ルシがダンジョンに潜るのは間違っているだろうか 作:クヴェル
体に降りかかる暖かな陽射しを感じ、自分の意識は浮上した。
「……ここは?」
意識が目覚めて最初に疑問に思ったことは、ここが何処なのかということ。
そして、自分が死に、神と思しき何かの声を聞いたのは夢だったのだろうかということ。
「おや、目が覚めたのだな?」
それらの疑問に答えを得られる間も無く、傍から男性の声がした。
どうやら自分はベッドで寝ていたらしい。そのことを確認し、顔を横に向けると青色の長髪を後ろでまとめている優しそうな顔をしている男性がいた。
寝たままでは失礼だと思い、寝起きのだるさを感じながらも体を起こした。
「ああ、無理をするでないぞ。体は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
事実、焼け死んだはずの自分の体には見える限りで火傷のあとといった、何か怪我を負っている様子はどこにもない。
「そうか、それは良かった。昨日の夜、店の前で何か落ちるような物音が聞こえたと思い、出てみると君が倒れていたのでね」
「そうだったのですか。助けてもらいありがとうございます」
「何、当然のことをしたまでだ。礼などいらんよ」
自分がここにいる理由ある程度分かったところで、起きてから思っていた疑問について尋ねてみた。
「ところで、ここは何処なのでしょうか?」
「ここか?ここは迷宮都市オラリオだ」
「オラリオ?」
聞いたこともない地名だった。何よりも日本の地名とはかけ離れており、ここが日本ではないことが分かる。
そして、今いる場所は電気が通っているとは思えず、中世の時代にある部屋のようにも見える。
そう、本当に転生でもしない限りありえないような事態に陥っていることが気付いた。
「オラリオが分からない?いや、それよりも私の店の前になぜ倒れる前のことは覚えておるか?」
…まずい。もしここで焼け死んだと思ったら転生しましたなどと言ったら、それこそ気でも狂ったと思われるだろう。
ここは、無難に記憶喪失とでも言っておこうか。
「……分からない」
「…何?」
「…何も覚えていなんです。自分がなぜここにいるのか。今まで何をしていたのかも」
「むう…、まさか何も覚えていないのか?」
「…はい」
「それは困ったことになったな。自分の名前は覚えておるか?」
自分の名前はしっかりと覚えている。しかし、されるがままに転生させられ、どこかもわからない場所で不用意に日本人の名前を出すのは早計かもしれない。
……それでも、名前を教えるべきだろう。親から貰った名には誇りを持っている。
そして何より、名前を変えるなんてことは、あの声に転生させられたことを肯定しているしているようだから……。
「………
「…ああ、すまない。そういえば名前を名乗っておらんかったな。私は
このミアハ様との出会いが、これから続く多くの出来事の始まりなのだとは、自分はまだ知らなかった。