魔法少女リリカルなのは~チートな主人公の頑張り物語~   作:てりー

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第三十五話

前回のあらすじ:幸せな夢を受け入れました

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「お兄ちゃん……その、お買い物いかない?」

 

 

珍しいな、華音が何かをしたいって言うのはあまりきいたことがない、よし、いっちょ行きますか

 

 

 

スクランブル交差点があったり忠犬がいたりする街にやってきた、何かすごい久しぶりだ、リリなのの世界にももちろん存在しているけど、遠いせいもあって行ったことはない、やっぱり人が多いし街全体として活気がある

 

 

「人が多いからはぐれないように……ほら」

 

 

左手をだすと恥ずかしそうに右手で握りかえしてきた、体格が前に戻っているせいか小さく感じる、今日は暑いから……2時間くらいかな

 

華音は身体がそれほど強くない、暑いのも寒いのも苦手なので、気持ち悪くなったりする前に喫茶店とかに入らないとな

 

 

「で、どこに行きたい?」

 

「えっと……あそこのお店から行きたいな」

 

 

渋谷は若者の街だ、中高生から大学生向けのお店がいっぱいあるし品揃えも豊富、だけど、だからといって小学生くらいの子が着る服が無いわけではない、というか、その年頃の子供を取り込もうと思っている店が多いので、流行のファッションの小学生版みたいのが色々なところで売っている

 

色々な服を持っていって一人着せ替えショーをやっている華音、元の素材がいいので何を着ても似合う

 

 

「えっと……これなんてどう?」

 

 

試着室から出てきた華音がきていたのはピンク地に柄が書いてある夏向けの服、でも何かイメージと違うんだよなぁ

 

 

「そうかな……これは?」

 

 

お……似合う、黒髪の女性にバッチリの白しゃつ、ちょっと柄もついている

 

 

「うん、それ可愛いよ」

 

 

そう言って微笑むと、嬉しそうにうなずいてそれを買った、お金は出すといったのだが頑として聞き入れなかったのでしょうがない

 

その後も色々なお店に入ったり出たりを繰り返していたら、あっと言う間に2時間たったので今はTSU○AYAの一階にあるスタバ……スターダストドラゴン/バスターじゃないぞ、攻撃力3,000なんてないからな、に入ってお茶をしている、俺は普通のコーヒーで華音はキャラメルマキアート、やっぱり苦いコーヒーは飲めないそうだ

 

 

「その……今日はわがまま聞いてくれてありがとう、お兄ちゃん」

 

 

わがままなもんか、これからいくらだって時間はある、こんな時間を作っていこう

 

 

「うん……そうだ……ね」

 

 

なんか歯切れが悪いな、どうしたんだろう

 

 

「なんでもないよ……行こうお兄ちゃん」

 

「はいはい、何処までもついていきますよお嬢様」

 

 

その手をとって歩き出した、俺の居場所は……ここにある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

SIDEなのは

 

 

「なんで? なんでけん君がいないの? ユーノ君、帰ってくるっていってたよね!?」

 

 

あぁ、私は馬鹿だ、けん君がいないのがユーノ君のせいじゃないって分かってるのに責めちゃってる、どうしよう止まらないよ、止められないよ

 

 

「ごめん……僕にもなんでだか、本当にごめん」

 

 

頭をさげるユーノ君、私こそごめんなさいなのに……口だけが違う生き物になっちゃったみたいだ

 

 

「なのは、それくらいにしてあげよう、ユーノも困ってる」

 

 

フェイトちゃんが止めてくれたおかげで収まった、ユーノ君に謝るとすごい申しわけなさそうな顔をされた

 

【皆、聞こえる? 剣介くんのバイタルだけど、未だ健在

反応が闇の書の闇の塊からでているんだけど、クロノ君が到着するまで近寄っちゃダメだよ】

 

よかった……生きている事がわかっただけでも嬉しい

 

 

「なのは……あまり言いたくないことだけど、もしかしたら帰ってこないかもしれない」

 

 

沈痛な面もちのフェイトちゃん、でもなんで?

 

 

「私はあの世界で、母さんとアリシアと一緒に過ごす夢をみたんだ

もしかしたらケンスケも幸せな夢を見て……囚われちゃったのかもしれない」

 

「っつ!! そんなこと……あ」

 

 

そんなことないと言いかけて思い出した、そういえば私はけん君の過去を少ししかもしらない、お父さんやお母さんも話したくなった時に聞こうって言っていたから私もそうしようと思っていた

 

私……けん君の事、何にもしらない、だからつなぎ止めることが出来なかったのかな、そんなの……そんなのって嫌だよ、お願い……お願いだから帰ってきてよぉ

 

小指にはめた指輪に温もりが残っていないかと抱きしめる、でも、冷たい感触しかなかった

 

 

「そういえば、はやては……これは!?」

 

 

フェイトちゃんの言葉を待っていたかのように、赤、白、緑、紫の魔法陣が現れた、そこから出てきたのは主を守る守護騎士達、そして、四方に配置された守護騎士達の真ん中に白く光る玉があった

 

 

「……きれい」

 

 

誰が発したのだろうか、フェイトちゃんかアルフさんかユーノ君か、それとも私かもしれない、そんなことがどうでもよくなるくらい美しい玉だった

 

そして、それがはじけて中から現れたのはーー

 

 

「夜天の光よ我が手に集え、祝福の風リインフィース……セーーットアップ!!」

 

 

ーーはやてちゃんだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDEOUT

 

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SIDEクロノ

 

 

「やっぱり……それしか方法がないですよね」

 

 

艦長と通信しながら現場に向かう、闇の書が覚醒したときの対応策の話をしているのだが、防衛プログラムが管理システムから切り離された以上、もう転生機能は使われないので破壊することができる、しかし、その破壊もしくは封印方法が問題なのだ、それに今、剣介が帰ってきていないという報告も受けている、管理プログラムを制御できるようになっても帰ってきていないことを考えると、防衛プログラムの内部にいると考えて間違いはないだろう

 

 

【そうですね、クロノ執務官、よろしくお願いします】

 

「でも、そうすると剣介が……」

 

 

破壊する手段と封印する手段は二つあるが、どちらにしても剣介は死んでしまうだろう

 

 

【えぇ、ですが、最悪の場合はやるしかないです、剣介さん一人と惑星一つは比べられないので】

 

「……わかりました」

 

 

わかってはいた、このままならば剣介は救えない、犠牲になるしかない、でも、やっぱり納得できない、やっぱり正義を貫くことはできないのだろうか、そんなことを考えている内に現場についた

 

海上に黒い魔力の塊みたいなものがある、あれが防衛プログラムなのだろう、そしてその近くでは赤い服の守護騎士ヴィータが夜天の書の主、八神はやてに抱きついている

ちょっと心苦しいが……時間もあまりないから仕方ないだろう

 

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ、再開に水を差してしまうのだが、闇の書の防衛プログラムがもうすぐ暴走してしまう、封印なり破壊なりしてしまわなければならない

そして、その前に石神剣介を助けなければならない」

 

 

封印するにせよ破壊するにせよ剣介は死んでしまうので、今助けるしかない、だが、こちらとしても助ける方法が分からないので、そこは今考えるしかないのだ

 

 

「クロノさん……やったよね、けん君なんやけど、うちのリインフィースが言うには、助けるには自分から出るしかないそうや」

 

 

自分から出る……それができる人間ならばとっくに出てきているだろう、出てくる望みは限りなく薄い

 

 

「あまり言いたくはないが、このままだと氷結の杖デュランダルで凍結するか、アルカンシェルで破壊することになってしまう、そうすれば剣介は……生き残れない」

 

「そんな!?」

「それしか方法はないの!?」

 

 

なのはとフェイトが同時に叫ぶなかで、シャマルが手をあげた

 

 

「凍結は難しいですね、凍結自体はすぐに解除できますので」

 

「アルカンシェルもだな、こんな街中でぶっ放したら街がなくなっちまう」

 

 

確かに、アルカンシェルは着弾から百数十キロ地点の空間を歪曲して消滅させる砲撃、ここら辺一帯……この世界の地形がかわるだろう、それによってどの程度環境が破壊されるかもわからない

 

 

「それはダメだね」

「それよりも、けん君を助ける方法を考えないと」

 

 

わかってるよ、でも、時間がない、あと10分しかないなかで二つを両立させるのは……難しすぎる

 

 

【えっと、皆ごめんね緊急事態だよ

剣介君の心音、急激に低下、危険域に突入目前、助ける方法があるのなら早くしないと危ないよ!!】

 

 

これもそろそろ覚醒を始める合図なのだろうか……

 

 

「るな……」

 

「ユーノ?」

 

 

小さな声だった

 

 

「ふざ……けるな」

 

 

怒りを押し殺した声

 

 

「ケンを……ケンを返せぇぇぇっっっ!!」

 

 

そう言って淀みに向かって飛んでいく、彼は何をやっているんだ!?

 

 

「僕たちをいつも守ってくれた男を返せよぉぉぉっ!!」

「ユーノ!!」

 

 

何とかユーノに追いついて後ろから羽交い締めにする

 

 

「離してよクロノ!!」

 

「君は馬鹿か!! あれに近づくのは危険だと言っているだろう!!」

 

「ねぇケン、聞こえてるんだろ、帰ってきてよ!!

なのはが、フェイトが、皆が待っているよ、聞こえてるんでしょ、返事くらいして……よぉ」

 

 

そう言って頭を垂れた、混乱が収まったみたいなのでアルフに引き受けてもらった、なのはが泣いている、フェイトが俯いている

 

こんなの僕が望む世界じゃない、こんな世界じゃ駄目なんだ

 

覚悟たる決意を持って僕は通信回線を開いた

 

 

「艦長、いえ、母さん、僕は、クロノ・ハラオウンは命令違反をします、最後の最後まで剣介を助ける方法を考えます「待ちなさいクロノ執務官!!」だって僕の夢は……正義の味方だから、誰にも不幸になってほしくないから

処罰は後で受けます、では」

 

 

それだけ言いきって回線を切った、母さんからの通信をシャットダウンする

 

 

「さぁ、皆、剣介を助けるためにはどうしたらいいかな?」

 

 

前には泣くのをやめたなのはがいる、前を向いたフェイトがいる、顔を上げたユ-ノがいる、それにシグナムやヴィータ、ザフィーラにシャマル、はやてがいる、このメンバーなら、何か思い浮かぶはずだ

 

 

「えっと、リインフィースからの話なんやけど、自分の力で戻ってくるしかないから、その力を出してあげることを考えるべきやって」

 

 

自分の力で戻る、そんな難しいことでどうすれば力になれるだろうか

 

 

「あの……応援とかってどうかな」

 

 

フェイトか、しかし応援とは言っても、それが届くのかどうか分からないし、非効率的だな

 

 

「でもさ、そこのリインなんとかってやつの言葉を聞く限り、そのくらいしか方法がないように思えるんだけど」

 

 

まぁ……確かにそうだ、外部からが無理なら内部から力を沸かさせなければいけない、それが出来るのは、応援しかないのかもしれない

 

 

「なら、皆で応援しようよ」

 

「でも、どんな形で応援すればいいんだよ?」

 

「難しいことはしなくていいんだよ、ただ名前を呼んで頑張れって言う、それだけでいいの、いくよ、せーのーー」

 

「「「「剣介、頑張れ!!」」」」

 

 

なのはの一言で、剣介に対しての応援が始まった、そんな中、僕はシグナムとザフィーラと話していた

 

 

「石神が帰ってきた後の話だが……実際どうするつもりなのだ?」

 

 

それが一番頭を悩ませている、凍結が無理ならばアルカンシェルを撃ち込みたいが、こんなところでアルカンシェルを撃てば、この島国が二つに分かれてしまう、この国が騒いでいる原発なんてちっぽけな話になってしまうだろう

 

 

「確か……」

 

 

ザフィーラが口を開いた

 

 

「確かアルカンシェルは宇宙空間でも撃てるものだったな」

 

 

そうだ、あれは深海だろうが宇宙だろうがお構いなしに撃てる

 

 

「ならば……あれのリンカーコアを宇宙空間に運び、それをアルカンシェルで撃てばよいのではないか? 幸い仲間にリンカーコアを摘出できるやつがいるのでな」

 

 

かなり、かなり個人のスペックだよりになってしまう、覚醒が始まる数分間の間に現れるであろう防衛プログラムを破壊し、なおかつリンカーコアが露出する、つまり一度プログラムの表面部分を消滅させなければいけないということだ

 

 

「防衛プログラムは四層のバリアに守られている、魔力防御と物理防御の二層サンドイッチ構造だ、いくら高町やテスタロッサ、それに我々がいても消滅までさせられるかと聞かれれば確信はない、だからこの場の指揮官であり、執務官でもあるハラオウンに任せよう」

 

 

もちろん、最終的な判断は僕に任せられることになるのは当然だ

 

普通、暗殺のプロは成功率が90%以上なければ実行に移さないという、この賭けは良くて六分四分といったところだろう、実際は五分五分かもしれない、普通なら決して実行してはならない数値、でも……成功すれば最善、ほかの結果ならば確実に誰か死ぬと分かっている今、この賭けはやる価値がある、成功させなければ、否、成功させる!!

 

 

「剣介が助かったらこの計画を実行に移す、皆に説明しよう」

 

 

皆のところに向けて飛び立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDEOUT

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「■■……を返……ぉ」

 

 

雑音がする、なんか返せって言っている、何だろう、よく分からない、俺の眠りを邪魔するなよな

 

 

「く……あぁ」

 

 

隣を見ると、スヤスヤと眠っている華音がいる、昨日は嬉しすぎて、俺から一緒に寝ようと誘ったのだ

 

中学までの同級生であれば、俺の第一印象を聞くとシスコンという答えが返ってくるだろう、それが悪いと思ったことはなかったし、今でもそう思っている

 

手入れの行き届いた長い髪を撫でていると、くすぐったそうに身体をよじらせた、その拍子にずれてしまった布団をかけ直して外にでようとすると、何か引っかかった、華音の指だ、俺のパジャマを掴んでいる、その指をそっとはずして、今度こそ外にでた

 

 

「あら、おはよう剣介」

 

 

ドアを開けて廊下にでると母さんに会った、やっぱりなれない感覚、だからちょっと挨拶が詰まってしまう

 

 

「……まぁいいわ、あと、朝食出来てるわよ、食べちゃいなさい」

 

 

母さんが去っていくのを見送った後溜め息を一つつく、この夢では優しい母さんだって分かっているはずなのに、どうしても魂が拒絶してしまう

 

まぁ、まだ二日目だ、一週間もすれば普通に話せるようになるだろう

 

リビングでぼーっとテレビを見る、街角○報室ではいつも通りどや顔をしているみたいだ、何もない暇な生活、これが幸せってやつなのだろう

 

 

「あぁ、おはよう剣介」

 

 

親父も起きてきた、前々から不思議なのだが、親父は身長が195cmもあるのに俺はなんで170ちょいしかないのだろう、母親の劣性遺伝か?

 

そんなことを考えながらインスタントコーヒーを作ってあげる、ブラック派の親父も朝はカフェオレ派だ、ちなみに俺は紅茶派な、コーヒーは紅茶に比べると苦手

 

 

「ありがとう……お、アントラーズが勝ったじゃないか」

 

 

新聞を広げながらコーヒーを飲んでいる、よく見た光景だ

 

現在時刻7時5分前、ということは華音が起きてくる時間だ、朝があまり強くない華音のために特別なジュースを用意しておこう

 

 

「お……はよ、お兄……ゃん、お父……しゃん」

 

 

ポテポテと階段を下りてきた華音、まだ目がしっかりと開いていない、席に着いた華音にジュースを渡すと、なんの躊躇いもなく飲んだ

 

 

「……!? す、酸っぱあぁぁぁい!!」

 

 

グレープフルーツとレモンを絞ってクエン酸をいれたジュースだ、ぶっちゃけあまり美味しくない、そんなものを飲まされた華音はもちろん抗議してくる、それをあしらうのも昔よくやった光景だ

 

そんなこんなで、お昼になった

 

 

俺は華音に呼ばれて華音の部屋にいる、何かとても重要な話をするらしい

 

 

「どうしたんだ華音?」

 

 

目の前にいる華音は泣きそうな、だけど決意を決めた表情でこっちを見ている

 

「変にもなるよ、だって、お兄ちゃんはこれから夢から醒めるんだもん」

 

 

華音の言葉が引き金となって、俺の後ろに歪みが出来た、それは大きくて、俺なんか簡単に飲み込めそうなほどだ

 

 

「どういう……ことだ」

 

 

理解が出来ていないわけじゃないけど、もう一回聞く

 

 

「さっき言ったとおりだよ……お兄ちゃんは帰らなきゃいけないんだ」

 

 

何で今更そんなことを言う、俺はこの世界で生きていくと決めたんだ、その言葉を撤回するつもりもない

 

 

「こんな幻想しかない夢の中で立ち止まっちゃいけないの」

 

 

幻想だってことも分かっている、夢だってことも知っている、全て分かった上で俺はこの世界を選んだんだ

 

「とにかく、俺はこの世界からは出てい「たぁ!!」うわっ!?」

 

 

いくら高三の身体でも、いきなり本気で押されたら後ろによろけてしまう、そして後ろには……歪みがあった

 

身体ごとが入るのは持ちこたえたが、足が少し入ってしまった

 

 

「何するんだよ華音」

 

 

そう言って前に歩こうとすると、歪みに入っていないほうの足は前に進むが、入ってしまったほうの足がぴくりとも動かない

 

 

「なんだよ、どういうことだよこれは!!」

 

「……ごめんなさいお兄ちゃん、これはね……一度入ったら進むしかなくて戻ることは出来ないの」

 

 

試しに入っている足を後ろにずらしたら問題無く動いた、そのぶんだけ更に身体は後ろにいったが

 

 

「……なぁ華音、なんでこんなことをするんだ?」

 

「だって、だってお兄ちゃんは生きてるでしょ、待ってくれる人がいるんでしょ?」

 

 

それは確かにそうだ、なのはやフェイトは俺の帰りを信じて待っていることだろう、でもそれは俺が気をやむ問題じゃない

 

 

「俺は……俺はお前がいればそれでいい!! なのはなんか、フェイトやユーノ、アルフにクロノなんかどうでもいい!! お前と一緒の家で暮らして、飯食って、学校行ったりして……そんな生活がいいんだよ!!」

 

 

俺が守りたい人のなかで一番は華音だ、それが一度も揺らいだ事はない、なのはやフェイトだって守りたい一だ、でも、あいつらだって華音には適わない

 

 

「ダメだよ……これは夢なんだ、夢はいつか醒めないといけないんだよ」

 

 

そんなこと分かってる、いつかは現実にも戻らなくちゃいけない、でも、それは今でなくてもいいはずだ

 

 

「分かってると思うけど、私はもう生きていないんだよ、この世にはいないんだ、そんな妹に引っ張られちゃダメだよお兄ちゃん」

 

 

そんなの……無理だ、お前を忘れられるわけなんてない、お前のことを引きずらずに生きていける未来なんて想像もつかない

 

 

「もう……お兄ちゃんも甘えん坊さんだね、私と同じだ」

 

 

そうだよ、俺は甘えん坊だ、お前がいなきゃ何にも出来ないガキなんだ、だから助けてくれよ華音

 

 

「そんなことないよ、私がいなくてもお兄ちゃんはお兄ちゃんだった、私は短い時間だったけど久しぶりにすごく楽しい時間をもらったよ、だから、今度は今生きている子達を守ってあげて」

 

 

そう言って抱きついてきた、胸には確かな重量感、華音が言った言葉も突き刺さった気がする、でも、俺には後悔がある、もっと楽しいことをさせてあげられたし、もっと可愛いものを買ってあげられた、もっと、もっと、もっと、もっと、これから作る予定がたくさんあったのに

 

 

「お兄ちゃん……ありがとぉ」

 

 

あぁ、何だろう、すごく安心した、嬉しかった、華音にそうやって言われることが一番嬉しかったんだ

 

 

「だから、よろしくね」

 

 

その華音がこうやって頼んでる、なら俺は、それに答えてあげるのが一番なのかもしれない

 

 

「わかった、わかったよ華音、俺は戻る、お前がいないつまらない世界かもしれないけど、お前の願いくらいは、絶対に守るから」

 

「私に縛られて欲しくないけど……そうだね、頑張ってお兄ちゃん、いつでも、いつまでも応援してるから」

 

 

最後にもう一度抱きしめた、髪に鼻をうずめる、身体を撫でる、この温もりを忘れないように、いつでも思い出せるように、華音をつなぎ止められるように

 

長い抱擁のあと、髪を撫でて後ろを向いた、これ以上華音を見続けたら決心が鈍る

 

 

「いってきます、華音」

 

「いってらっしゃい、お兄ちゃん」

 

 

俺は闇の中に身を投じた、あいつらを助けるために、華音の願いを叶えるために

 

 

 

 

 

 

「……うぅ、あうぅぅ」

 

 

泣いているのは一人の少女

 

泣いてはいけないと分かっている、でも、こぼれでてしまうから止めようがない

 

 

「……く、ダメだよね、これは言っちゃだめだよ」

 

 

それを言葉に出したら決意が全て無駄になりそうだから言わなかった

 

涙を拭いて前を見た、その顔はグシャグシャだったけど、もう泣いていなかった

 

 

「また今度、会おうね、お兄ちゃん」

 

 

少女は兄の姿を確かに見ながら消えていった

 

 

 

 

 

前に進んでいくと何か嫌な予感がした、おなじ黒い空間なのだが空間じたいの粘度が違うような、そんな気がする

 

今の俺はガブリエルにもらった能力が使えない、あの夢の中にいたときは気にならなかったけど必要性がでてきた

 

 

「どうしたもんかね」

 

 

思わずつぶやいてしまう、この空間で能力を取り戻すために出来ることは何だろう、まず、夢に囚われてから能力を使えなくなった、ということは、闇から抜け出すことが出来れば能力が使えるようになるのではないか?

 

 

「……れ」

 

 

そこまで考えたところで声が聞こえた

 

 

「……す……がん……れ」

 

 

この声は前の闇から聞こえてくる、もしかしたらこの先は現実と繋がっているのか? でも、そうならどうやってこの先に行こう、俺の前に広がる闇の空間はどうみても異質、五感どころか身体全体が警告を発している

 

想像だけど、聖杯の泥のようなものなのかもしれない、夢から醒めようとする者への最後の罠、考え無しに飛び込んだら泥に侵されて夢に逆戻りしてしまう

 

 

「どうしたもんかね」

 

 

本日2回目のつぶやき、これほどの闇を払うなら、対城宝具以上でないとだめだろう、そうなると『約束された勝利の剣(エクスカリバ-)』か『天地乖離す開闢の剣(エヌマエリシュ)』くらいしかない、どちらにしても、闇の空間に入ってバビロンから取り出して、魔力を充填させてから放つのは時間がかかりすぎる、その前に飲み込まれてしまうだろう、宝具で闇ごとぶっ放すのは無理だ

 

 

「……あ」

 

 

そうだ、あの宝具の存在を忘れていた、結構ギリギリの賭けだけど、悪くない、というかこれ以上が見つからない

 

 

「じゃあ華音、また会おう」

 

 

闇に身を投じたその瞬間、身体が小さくなって小三サイズになった、それと同時に周りから一斉に泥がまとわりついてくる

 

 

「ぐ……あぁ」

 

 

死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね

 

頭を支配する負の感情に思わず負けそうになる、それを抑えてバビロンを展開して、あるものを取り出した

 

 

「俺はなぁ、華音に頼まれたんだよ、今生きてる守ってあげたい人たちを守ってあげてってな、だから泥なんかに負けるわけには……行かないんだよ」

 

 

それは聖なる鞘

 

それは王を守り続けた鞘

 

それは神が造りし鞘

 

その名はーー

 

 

「ーー『全て遠き理想郷(アヴァロン)』!!」

 

鞘から発せられる光が泥を消滅させていく、それは完全なる拒絶の光、担い手以外がこの空間にいることを拒絶するのだ

 

そして、周りの景色も変わった、暗闇に変わりはないけれど、中は明らかに何かの体内、それでも泥はしっかりとあるのでやはり自分では打開できない、だから呼びかけた

 

 

「俺は生きている、誰か、この生物を消滅してくれ、俺はここにいる!!」

 

 

誰かを指定しているわけではない、ただ繋がることを願って呼びかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

SIDEなのは

 

声が聞こえた

 

クロノ君からけん君が助かった後の話を聞いた、私やヴィータちゃんで防衛プログラムさんを破壊すればいいみたい

 

その計画を実行するための必要十分条件としてけん君が生きて帰ってくることがある、だから皆で応援していたんだけど……さっきのは気のせいかな

 

 

「俺はここにいる!!」

 

 

やっぱり気のせいじゃない、けん君の声だ、やっと、やっと帰ってきてくれた

 

他の人は聞こえていないみたいだから、私が皆に言うしかない、だけど信じてくれるかな……ううん、皆信じてくれる、だから言おう

 

 

「皆、聞いてくれる? 今ね、けん君から念話が入ったの「本当か!?」うん、本当だよ、その中でこの生物を消滅させてくれって言ってた、だからさっきクロノ君が提案せくれた作戦を実行いよう」

 

 

皆の反応はあまり良くなかった、それは当たり前だと思う、私一人しか聞いてないから幻聴かもしれないもん、でも、ユーノ君だけは反応が違った

 

 

「皆、攻撃しよう

なのはは僕たちよりもケンと一緒にいる時間が長い、だから僕たちが分からないようなことを感じ取ったのかも、それに僕は聞こえたっていうなのはを信じるよ」

 

 

その言葉で皆がまとまった、ありがとうユーノ君

 

 

「じゃあ、これからロストロギア闇の書の防衛プログラムを破壊する、個人頼みになっちゃうけど、よろしく頼むよ」

 

「「「「「はい(おう)!!」」」」」

 

 

闇の書の闇が覚醒した、それは……説明ができないかな、銀色のジンオウガに紫色の女の人が頭にくっついてる感じ?

 

 

「サポート班、行動開始する!!」

 

「チェーンバインド!!」

「ストラクルバインド!!」

 

「鋼の軛、エェイヤァァ!!」

 

ユーノ君とアルフさんが触手の動きを止めてザフィーラさんが触手を斬る

 

 

「合わせなかったらぶっとばすからな、高町……高町なのは」

 

 

名前覚えてくれたんだ、嬉しいな

 

 

「ヴィータちゃんもね!!」

 

 

それに答えないでデバイスを構える

 

 

「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼン!!

轟天爆砕、ギガントシュトラーク!!」

 

 

数十倍にまで肥大化したデバイスによる叩き潰し、単純だけど、バリアを破壊するには最高の一撃、狙い通り物理障壁の第一バリアが破壊された

 

 

「高町なのはと不屈の心レイジングハート・エクセリオン、行きます

エクセリオンバスター!!」

 

 

伸びてきた触手をバレルショットで封じて、ブレイクシュートで魔法障壁の第二バリアを破壊した、あとはよろしくね、フェイトちゃん

 

 

「剣の騎士シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン

我が秘剣の最後の姿

駆けろ隼、シュトルムファルケン!!」

 

 

弓の姿から放たれた一撃は第三バリアを悠々と破った

 

 

「フェイト・テスタロッサ、雷光バルディッシュ・ザンバーいきます!!

撃ち抜け雷神!!」

 

 

フェイトちゃんの一撃はヴィータちゃんみたいに大きくなった刃で第四バリアを叩き斬った

 

バリアは全部壊れたけど、まだ本体は無傷、すぐに触手を復活させて砲撃を撃とうとしてきた

 

 

「盾の守護獣ザフィーラ

砲撃なんぞ撃たせるかあぁぁぁぁっ!!」

 

 

ザフィーラさんの一撃で触手が貫かれていく

 

 

「彼方より来たれ宿り木の枝、銀月の槍となりて撃ち貫け、石化の槍ミストルフィン!!」

 

 

はやてちゃんの攻撃で闇の書の闇が石化して崩れ落ちた、でも、すぐに復活してしまう

 

 

「でも、効いている事は確かだよ、いくぞデュランダル

永久なる凍土、凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ、エターナルコフィン!!」

 

 

クロノ君の攻撃で更に変な形になる、さぁ最後にしよう

 

 

「いくよ、フェイトちゃん、はやてちゃん」

「「うん!!」」

 

 

この攻撃で終わらす、そしてけん君にお帰りなさいって言うんだ

 

小指を抱きしめた後レイジングハートを構える

 

フェイトちゃんとはやてちゃんも同じようにデバイスを構えた

 

 

「全力全開、スターライトーー」

「雷光一閃、プラズマサンバーーー」

「響け終焉の笛、ラグナロクーー」

 

「「「ブレイカー!!」」」

 

 

三つの莫大な魔力が貫いた、普通の人なら生きていないだろう、でも、けん君なら

 

 

「おいおい、無茶苦茶するな」

 

 

ほら、やっぱり帰ってきてくれた

 

 

「本体コア露出、捕まえ……た!!」

「長距離転送」

「目標軌道上」

 

「「「転送!!」」」

 

 

あとは映像だけでしか分からないけど、アースラからの大規模な砲撃で闇の書の闇、防衛プログラムが破壊された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDEOUT

 

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