魔法少女リリカルなのは~チートな主人公の頑張り物語~ 作:てりー
前回のあらすじ:プレシア・テスタロッサを殺しました
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「ただいま戻りました」
右脇にフェイト、左脇にプレシア・テスタロッサの遺体を抱えてアースラに戻った
それから、とりあえず返り血で真っ赤になった身体をシャワーで洗い流して
その後、クロノを強引に連れ戻した事をちょっと怒られて、プレシア・テスタロッサを殺した時の事を聞かれた
クロノは苦虫を噛み潰したような顔をして、リンディさんも複雑な顔をしている
「あの時、捕縛できる位置にいたのに、なぜ殺したのですか?」
やっぱり聞かれたか
でも、あのプレシアとの話を誰かに口外するつもりはまったくない
「俺の独断です
どんな罰でも甘んじて受けますので」
いや、そういうことではないらしい
というか、上層部のほうから殺傷許可が出ていたらしく
俺を責めることは出来なく
むしろ表彰されるべき事らしい
リンディさんは、ただ、なぜプレシアを殺したのかを俺に問いたいみたいだ
絶対に言わないけどな
フェイトは、今は霊安室にいるらしい
怨まれているだろうな
いくら目の前で拒絶されても
大好きだった母親を、俺がこの手で殺したんだ
なのはも部屋にいて、今は休んでいるらしい
でも、俺がプレシア・テスタロッサを殺した事は相当ショックだったみたいだ
まぁ、艦に帰ってきたときの出迎えに、なのはもいたからな
顔は真っ青になっていたけど
「ありがとう……ございました
剣介さんは部屋に戻っていてください」
こうして解放されたけど、部屋でくつろぐ気分ではない
かといって、特にやることがあるわけでもないので食堂でボーっとしているとクロノがやってきた
「ちょっと話をしないかい
執務官という立場じゃなく、クロノ・ハラオウンという人間で話をしたいんだ」
特に断る理由もないので
いいよ
と返事をすると、対面にクロノが座った
「なぜ、プレシア・テスタロッサを殺したんだ?」
そうくると思っていたよ
ここでプレシア・テスタロッサとの念話の事は話したくない
だから少し真実の嘘をつく
「理由……か、簡単なことだ
俺の大事な一であるなのはやフェイトを殺そうとした
それ以外に理由がいるか?」
それも一つの理由ではある
「ならば、その大事な一であるフェイトにとっての大事な一を殺したんだぞ
だから今フェイトは悲しんでいる
それは君の理想に反しているんじゃないのか?」
やっかいだな
そうくると何も言えなくなる
論点をずらしてみるか
それも、クロノには答えづらい方向に
「じゃあクロノ、一つ質問だ
ここでプレシア・テスタロッサを捕縛したことは、君の理想に反しはしないのか?」
「さっきの質問の答えはどうした?
と言いたいところだけど、まぁいいか
なぜ反することになるんだ?
僕の理想は困っている人を全員助けるだよ」
そう、『全員』というところに問題がある
「もう一つ質問だ
これだけのことをしたプレシア・テスタロッサは捕まえられたら後、死罪になるのか?」
これは前にリンディさんに聞いたことだが、殺傷許可にされている人物でも、捕まえることができたら更生を第一にするから、基本的に管理局法の中に死罪はないらしい
だからクロノも違うと答えた
それが問題なんだ
「なら、プレシア・テスタロッサに殺された人物の親族はどうなるんだ
親族だけじゃない、友達、彼女、彼氏
皆どう思うだろうな
殺してほしいと願うんじゃないのか?」
ハッとした顔になった
クロノはそこを考えていない
「プレシア・テスタロッサに殺された人が何人いる?
その人数分、不幸に陥るんだぞ
捕まったプレシアを殺そうとする人が出てくるかも知れないな」
「それなら……それなら、その人達にも幸せになってもらえる何かを考える」
甘いな
サトウキビより甘い
「いい加減理解しろクロノ・ハラオウン
その人たちを幸せにする何かには、確実にその人数分+αで不幸になる人がいるんだ
そのようなイタチごっこに何の意味がある
結局かなわない夢のために年月を使い減らす、無駄な人生になるぞ」
そんな人生、端から見ていたら空しすぎる
だから俺は、それならせめて一を守りきり、他なんかどうでもいいという考え方にしたんだ
「なら……プレシアを殺したのは正解だったって言いたいのか君は」
バカやろう
そんなもの不正解に決まってる
「そんなものダメに決まってるだろ
殺しってのは言い訳の聞かない最悪手だと思っている
だが、俺はそれがフェイトにとって、よりベターだと思ったからやったんだ」
「じゃあこの結果はフェイトのために、いや、フェイトが望んだと思ったからだって言うんだな」
「それは違う
この結果をフェイトのせいにするつもりはない
これはあくまで俺が独断でやった事だ
プレシア・テスタロッサを殺したのは俺のエゴだ
おせっかいだ
俺はこんなにも最悪なやつだったんだよ
分かったか『なのは』」
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SIDEなのは
……恐い
けん君が恐い
でも、嫌いな訳ではない
私はけん君のことが好きだし、今回のことも納得できた
ちょっと食堂で飲み物でも飲もう
そう思って食堂に行くと、クロノ君とけん君がいた
自分では隠れたつもりだったんだけど、けん君に見つかっちゃった
なんて言葉を返せばいいのかな
プレシアさんを殺したことを責めるべきなのかな
私がいるよって支えてあげればいいのかな
どっちも違う気がする
必然的に返事も詰まってしまった
「軽蔑せざるをえないよな
フェイトを殺そうとして
勝手に助けて
今度は母親を殺して悲しみを負わせている
こんなやつ軽蔑されて当然だ」
違う、違うよけん君
そんな悲しい事を言わないで
「俺は……日常には戻らないほうがいいのかもしれないな」
なんでよ
けん君だって頑張ったんだよ
お願いだからそんなこと言わないでよ
どうして、この口からは言葉が出てこないの
何も言えない自分が悔しくて、情けなくて、私は食堂から逃げ出した
SIDEOUT
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やっぱりこうなっちゃうんだよな
人の命を奪うってのは重いものだ
それでも殺した
それは後悔も反省もしていない
ただ痛いだけ
表面上は、冷静さを保っているようなふりが出来るほど歪んでいる俺が気持ち悪くて痛いだけ
なのはが走り去って、クロノも気まずそうに帰っていった
一人の食堂で冷たいジュースを飲む
美味しいけど美味しくない
部屋に帰っても……何もない
どんなに責められるか分からないけど、フェイトのところに行ってみるか
霊安室で、一人フェイトが座っていた
ベッドの上に寝ているのはプレシア・テスタロッサ
まるで生きているかのように穏やかで
だけど青白い顔と、上下しない胸が、もう立ち上がることがないということを教えてくれる
フェイトの横に立って、祈りを捧げる
同じ思考を持つ同士に
また、プレシアの最期の言葉を聞いたものとして
「……どうしたのケンスケ」
意外なほど静かな声
横を見てみると、泣きはらして真っ赤に腫れ上がった目をしているフェイト
「俺を……責めないのか」
酷な質問をしてみる
簡単に考えれば、俺は母親を殺したクソやろうだ
どれだけ責められても文句は言えないし、言うつもりもない
「あれから、何度も考えてみたんだ
母さんが言った言葉と、ケンスケが伝えてくれた言葉をね
でね……それでね」
ガバッと、腰にフェイトが抱きついてきた
「ケンスケの事を許したくない
母さんを殺したんだから
でも、今までの優しいケンスケを知っているから
助けてくれたケンスケを知っているから
憎むことが出来ないんだよ
どうすればいいの?
私はどうすればいいのかな
答えてよケンスケ!!
ヒグッ、ウワァァァァン」
腰に抱きついたまま泣くフェイトのぬくもりを感じながら
何も答える事が出来なかった
守ることと不幸にすることが違うことだとは分かってるけど、それでも辛い
謝るつもりはない
自分の罪を認めて、それを背負っていくこと
それが一番の反省だと思っているし
謝ったらプレシアに失礼だから
ただただ、泣き声だけを聞いていた
それから三日後、俺となのはは地球に帰ってきた
「「ただいま~」」
皆、出迎えてくれて
久しぶりに桃子さんの料理を食べて、アリサとすずかと電話で話して
そんな最後の一時を楽しんで、楽しんで、楽しんで、慈しんだ
俺がいたら、なのはの邪魔になる
リンディさんに言えば管理局に入れてくれるだろう
これでお別れだな
「おやすみなさい、けん君」
「あぁ、おやすみなのは」
そして、さようなら
朝、いつもより早い4時起床
必要な物はバビロンにいれたから、後は出るだけ
玄関を開ける
これまで……ありがとうございました
本当に、本当に嬉しかったです
そうして道にでると、士郎さんがいた
「こんな朝早くからどうしたんだい?」
……ハァ
なんでバレたんだろうな
あんなにも冷静にすごしていたんだけれどな
「なんで分かったんですか?
俺が出て行くって」
士郎さんがにこりと頷いた
「昨日の夜に、なのはから聞いたんだ
人を殺したらしいね」
「……はい」
「人殺しをした理由は聞かないでおこうか
なぜ、この家を去ろうとしているんだい?」
「俺がいることで、石神剣介という人殺しがいることで、この家に迷惑がかかると思ったからです」
バキッ!!
……殴られた
錆びた鉄の味が口に広がっていく
「迷惑がかかる……だと?
別に逃げることは構わない
だが、君がここから逃げる理由に私達を使うな!!」
逃げるなんて言っていない
俺はただ皆のことを思って……
「それが逃げてると言うんだよ
たかが人一人殺したくらいで、胸を張って生きることが出来なくなるような弟子を持った覚えはない
それに、けん君は知らないかもしれないけど、私も、人を殺した経験は何度もある」
そう……なんだ
まぁ、少し考えれば分かることだけど
どう考えても、御神流は実践を主とした流派
そして士郎さんは、それの師範代並の使い手
本当に一度や二度ではないのだろう
でも、だからといって俺がここにいる理由にはーー
「なるよ
けん君がここにいる理由ならある
けん君よりも汚れた手をした私達だって、平凡な生活を送ることができてるんだ
重要なのは本人の意思だ
私は、けん君と一緒に暮らしたい」
そう言って、右手を伸ばした
剣術家らしい、大きく、ゴツゴツとした無骨な手
しばし悩む
本当にこの手をとっていいのかと
あんなことをしながらも、平凡な生活を送っていいのかを
そうして
「よろしく……お願いします」
俺は士郎さんの手をとった
暖かく、大きな手を