オリジナル展開を入れたかったのですが、結局、原作に透をぶちこんでの展開となりました。
久しぶりの投稿なので文章雰囲気など所々変わってしまっているかもしれません。
今後も亀更新となりますが、少しずつリハビリも兼ねて投稿の頻度は上げていこうとは考えています。
もしこんな駄作でも待っていらっしゃった方がいましたらすみません。お待たせしました。
大きな桜の木の下に彼女は立っていた。
辺りは桜以外何もなく、ただただ草原が広がっていた。
なぜ、こんな所にいるのだろうか。彼女は考えてみるもまるで思い付かない。
ふと前を見ると、彼女の大好きな人の後ろ姿が見えた。
ツーサイドに結った長く美しい金髪。ヒラヒラのフリルを可愛くあしらったセーラー服。間違いない。
「理子お姉様!」
彼女はそう叫び、駆け出すが理子はこちらを振り向かない。
「待って・・・お待ちくださいですの!」
全力で走るが、なぜか追い付けない。それどころか、どんどん距離は離れていた。
離れる速度は徐々に早くなり、やがて理子の姿は草原の向こうへと消えていった。
────
「理子お姉様ぁ!」
ある日の日曜日。
「夢・・・でしたの?」
そう、先ほどまでのは夢。理子が目の前で消えてしまったのはただの夢なのだが、
(でも、こちらは夢ではないですの・・・)
麒麟は枕元に置いていたパステルピンクのパスケースを開ける。
中には、先月まで
頬をくっつけ合う理子と麒麟。二人で書いた『なかよし』『アミカ』などの手書き文字を見ていたら、戦姉妹だった頃の楽しかった思い出が次々と甦ってくる。
戦姉妹契約は1年間とされていて、後輩は多様な先輩からの教えを受けるべきという武偵高の方針によって、進級した後も契約を更新することは非推奨となっている。
その為、理子と麒麟の戦姉妹契約は解消となったのだが、こちらが夢ならどれ程、嬉しかっただろうか。
(うじうじしても仕方がないですの)
別れさせられてしまったものは、もうどうしようもない。
せっかくの日曜日だ。寂しい気持ちを紛らわす為にも、今日は出掛けよう。
麒麟はベッドから飛び降りて、お出掛けの準備を始めるのだった。
○
「いやー、悪ぃな。俺の買い物に付き合わせちまって」
その日、透は
なぜ、透が一緒に行くことになったのか、他の知り合いの車輌科、
結果、消去法で透にも声がかかり、初めこそ断ったが、あまりにもしつこかった為、仕方なしに付き合うことになった。
何でも今、鋭意制作中の作品があるらしく、その部品の買い出しをするそうだが、これから向かう店は、一人辺りの購入量が決まっているらしく、少なくとも二人分は欲しかったようだ。
「まあ、俺にもメリットができたしな」
当然、タダで買い出しを手伝う透ではない。今回、手伝う条件として、『タダ乗り3回分』を要求していた。
車輌科の生徒は他の生徒を車などに乗せて、現場などに連れて行く際、ガソリン代や運送費、労働費として金銭を要求することができる。
透は今後、武藤の車に乗せてもらう際、3回無料で乗ることができるということを条件に買い物に付き合うことにした。
「お、何だあの人混みは」
店への道中、普段なら見かけることはない人だかりに武藤は興味が湧いた。
「おい、買い物が優先だろ」
「ちょっとぐらい良いだろ?」
明らかに寄り道をしそうな雰囲気に透は制止をしたが、案の定、武藤は車を路肩に寄せた後、車を降り人だかりの中に混じっていった。
透はあくまで付き添いの為、店の場所を知らない。大人しく助手席で武藤が戻ってくるのを待つことにした。
○
ラクーン台場の遊園地、その片隅のベンチに麒麟は動物のキリンをデフォルメしたぬいぐるみ・・・ジョナサンと名付けたそれを横に置き座っていた。
いつもの休日なら恐らく、ウィンドウショッピングでもしていただろう。しかし、そのモチベーションもなく、なんとなくの流れでラクーン台場まで来ていた。
「キリンは淋しいと死んじゃいますの」
食べかけのクレープを手に持ち、今朝も見たパスケースに目を落とす。
(平川様さえ、いらっしゃらなければ・・・)
透と理子はパートナーとして、よく行動を共にしていた。
麒麟からすれば透は大好きな理子を奪った邪魔者であり、その透さえいなければ、今も───
ここで考えるのを止めた。契約が1年間というのは透がいようといまいと変わることはない。ただの八つ当たりというのは理解していた。
しかし、そうでもしなければなかなか寂しい気持ちを払拭できなかった。
──恋心は 振り子みたいに 揺れて 揺れて──
ふと耳に入ってきたその歌は向こうのステージで歌っている美少女アイドルグループの生歌であった。
(・・・恋心は揺れるもの)
その歌詞で麒麟はようやく前向きになれた。そう、新しい戦姉を探すのだ。
理子と麒麟は、性格やファッションセンスが似通っており、お友達感覚の戦姉妹であった。
次は、自分と違うタイプ・・・王子様タイプのお姉様になってもらおう。
そう意気込んで、元気が出てきたタイミングで、
「ねえ君ィ。デートしない?」
無粋で野太い、男の声が掛けられた。
振り返ると、白いウサギの着ぐるみが一体、麒麟の方を向いている。
「あっちいけシッシッですの。男性には興味ございませんの」
麒麟のこの発言は、ナンパ避けの方便ではなく、ベースそのものである。
というのも麒麟は生来、男に異性としての興味が全く湧かない性格をしているからだ。
むしろ同性から可愛がられたいと常日頃から思っており、そのため特殊捜査研究科(CVR)───ハニートラップで犯罪者を籠絡する学科においても、Ⅱ種β要員という『女性犯罪者向け』の特殊なメンバーとして育成を受けているのだ。
しかし、そもそもこの着ぐるみの目的はナンパではないようだ。
「来いッ」
と、強引に麒麟の右腕を掴んできたのである。
その拍子に食べかけのクレープを落としてしまった麒麟は、キッと鋭い表情になり、着ぐるみの腕を払いつつ胴を叩いた。
理子から習った中国拳法の理論通り、小柄ながらも体重をしっかり載せた掌底が決まる。
「相手を間違えましたわね。私、武偵ですのよ!」
「だからだよ、来い」
ここで背後からもう一人、黒いネコの着ぐるみを着た男が麒麟の頬に、ナイフを添えてきた。
「うひい! お顔はやめてですの!」
色仕掛けを仕事とするCVRの生徒にとって、顔は何よりの商売道具。それを傷つけられてはたまらないと、麒麟は両手を挙げて弱々しい表情を作る。
「乗れ」
黒い着ぐるみの男が、一台のカートを示した。座席ではなく、後ろのトランクに入れと手で指示している。
即座に『誘拐』と判断し、危機感を高めた麒麟は、思いきって、スカートの左側面をパッと上げて、ガーターベルトに隠していたデリンジャーを抜く。
振り向きざまに銃口を向けるが、黒い着ぐるみの男は平然としていた。
(・・・銃に怯まない!?)
そこに気付いた直後、麒麟は白いウサギの着ぐるみの方に後頭部を殴られ倒れ込む。
「バカが。防弾装備もせずに武偵を誘拐するかよ」
寄りかかるように倒れた麒麟を受け止めながら、黒い着ぐるみの男が笑う。
その後、二人は周囲に注意しつつ、カートのトランクに脱力した麒麟を押し込んでいく。
トランクを閉じられた直後、麒麟は気絶したフリをやめて、目を開いた。
麒麟は後頭部を殴られる際、しっかりと当たるよりも先に倒れ込むことで、ダメージを軽減させていた。透から学んだ防御術である。
そして、ラインストーンでデコレーションされたピンクの携帯を取り出し、大急ぎで救援要請のメールを打ち始めるのだった。
○
「おい、そんなに拗ねんなよ・・・」
再び店舗を目指して、運転を始めた武藤はいつもより無愛想になっている透をなだめようとしていた。
「拗ねてはいない。時間を無駄にしたと後悔してるだけだ」
結局、先ほどの人だかりは単なる猿回しだったようなのだが、それだけの為に1時間近く待たされた透は怒りを通り越して呆れていた。
「いやな、猿回ししていた人がスゲー美人でさ、目が離せなかったんだよ」
「その話はもう3回目だ」
生産性のない会話に疲れてきた透は目線を窓際に向ける。
「ん?」
その瞬間を狙ったかのように透の携帯が振動した。
開いて見ると、武偵高からの緊急周知エリアメールであった。
その内容を見た透は思わず目を見開き、静かに武藤に伝える。
「武藤、一旦、行き先は変更だ」
「は? どういう──」
「事件だ。江東区2丁目6まで急いでくれ。内容は今から教える」
『Area: 江東区2丁目6 Case Code:F3B-O2-EAW 特殊捜査研究科 インターン(中3)の島麒麟より発信有り (13:55)』
「誘拐・監禁(F3B)、原則2年以上が動く(O2)、犯人は防弾装備をしてる(EAW)ってことか」
透から簡潔に内容を聞いた武藤は口に出して、確認を取る。それに対して、透も頷いた。
「現場は恐らくラクーン台場辺りだろうな。つっても日曜で道も混んでるし、ここからじゃ15分はかかるぞ」
「ある程度近くまで送ってくれれば、最悪、後は走って向かう。とにかく急いでくれ」
「わかったよ!」
徐々に加速していく車の中、透は現場がどのような場所なのか、監禁しやすい場所があるのかなど把握する為、ラクーン台場について調べ始めるのであった。
○
時を同じくして、ラクーン台場にはあかり、志乃、ライカの仲良し3人組の姿があった。
偶然にも遊びに来ていた3人は先ほどのメールを確認した後、手分けをして麒麟の捜索をしていた。
聞き込みも行いながら動いてはいるが、これといって有力な情報は得られずにいた。
(・・・どこ・・・どこなの・・・島麒麟・・・!)
一向に手がかりが掴めず、焦るあかり頭に、こつんっ、と何かが刺さるように飛び込んできた。
それを髪から抜いてみると、メモ帳を折って作られた紙飛行機だった。
「・・・!」
その翼の部分には『703 NF ターザン 戻りでダイブ』の文字が書かれていた。
(武偵のショートコード・・・! NF──応援要請・・・!)
その文字列の一部は授業で全生徒が習う暗号だ。それに気付いたあかりが空を見上げると、
「あっ・・・!」
ホテルのある一室の小さな窓から何機も紙飛行機が飛ばされていた。
窓の数を下から数えてみると、7階。つまり、
(島麒麟は、あのホテルの703号室にいるんだ!)
そうと分かり、あかりはすぐに志乃とライカに連絡を取り、ホテルに来るよう促すのだった。
○
あかりたちが麒麟の居どころを掴んだ少し後。
(ここがラクーン台場か)
結局、車で後少しという所で渋滞に巻き込まれてしまった透は携帯のマップを頼りに最短ルートで走ってラクーン台場に到着した。
日曜ということもあり、園内も多くの客で賑わっている。様子を見る限り、事件のことは公にはなっていないのだろう。
(俺の推測が正しければ・・・)
頭を働かせながらも、ずっと走り続けていた透はホテルの前で足を止める。
そして、地面に落ちていた紙飛行機を拾い上げて、それは推測から確信へと変わる。しかし───
(『ターザン』はワイヤー運動の暗号だが・・・『戻りでダイブ』はなんだ・・・?)
今は考えている余裕はない。きっと屋上へ行けば、何か分かるはずだ。
軽く呼吸を整えた透はホテルの中へと入り、武偵手帳についた徽章を従業員に見せた後、すぐにエレベーターに乗り込む。
最上階に着いた透は従業員用の非常階段を駆け上がり、屋上へと出る。
そこには先客がいたようで、
「火野」
「え? 平川先輩!?」
ライカの姿があった。
「どうして1年のお前がここにいる。メールを読んでないのか」
透は話を振りつつも、周りやライカの姿を見て、状況把握を試みていた。
ライカは自分の体に繋いでいるワイヤー付きフックを非常階段の脇にあったポールに引っ掻けていた。
本来なら麒麟が監禁されている703号室の真上にフックを駆けなければならない。しかし、この屋根はドーム形で丸みを帯びており、フックを駆けられるポイントがポールくらいしか見当たらない。
『ターザン 戻りでダイブ』。つまり、麒麟は救出者にターザンのように振り子運動するように求めて、そのタイミングでダイブするから抱き留めて欲しい、という意味なのだろう。
それを今まさにライカが実行に移そうとしたところで、自分が屋上に着いたというところか。
「その・・・アタシたちたまたまここに遊びに来ていたんです。近隣の生徒も早くて20分はかかるみたいだったので・・・」
ライカの言いたいことは理解した。今まさに現場に立ち会っている状態で20分も人質を放っておくことが出来なかったのだろう。
「・・・アタシ『たち』って言ったな。他には何人いる」
「他には2人。あかりと佐々木志乃という友人です」
その2人は屋上にはいない。恐らく、ドアの方から攻めて挟み撃ちにするのだろう。
「分かった。火野、お前は予定通り窓から頼む。俺はその2人をフォローしにいく」
「い、いいんですか?」
「どのみち俺の銃じゃ、空中で窓を破ることには不向きだ。それにお前なら下手な2年より信用できる」
度々、
入学してまだ半月。現場経験が少ないことに関しては、多少の不安もあるが、ライカなら大丈夫だとは思っていた。
問題はあかりと志乃だ。自分が来てしまったことで、ライカの飛び降りる時間を少し遅らせてしまった。
さすがに部屋に突入しているはずだが、制圧に成功し、麒麟を保護したならば、まだ飛び降りてないライカに連絡くらい入ってもおかしくはない。
しかし、その一報すらないということは・・・その先は考えたくもなかった。
「火野、そっちは任せたぞ」
「はい、平川先輩もあかりたちのことよろしくお願いします!」
透は703号室に向かうため、急いで階段を降りていった。
○
やってしまった。
703号室では、武器を取り上げられたあかりと志乃が床に座らされていた。
「ハハッ、人質と武器が増えたぜ!」
黒髪の誘拐犯があかりのUZIを持ち、銃口を2人に向けている。
なぜ、こんなことになってしまったのか。
志乃がサーベルでドアの鍵を破壊し、あかりが体当たりでドアを開けて突入したところまでは良かった。
しかし、あかりは足元を見ていなかったせいで、入口付近にあったスリッパに足を突っかけて、前のめりに思いきり転んでしまい、その様子を見た志乃もあかりの心配を最優先してしまい、室内から目をそらしてしまった。
結果、先に誘拐犯から銃口を向けられてしまい、攻守を逆転させてしまうことになってしまった。
人質の人命を優先させるため、二人は身動きが取れない。
もう一人の誘拐犯・・・銀髪の男の左腕に首を絞められるようにして捕まっている麒麟も観念したような様子である。
だが、あかりには最後の望みがあった。
ライカだ。窓の方からライカがきっと───
まさに思ったその瞬間、激しいライフルの連射音と、ベッドルームの側で窓ガラスの砕け散る音が鳴り響いた。
室内にいた全員の視線が、その大きな窓に向けられる。しかし、あかりがライカの姿を目で捉えられたのは一瞬だった。
ライカはブランコのように窓の前を左から右へとスイングしていき、窓のずっと先へと消えてしまっている。
「バカか。そっちにゃ誰もいねぇよ!」
突然の銃撃に焦った黒髪の誘拐犯が、無人のベッドルームを撃ったライカをバカにするように笑う。
同じように窓の前を通過してしまったライカの姿を見て、麒麟も笑っていた。しかし、誘拐犯たちとは違う晴れやかな笑顔である。
「がうですの!」
自分の首に掛けられていた腕に噛み付き、拘束から逃れる。
「てめえ・・・! 止まれ!」
「──恋心は 振り子みたいに 揺れて 揺れて──♪」
先程のアイドルの歌を歌いながら、ダンスするようなステップで、麒麟はベッドルームへ逃げていく。
「3、2、1───」
カウントダウンを指で数えた麒麟はベッドをジャンプ台にして、
「きゃはーん」
と背中から外へと飛び出した。
笑顔で投身自殺するようなその光景に、703号室の全員が唖然とした瞬間、
右から左へブランコの要領で振り子状に戻ってきたライカがパシッと麒麟の小さな身体を両腕で見事にキャッチした。
タイミングを見計らってライカはワイヤーを切る。この軌跡から放物線を描いて落ちれば、ホテルの下にあった大きなプールに落ちることができるのだ。
「クソッ!」
窓際に立った銀髪の誘拐犯がコルト・アナコンダの銃口を向けている。
しかし、それも束の間。
「動くな」
いつの間にいたのか。透の刀が銀髪男の首筋に当てられていた。
「そこのお前もだ」
透は銀髪の男から目を反らすことなく、黒髪の男にも拳銃───コンバットマグナムの銃口を向ける。
見てないはずなのに、しっかりと照準のあった銃口。撃たれれば当たってしまうのではないかとたじろぐ黒髪の男の隙をつき、志乃は部屋の隅に捨てられていたサーベルを拾い男に突きつけた。
「透くん・・・」
あかりは連続して一変する状況にただただ困惑して、その場に立ち尽くしていた。
誘拐犯2人から武器を取り返し、一時的な拘束を終えた透は柄にもなく、あかりと志乃に説教じみた話をしていた。
「人質を助けようとして、自分たちが人質にされる。一番やっちゃいけない二次災害だ」
今回は犯人たちの目的があくまで身代金目的であったこと、人質が自ら救出手段のアプローチを取ってきた麒麟だったこと、様々な運が重なりなんとか無事に事件を解決することができた。
「 「ごめんなさい」」
言いたいことはまだあったが、反省している2人を見て、透はこれ以上何か言う気にもなれず、ちょっとしたため息を吐いた。
彼女たちにとっては、恐らく初めてであろう事件の解決だ。反省するべきところはしてもらいたいが、ここは誉めて自信をつけてもらった方が良いだろう。
「・・・まあ結果として、誰も傷つかずに犯人を逮捕できた。よくやったな」
改めて優しい言葉を掛けてあげると、あかりと志乃はお互いに顔を見合わせて笑顔になった。
緊迫していた空気が和やかになっていくのであった。
○
警察が来るまでの間、誘拐犯のことはあかりと志乃に任せて、透はライカと麒麟の様子を確認するため、外のプールまで足を運んだ。
ちょうどプールサイドに上がったばかりだったようで、透は部屋から拝借してきたバスタオルを2人に手渡した。
「お前ら無事か?」
「はい、お陰さまでなんとか・・・」
「平川様ったら、相変わらず変態さんですのね」
透の確認にライカは荒い息をつきながらも真面目に答え、麒麟は的外れな返答をする。
「・・・誤解を生む言い方は止めろ」
初めは訳が分からなかったが、バスタオルで体の前の方を隠そうとするライカを見てすぐに察した。透は2人に背中を向けて、会話を続ける。
「それと麒麟。良い機会だから聞いておくが、
最近はアリアと行動する機会が増えたため、頻度こそ減ったが、理子と行動することが多い透と契約することで、必然理子と一緒にいられるという透なりの計らいだった。
透は誰かと戦徒契約をする気はないのだが、近頃、強襲科の後輩から何かと申請が来るので、麒麟を戦徒にすることで、さっさと枠を潰したいという透自身の思惑もあった。
「いえ、平川様と戦徒になるなんて真っ平ごめんですの」
ピシャッと毒を交えて即答をする麒麟は、それに、と続けて、
「もう麒麟の王子様は見つけましたの・・・」
そのセリフにチラッと軽く後ろを見てみると、恍惚とした表情でライカを眺める麒麟の姿があった。
(そういうことか・・・)
今後、起こりうるであろう出来事が簡単に予測できて、透はライカに哀れみの眼差しを向けた。
「火野、麒麟のことよろしく頼むぞ」
そう言い残し、透は立ち去っていく。
「え? あ、はい!」
ライカは、透の言葉の真意を理解していなかった。
まさかこの可愛らしいお人形さんみたいな少女が自分の戦妹になるなんて・・・。この時は思ってもみなかった。
タイトルの割には透と麒麟を思ったよりも絡ませることができませんでした。
なんか番外編などで上手く補填していきたいとか色々考えてはいます。