俺たちが逃げてから約10分経った頃、やっと家に帰ることができた。
お母さんは、俺たちが帰ってきたことに思っていたようだったが、頭を怪我しているこいしを見て表情を一変させた。
「何があったの!?」
お母さんにとっては珍しく焦った声を出す。
「私たちが妖怪だとばれたみたい」
さとりは冷静に返す。
お母さんはやはりといった表情になる。だが次に、腑に落ちないといった表情になった。そこで俺は妖怪だとばれた経緯を説明することにした。
「都から陰陽師が来たみたい。それでお父さんが妖怪だとばれたみたい。多分父さんは今、村の人たちから逃げ回ってると思う」
そう、村に誰もいなかったのはお父さんを追いかけているからだった。・・・そういえば、何故少年だけ遊び場にいたのだろうか?
「早くお父さんと合流してここから出ましょう」
俺とさとりはお母さんの案にうなづく。だがどうやってお父さんと合流するのだろうか?
「こいしちゃんちょっとこっち来て」
お母さんはこいしの頭に包帯を巻くとタンスの上にあった黄色のリボンが巻いてある麦わら帽子のようなものをかぶせた。
「ほら、泣いてたら可愛い顔が台無しよ?いつまでも泣かないの」
「・・・うん」
お母さんはこっちを向く。
「これからお母さんは村の様子を見てくるからさとりちゃん達はここにいるのよ?ぜっっっったい外に行っちゃダメなんだからね!」
「いえ、私が見に行きます」
答えたのは俺だ。
「なんでかしら?」
「もし、この家に人間が来たら私たちだけでは対処できません。・・・それに今のこいしの近くにお母さんがいた方がいいと思うし・・・」
「私も行くから。危なかったら、私がことりを止めるから。それでもダメ?」
お母さんが口を開く前にさとりが言った。するとお母さんは「二人なら大丈夫だと思うけど、絶対怪我しないでね!怪我したらお母さんは一生許さないからね!!」と不満ですといった表情で言った。
「返事は!?」
「「はい!」」
そして俺とさとりは村に向かったのだった。
俺とさとりは村の遠くにある草むらから人間を観察していた。 しかし相変わらず人はいない。・・・暇だ。
そこで俺はさとりに気になったことを聞いてみた。
「なんで私と一緒に行こうと思ったの?何も言わなければ家に入れたはずなのに」
そう、何故さとりは俺に援護射撃してくれたのか?家の中の方が安全なのにだ。俺はずっと気になっていた。
「なんとなくよ。それに妹を危険な目に合わせるわけにはいかないでしょう?」
「ありがとう・・・」
俺たちが話をしている間に村の入り口に人が集まってきた。やけに騒がしいが、どうやらまだお父さんは見つかっていないらしい。
「家に戻ろうか」
俺はさとりに言う。さとりは小さくうなづいた。
俺とさとりが家の方を向いた。
そして、俺はそれを見て自分が人間を侮っていたことに気づいた。そう人間とは賢い。そして人間は俺が思っていた以上に狡猾であった。
そこには8年間過ごしてきた家からだと思われる方向から煙がもくもくと上がっていた。