東方悟(さとり)物語   作:明太子醬油

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人のこころ

 こいしが村にやって来てから2年ほど経った。

 余談だが、こいしはいつも楽しそうにしている。しかも美少女である。・・・5才だけど・・・

 俺の日課であるこいしを愛でながら考える。

 子どもは純粋だな〜。

 なぜこんなことを考えているかというと目の前の光景を見れば誰でもわかる。しかも悟り妖怪ならなおさらである。

 俺の目の前では村の子供達とこいしが遊んでいた。ここまでならいい。だが、その中の一人である少年が熱のある目でこいしを見ていた。そうーーーー

 

 ーーーー彼はこいしに恋をしていた!!

 

 俺は認めんぞ!!こいしは俺の嫁だ!!

 俺は絶対零度の視線を彼に浴びせるが、彼は気づくことなくこいしを見つめていた。

 もちろん、他の子ども達も彼がこいしに思いを寄せているのを知っている。だが手を貸すということもないのだが・・・

 そうして事件が起こったのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 次の日みんなの様子がおかしいように見えた。いや、おかしかった。

 しかし悟り妖怪である自分達であればこころを勝手に読んでしまうのでわかった。

 

 彼がこいしに告白するようだ。

 

 こいしとさとりもわかったのだろう。そしてこいしは不安そうにしていた。それもそうだろう告白されるのが初めてだから。

 そして、体に衝撃が走った。

 考えてたら俺とさとり告白されたことなくね?

 もしかしてさとりは告白されたことがあるかもしれないが・・・いや、ないな。

 悟り妖怪というものはどうやっても勝手にこころを読んでしまう。するとずっと接していた村の子ども達の人格やもちろん考えていることなんてお見通しであった。それでもさとり関連の情報が出なかったので告白・・・いや片思いさえされたことないだろう。美少女なのに・・・

 

「なんか失礼なこと考えてない?」

 

 その瞬間、俺は体から嫌な汗が止まらなくなった。

 さとりの方に向くとさとりが俺の方を向きながら笑っていた。だが目は笑っていない

(これ殺気!?)

 脳裏には勝手に「死」の文字が浮かび上がってくる。それほどまでの圧倒的な威圧。それは前世でも感じたことのないような・・・

 例えるなら獅子とカエル。そう蛇とカエルなんて比喩では足りない!獅子とカエルでも足りないかもしれない。

 こんな状況でも顔に感情を出さなかったのは、ある意味奇跡なのかもしれなかった。

(もしここで回答を間違ったら死ぬかもしれない)

 俺は脳をこれまでにないほど回転させた。そして圧倒的ひとつの回答に辿りついた。

 

「何も考えてないよ〜」

 

 何食わぬ顔で、なおかつ自然と言った。辿りついた回答は逃避!

 逃げるが勝ちっていうだろ?

 

「嘘ね」

 

「!?」

 なぜばれたんだ!?

 

「どうやら本当に嘘だったようね」

 

「!?」

 やられたと気づいた時にはもう遅かった。そこに迫ってくるのは圧倒的な死!!もうこれまでか...

 だがそんな絶望的な状況でも俺に助け船を出してくれる女神様がいた。

 

「お姉ちゃん達そんなことしないでよ…」

 こいしが目をうるわせながら言う。可愛い

 迂闊にもここで死んでもいいかもと思ってしまった俺は悪くないはず。

 そんなことをしているうちにこいしに恋をしている人物が来たようだ。

 彼のこころを見てみるとこんな感じである。

(あー、どうしよう!このまま告白するか!?それとも帰るときに言うか!?でもこんなことをしているうち・・・etc・・・)

 周りの奴らはというとまだ〜?とかはやくしろよカス!とか本当十人十色である。

 そんな中で痺れを切らしたちょっと太った男の子が少年と話し合う。ちなみにはやくしろよカス!と思っていたやつである。話の内容は今すぐに告白した方がいいと太っている男の子説得しているようである。

 そして吹っ切れた様子の少年がこいしの方に歩いていく。

 だが心の中ではこうである。

(あー、どうしよう!?緊張する!緊張で頭の中が真っ白になって何も考えれなくなる〜。あ、でももしここで成功したら俺は・・・etc・・・)

 人の心はつくづく面白いと思う。緊張で頭真っ白と言いながらめっちゃ考えている。矛盾しているがなんとなく理解できてしまうのか不思議である。

 

「ずっと好きでした!付き合ってください!」

 

「ごめんなさい!」

 

 現実とは残酷なものだ。というか妖怪と人間で結婚できんの?まぁ、半人半妖がいるならできるのかな。

 少年は項垂れていた。それを周りが慰める。

 しかし、悟り妖怪である自分が見ると全然違う光景になる。簡単に言うとこんな感じ。

(振られててワロタw)

(ダサ過ぎwww)

(いい話のネタができたわw)

 

 ーー外面は慰めていても内面はこんな感じである。悟り妖怪になって人間とはこういうものだと再確認させられる。人間とはいつも他者を見下すものだ。だからイジメがあり、悪口を言ったりする。

 まぁ、俺も少しザマァと思ってしまったんだけどね。

 

 少年にこいしは近づき何かを言った。少年のこころを読む限り友達から始めましょうと言ったようだ。

 

 そろそろ子ども達のこころを聞くのが辛くなってきた。まだ幼いからいいが、あと二年経ったらどうなるのかを考えると恐ろしくなる時がある。

 どれだけ辛いかというと一日中昼ドラを見ている感じである。それも見たくなくても見えてしまう。まだ幼いからそこまでではないがお父さんの周りの大人はそうだった。

 その時初めてお父さんを尊敬した。俺も将来そうなれるか心配である。

 でも今一番苦しいのはこいしだろう。なんだって話題の中心はこいしなのだから。こころが見えることによってさらに罪悪があるのだろう。それでも笑顔でいられるこいしは間違いなく強い。俺なんかよりずっと・・・

 

「こいしは強いな・・・」

 

「本当にそうね・・・」

 

 いつまでこいしとさとりと一緒に俺は笑っていられるだろうか。こころは見えても未来は見えない。でもいつまでも幸せに笑っていられる未来があるならどれだけ素晴らしいのだろうか。

(その未来のためならなんだってするさ)

 その日、俺は決心したのだった。

 

 

 

 

 

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