ポケモン不思議のダンジョン 繋がり交錯する世界 作:紅卵 由己
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日が落ちては昇るのを繰り返す度に一日が始まるという認識は、種類を問わず殆どのポケモンにとって共通の物だったりする。
立ち上る朝日に順ずるような形で目を覚まし、日の光を浴びて時間を認識すると共に行動を開始する。
雨だったり曇りだったりする日の朝になかなか気分が盛り上がらないのは、もしかしたらそういう『スイッチの切り替え』が出来ないからなのかもしれない――が、世の中には寝て起きて朝の日差しを浴びて全体的にリフレッシュした所で気分が波に乗らないようなヤツもいる。
例えばそれは精神的な事が理由で朝が苦手な者だったり、過度にお酒を飲み続けた結果として頭痛を拗らせている者だったり、寝る前から寝た後にかけて続くストレスを背負っている者だったり、そもそも夜行性なのでフィーバー★タイムは日が落ちてからな者だったり――要するに『まだ眠っていたい』という願望の持ち主がその筆頭である。
大きく分けて五つに分類分けされる大陸の内の一つ――霧の大陸。
北や西側に氷山や樹氷の森といった広大な寒冷地が存在し、そこから吹いてくる冷たい風が原因からか昼夜に掛けての気温が上下しやすく、様々な区域で視界を遮る霧が発生しやすい未知だらけの領域。ここは他の大陸と比較しても過去に何か大きな国でも存在していたのかと勘潜ってしまうほどに建築業が発展しており、この大陸に位置する一部の街の住宅は無駄の無い石造りの建物が大半を占めている。
だが、その一方で温かみの薄い石造りの住み家を嫌がり自然の住まいに身を置く者もそれなりに存在し、この大陸に位置する街は『近代的な石造り』と『温かな木造建築』の二つの路線で白黒分かれた状態になっていた。
そんな大陸の、とある荒れた土地にて――――寝起き一番の言葉があった。
「あーもー無理っ!! こんな状況で寝ていられるか!! 野宿にしても何にしても、これはOKの許容範囲を絶対超えてるって!!」
心の底から鬱憤を吐き出すように言葉を発したそのポケモンの種族は『ミジュマル』と言い、腹の辺りに保持している
四肢と顔、それ以外の部位――と、白に水色と色分けされているため一見服か何かを着ているように見えなくも無いが、当然ながらポケモンに衣類を着る習慣はまず無く、毛皮の一部に過ぎない。
多少の防寒性こそありそうだが、それでも深夜の風をダイレクトに浴びて何とも無いなんて事は無いらしい。
「……うぅ」
我慢出来なくなったように声を放つ彼の傍で、呻くような声があった。
ミジュマルが声のした方へ視線を移すと、そこには全身を覆う鮮やかな黄色と背中の一部分を彩る茶色の縞模様が特色な体毛に、先端がハートの形をした稲妻のように折れ曲がった形の尻尾と、即頭部から生えた先端が黒い一対の尖った耳が特徴的な、ハムスターのような容姿を伴ったポケモンが寝そべっていた。
種族名で『ピカチュウ』と呼ばれているそのポケモンは、自身の眠りを妨げられた事からか不満の声をミジュマルに向けて漏らす。
「……朝から叫ばないでよぉ……ただでさえ寒くてロクに寝られてないのに……」
「お前は電気の熱とかで温度管理出来るだろうし、まだマシな方だろ……羨ましいっての」
「……おんど……ああ、熱さとか冷たさとかそういうの? そういえばそこまで考えた事は無かったなぁ……」
彼等が寒がっている理由はとても単純で、彼等が眠りこけていた場所がそもそも屋内ですら無く、無駄に広大な『土地』の路上。辺りにはやけに大きな岩石や枯れ木が所処に存在――というか放置されていて、一言で言ってしまえば荒れ地としか断言出来そうに無い場所だった。
先に述べた通り、霧の大陸は他の大陸と比較sいても空気が冷たく、そういった事情も重なって建築業に関する技術が発展している。夜風から身を守ることが出来なければどうなるのか、ある意味では明白な答えを彼等の現状が提示していた。
お財布事情もサバイバル技術も持たないポケモンは、この環境に適応出来なければ多重の意味でお寒くなるのだ。
「だいたい、これからの予定は決めてるのか? 流石にこんな事が何日も続くとダメだろ。食料の確保もそうだが、何より生活に必要な衣食住の内で満たせるのが食だけなのは辛いって!! この年でホームレスとか色々終わってるよ!!」
「……君が過去にどういう暮らしをしてきたかは想像も出来ないけど、僕はこういう野宿状態は結構経験してるし、割と大丈夫……いや、ごめん。意地張ってみようとしたけどやっぱり寒いねこれ」
目覚めて十数秒ほどが経ち、流石に肌寒さを認識し始めてきたピカチュウは、その視線を近場のある一点へと移してからこう述べる。
「焚き火を作っても長続きしないというのも問題だね。殆ど枯れ木状態だったから、燃えはしてもそれが続きにくい。夜風に吹かれて途中で消えちゃったのが残念だよ。ここまでとは……」
「樹脂もカラっカラだっただろうしな。焚き火に使える木材すら干からびてるとか、どんだけ放置されてたんだこの土地。やっぱり止めといた方が良かったんじゃねぇの……?」
ミジュマルがそう言うが、ピカチュウの方は割りとポジティブに考えているらしく、
「まだ一日目だし、これからだよこれから!! それに、こういう何も無い所だからでこそ僕は選んだんだよ。
「……あー、言ってたな。正直
「確かにそれはそうだけど……でも、家なんて僕達の手で建てられるのかな? その辺にある物で適当に作れるとも思えないし……」
実際の問題として、ミジュマルもピカチュウも建築に関する技術や知識は持ち合わせていない。
そもそも、辺りに落ちている程度の素材でマトモな耐久性を伴った『家』を建てれるのかさえ不明。
荒れた土地をどう良くしていくのか――そういった事も含めた『これから』の事を考えると、問題は山積みである。
軽く首を傾げて「ん~」と閉じた口から音を漏らすミジュマルとピカチュウだったが、そんな時、
「ん、おはようだぬ」
何処か、芯というか間の抜けた声が二匹の耳に聞こえていた。
ほぼ同時に声のした方へと振り返ると、全身が水色で二足歩行の水魚のような姿に、点のような瞳のポケモンがのそのそと歩み寄って来ていた。
種族としての名前で『ヌオー』と呼ばれるそのポケモンは、今でこそピカチュウが土地の権利書を
「
「途中までは何とか……でも、やっぱり厳しかった。夜風を防げないのはやっぱり辛いよ」
「雨風を防ぐためにも『家』を建てたいんですが、何かアテとか知らないですかね?」
ピカチュウに続く形で言葉を紡いだミジュマルに対し、ヌオーは何か思い当たりでもあるのか(表情の変化が解り難い)笑顔で返答する。
「ぬおー、それなら確か……ここから近い宿場町に腕利きの大工がいたはずだぬ。そのポケモンに頼めば、家を建ててもらえるんでないかぬ?」
実に都合の良い情報が二人の耳に入る。
ヌオーは「会ってみるだぬか?」と問いを飛ばしてくるが、当然二人の回答は決まっていた。
「うん、家を建てるのにお金とかは必要になると思うけど……働いて稼げばいいしね。まずは最低限でもいいからお願いぐらいはするべきだよね」
「そうと決まれば、善は急げだぬ。どうせだし、宿場町まで一緒に来るだぬか?」
「もちろん!! ねぇ、ソウタも来るよね?」
元気な声で返事を返すピカチュウに対し、ミジュマル――ソウタもまた言葉を返す。
「当然。ていうかボタン、こんな所に俺を放置しとくつもりかよ」
「まさか。私一人だと不安もあるし、来てくれるのなら嬉しい事だよ」
ピカチュウ――ボタンも笑顔を向けながらそう返すと、ヌオーの先導の元、宿場町を目指し始める。
無駄に広大な土地を住みやすくするには、まず拠点となる建物が必要だった。
……と、いうわけで最新話でしたが、いかがだったでしょうか?
相当文字数も少なめですが、今回の話は『マグナゲートと∞大迷宮』サイドのプロローグに該当されるお話なので、最低限舞台となる『霧の大陸』とその設定を大題的に書き込んでみたって話になっています。
『家を建ててもらうために大工に会いに行こう!!』って展開は原作通りですが、思えば大工の存在ってポケモンの世界だとどう扱われるのか? って疑問を覚えまして。色々考えた結果『霧の大陸』は、原作ポケモンにおける『ブラック&ホワイト』の『ブラックシティ』『ホワイトフォレスト』の関係をイメージした、文明や文化の差異がはっきり分かれた大陸……という感じになりました。
ていうか『超不思議のダンジョン』における『霧の大陸』の町を見た時、こういう世界設定しか浮かばなかったです。
さて、お待たせしました。
マグナゲートサイドの主人公ことミジュマルの『ソウタ』と、ピカチュウの『ボタン』の登場です。
探検隊サイドが格闘タイプと悪タイプの両極端な一方で、こちらはかなりベーシックな組み合わせになりました。どちらも設定的に能力が汎用性高いですし、ぶっちゃけ戦闘シーンになったらあの二人よりも書きやすいかも……。
それでは次回……大工に会いにいきます。お楽しみに!!
PS ところでこのピカチュウはメスですが、気付きましたか?