《Graaaaaaa!》
朝、氷草は遠慮がちに雄叫びを上げる。
背伸びもかねた雄叫びに、近くに来ていた十六夜が、少し驚いていた。
「おぉ、ドラゴンの姿にもなれるのな。」
《まぁな。》
背伸びを追え、化身になると柄杓をつかんでその中身を地面にばら蒔く。
「なんだそれ?」
「実家の方から持ってきて培養した微生物。乾燥した土壌でも生きられんだ。」
「へぇ?お前異世界行き来できんのかよ。」
「まあね。」
「ふーん。今から出掛けるぞ。さっさと支度済ませろ。」
「随分と唐突だね?」
「黒ウサギとレティシアにバレないうちに行くぞ。」
「わかった。少しだけ、少しだけ待って?」
「ん?」
どこか禍々しい卵を農地の真ん中に置いた。
「それは?」
「これは……下僕の赤ん坊さ。」
・・
ジンを案内役とし、2105380外門の噴水広場まで五人は来ていた。
月亭は毎度お留守番なので笑顔で見送りをしてくれた。
近くの六本傷のカフェで話し合いをしているところだった。
氷草の頭にはメタリックな蛇がチロチロと舌を出しながら鎌首を預けている。
「で、どれくらいなもんなの?」
「へ?」
「その場所さ。どれくらいでつくの?」
「此処から大雑把に98万キロです。
「地上を通るにしたら?」
「ほっぽかれてる地を通ればただですが……。」
「距離だよ。」
「同じくらいですよ?行くにしたら膨大な時間が。」
その答えを聞いて、氷草がにっこりと笑う。
「本気だしてしがみついてくれるなら四秒でつくよ。ゆっくり下界を堪能したいなら四時間。」
「「「んー。」」」
氷草の提案に三人は考え込む。
「そう、ホイホイとのせてもいいのか?」
「同士を乗せるのも楽しいよ?僕は構わない。それに地球じゃ自由に飛べないし、天界じゃ派閥とかで飛べないからね。」
「うーん。」
「それなら招待状を送ってきた張本人のところにいくしかないけど?」
「「「それ!」」」
三人はジンを引っ付かんでサウザンドアイズの支店がある方に走っていく。
氷草はジンのポケットマネーから支払いをして、すぐに追いかけ始めた。
「お帰りください。」
「まだ何もいってないでしょう?」
「まぁまぁ、白夜叉さんはいます?招待状をもらったのだけれど、開催地の場所がどうもね?」
「はぁ、あなたが出てきてしまえば、どうにもなりませんね。どうぞ、中でオーナーがお待ちです。鮮血の瞳の竜使氷草様、そしてその取り巻きの方々。」
「悪いね。」
氷草は特別なコミュニティに所属している。
ノーネームでありながら四桁コミュニティにだ。
鮮血の瞳は個人単位で重複化の信仰コミュニティだ。
信仰するものはコミュニティ単位でも個人単位でも受け入れる。
主軸となるコミュニティは元々群れたったが、氷草の母、帝白を主神とし四桁までのしあがった。
主神不在ながら四桁にとどまり、主神を氷草が受け継いだ。
主神以外は“龍神の従者”というギフトが与えられる。
そのかわり主神には奉納品として何らかのかたちで物品や功績を捧げる必要がある。
そして何百と言うコミュニティが勢力下にあり、ノーネームや元ノーネームなのがいる。
にこやかに氷草たちが店のなかにはいると白夜叉がぶっ飛んできた。
「やっふぉおおおおおおおおお!ようやくきおったか!小僧共おおおおおおおおおお!」
「白夜叉様、おはようございます。今日もお元気で。」
「おう、おはよう。まぁ、奥にはいれ。話があるしな。」
「それ、楽しいこと?」
「おんしら次第だな。」
行く途中、商業コミュニティの話を聞いたりして部屋につく。
「本題の前にまず、1つ問いたい。"フォレス・ガロ"の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが…真か?」
「ああ、その話?それなら本当よ?」
飛鳥が正座したまま首肯する。白夜叉が小さく頷くと視線をジンに移す。
「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」
「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番いい方法がと思いました。」
「……無関係な魔王と敵対するかもしれん。それでもか?」
「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より強大な魔王に挑む打倒魔王を掲げたコミュニティ。どうだカッコいいだろ?」
「ほう、そこまで考えてのことならばよい。これ以上の世話は老婆心というものだろう。 」
あきれた笑みを唇に浮かべた。
「では、"打倒魔王"を掲げたコミュニティに東のフロアマスターから正式に頼みたい事がある。此度の共同祭典に、ついてだ。よろしいか、ジン殿?」
子供を愛でる言い方でなく、組織の長としていい改める白夜叉。
ジンは少しでも認められたと表情を明るくする。
「は、はい!慎んで承ります!」
煙管で一息ついて、中庭に目を向けた。
「さて、では何処から話そうかの。
……あぁ、そうだ。北の
「世代交代?」
「うむ。急病で引退だとか。まぁ亜龍にしては高齢だからのぉ。寄る年波には勝てなかったと見える。此度の祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭でな。」
「龍。」
「五桁・五四五四五外門な本拠を構える、"サラマンドラ"のコミュニティ。それが北のマスターの一角だ。」
「え?あれらって龍の枠組みな訳?四精霊でしょ?……サンショウウオとか言わないよね?」
「
「おお、そうか。」
ざっくりと二つの説明を受ける。
ジンは悲しげに目を伏せた。
「そうですか。“サラマンドラ”が。」
「新たな党首は末娘である、ジンと同い年のサンドラが火龍を襲名した。」
ジンは唖然と固まってしまう。
そして、ジンは身を乗り出して、
「サンドラが!?え?ちょ、ちょっと待ってください!彼女はまだ11歳ですよ!?」
「あら、ジン君だって11歳で私達のリーダーじゃない。」
「それはそうですけど。いえ、だけど」
「なんだ?まさか御チビの恋人か?」
「み、違っ、違います!失礼なことを言うのは止めてください!!︎」
茶化す十六夜と飛鳥を怒鳴り返すジン。
氷草はジンをニコニコと見ていた。
「それで、私達に何をして欲しいの?」
「そう急かすな。実は今回の誕生祭だが、北の次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねておる。しかしその若さ故、東のマスターである私に共同の主催者を依頼来てきたのだ。」
「幼さゆえ、よく思わないものがいるから?」
「わかっておるな。」
「経験がありますから。まぁ、ねじ伏せてわからせてはいましたがね。」
何やら長々と続くような気配を氷草が察する。
「なんか、早くいきたくなってきた。もしかしたら同等のドラゴンがいそうだし。白夜叉様が持ちかける依頼、面白いだろうし、時間もあれだから受けちゃおう?」
「そうね。」
「右に同じ。」
「いってくれるじゃねぇか。白夜叉!今すぐ北側に向かってくれ!」
「ほう?待ち遠しくては仕方ないかのぉ?」
氷草は待ち遠しいのか、立派な角と尾を出してしまっている。
「氷草、落ち着け。」
落ち着きのない幼龍を見て白夜叉は目を細める。
何度か
「 ふむ。これでよし。望み通り、北側に着いたぞ。」
「「「…は?」」」
・・
「わぁ!」
ゴシック調の尖塔群のアーチ、そびえ立つ凱旋門。
黄昏時のような色合いをを放っているペンダントランプに色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊。
あきらかな異文化に氷草は目を輝かせる。
「今すぐ降りましょう!あのガラスの歩廊に行ってみたいわ!いいでしょう白夜叉?」
「あぁ、構わんよ。続きは夜にしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加していけ。」
氷草はチラシをちらっとだけ見る。
「見ィつけた…のですよおおおおおおおおおお!」
鬼ごっこの開幕だ。
一番先に十六夜が、飛鳥を抱き上げ飛び降りる。
氷草は白夜叉をたてにするようにしゃがみこみ、耀は旋風を巻き起こし逃げようとする。
氷草は鬼ごっこのルールを突然のことで思いっきり間違っている。
黒ウサギはジャンプし耀をつかんで逃がさない。
「耀さん、捕まえたのです‼︎もう逃がしません‼︎‼︎」
何処か壊れているのか不気味に笑う黒ウサギ。耀を抱き寄せ、耳元に囁く
「後デタップリ御説教タイムナノデスヨ。フフフフ、後覚悟シテクダサイ。」
「りょ、了解ッ‼︎」
反論をしようにも、恐怖がそれを許さなかった。
「じゃあ、耀。」
「残って。」
「グェ!」
氷草は耀に首根っこを捕まれる。
「そうだの。おんしらに参加してほしいゲームがあるのじゃが。」
白夜叉が二人にチラシを見せる。
ギフトゲーム名"造物主達の決闘"
参加資格、及び概要
参加者は創作系のギフトを所持。
サポートとして、1名までの同伴を許可。
決闘内容はその都度変化。
ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。
授与される恩恵に関して
"階層支配者"の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。
"サウザンドアイズ"印
"サラマンドラ"印
「へぇ。面白そうじゃん。創作系なら耀のそれでできるし、僕はこの蛇がそうだから。」
「黒ウサギと仲直りできるかな?」
「出来るとも。おんしにそのつもりがあるのならの。」