強くないけどね。」

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