東方悟(さとり)物語   作:明太子醬油

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予想外

 俺がさとりに会って2年の歳月が経った。あれから特に何かあるというわけでもなくのんびりと過ごしていた。あったことを上げるとしたらあれからさとりは俺に会うたびにその日あったことや面白かった話をするようになったことくらいだ。

 ちなみにさとりは今5歳らしい。父は一ヶ月に一回会うくらいの頻度である。

 

 確かに平和だが俺には二つの悩みがあった。

 一つ目は古明地 こいしの存在について、二つ目はこの世界での俺の母と父の呼び方である。 いちいち母と父というのもめんどくさい。 かといってお父さんとお母さんとも言おうとは思わない。

  前世での自分を知っている俺は前世の頃の親に申し訳ないと思ってしまう。 あまりいい思い出はなかったけど離れてあらためて好きだったと分かったのだ。もちろんこっちの親には感謝しているがやはり、抵抗がある。

 

 今までは呼び方なんて気にしていなかった。ではなぜ今さら気にしているかというともう喋ろうと思ったら喋れるからである。喋れると気がついたのは昨日のことだった。まだ喋らなければいいだけなのだがいづれバレるだろう。では、その時何を話せばいいだろうか? 初めて喋った言葉が父と母であってはさぞ衝撃的であろう。 と言ってもまだ正しく音を発音できるわけではない。

  試してみるとこんな感じになる。

 

 

「しゃ・ほ・り〜」(さとり)

 

 

 

 目の前には目を大きくしているさとりがいた。後ろを見るとドアが閉じようとしている。

  つまり、俺がさとりと言った瞬間に部屋に入ってきたのか。

 ・・・いやいや間が悪すぎるだろ! 狙って入ってきただろう!

 

「今なんて言ったの!? 言葉話せるようになったの!? 」

 

 ・・・どうしよう。早速ばれてしたった。

 どうする?今のはさとりの聞き間違いということにしてしまおうか?

 

「お願い! もう一回だけでいいから喋って!」

 

 目をキラキラさせながらお願いしてくる。

  ・・・めっちゃかわいい。 前世の世界では一回もお目にかかれないほどの美少女。なかなか心にくるものがあるな。 フッ、一回だけだぜ。

 

「しゃ・こ・り〜。」

 

「さ・と・り」

 

「しゃ・と・り〜?」

 

「さ・と・り、'しゃ'じゃなくて、'さ'」

 

「さ・と・り〜!」

 

「そうよ。よく出来たわね。」

 

 そう言いながら俺の頭を優しく撫でる。

 さとりの手はすごく温かくて自然と目を細めてしまう。

 

「お母さんー! ことりが喋ったよー!」

 

 ちょっとやめろ! 俺の悩みの種を呼ぶな!

 やべぇー、どうする? 知らんぷりするか? 今のところさとりとしか言っていな・・・

 

「本当!? さとり! 本当に喋ったの!? 」

 

 突然母がドアを蹴り上げながら入ってきた。

 

「本当よ。 今さっき、さとりって言ったのよ。」

 

 さとりが諭すように言う。

 

「え!? ママって言わなかったの!?」

 

「お母さんちょっと落ち着いてよ。」

 

「落ち着けるわけないでしょ! ことりが初めて喋ったのよ! ことり! マ・マ よ。言ってみて!」

 

 えー、どうしよう。 とりあえず言った方がいいのか?

 

「マ・マ〜。」

 

 俺が言い終わると母の肩がブルブルと震えだす。 しまった何がやってしまったのか? そう考えていると母が泣だした。

 

「母さんなんで泣いてるの!?」

 

「う〜、だって初めてママって呼んでくれたよ。 嬉しいからに決まってるじゃない。」

 

 まさか俺の事で泣いてくれるとは思ってもいなかった。

 というか泣き過ぎじゃないか? ボロ泣きなんですけど。 「うぅ〜」と嗚咽が聞こえる。隣にいるでさとりでさえちょっと引いてるような気がする。

 母の泣き声を聞いていると少しさみしい気持ちになってくる。

 この感情はどっかで感じたことがあるような気がする。あー、思い出した。 前世の頃、母さんと父さんが夫婦喧嘩をした時に母さんが泣きながら何度も「ごめんね。ごめんね。」と言っていた。その時はなんで泣いてるのかも分からなかったが、なぜか寂しいと感じたのを覚えている。その時と同じだ。あの時初めて感じた感情をなぜ今感じているのだろうか?

 

 その時、頭の中でなにかが当てはまったような気がした。そうか俺は母さんに笑っていて欲しかったんだ。そして今、俺はその感情を感じている。 つまり俺は母・・・いや母さんに笑って欲しいんだろう。

 

「ママ〜。」

 

 俺はそういいながら母さんに笑い掛けた。すると母さんは泣き顔から明るい笑顔に変わる。すると俺も明るい気持ちになる。

 

「ふふ、さとりもことりもご飯にしましょう〜。私はお腹が減ったわ〜。」

 

「最近母さん食べ過ぎじゃない? 太るよ?」

 

 そういえば最近母さんはたくさん食べているような気がする。気のせいかと思っていたが、さとりが言うならやっぱりそうなのだろう。

 そういえばお腹も大きくなったような気がする。

 

「いいのよ、今の私はね」

 

「どういうこと?」

 

 すると母さんは嬉しそうに笑いながら答える。

 

「これをさとり達に言うのは初めてね〜。なんと! 私のお腹の中には赤ちゃんがいるのよ〜」

 

「ええええぇぇぇーーーーー!!??」

 

 え!? 赤ちゃんだと!? それってこいしのことか!

 俺はずっとこいしの代わりに俺が生まれてきたのかもしれないと悩んでいた。しかし、そんな悩みはいらなかったようだ。

 

 

 

 俺は目の前で繰り広げているさとりと母さんの会話を聞いていた。しかし、時間が経つたびにどんどん目が重くなってくる。

 今日はずっと悩んでいたことが解決したり色々あった。

 まさか妊娠しているとは思わなかったが・・・。

 こいしが生まれたら俺がお姉ちゃんか。似合わねぇな。

 そんなことを考えながらているといつの間にか眠りについていた。

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