百年の本の物語   作:執筆家

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はずれ村の図書館

はずれ村の図書館

 

 

 

図書館ははずれ村のはずれにあり、小さな丘が半分崩れた崖を背にして立っており、

建物ははずれ村の家々とはまったく違い、真っ白な石造りだがどこにも石のつなぎ目がないーー

まるでその建物が一つの石でできているような、家々の二倍くらいのーー少なくとも外見はーーー大きさだった。

入り口の扉はこれもまた石で作られていたようだが、少年の二倍ほどの高さの全面に見事な装飾が浮き彫りで彫られており、取っ手部分は完全な球体が掘り出したのか後から取り付けたのかわからないような面でひっついており、その円に輪の握り部分が通してあった、そしてその扉は羽のように軽く、少年の力でも音もなく簡単に開き、音もなく閉まるものであった。

図書館の中は不思議な空間になっていた、外見からはりんごの木より少し背が高いだけの建物に見えるのに中は見上げると天井が見えぬほどどこまでもどこまでも伸びており、その壁に沿って石の階段がやはりどこまでも続いている。

壁自体が棚になっており一面に本が納まっていた。

窓は本の間に何箇所かあったが、外からは窓は一つも見とがめることはできず、

また中からも背伸びしても手が届かないような位置にあったため少年は窓からの景色を一度も見たことがなかった。

外から見ても無い窓にいったいどんな景色が映るのだろうか不思議だったが、いつも少年はその窓からの明かりの下で本を読んでいた。

少年は毎日ここへ来ていたが、はずれ村の誰もここに訪れたことはなかった。

「こんにちは」

少年は小さな声で声をかけた。

あえて司書を探すような事はしなかった、何故なら司書はいつも彼の視界の離れたところにいつの間にか立っておりまだ少年がもっと小さかった時はいつも驚かされたものだったからだ。

今日もいつの間にか階段を下りきったところで司書はゆっくりと少年のほうへ向かおうとしているところだった。

この司書はーーー身長は少年の二倍よりも少し高くその顔と呼べるところには女性の仮面のような、鏡のような金属に目と鼻と口を掘り込んだ仮面のような顔があり、その表情はまったく動くことがなく、眉毛も、まぶたも瞳もなかった、ただ少年が声をかけるとその顔のような部分を少年のほうに向けるので、それが顔だろうと思っていた。

その顔を貼り付けているような体は真っ白で軟体生物のようであり、顔から下、首のような細い部分があり、わずかに肩のように思えるところで少し横に広がり、そこから床まで円錐形に伸びていた。

進むときはその足元がわずかに波のようにうねり、そうして移動しているようだった。

声を発したが、顔の口は閉じたまま動かず、首の部分に小さな蟷螂のような釜が左右から重なるようについていた、その鎌のようなものをこすり合わせ小刻みに揺れだすと男とも女とも、両方が混じったような特有の声がしてくるのだ。

肩のようなものがあったが手は無く、その真っ白な体から一部分がまるで紙がはがれるかのように分離し、その不思議な紙のような手は、どういうわけかちゃんと物のところまで伸びたり縮んだりして到達し、握ることも、乗せるようなこともなく、そのものにひっつくようにして物を捕らえることができた。

「これをもらったんです、一体どんなものか知ってるかと思って」

少年は先ほどもらった革表紙の本を差し出した。

司書はそれををまぶたの無い目で見下ろし、受け取らずに顔を少年のほうへ少し近づけて言った。

「これは君の本、君の物語の本」

「僕の物語?」

鏡のような、しかし何も移さない顔がわずかに上下に揺れた、頷いたのだった。

「君は旅立つことができる」

あまりにも突拍子もない返事に少年は黙ってしまった。

「旅立つことができる」

もう一度司書は声を発した。

「もうここに君が読む本は無いんだ」

あまりにも悲しい宣告に少年は泣きそうに息を詰まらせ、か細い声をやっと出すことができた

「だって、ここにはまだこんなに本があるのに」

涙をこらえるのがやっとだった。

司書の白い手のような部分がゆっくりと少年の頬を撫で、慰めるように肩を抱いた。

「もうここに君の必要なものは無いのだ」

司書はやわらかく少年を扉のほうへ促した。

「ラプラス山へ」

その声が言った。

少年は周りがもう何も見えず盲目になったような悲しみと困惑を旨に家路についた。

 

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