百年の本の物語   作:執筆家

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王都へ

王都へ

 

 

狂気に脅かされた月夜は去り、少年は暖かな陽と良い香りに目を覚ました。

目を擦る少年に威厳ある森ねずみが軽く会釈をし、少年と猫は暖かなミルクを振舞われた。

「穏やかな太陽が森を照らしております、全て正しい位置に」

ねずみが言った。

「一族に伝わる秘密の通路が森のはずれまで続いております、ご案内致しましょう」

壁のタペストリーの両脇に大勢のねずみたちが控えており、合図と共にそれぞれ手に持ったロープを引っ張り始めた。

するとタペストリーは左右に大きく波打ち、その奥に壁一面の大きな扉が現れる。

その扉は不思議な模様が浮き彫りにされており、少年は図書館の扉に似ているな、と思った。

ねずみたちには届かない位置に取っ手が付いており、少年はそれをゆっくりと押した、扉は空気のように軽く開いた空間から土と暖かな風が少年の髪を揺らす。

その通路は穴であり、少年は屈めば進めるようだった。

ランタンをもった威厳あるねずみが先に立ち、少年を案内した、シュレガーの周りには子供達がちょろちょろと歓声を上げながら併走していた。

通路の終わりはすぐにきた、眩しい光の円が徐々に大きくなり少年はその光の円にたどり着く、そこは森の終わりだった。

少年とシュレガーは安堵のため息を漏らし、降り注ぐ陽の光の中で大きく背伸びをした。

「どうもありがとう」

少年はねずみ達に言った。

「なにかお礼をしたいのだけど」

威厳あるねずみが手を述べ少年にこう答えた。

「いいえ、いいえお礼などと」

「ただ覚えていて下さるだけでいいのです、我らを、我らの一族を」

「そうするだけで我らはここにあることができるのです、どうか我らを忘れないで」

少年は心からの言葉を綴った。

「忘れたりなんてしないよ、ずっと忘れない、本当にありがとう」

ねずみ達は森のはずれで少年に手を振った、シュレガーは子供達に「じゃあね」とだけ告げる。

少年はねずみ達が見えなくなるまで何度も振り返り手をふりかえした。

 

しばらく野原を歩くと小さな小道を見つけた。

「道だ、よかったね、どこへ続くのだろう」

少年が少し歩くと木製の小さな看板が道の端に建てられているのを見つけた。

 

-王都-

 

「王都って?」

少年の中では王様のいる都だった。

「王様のいる都のことさ」

シュレガーがそっけなく答えた。

少年は胸が踊った。

白い石造りの家々に活気あふれる市街、鎧を着た騎士が並ぶ先に宝石を散りばめた宮殿が太陽に輝く

それが少年の王都だった。

「早く行こう!」

少年は足を速めた。

「まあ早く歩けば早く行くことになるね」

シュレガーはよくわからない答えを返し、同じく足を速めたのだった。

 

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