透「・・・突然どうした」
理子「いやー、りこりん出番が少ないからここでギャラ稼ぎしようかと思ってね」
透「ギャラなんて出てないだろ。・・・で、具体的には何をするんだ?」
理子「そうそう。ここは、みんなの『知らなかった!』って声を聞く為にりこりんがネットで得た知識をフル活用して紹介していくコーナーだよ」
透「それで、今日の豆知識とやらは何だ?」
お題『レオポン』
理子「今日のお話にも出てくる『レオポン』って実在した動物ってみんな知ってた?」
透「そうなのか?」
理子「父親がヒョウで母親がライオン。その間の子がレオポンなんだよぉ!」
透「だが、なんで『レオポン』なんだ? 例えば『ライヒョウ』みたいに名前を組み合わせるんじゃないのか」
理子「くふっふっ、それぞれ英語にしてみなよ」
透「ヒョウが『leopard』で、ライオンが『lion』。なるほどな」
理子「みんなも気付いたよね? 『レオポン』ってのは『leopard』と『lion』の合成語、『leopon』から付けられたんだよぉ!」
透「他にもレオポンについて何かあるのか?」
理子「後は・・・それぞれググってみてくださーい!」
透「最後、めんどくさくなったんだな・・・」
理子「ではでは、第9弾のはじまりはじまり~」
──戻ってきてしまった。
発砲や
だが、条件付き降伏をしてしまった以上仕方がない。通常モードの全力で挑む以上、せめて拳銃の練習をしておきたかったのだが、
「おーうキンジぃ!お前は絶対帰ってくると信じてたぞ! さあここで1秒でも早く死んでくれ!」
「お前こそ俺よりコンマ1秒早く死ね夏海」
「キンジぃー! やっと死にに帰ってきたか! お前みたいなマヌケはすぐ死ねるぞ! 武偵ってのはマヌケから死んでいくもんなんだからな」
「じゃあなんでお前が生き残ってるんだよ三上」
死ね死ね言うのがここの挨拶なのだが、皆本気で死んで欲しくて言っているわけではない。無論、例外はいるかもしれないが。
ここ強襲科の卒業時生存率は97.1%。つまり100人に3人弱は生きてこの学科を卒業できない。任務の遂行中、もしくは訓練中に死亡しているのだ。これが『明日なき学科』と呼ばれる理由である。
死ね死ね言うことで、また言われることで、ここは死と隣り合わせなのだと、再認識させ意識を高める為の挨拶だと皆受け止めている。
結局、死ね死ね挨拶してくる連中一人一人に死ね死ね返していたら、それだけでかなり時間を食ってしまった。
その様子をアリアが何とも言えない表情で窓から覗き込んでいた。
「お前は行かなくても良いのか?」
「いいのよ・・・・って透!? いつからそこにいたのよ!」
「お前が中を覗き始めてから」
これ申請書、と強襲科の自由履修を取った証明として一枚の紙をアリアに見せる。
「あんたも取ってくれたんだね」
「当然だ」
当然。その言葉は短く、素っ気ないもののように感じるが、アリアにとってはこの上ない最高の言葉であった。
「・・・ありがと」
ボソッと他人に聞き取れない程の声でアリアは呟いた。
「何か言ったか?」
「な、何も言ってないわよ! あ、ほら、キンジが出てっちゃうわよ!」
窓越しにキンジが施設から出ようとするのを視認したアリアは一目散にその場から離れた。
「ありがと、か・・・」
聴力は良い方なので、聞き取れていたが、その感謝の言葉に後ろめたさを感じていた。
(俺は感謝されるような人間じゃない)
透はアリアの後を追った。
少しの間、三人で同居していたとはいえ、三人で下校するのは初めてであった。
「あんた、人気者なんだね。ちょっとビックリしたよ」
「あんな奴らに好かれたくない」
「あんたって人付き合い悪いし、ちょっとネクラ? って感じもするんだけどさ。ここのみんなは、あんたには一目置いている感じがするんだよね」
それは入試の時のことを覚えているからだろう。
強襲科の志願者に科された試験は14階建ての廃屋に散らばり、武装の上で自分以外の受験生を捕縛し合うという実戦形式のものであった。
始まる前にちょっとしたハプニングで白雪を押し倒し、ヒステリアモードになってしまっていたキンジは全ての受験生を倒し、かつ抜き打ちで潜んでいた教官5人までも倒してしまったのだ。
「あのさキンジ」
「なんだよ」
「ありがとね」
「勘違いするなよ。俺は
「分かってるよ。・・・でもさ、強襲科の中を歩いているキンジ、みんなに囲まれててカッコよかったよ」
本心なのか嘘なのか分からないが、そんなことを言われたキンジは戸惑ってしまう。
「あたしなんか
「『アリア』?」
「『アリア』って、オペラの『独唱曲』って意味でもあるんだよ。あたしはどこの武偵高でも一人ぼっちだった」
だからこそ、透に当然だと言われた時、アリアは心底嬉しかった。
(ほんとはあんたも言ってくれるとよかったんだけどね・・・)
チラッと横目でキンジのことを見る。
「で、なんだ。ここで俺たちをドレイにして『アンサンブル』にでもなるつもりか?」
キンジのセリフにアリアはクスクスと笑っている。
「あんたも面白いこと言えるじゃない」
「どこが面白いんだよ」
「面白いよ?」
「お前のツボは分からん」
「やっぱりキンジ、強襲科に戻ったとたんにちょっと活き活きし出した。昨日までのあんたは、なんか自分にウソついてるみたいで、どっか苦しそうだった。今の方が魅力的よ」
「そんなこと・・・ないっ」
やはりさっきのことは本心だったようだ。再び似たようなことを言われ、キンジは動揺を隠しきれなかった。
そして同時に、顔には出さなかったが透も動揺していた。まるで自分のことを言われているようなセリフだったからだ。
(俺は苦しいのか?)
嘘をつくことには嫌と言う程慣れているはずだった。しかし、最近は時々、胸に痛みを感じていた。
それは嘘をつくことが苦しいからなのだろうか。
「俺はゲーセンに寄っていく。だからお前らは帰れ」
キンジのそのセリフで、透はふと我に返った。
「ねえ、『げーせん』って何?」
「ゲームセンターの略だ。そんなことも知らないのか」
「帰国子女なんだからしょうがないじゃない。んー、じゃああたしも行く。今日は特別に一緒に遊んであげるわ。ご褒美よ」
「いらねえよ。そんなのご褒美じゃなくて罰ゲームだろ」
キンジは少し足早に歩いて、アリアを引き離しにかかるが、アリアも同じ速度で歩いて真横についていく。
キンジは振りきろうと徐々に速度を上げていくが、アリアも負けじとついていく。最終的に二人とも全力疾走になり、あっという間にゲームセンターにたどり着いていた。
「はぁ。はぁ。はぁ。あれ、透は?」
二人して店の入口前で息を整えていると、アリアが透の姿がないことに気が付いた。
「あんたが走ったせいで透がはぐれちゃったじゃない!」
「お前が勝手について来たんだろ!」
キンジは苛立ち、一人店内に入ろうとするが、
「何これ?」
というアリアの質問に反射的に足を止めてしまう。
その紅い瞳は店先に出ているクレーンゲームを見つめていた。
「ああ、それはUFOキャッチャーだ」
「UFOキャッチ? なんかコドモっぽい名前。ま、どうせあんたが行くような店のゲームなんだから、下らないに決まって──」
アリアがそのセリフを言い終えることはなかった。
話している途中で、クレーンゲームの中を覗き込んでいたアリアはライオンだかヒョウだか分からない動物の小さなヌイグルミ複数体と目があった。
まるで『ボクたちをここから出して!』と目で訴えてきているかのようだ。
そして、べた、とアリアはガラスケースにへばりつく。
「どうした。そんなに珍しいか」
「・・・・・・」
「どうしたんだよ」
「・・・・・・」
「腹でも減ったのか」
「・・・・・・かわいー・・・」
まさかのセリフにキンジは思わず脱力した。
「・・・やってみるか」
「やり方がわかんない」
「幼稚園児でもできるぞこんなの」
「すぐにできる?」
「できる。じゃあ、やり方教えてやろうか?」
キンジがそう言うと、アリアはキンジを見て、何度も首を縦にふった。
キンジが簡単にやり方を教えると、早速アリアはトランプ柄のがま口を出して100円を投入する。
まるで狙撃の授業でもやっているかのような真剣さでクレーンを操作し始めた。
だが、ぽとっとヌイグルミはクレーンで前足をちょっと上げただけに終わってしまう。
「い・・・今のは練習っ。おかげでやり方が理解できたわ」
「そりゃ一回やればバカでも分かるだろうな」
むしろ初めてで取れたら才能があるだろう。
「もっぺんやる」
再び100円を投入し、同じように操作をするが、今度はオシリとシッポを上げただけだ。
「ちなみに500円入れると6回できる」
「うるさい! 次こそ取れる! コツが分かった!」
と見事に取れないフラグを乱立させるアリアだった。
「どけ」
アリアが3000円浪費した辺りで、キンジは見ていられずに仕方なしに財布を取り出した。
キンジは落とす穴に近いモノが狙い目だと判断し、操作し始めた。
狙い通りクレーンはぎゅっと、ヌイグルミの胴を掴んだ。
「お?」
見れば、持ち上げたヌイグルミのシッポにはそのさらに下にいたもう一頭のタグがからまり、ぶら下がっている。
「キンジ見て! 二匹連れてる! 放したらタダじゃおかないわよ!」
「もう俺にどうこうできねーよ!」
「あ・・・あ、入る、入る、行け!」
穴の上で開いたクレーンは一匹目を落として、続く二匹目はそのシッポに引っ張られるようにして落ちた。
「やった!」
「っしゃ!」
あまりに嬉しくて無意識に──
ぱちぃ♪
とキンジとアリアは満面の笑みで、ハイタッチをした。
「随分と楽しそうだな」
背後からの声に二人でビクッとしてから振り返る。
透の合流である。
「い、いい今のは違うわよ!」
「そ、そうだぞ、透。別に好き好んでこいつとハイタッチしたわけじゃない!」
二人してハイタッチを真っ向から否定。それ程、気があってしまったことが嫌だったのだろうか。
「・・・でも、まあバカキンジにしては上出来ね!」
誤魔化すようにしてアリアは取り出し口からヌイグルミを二匹取り出した。タグには『レオポン』と書いてある。
「かぁーわぁーいぃー!」
アリアはレオポンを思いきり握りしめ、抱きしめている。
「キンジ」
アリアは二匹のうち、一匹をキンジに差し出していた。
「一匹あげる。あんたの手柄だからご褒美よ」
「お、おう」
キンジはレオポンを一匹受け取りながら、それが携帯のストラップになっていることに気付いた。
携帯を取り出して、ストラップのヒモを携帯の穴にねじこむ。それを見たアリアも携帯を取り出して、見よう見まねで付け始めた。
レオポンの尻から出ているヒモは中途半端に太く、なかなか入らないようだ。
「先につけた方が勝ちよ、キンジ」
「なんだそりゃ。ガキかお前」
「やったわ、入りそう」
「こっちも・・・入るぞ、お前なんかに負けねー」
なんだかんだでキンジも本気になって付けていた。
そんな様子が──ヌイグルミを付けることにバカみたいに本気になって張り合う光景が、あまりにも武偵なんかとは無縁で、『普通』の男の子と女の子みたいで──
透の胸を強く締め付ける。
(そうか。やっぱり・・・)
嘘をつくこと自体が苦しいわけではなかった。
『神崎・H・アリア』を騙していることが苦しかったのだ。
なぜ嘘をつくことに躊躇うのか、なぜ嘘をつくと苦しいのか、その原因はきっと、
──『同情』である。
同情したところで、アリアを救うことはできない。『アイツ』を助けることもできない。
二人のことを救うためには、今ここで素の平川透を晒すわけにはいかない。
偽りの仮面をつけて、偽りの平川透を演じるんだ。
心の中で自身に言い聞かせた。
レオポンを付けることに必死になる二人から、透はそっと離れて帰路に就いた。
○
(・・・俺に用があるのか)
透は悟られないように曲がり角で来た道に目をやる。
尾行者がいるのだ。
実は三人で下校している時から尾行には気付いていたが、誰を狙っているのかは特定できてなかったので、そのまま泳がせていた。
ゲームセンターで別れた後も、透に尾行がついていることから目的は自分にあることが分かった。
(さて・・・正体を明かしてもらうか)
曲がり角を曲がりすぐに電柱があったので、その陰に隠れる。
「あれ?」
女の子の声がした。恐らく尾行者だろう。前方にいたはずの透の姿が消えたことに慌てているようだ。
「俺に何のようだ」
電柱の陰から透が姿を現す。
「もっとマシな尾行はできな・・・・・・か・・・・・・?」
その尾行してきた人物の正体に透は驚き、言葉が続かなかった。
「透くん・・・だよね?」
その少女は透本人かどうか確かめるように恐る恐る訊いてきた。
「お前、もしかして・・・」
前書き、たまにはあんな茶番でもやっていこうかと思っています(笑)
さてさて、透を尾行してきた謎の女の子の正体とは・・・?
え? 皆さん、もう見当付いてる?