温厚な龍が異世界からやって来るそうですよ?   作:イェス

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№22 親子

樹海での戦いから数時間後、氷草は申し訳なさそうな顔をしながら十六夜と向き直っていた。

 

「この度は、申し訳ないことをした。」

「あぁ。」

「今後、このようなことがないよう、善処します。」

「煉獄の炎を消したんだって?」

「いや、消したんじゃなくて食べたが正しい。いつでもブレス可能だ。」

「出鱈目だな。」

「神話生物だから。」

 

十六夜は氷草の言葉をジョークと受け取ってやははは、と笑い始める。

十六夜は氷草が錯乱し無理な転移をしたあと、アジ=ダカーハと戦ったのだ。

 

「そういえば、角。」

「あぁ、うん。栄養が一気に入ってきて急成長したんだよ。」

 

氷草の生え変わりで抜け落ちていた角は、煉獄の炎を体内に取り込んだことにより、炎をエネルギーに変える体質の氷草は、急激にエネルギーを得て急激に生えたのだ。

栄養過密でエネルギーの道が壊れてしまい休眠にはいったが上手く眷属に分配され怪我人の治療を行わせている。

 

それで終わる氷草ではなかった。

氷草は、常に煉獄の炎にに体内を焼かれることでエネルギーを常に得ている。

ただし、供給と消費がつり合わないため氷草は黒ウサギを治療することで上手く調整をしようとしているのだ。

 

氷草達はある人物により古城に運ばれたのだ。

休眠状態であった氷草を取り直した人物がこの古城内にいるのだが、氷草の探索能力では見つけられていない。

少し、氷草が考え事をしていた好きに、黒ウサギが復活し、十六夜に抱きついている。

それをみた氷草は慌てて引き剥がすとベットに寝かせた。

 

「って、ここどこなのさ。僕の休眠を回復させた人ってのも、助けてくれたのも。」

「いったいどなたなのですか?」

「あぁ、それは――」

「私達だよ。黒ウサギ、幼龍。」

 

前触れもなく、いや氷草にはちょっとした予兆を感じてはいたが、ほぼ前触れはなかったと言えるが、目の前に燕尾服の老紳士が現れる。

黒ウサギは耳を跳び跳ねさせて驚いた。

氷草は、(この人、ロリコンっぽい)等とのんきに考えていたのだが、すぐさま現れた二人目の人物に体を硬直させる。

優美な黒髪に、真っ赤な瞳。

氷草にそっくりな女性が現れ、黒ウサギは首をかしげた。

 

「氷草様のお姉さまでございますか?」

 

そう聞かれた女性は、嬉しそうに笑ったあと、氷草をみて微笑んだ。

 

「久しぶり、いや、はじめましてね。かわいい私の氷草。」

「ぅん。全くだよ。はじめまして。母さん。やっと本体に会えた。」

 

帝白はそっと氷草に近づいて抱き上げた。

氷草は嬉しくて、おもいっきり抱きつく。

 

「あのこが行きなり抱きついてきたと思ったらゲーテから逃げてきたのよね。それで箱庭に戻ってきたのだけど、思ってた以上に大変なことになってて驚いたわよ。」

 

ゲーテ、ブゥードゥーの死神で、死と性交の精霊(ロア)

黒い山高帽と燕尾服を着た男の姿をしているという。

 

それを聞いた氷草は、すぐ近くにいる母と共にこの場に現れた黒い山高帽と燕尾服を着た男を見た。

 

「まさか白痴の万物王のご令嬢とは、それに君は……。」

「ロリコンめ。」

「ただ、彼女は箱庭に渡る希望だったんだ。」

「……害悪め。」

 

「クロア様!え?何でこちらに。」

 

「っ!黒ウサギの仲間だとっ!」

 

今にも氷草が飛びかかりそうな雰囲気を醸し出しているなか、今度は十六夜が声をあげた。

 

「白痴の万物王だと!氷草、マジかよ?お前のかーさんアザトースなのか?」

「そうねぇ。氷草は、私の子供よ。ねー氷草。」

「うん。僕の母さん。」

 

帝白は氷草を下ろすと十六夜と黒ウサギをみる。

 

「人間、これからアジ・ダカーハの攻略会議をするわ。そこのウサギは寝てなさい。

ついてきなさい。

……ほら、変態いくわよ。」

 

帝白は十六夜を立たせ変態、ノーネームが旗と名前があったときのコミュニティの重鎮であったゲーテ、クロア=バロンをを引っ付かんで進んでいく。

 

「黒ウサギ、おとなしくしててね?」

 

氷草がいたのは、別邸だったらしく本邸に向かうまでにジンの居場所やほんとは誰が運んできたのかをクロアは語っていた。

 

そして古城の本邸の会議室に氷草達は向かう。

 

「あのこが氷草達にって。あのこ、休眠に入ったから。」

「休眠?」

「枯渇のね。ちょっと一人の人間のために力を使ったみたいなのよ。」

 

バロンの導きで会議室に向かった。バロンが扉を開けると、東、南、北の階級支配者(フロアマスター)が揃っていた。

そして、救援に駆けつけた鵬魔王とフェイスレスも。

ジャックのみその場にいない。

そして、会議が始まった。

 

「ふむ、我らの恩恵がかの三頭龍に通じなかったのは、アジ=ダカーハとはなんぞや?というものがある。」

「アジ=ダカーハは神仏がいればいるほど強くなるのよ。天軍もみーんな立ち退く準備や移動を始めているわ。だからこそ、私がこの体で下層にこれているのだけれども。」

 

帝白の言葉に、階級支配者は顔を厳しくする。

 

「ふふ、氷草。ここで問題よ。私は何故箱庭からでていったのでしょう。」

「え?」

 

突然、投げつけられた問題に氷草は考え込んだ。

 

「ヒントは信仰よ。」

 

氷草は目を閉じて考える。

以前、氷草は人類最終試練のひとつ、“退廃の風(エンド・エンプテイネス)”と遭遇している。

 

氷草は、感覚的に時間が迫っていると感じはした。

氷草はそこでさらに考える。

 

「退廃の風。」

「あら?それを知ってるのね。あれはタイムリミットとしても作用するのよね。」

「リミット。」

 

考えていた氷草には十六夜が耳打ちをする。

 

「人類史に対して時間的な共依存してるんじゃないか?」

「人類史に時間的な共依存してるってこと?」

 

「ふふ、人間。回るわね。正確には神霊種が人類史に共依存してるってとこね。氷草、あなたは神霊が抱えるロジックエラーはわかるかしら?」

「いや。」

「有名な話、鶏が先か卵が先か。あるでしょ?氷草はどう思ってるの?」

「……卵かな?」

「そうね。箱庭では神が先か、人間かと神霊たちが悩んでてね。」

 

帝白はただ、

 

「人間ごときが滅んだだけで存在が確立できない世界は、嫌なのよ。

滅んだら作り直せばいい話でしょ?馬鹿馬鹿しくなって。」

 

アホをやらかした友人の話をするように、笑い話のように氷草に話す。

その理由に氷草は、特にこれといった疑問も否定もなくうなずいた。

 

「うん。確かに。」

「えぇ。いつか生まれる私の子供達、あなた達がいきる世界は頑丈なものじゃなきゃ安心できないしね。」

「母さん!」

 

・・

 

氷草は自分のことを帝白に話していた。

帝白は喋り続ける氷草をいとおしそうに時おり頭を撫でて聞いていた。

氷草に追従していたイナバは目の前にあるごく普通な親子の光景を素晴らしい名画をみるかのような眼差しで見ていた。

 

氷草と言えばそんなイナバをあまり意識してはいない。

 

「マンドラ?どうしたの?」

「……氷草殿、それと?」

「母です。」

「あぁ、そうですか。」

「いや、作戦の相談に足を運んだんだ。」

「へぇ。どんな?」

「……吸血鬼化だ。」

 

氷草は、その言葉に疑問を抱いたが、帝白は違った。

 

「お待ちなさい。火竜、サラマンドラは出生率の少なさを長寿で補う種族のではなくて?」

 

その質問にマンドラは目を背けた。

 

「君達の出生率はそんなに低いのかい?」

「あぁ。火竜は既に5000に落ちている。そもそも我々の出生率は1/100まで落ちているというのだ。」

「5000体?そんなに少ないの?」

「あなたは龍の血を亜竜ながら途絶えさせる気なのかしら?私達は外野だからあまりいう資格はないけど、吸血鬼化は短命な上子供を生めなくなるのよ?コミュニティの崩壊と言うより、種族の絶滅じゃない。」

 

帝白の言葉に、氷草は言葉を失う。

血脈と大切さと種族を守るためにすることくらい、最上位個体とされる氷草は、下のものを持っている氷草は、知っている。

 

その会話を聞いていたのか、部屋の中からレティシアと飛鳥が顔を出した。

 

「マンドラ殿、話は聞かせて貰った。

もう一度よく考えてほしい。サンドラが行方不明なこの状況で一族を預かっている貴方が吸血鬼化すれば頭首の血脈は耐えることになるんだぞ?」

「マンドラ、君は――」

「氷草。サラマンドラはサラマンドラよ。そうとうな覚悟の上の決断みたいだからねぇ。」

「母さん。」

「いいのだ。氷草殿。吸血鬼化すれば才も力もない私でもある程度は戦えるだろう。それに、私が種無しになったと知れば、否が応でもサラマンドラは纏まる。サンドラがああなったのも、サラマンドラが不安定だったからだ。末っ子なのにあんな重圧をかけてしまって。」

 

その言葉に氷草も胸を抉られた。

自分は研究にかまけて継承争いから目を背けていた。と。

 

「氷草、貴方力が余っているのではなくて?

今の貴方ならば、サラマンドラを吸血鬼化させることなく強化させられるんじゃないのかしらぁ?」

「できるの?そんなこと。」

「あら?できるわよ。一時的眷属化よ。」

「一時的眷属化?」

 

氷草もマンドラもレティシアも困惑している。

 

「どういうことですか?母さん。」

「ん?そのままよ。一定期間口約束で信仰してもらうのよ。その代わりに期間切れのときかなりのものを奉納して貰わないといけないんどけどね?」

 

そんなんでいいのかと、氷草もマンドラあきれながらお互いを見ていた。

 

「マンドラ。君は僕に尽くしてくれる?」

「あぁ。我等サラマンドラ。短き時であるが、この命達を貴方につくそう。」

 

二人は固く握手をする。

ただ、それだけだった。

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