東方悟(さとり)物語   作:明太子醬油

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妖怪の悪意
少女の日常


 俺たちは今、山の深い場所にあるボロくらい家に住んでいた。

 おそらく前住んでいた人がここを出て行ったのだろう。この家を見つけた時、家の中はとてもひどいありさまだった。そこら辺に蜘蛛の巣があり、少し整理すると虫が大量発生して大変だった。

 と言ってももう昔の話。親が亡くなってから、もう50年も経っている。流石に普通に暮らせるようになっている。ボロいけど・・・

 妖怪で言う50年というものは案外短いもので、人間の感覚で言えば1年経ったようにも思える。

 

 この50年で色々な変化があった。

 例えば身長。なぜか身長がある期間から伸びなくなった。最初に伸びなくなったのはさとりだった。それから俺が伸びなくなり、こいしも伸びなくなった。今ではみんな小学校高学年くらいだ。それでも多少の身長差はあり、さとり>俺>こいし、という形になる。

 そして妖力。これは身長が伸びなくなったと同時に増えなくなった。おそらく今の妖力が悟り妖怪としての限界なのだろう。

 だが、こいしは違った。第三の目が閉じだ影響か、俺とさとりよりも妖力がでかい。

 おそらく、悟り妖怪としての能力がなくなったことにより、本来の妖怪としての力なのだろう。

 

 色々あったが、今では平和な生活をしていた。

 

「さとりお姉ちゃん、こいし、料理出来たよ!」

 

 今では俺がここの料理番である。

 いつの間にかこうなっていた。やっぱり前世の知識があったからなのか?

 

「いただきます!」

 

 そして、みんなで朝ごはんを食べる。献立はご飯と魚、至って普通のご飯である。

 

「ことりお姉ちゃん!今日も美味しかったよ!」

 

 今日も朝からこいしは元気だ。満面の笑みでお礼を言われて料理を作ったかいがあるというものである。

 

「こいしは今日もかわいいね!ありがとう!」

 

 俺はいつものようにこいしの頭を撫でる。こいしは俺の天使だ。誰にも渡さん!

 さとりはいつも黙ったまま食べて、「いただきます」と「ごちそうさま」しか言わない。

 

 ・・・もっとしゃべればいいのに。

 こいしくらい明るかったら可愛げがあるのにな〜

 

「何が言った?」

 

「何にも?」

 

 撫でていたこいしをを思わず抱き締めてしまった。冷静に言ったはずだが内心冷や汗がかなりやばい。抱き締めてた力が強かったのかこいしが、「痛いよ、ことりお姉ちゃん!」と言われてしまった。

 

 ・・・さとりはエスパーかもしれない。

 

 朝ごはんを食べ終わると特にすることはない。昔は適当に遊んだりしていたが、3人で50年間も遊べるわけがなかったので今では部屋で毎日ゴロゴロしている感じである。

 パソコンもない、ケータイもない。まさに暇。

 30年前、特に何もすることがなかったので修行を再開することにした。

 するとすることの無かった二人はいつからか一緒に修行するか、俺が修行をしているのはただ見るだけという今の謎の日常になってしまった。

 修行のやることはまずは筋トレ。腕立て伏せ。腹筋。背筋。太もも...etc...。それからランニング。全力疾走。

 それから感謝の正拳突きをできるだけしてから妖力のコントロール練習。できるだけのことをしているつもりである。

 これらの練習が終わる頃には夜になっている。それから夜ご飯を作って、食べるという感じである。

 ちなみに昼ごはんはない。現代の一日三食は案外最近できたものである。昔は一日二食。まぁ、この時代の普通は今で言うと朝ごはんと昼ごはんを一緒に食べるようなものだと思うが...。これがうちの特徴なのかもしれない。

 

 夜ご飯を作る。献立はご飯と焼き魚、味噌汁。献立はいつもこんな感じ。

 

「いただきます!」

 

 最初はご飯を炊いたりするのがめんどくさかったが、今では、もう慣れてしまった。これが成長というものか・・・

 

「ごちそうさま」

 

「今日も美味しかったよ!ことりお姉ちゃん!」

 

「ありがとう!今日もこいしはかわいいよ!」

 

 ちょっと会話が成り立っていないような気がするがいつものことである。

 ともかく、毎日美味しかったと言ってくれるこいしは天使だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然だが、今の時期電気というものはない。だからこの時代の人間はいつも夜8〜9時にはみんな寝てしまう。

 本来の妖怪なら夜が一番活発になるが、俺たちは人間の生活に適応したため、俺たちもその時間に寝ている。

 

 だか、俺はさとりとこいしが完全に寝ている夜の2時に起きる。この時間帯は丑三つ時と呼ばれ、妖怪が最も活発する時間だと言われている。

 俺はこっそりと布団から抜け出す。そして、バレないようにこっそりと物音を鳴らさないように慎重に外に出る。

 

「ふ〜」

 

 まず、外に出て深呼吸。

 やはり、自分が妖怪だからなのか、夜の時間帯の方が何というか、安心?いや、体が軽い気がする。

 

「よし!やるか!」

 

 頬をパンパンと叩いてから家から少し遠ざかる。

 

 

 そして、誰もいない森の中へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中を適当にぶらぶらと歩く。

 ちなみに、妖怪だからなのか夜目がそれなりに効く。どのくらいかと問われれば、本は余裕で読めるくらいだ。

 適当に歩いていると、少し遠いところから、第三の目が純粋な殺意を映し出す。

 そこから現れたのは狼だった。

 

「来た」

 

 漆黒のように黒く輝くような美しい毛並みを持つこの狼は間違いなく妖怪だ。

 一目見るだけで分かる。その狼はあまりにも異常だった。目が蜘蛛のように多い。姿形はどう見ても狼。でも、顔だけ見たら確実に蜘蛛という異形な形だった。

 それだけでない。体から溢れる禍々しい力は生粋の生物ではあり得ない。そう、これは妖力だ。

 

「今回は中々、上物だな」

 

 その言葉が戦闘の合図だったのか、狼は一直線に俺に襲いに掛かってきた。そして口を大きく開けて突進してくる様はまさに異形だった。

 俺はその攻撃をほんの少し体をズラすだけで躱す。

 躱されたのが、癇に障ったのか、たくさんある目をギョロギョロと全部違う動きをさせながら吠えた。

 

「キシャャャャャャャャャ!!!」

 

 そこは狼みたいに吠えて欲しかったな。その姿で、「キシャャャャャ」とか気持ち悪すぎる。

 生理的嫌悪感を感じながらも、狼の攻撃を紙一重で躱す。

 これを何回繰り返しただろうか?もう完全にこの狼の攻撃は見切ってしまった。

 

(これじゃ、訓練に成らないな)

 

 俺は狼を躱し、完全に無防備になった腹に妖力を殺さないように纏った正拳突きを食らわせる。

 

「キシャャ....」

 

 完全にこいつの命は風前の灯である。

 この狼から、幾つかの感情が入ってくる。恐怖、諦め、悲しみ、殺意...。

 

「うっ」

 

 やはり、いつもこの場面で情けを掛けたくなってしまう。無抵抗の相手にわざわざいたぶる必要が無いんじゃないか?と心の中で俺が呟いてくる。だが、そんな俺の『こころ』が俺を弱くする。

 

 別にこいつを殺してもいいが、殺さない。理由は2つある。

 一つ目は、妖力のコントロールの訓練のため。案外ギリギリで殺さないというのは非常に難しい。言うならば全力の手抜きとでも言っておこうか。

 

二つ目は・・・

 

 

「________いただきます」

 

 俺は狼の腹を直接こじ開ける。

 飛び散る鮮血。漂う鉄の匂い。

 俺は狼の内蔵を直接取り出す。ヌメヌメしていて暖かいこの臓器はまだ生きている物の臓器。

 俺はそれを喰らった。

 

 グチャリ、グチャリ、と湿った音が静かな森の中に木霊する。

 他の人が見たら即倒する光景だろう。

 まだ、見た目が幼い少女が体を血だらけにしながら内蔵を喰らっているのだから。

 

「あれ?」

 

 気づくとあの狼の妖怪は死んでいた。と言ってもその狼の内蔵はもうほとんどなくなっているから死んでいて当たり前なのだが・・・

 

 なぜ俺が妖怪の踊り食いにこだわっているのかというと、妖力を付けるのに効率がいいからだ。

 別に死んでいるやつを食べても妖力はつく。だが、生きている方がもっとつけやすい。

 

「ごちそうさまでした」

 

 俺は、狼の死体に向き直す。よく見ると蜘蛛のような目がまだ動いているではないか。

 

「うわっ、きも...」

 

 さずか、虫の生命力。もはや、狼か蜘蛛なのかよく分からない。

 

「じゃ、さようなら」

 

 俺は右腕の人差し指を前に出す。指の先に妖力を集中させる。これが案外難しいかったりする。

 これは東方の『マスタースパーク』を真似て作った技だった。しかし、俺の妖力では威力もない、溜めるのに時間が掛かるなどの問題があって作れなかったのだ。

 そして編み出した技がコレだ。

 

「虚閃《セロ》」

 

 指先に集めた妖力を一気に解放させる。すると放たれた紫色のレーザーが狼の死体を一変も残らずに消し飛ばす。

 最初は魔貫光殺砲にしようかすごい迷った。でもセロって言った方がカッコイイからこっちになった。

 

「は〜」

 

 今日何回溜息を吐いただろうか。でも溜息だってつきたくもなる。

 確かに妖力は増えた。でもそれは、本当に本当に僅かで、増えたのか?と問われれば増えてないと言われても不思議ではないくらいだ。

 そう、現実とはいつもこういう感じなのだ。そんなすぐ強くなるなんて甘い話はない。

 果たして、俺は成長しているのだろうか。

 

「俺は強くなってるのかな?」

 

 俺の呟きは森の静けさの中に消えていった。

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