東方悟(さとり)物語   作:明太子醬油

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さとりは家族と平和に暮らす夢を見る

 sideさとり

 

 あれから50年も経った。

 色々とあったが今は比較的平和だと言えるだろう。

 朝ご飯を食べ、ダラダラと昼間を過ごし(ことりは修行)、夜ご飯を食べる。

 毎日同じような生活で、暇という事を除けば平和だろう。

 

 だが、最近私は少し焦っている。なぜかというとことりである。

 ことりは毎日毎日修行している。正直一体何を目指しているの?と聞きたくなるくらいしている。その修業している時のことりは、こっちが声をかけても、気づかないほど真剣だ。

 そして実力もすごいと思う。だが比べる対象がいないのでわからないが・・・

 おそらく、ことりは妖力の制御の天才だろう。

 一体、妖力を纏わせるだけでなく、妖力を攻撃に活用出来る者は何人いるだろうか?

 私がやる限り、妖力を制御するのは相当難しい。まずやっても、妖力を体の一部に集中させるのが限界である。

 そう、一般に優れている人間の刀使いでも、刀に霊力纏わせるくらいしかできないだろう。もちろん、それだけでも切れ味は断然上がる。

 それでも、ことりなら、刃に妖力を集中させ凝縮さ、妖力を薄く纏わせることによって、普通では考えられないほどの切れ味を発揮させるだろう。

 だが、ことりには弱点がある。

 妖力の量だ。悟り妖怪の宿命とも言えるだろう。

 もし、ことりの妖力の量が多かったら?と考えると恐ろしいことになりそうだ。

 

 思えば、ことりには謎の部分が多い。

 例えば、ご飯。この前、『ちゃーはん』という不思議な名前の食べ物を作ってきたことがあった。

 いつも、ご飯は薄味が基本であった。だが、ことりは海の水を蒸発させ、『塩』と呼ばれているらしい物を使うことによって、今まで味わったことのなかった食べ物を作った。

 聞いてみると、この塩と呼ばれている白い結晶は、人間の間では普通に流通しているとらしいが、いつその情報を集めたのかが検討もつかない。

 

 まぁ、今夜ご飯を食べ終わった後にこいしとジャレていることりはきっと怪しいことはしていないだろう。いや、そう信じたい。

 だが、私は知っている。

 夜、ことりはいつも一人でどこか出掛けるのだ。

 どこに行っているのかは分からない。

 一度聞いてみようかと思ったことがあったが結局聞けず仕舞いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。私はなんとなく目がさめた。理由なんてない。

 そのまま目を閉じて寝よう、そう思い、寝たふりをしていた。

 寝たふりをしてからどれくらいの時間が経っただろうか?私はなかなか寝れずにいた。

 もういっそのことこのまま起きてやろうか?なんて考えてしまう。

 

 その時家の入り口の方から扉が開く音が聞こえた。音と言っても木がギィーと軋む音である。

 私は目を完全に醒まして入り口の方を見た。するとそこには誰かがで外に行くのが見えた。

 誰かは言うまでもない。ことりだ。布団を見てもやはりことりのところには誰もいなかった。

 

 いつもなら私は寝たふりをする。でも今日はことりを追いかけることにした。

 ことりが何をしているのか気になった。毎晩毎晩一体ことりは何をしているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外は静寂に包まれていた。どこまでも続いていそうな森は暗くて不気味に思えた。

 だが、妖怪としての本能なのか、時間が経つとまるで今まで暗い環境で過ごしてきたかのようにも感じるようになる。

 あまりにも違和感がなくて、一瞬なんで私は昼間に起きてるんだろうと考えてしまった。

 

 ことりを探すとことりはあてもなくブラブラと彷徨っているように見えた。その様子はまるで死に場所を探す者のようだ。

 だから不安になる。いつかこのまま何も言わずにいなくなってしまうのではないかと。

 

 バレないようについて行く。すると前の方から強烈な殺気を感じ取った。

 それは第三の目を通さなくても感じ取れる殺気。これは野良妖怪の原始的な殺気。動物の本能としての殺気だ。

 そう、純粋故に強烈。

 

 ことり逃げて!と叫びたくなる衝動を抑えてことりを見守る。

 

 ことりもその殺気に気がついたようで、その殺気がした茂み方向を向く。

 その茂みからいきなり何かが飛びついてきた。

 

 それをことりは苦もなく躱す。

 

 私が見たその妖怪は蛇だった。

 ただの蛇ではない。

 一見ただの蛇だが、頭の数がおかしい。

 その蛇は、胴体から不規則に枝分かれしていている。まるで無数の蛇が絡み合っているようにもみえる。

 

 ことりもその蛇妖怪を確認すると顔をしかめて、距離をとった。

 

 この時、私はことりが逃げるのだと思った。しかし、ことりは蛇妖怪に向かい合う形になるように振り返った。

 

 

 

 

 ことりは右手の人差し指と中指を前に突き出した。

 一体ことりは何をするのだろうと思っているとことりの口が開いた。

 

「虚閃≪セロ≫」

 

 指先に妖力が集中する。それが普通に見えるくらいまで凝縮する。凝縮された妖力は赤黒い玉のように見えた。

 そしてそれを解放するかのように解き放つ。

 すると赤黒い閃光が走った。

 

 蛇妖怪がいた方向を見るとそこには何もいなかった。

 さっきのでことりが消し飛ばしたのだろう。

 

(にしても今の技・・・いつ覚えたのかしら?)

 

 あんな技見たこともなかった。誰かに教えてもらったのだろうか?

 そんなことあり得ないと思うものの、ことりなら・・・とこころのどこかで思っている私がいる。

 

 ことりは歩みを止めずに進んでいく。私もそれについて行く。

 

 どれだけ歩いただろうか?ことりは同じところをグルグルと同じところを周回しているように感じた。

 今で5回目だ。何がしたいのかが全く分からない。

 

 するとまた妖怪が現れた。

 その妖怪は熊だった。大きさは体長3メートルぐらいだ。

 赤く濡れた毛は、血塗られているようにみえる。

 

 ことりはその熊と対峙し、静かに構えた。

 熊は本能のままにことりに鋭い強靭な爪を振り下ろした。

 

 思わず、危ないと叫びそうになる。

 

 だが、ことりは爪をギリギリで躱した。熊はさらに爪を何度も何度も突き立てようとするがことりはスラリと躱す。

 

 いつまでこれが続くのかと思っていると、不意にことりの動きが止まった。

 

「え?」

 

 思わずつぶやいてしまった。目の前の光景があまりにも不自然過ぎた。

 ことりが熊の爪を受け止めていた。

 大人と子供という構造、いやもっと体格差があるにもかかわらず、熊の爪を受け止めてしまうという意味不明な構図。

 

 

 妖怪との戦いの勝敗は、妖力の差である。

 それでも、身体能力が優れているものは、やはり有利に働く場合がある。

 今回の場合、妖力はことりが若干多いように見えたが、五十歩百歩であった。

 しかし、身体能力は熊の方が断然優れていた。

 

 にもかかわらず、熊の一撃を受け止めたことりは異常だろう。

 

 よく見ると、ことりの掌に妖力が集中しているのが分かる。

 妖力の操作だけでこの実力差を完全に埋めてしまった。

 

 ことりは、ゆっくりと、それでいて自然に熊の懐に入り込むと、指に妖力を一点集中させて、いつもの正拳突きのように熊の腹に放った。

 

「指銃≪しがん≫」

 

 指は熊を貫通させ、風穴を開けた。

 しかし、それだけでは熊は止まらない。

 再び熊がことりを抱きこむように爪を突き立てようとする。

 しかし、ことりは避けようとせずに、妖力を両手の人差し指に集中させる。

 

「指銃 "斑"≪しがん"まだら"≫」

 

 熊の腹に何発もさっきの技を何発も打ち出す。

 熊の腹は何発も風穴が開けられて、熊は死を悟ったのか全く動かなくなった。

 熊が全く動かなくのをことりは確認してから熊に近づいて行った。

 

(一体何をする気?)

 

 私の疑問はすぐに解決することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ことりは熊の腹を切り裂き、獣のように内臓を喰い漁った。

 飛び散る血。

 漂う死臭。

 グチャリ、グチャリと鳴り響く湿った音。

 とても昼間にこいしと戯れていたことりには見えなかった。

 ことりはゾンビのように、死体を貪り食っていた。

 

「うっ」

 

 私はすぐに口に手をあてる。

 思わず胃の中の物を吐き出しそうになった。

 頭がグワングワンと揺れるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にか、私は家に帰っていた。ここに来るまでの一切の記憶が無い。

 私には考えれば考えるほど、私はことりが化け物のように見えた。

 あれはことりの皮を被った化け物だと。

 ただ、信じたかった。

 

 昼間にこいしと笑顔で戯れていたことり。それを静かに見守るように見てたさとり。

 

 その光景が今ではひたすら、ただ眩しく見えた。

 

 

 こいしがこころを閉ざした時、本当は私もこころが閉じかけていた。

 それでも閉ざさなかったのは、ことりがいたからだった。

 私は守ろうと思った。

 絶対に悲しませることはなくそうとこころに決めた。

 

 今では、みんなが遠くに見えた。

 ことりもいつか何も言わずに、どこか行ってしまうような気がした。

 

 

 

 自分の布団の上で、自然と体育座りになる。

 

「え?」

 

 なぜか涙が出ていた。

 別に悲しいというわけではない。

 それでも止まらない。

 

「なんでよ、なんで止まらないの...」

 

 溢れる涙が止まらない。

 ただ怖かった。

 私が知らない間にみんなが変わってしまいそうで。

 

 私はみんなで平和に暮らしたかっただけなのに...

 

「いつからこんな風になったんだろう?」

 

 その質問に答える者はいない。

 静かな夜に小さな女の子が微かにすすり泣く音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女は家族と平和に暮らす日を夢見る。

 




設定では妖力操作は難しいものにしました。
一応、第三の目を人間に見えなくするのはある程度難しいという設定ですが、主人公は妖力操作の天才なので簡単にできました。

これで主人公Tueeeee出来るんじゃない?と思うかもしれませんけど現実は非情な感じですね
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