温厚な龍が異世界からやって来るそうですよ?   作:イェス

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№3 ペルセウス

「ミハクはお母様の名前だけど?」

「「え?」」

 

氷草の放った言葉よりオウルと黒ウサギが固まる。

 

「10世紀以上前お方のご子息?」

「ご、ご存命で?」

「いや、うん。でも、話って?」

「あぁ、そうでした。ギフトゲームを開始すると拝聴しこちらでフォレス・ガロを調べたのですが……。」

「ですが?」

「彼らにはコミュニティ拡大にともない、非道な行為がありまして……その……子女を……その。」

「人質にしたけど食ったとか?」

「!……そうにございます。」

「そっか。名をあげるチャンスって訳か。」

「「「「「へ?」」」」」

 

氷草と十六夜以外の声が重なる。十六夜は意外そうに氷草を見てからジンに耳打ちをする。

 

「……そうですか。先程フォレス・ガロの解散令が出たので彼らはすぐにここに来るでしょう。」

 

オウルは切り替えて氷草にのみ尊敬の眼差して説明をしていく。

あらたかの説明が終わったところで元フォレス・ガロのメンバーが現れた。

 

・・

 

「そうですか……ガルドは貴方達が。」

「はい。人質に関してはすでに……ですが、沽券理由で襲われることはありませんから。」

 

それを聞いて泣き崩れるものもいる。

そこで十六夜がジンの肩をつかんで高らかに宣言をした。

 

「今から“フォレス・ガロ”に奪われた誇りをジン=ラッセルが返還する!代表者は前へ!」

 

なかなか前に出てこないので次は氷草が、威圧も込めて龍の姿になる。

 

《聴こえんか?お前達が奪われた誇りを、名を、旗印を返還するといったのだぞ?コミュニティの代表者が来なければ我々の傘になるということ、取り戻したいと思うものには、“フォレス・ガロ”を打倒したジン=ラッセルが、その手でお前達に返還していくのだぞ?》

 

「まさか!」

「俺たちの旗印が?」

 

彼らは身内で顔を会わせたのち、ジンの元に雪崩れ込んだ。

幼いジンを押し潰してしまいそうになり慌てて氷草が咥え上げ近くの土台的な場所に乗せる。

 

「列を作れ戯け!統率の取れない人の群れなど、“フォレス・ガロ”の獣にも劣るぞ!」

 

年に似合わない十六夜の口調と威圧感により列を作らす。

そのはしでオウルは涙を流して氷草を拝んでいた。

 

「氷草様。」

《ん?》

「改めて、これからよろしくお願いします。我々鮮血の瞳はあなた様に従属させていただきます。幼いながら凛々しいお姿、感服いたしました。」

 

・・

 

「いやはや、なんと美しい月なのでしょうか?氷草様の陶器のような肌がいっそう美しく照らされて!」

 

その後、本拠地までオウルはついてきていた。

オウルの息子も伴って。

いろいろと支度をしてくれたらしく服も手に入って和服に着替えた。

息子の名前はオウラといった。

オウラほ氷草と同じぐらいの年でオウルはオウラを残して本拠に戻るらしい。

それをそれとなく氷草たちノーネームは見送り、今はオウラとともに夜の散歩をしていた。

何か遠くで発光体が見えて、そちらにいくと十六夜と黒ウサギ、そして見知らぬ少女がいた。

 

「君、吸血鬼だよね!」

「ひ、氷草様?なんですか?その、ごちそうを目の前にした時のような目は!

この方はレティシア様と言ってもとメンバーの吸血鬼の……ってなにあれ?」

 

褐色色の光が迫ってきていた。

 

「あの光……ゴーゴンの威光!?まずい、見つかった!」

 

焦燥混じりの声が聞こえたかと思うと、オウラが氷草の前に庇うように立ちはだかる。

 

「ゴーゴン?メデューサ?」

 

褐色の光がオウラとレティシアという少女に当たる。

レティシアは全身が石化してしまったが、オウラは右腕のみ石化した。

 

「い、今!」

「いえ!このままでいいです。策があります。一先ず本拠の方まで!」

 

光がやって来た方向から翼の生えた空かける靴を装着した騎士風の男たちが大挙して押し寄せてきたのだ。

 

「いたぞ!吸血鬼は石化させた!すぐに捕獲しろ!」

「例の“ノーネーム”もいるようだがどうする!?」

 

黒ウサギに引っ張られ十六夜と共に本拠に引っ張り込まれた氷草は、オウラを心配そうに見る。

 

「オイオイオイオイ、てめぇら“ペルセウス”だな?」

「あん?名無し風情が生意気な。」

「名無し?ははは、サウザンドアイズの傘下コミュニティが生意気に、俺は第1000外門に本拠地を置いてる“鮮血の瞳”のものだが?ほうほう、名無し風情とはな。」

 

氷草から見ればヤンキー同士のそれのように見えるが、ペルセウスからみたらかなりまずいことをしていることになる。

 

「てめぇらのせいで右手が石化したんだがよぉ?」

 

鮮血の瞳はサウザンドアイズの常連客。四桁コミュニティというだけでかなりもの。

 

「信仰コミュニティが。主人がよらぬ所は衰退するのみ。龍神の従者もいまや衰えに衰え、効力もないだろうに。」

 

黒ウサギが帝釈天の眷属で、“箱庭の貴族”と呼ばれるように鮮血の瞳の者は、ミハク(龍神)に従属することで、“龍神の従者”と呼ばれ強力な力を持っていた。

クイーンハロウィン、アルゴールというものと仲が良かったらしい氷草の母、帝白(ミハク)

それを信仰することで得ていた恩恵が“龍神の従者”。

しかしミハクが箱庭を離れて以来、代が変わる事に“龍神の従者”としての力も薄れてきていた。

元々定期的な奉納により得ていた恩恵なので薄れていくのも早かったのだろう。

 

「は、このゴーゴンの威光を浴びてしまえばお前なんか!」

 

また褐色の光が生まれてオウラに向かっていく。

そこに氷草が滑り込み、オウラをつかんで本拠地に逃げ込んだ。

 

「馬鹿!」

「す、すみません。」

 

本来なら“龍神の従者”としてある程度の状態異常耐性がつくが、鮮血の瞳はまだ奉納をしていない。

そのためが耐性が不十分で右手が石化してしまっている。

 

「まずは本拠地に連絡を。仮にも従者を名乗るならできるでしょ?テレパシー。」

「はい。問題なく、教われた時点で連絡しております。」

「ほぉ。ならいいか。しばらく我慢しててね。右手。」

「はい。」

 

優しくオウラに微笑んで、十六夜と黒ウサギの方を向く。

十六夜は分かったように頷き黒ウサギにこういった。

 

「“サウザンドアイズ”の支店に行く。白夜叉なら事情を知ってるからな。」

 

・・

 

夜も更け、夜空には星が輝いていた。

その空を滑るように氷草は空を飛ぶ。

ドラゴンの形となっていて、背中にオウル、十六夜、黒ウサギと月亭を乗せている。

 

「ドラゴンの背にのれるなんて感動です。」

「空気抵抗とか無いんだな。

あれか?ファンタジー補正か?レイノルズ数が関係してくるのか?」

《普段は空気抵抗は押さえてるが、飛びかたはきっと法則が見つかってないだけだと思うぞ?》

「姿が変わると口調変わるよな。」

《徹底的に教育されたからな。イメージを壊すのも悪いし。》

「今ちょっと戻ってたぞ?」

《ハハ。》

 

氷草は店の目の前に降り立ち、三人と一匹を下ろして化身になる。

四人を迎えたのは無愛想な女性店員だった。

 

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです。」

「はぁ。お待ちしておりましたねぇ?」

 

十六夜は不機嫌そうに店員に案内され、それに氷草たちはついていく。

中庭を抜けて離れの家屋に案内され、ルイオスと思わしき人物と黒ウサギが顔を合わせた。

 

「うわぁ――」

「はじめまして。第1000外門に本拠地を置く“鮮血の瞳”の幹部、オウラです。」

 

ルイオスとおもしき人物の発言を遮ってオウラが挨拶をした。

 

「「は?」」

 

そのオウラに白夜叉と目を疑う。

ノーネームだけと思っていた所に四桁コミュニティが混じっていたのだから。

 

「……は?鮮血の瞳?何でそんなのがノーネームに?」

 

ルイオスがまずいといった表情になる。

鮮血の瞳はサウザンドアイズの常連なのだから。そことの、いざこざはさすがにまずい。

 

「当主の命によりジン=ラッセルのノーネームに訪れていたところ、あなた方ペルセウスのものに攻撃された上、四桁コミュニティである我々を名無しと侮辱しました。鮮血の瞳は誇りを傷つけられましたよ?」

「それに貴方のところの吸血鬼が敷地内に踏み込み荒らしました。その捕獲時、さらに荒らしたこと、どうします?」

「謝罪を求むなら後日ということで。

鮮血の瞳のかたは……。」

 

ルイオスは動揺しているのが、声を振るわせながらオウラに話を振る。

 

「では、このノーネームとの決闘をしてください。」

「……はい?」

「ノーネームと決闘を。あなた方が勝てば許します。まさかノーネームに負けるわけがないでしょう?その代わり負ければわかりますよね?それが出来ないというなら鮮血の瞳が直々に決闘を申し込みます。」

「その際、僕もいっていい?」

「えぇ、構いません。鮮血の瞳は信仰コミュニティ。名旗を奪われたコミュニティも信仰するなら拒まず、受け入れます。もちろん個人単位から受け入れコミュニティーの、脱退も要求しません。。あなた様のお母様、ミハク様のお陰でこのようなことが可能になりました。」

 

それに白夜叉がおぉ、とちいさく声を出して、懐かしむように遠くを見て氷草の顔を覗いた。

 

「おぉ、あのときのか。やはり、帝白の息子か。」

「母さま、なにしたの?」

「いろいろとな……。

で、なんだ?決闘だっかかの?」

 

ルイオスはなにも言わない。

考えがあるのか、呆然としてるのかわからないが黙ったままだ。

 

「5日後に決闘をお願いしますね。」

「待ってくれ、さすがにノーネームとの決闘は……。」

「は、怖くて決闘が出来ないのかよ?」

 

渋るルイオスに十六夜が挑発する。

 

「ッ、そんなことあるか!うけてたとう。」

 

・・

 

5日後

 

宮殿のような建物の門にギアスロールが貼り付けられていた。

 

 

ギフトゲーム名 "FAIRYALE in PERSEUS"

 

プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

竜使氷草

久遠 飛鳥

春日部 耀

"ノーネーム"ゲームマスター 

ジン=ラッセル

"ペルセウス"ゲームマスター

ルイオス=ペルセウス

 

クリア条件

ホスト側のゲームマスターを打倒

 

敗北条件

プレイヤー側のゲームマスターによる降伏

プレイヤー側のゲームマスターの失格

プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

舞台詳細・ルール

ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の最奥から出てはならない

ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない

プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない

姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う

失格となった挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ペルセウス"はギフトゲームに参加します

"ペルセウス"印』

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろって事か?」

「暗殺かぁ、僕はねじ伏せる方が得意なんだけどね。ジンが見つかったらゲームオーバーってかなりきびしいよね。」

「うーん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、見えない敵を感知して撃退する役割。最後に、失格覚悟で囮と露払いをする役割。」

「索敵は春日部に任せるぜ。」

「なら僕も索敵を――」

 

意気揚々と氷草がそういうが、それを遮るように十六夜が声をだした。

 

「お前は俺と一緒にルイオスを倒す。お嬢は悪いが囮をやってくれ。」

「えぇ、今回は譲ってあげる。ただし負けたら承知しないから。」

 

飛鳥はルイオスに相性が悪いのを知ってか、不機嫌ながらそういった。

 

「ねぇ、僕は透過できるけど?」

「お?ならますますうってつけじゃねぇか。それって他のやつを透過させることできんのか?」

「僕は出来ないけど、ジンぐらいなら口のなかに入れられるよ?」

「やはは、消化中のの物が見えたら意味ねぇもんな。」

 

十六夜が門を蹴り破る。

それと同時に三方向に別れた。

 

飛鳥。

十六夜と耀。

ジンと氷草。

氷草は龍の姿になってジンを口のなかに入れて白亜宮を飛ぶ。

ジンが口のなかにいるのでブレスは吐けないが、特殊な器官でペルセウスの騎士を見つけ出して尻尾で叩き潰す。

氷草は耀の方に向かう者共を見つけてそいつらをも叩き潰す。

あらかた叩き潰して十六夜が耀にこの場を任せて上に進んでいく。

十六夜には氷草とジンが見えていないが、声で行くことを伝えた。

ジンを下ろし、透過を解く。

そして元々の姿になり、十六夜の頭上を滞空する。

 

「うわっ!ノーネームに龍がいたんだ?何て言う亜龍?」

 

氷草たちを見下ろしているのはルイオスで羽の生えたロングブーツを履いていた。

 

「何はともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階は。ゲームマスターとして相手しましょう。…この台詞を言うのって初めてかも。」

 

それは全て騎士達のおかげであった。

しかし、氷草という幼体ながら最強種がいたためか突破されたのだ。

ルイオスはギフトカードを取り出し、光と共に炎の弓を取り出し、矢を放つ。

しかし、氷草が尻尾を降り矢をはたき落とした。

 

「へぇ、やるじゃん。」

 

小馬鹿にするようにさらに上がる。首にかかるチョーカーを外し、付属している装飾を掲げた。

 

「メインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま"ペルセウス"の敗北になる。そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろう?」

 

ルイオスは勝ち誇った表情で氷草たちを見下ろした。

 

「目覚めろ "アルゴールの魔王"‼︎」

「ra……Ra、GEEEEEYAAAAAaaaaa‼︎‼︎」

 

もはや、人の言語ではなかった。現れた女は身体中に拘束具と捕縛用のベルトが巻かれていて、女性とは思えない乱れた灰色の髪を逆立て叫んだ。

両腕の拘束具をひきちぎり、更に絶叫をあげる。

 

「ra、GYAAAAAaaa‼︎」

「な、なんて絶叫を」

「避けろ、黒ウサギ!」

 

大岩が降り注いでくる。

耳を抑えていた黒ウサギは、十六夜の声に反応できず硬直してしまう。

舌打ちをし、十六夜は黒ウサギ抱きかかえ飛び退き、氷草はジンを守るためにジンのまわりでとぐろをまき、迫る大岩にブレスを吐いた。

アルゴールはこのギフトゲームの為に用意された世界に対して石化の光を放ったのだ。

 

「まぁ、今頃は君らのお仲間も部下も全員石になっているだろうさ。無能達にはいい体罰だろ?てか、予想以上だよ。そこのぼくのギフト?」

{はっ、我をギフトと判断するか?まあ、精々優越に浸ってるといい、うちの十六夜は強いからな。}

「氷草さんも戦闘に参加してくださいよ!」

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