魔法少女リリカルなのは~チートな主人公の頑張り物語~ 作:てりー
前回のあらすじ:命令違反の処分を受けました
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床をモップで擦る音が聞こえる
「ケンスケ、頑張る」
「あなたも働きなさいリズ!! それに呼び捨てにしない!!」
「まぁまぁセラ、そんなに怒らなくても大丈夫だよ」
「しかし」
「わかった頑張る」
「おぅ、よろしくな」
働いているのは俺とホムンクルスであるセラとリズ
何となく探してみたら、道具という区分でバビロンに入っていたから手伝って貰っている
しっかし広いな、6時間ぶっ続けで働いてやっと終わりそうな気配がでてきた
「あれぇ~、罰を受けた剣介君じゃあないか」
粘つく声とともにやってきたのは、確かローデスとかいう名前のクルー
フェイトを助けにいった時に、局員に暴行を働いたのが許せないらしい
そりゃそうなんだけど
正直、今日三回目なのでウザったい
「リンディ艦長も甘いよな
クルーを攻撃したやつをこの程度で終わらすなんて」
確かにこっちが悪かったので何も言えない
さっきから飛びかかりそうになるセラを、リズに止めて貰っている
「おい!! 聞いてんのかよ!!」
バシャという音とともに、水の入ったバケツが俺にかかる
「ご主人様!!」
「ケンスケ」
あぁあぁ、ビショビショじゃねぇか
「わたしも限か……」
飛びかかろうとするリズとセラ
それを目で抑える
でも、さすがにイライラしてきたな
ここでキレたら終わりだと言い聞かせて怒りを静める
その気配を察したのか、やりすぎたと思ったのか
ローデスは去っていった
「ご主人様、大丈夫ですか!?」
まぁ大丈夫だが……とりあえず着替えないとな
二人に床を拭いておいてくれと言い残し、一度部屋に戻った
「あんのやろう、髪までビショビショじゃねぇか」
バビロンからドライヤーを取り出して髪を乾かす
服も着替えて、さぁいくか、と思っていたら軽くドアを叩く音がした
誰だろうと思って開けてみると、クロノがいた
「少し、話がしたいんだ」
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SIDEクロノ
さっきまで、艦の掃除をしていたので探してみたが何処にも見当たらない
しょうがないから、一緒に掃除をしていたメイドの一人に聞くと部屋だと言ったので部屋に向かった
扉を叩くとすぐに剣介が出てきた
開口一番、単刀直入に話を伝えたいことを話すと、いいよと部屋に入れてくれる
どこからだしたのか、ティーポットとお茶菓子がでてきた
この色と匂いはダージリンかな
うん、やっぱり
このふくよかな香り、舌の上に味のピラミッドを造り上げる……こんなことをしにきたわけじゃないな
「まず、あの時フェイトを助けてくれてありがとう」
それが一番伝えたかった言葉
立場的に何も出来なかったなか、全部無視して動いてくれた剣介には感謝したい
そしてもう一つ、剣介に聞いて貰いたい話
剣介ならわかってくれる
理想を理解してくれる
あの時、フェイトを守ってくれた剣介ならきっと
「あれは、今から11年前のことなんだ」
そう、あれは今から11年前
僕の父さんであるクライド・ハラオウンはロストロギアの運搬中に死んだ
11年前というと、僕は3歳なので、うろ覚えだけど大泣きしたっけか
そして、それから5年後のある日
父さんの部屋から一枚の手紙が見つかった
それは僕に宛てた物
もっと大人になったら渡すつもりだったんだろうけど見つけてしまった
それには、父さんの生い立ちから母さんとの馴れ初めまで
全てのことが書いてある手紙だった
そして、その中に興味深い言葉があった
それは
《この世界は、こんなはずじゃないことばかり
大切なことは、それに向かってどう立ち向かうかなんだ》
この言葉は僕の人生を大きく変えた
これを読んで、考えて
また読んで、考えて
何回も何回も繰り返して読んでみると、自分のやりたい道が見えてきた
それは、こんなはずじゃないことに巻き込まれた人のことを救いたい
どんなことからも世界中の人々を救いたい
とても綺麗な願い
それが一番の近道だと思ったからこそ管理局に入った
でも、現実は厳しかった
最初の頃は良かった
師匠に稽古をつけて貰って、困った人がいれば助けに行く
助けた人の笑顔を見るのが楽しかった
ありがとうと言われるのが嬉しかった
それが変わり始めたのは、執務官になってから
自分の立場が上になったから、責任が大きくなった
助けられる人なのに助けられないことが多くなった
考えた事もある
でも、思考が止まった
どう考えても、先に進まなくなった
それでも、頑張ろうと思った矢先にフェイトの事件
また守れなかった
また苦しんでいる人を救えなかった
あれ? 話をしにきただけなのに
別に質問をしようと思った訳じゃないのに
でも、もう止まらない
「どうすればいいのかな」
気づいたときには問いかけていた
SIDEOUT
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「どうしたらいいのかな」
クロノの過去というか理想を聞いていたら、最後に問いかけられた
全ての人を救いたい……
要するに正義の味方ってわけだろ
こんな、昨日今日あったやつに重い事を聞くのか
よっぽど信頼してるのか、せっぱ詰まっているのかしらないけど
この理想は素敵だ……でも、俺は嫌いだな
「俺はーー」
その時、大きな音がして、ドアが開いた
「ケンスケ、掃除終わった」
何というリズ
この見計らったようなタイミングは何だ
てか、あの後二人で終わらしたのかよ
「すまなかったな、この話は忘れてくれ」
そう言ってクロノは去っていった
「ケンスケ、いいの?」
お前のせいなんだけどな
まぁ、このまま話しても良い結果にはならないだろうから、いいけどね
二人にはバビロンに戻ってもらい
特にやることもないので部屋でゆっくりしていた
そういえば、久しぶりに華音
かのん
の夢を見たな
やっぱり可愛かったな
でも、何で今になって見たんだろう
家が懐かしい……ないな
思い出したのかな
あの事を
「石神剣介は、至急通信室に来てくれ
繰り返す、石神剣介は至急通信室に来てくれ」
おいおい、休む暇を与えてくれないな
通信室ということは、なのはからの緊急かなんかか?
何にせよ急ぐか
通信室に着くと、アリサ家の庭が映っていた
大きな檻があって、そこに居るのはユーノと……アルフ!?
なんでアルフがここに?
「昨日、大怪我していたところをアリサとかいう子が保護したらしい
これから、詳しく事情を聞くところだ」
ふむ、そういうことか、ユーノみたいだな
《全てを話すよ
でも、約束して、フェイトを助けるって
あの子は何も悪くないんだよ》
やはりフェイトを見限ったわけではなさそうだな
それに、あの怪我……フェイトを助けるためにプレシア・テスタロッサに挑みかかってやられたとかありえそうだな
「わかった、約束する」
クロノにとっては、やっと理想と現実が一緒になったから嬉しいだろうな
「じゃあ話すよ、フェイトの母親プレシア・テスタロッサが全ての始まりなんだ」
「聞いたか? なのは」
アルフが話し終わった後、なのはに話しかける
《うん、聞いた、これからどうなるのかな》
クロノ曰わく、艦の方針はプレシア・テスタロッサの捕縛になるそうだ
聞くまでも無いことだろうが、一応これからどうするのかを聞く
俺たちの当初の目的は、ジュエルシードの回収だからな
《私は、フェイトちゃんを助けたい
アルフさんの願いと私の意思
フェイトちゃんの悲しい顔は、私も何だか悲しいの
だから、助けたいの、悲しい事から
それに、友達になりたいって聞いた返事も、まだ聞いてないしね》
やっぱりか
それでこそ高町なのは
こういうやつだから俺は守りたいと思った
今回も同じ事
《剣介と……なのはって言ったっけ、私が頼めた義理じゃないけど、フェイトを助けてやってくれ、あの子には誰もいないんだよ》
そんなこと、頼まれなくてもやってやる
「分かってるから、今はゆっくり休め」
もう、いくら拒んでも助けてやるから
待ってろよフェイト
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SIDEなのは
「なのは、おっそ~い」
待たせちゃったかな
にゃはは、ごめんね
やっぱり楽しいや
こうやって三人で笑って、恐がって、楽しんで
すごく楽しい
前だったら、やらなきゃいけないことがあるからと素直に遊べなかったかもしれない
でも、今は違う
この日常が大切なんだって気がついたから
ここでまた遊ぶために、やらなきゃいけないことをやっているんだって気がついたから
ありがとう、すずかちゃん、アリサちゃん
また、絶対に帰ってくるよ
今度は二人……うんうん三人でね
朝
まだちょっと肌寒いけど、気持ちいい朝
アースラに行こう
けん君が待ってる
走っていると、横からアルフさんが追いついてきた
もう治ったんだ、よかった
そして、いつもの場所に着くとけん君がいた
「よう、なのは
お待ちしているようだぞ」
うん、気がついてるよ
「ここならいいよね、フェイトちゃん」
〔scytheform〕
その言葉を待っていたというように、バルディッシュを構えたフェイトちゃんが現れた
「フェイト……もう終わりにしよう、鬼婆の言うこと聞いたって何も変わりゃしない!!フェイトが傷つくだけなんだよ!!」
祈るような叫ぶようなアルフさんの言葉
でも、今のフェイトちゃんには届かない
軽く首を振って
「それでも私は、あの人の娘だから」
それは明らかな拒絶
だから、私はレイジングハートを構える
「ただ頼ればいいってわけじゃないのは分かってる、でも人に頼るのはとても大切なこと、かけてフェイトちゃん、お互いのジュエルシードを全部!!」
空に浮かぶ、たくさんのジュエルシード
「それからだよ、全部それから
私達の全ては、まだ始まってもいない
だから、本当の自分を始めるために
始めよう
最初で最後の本気の勝負!!」