竜使 氷草。
彼は純血種の龍だ。
《空を飛べるギフトをてにいれただけの人間が、生意気だな。》
龍は他の生物を見下す傾向にある。
それが氷草も例外のない事。
《石化が効くと思っているのか?侮辱だな。猿ごときにそのようなことを思われるなど、屈辱でしかない。》
ふー、と氷草の息が白くなる。
いや、氷草だけではない。その場にいるものすべての息が白くなった。
「これは。」
氷草は【ネイチャーフェイス】を使用していた。
【ネイチャーフェイス】は豊穣系のギフトで草花から土壌の微生物を操り、師とした神が豊穣の女神・母神というので、彼も母神の力を扱える。
※彼ら竜使に性別の決まりはない。
《草花が眠る夢と冬。
季節は冬となり夏の正座が見えなくなる。》
十六夜達の足元が凍っていく。
「やはは、ぶっとんでんな。」
十六夜やジン、黒ウサギはうまく足を上げ足が凍ることはなかったが、アルゴールはそうはいかなかった。
すぐに氷漬けになり、動かなくなる。
「なっ、アルゴール!」
十六夜は凍りついた床を滑り、アルゴールをジャンプ台にしルイオスを殴りにいく。
「がっ!」
ルイオスは殴られ、落下していく。
勝敗は誰でもわかるものだった。
・・
氷草の召喚された場所とは明らかに違う、竜宮城を沸騰させるような城。
これでもおなじ天界ということに、月亭は上座に陣取る龍の顔を見ながら、軽いカルチャーショックにあっていた。
月亭はの目の前にいるのは氷草の妹の一人、そして主神の双子の片割れ。
左右には悪魔が控えていて、数人の天使もいる。
地獄の主権者にて最高の罪の最終執行人。
罪の浄化を行うことのできる善神と、生物を強制的に隷属させる悪神の二つを請け負う人物。
(お話を聴いてはいましたが、容赦のない方だ。)
「ごめんね。亡者が逃げ出しちゃって、いま動けないようにしたから。
獄卒が回収するから心配無用よ。」
手足を折られたのか、いかにもな亡者がピクピクと痙攣している。
月亭の主は裁判を行ったりするのでこんなことはなかった。
ずっと亡者を触れないと思っていた月亭は少しビックリして声が出せずにいた。
「で、呼び出した理由なんだけど。おい。」
天使の一人がプレゼントボックスを月亭に差し出す。
「へ?」
「ふふ、それをお兄ちゃんに持っていってほしいの。ちょっと大きめのができたから。人間以外に追加攻撃がはいり、重さも感じず伸縮自在。蛇になることができておしゃれも出来ちゃう。じゃ、よろしく。」
「な、なぜこのようなことを?」
「なぜ?
お兄ちゃんのことだから武器なんて持っていってないと思うしね。うまく作れたし、一番適任だったのがお兄ちゃんだからだよ。」
にっこりと笑い、月亭の目の前が真っ黒になる。
瞬きをすると月亭はノーネームの本拠地に戻っていた。
他のものはすべてギフトゲームに参加できないものたちで、氷草たちはペルセウスのゲームに出掛けている。
月亭は動こうとしたがらそれをやめた。
月亭を枕に、何名かの子供たちが昼寝をしていたからだ。
(全く、同士を取り返すというのにのんきな子達だ。)
・・
ペルセウスとの決闘から三日後の夜。
はれてレティシアがメイドとなり、歓迎パーティーを開くとこになった。
ノーネームだけで見かけは中堅の127+2匹と、氷草の傘下となった鮮血の瞳の幹部、7人と長。
「えー、それでは!新たな同士を迎えた“ノーネーム”の歓迎会を始めます!」
ワッと子供たちの歓声が上がる。周囲の長机には豪奢な料理が並んでいた。
主に肉料理だが。
子供だらけの歓迎会だが、四人は悪い来はしていない。
「肉だらけね。」
「どうして屋外なの?」
「黒ウサギなりのサプライズがあるのか?」
四人が本格的に活動し始めたとしても、百人を越える子供たちを支えるのは厳しいかもしれない。ましてやそのなかで奪われたものを取り返すために戦ったり、魔王とも戦うのだ。
「 無理しなくてもいいって言ったのに……馬鹿な子ね。」
さすがにここまでの料理を用意するのはノーネームのみでは無理だ。
ペルセウス戦において、鮮血の瞳も関わっていて、屈辱を代わりに晴らしてくれたとして、料理などを出していることに飛鳥と耀は気がついていないようだ。
「ヤハハ、この豪華な食事もお前のお陰となると、俺はいらないかもな。」
十六夜は氷草にそう話し掛ける。
氷草はゆっくりと首を振る。
「そんなことないよ。止めは十六夜がさしたんだし。」
「ヤハハ、それよりその蛇、はなんなんだ?」
「あぁ、武器だよ。妹からのプレゼント。十字剣は飛鳥に譲ったからね。僕は使いづらい。」
そう、二人が話していると黒ウサギが大きな声を上げる。
「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」
その場にいた全員が箱庭の天幕に注目する。
そのなかで誰かが小さな声を漏らした。
それから連続して星が流れていく。
「流星群ですな。」
前足で器用に人参を食べていた月亭がそう、漏らした。
「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの四人がこの流星群のきっかけを作ったのです。
箱庭の世界は天動説のように、すべてのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士が倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北の為に
“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を下ろすことになりました。」
一際大きな光が星空を満たす。
そこにあったはずのペルセウス座は流星群と共に消えていた。
「今夜の流星群は“サウザンドアイズ”から“ノーネーム”への、コミュニティ再出発にたいする祝福も兼ねております。」
氷草の耳に、ため息が聞こえる。
「アルゴルの星が食変光星じゃないところまではわかったんだがな。まさかこの星空の全てが箱庭のためだけに作られてるとは思わなかったぜ。」
「はは、いずれ我々も旗を掲げられるとよいですね。」
「十六夜座?」
「いや、黒ウサギ座でいいだろ。」