緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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待っていてくださった方、お待たせしました!



バスジャックの後半戦です。


2件のうちの1件のバスジャックに巻き込まれてしまった透の運命やいかに・・・?


第18弾~バスジャック~

 

『あんたの乗っているバスとその後のバス両方でバスジャックが発生したの』

 

「そう・・・なのか」

 

アリアに驚愕的な事実を告げられるも、透は努めて平静を装った。

 

アリアは今、バスジャック解決の為に戦力を集めているだろう。だが、2件のバスジャックが同時に発生しているとなれば、その戦力は分断されることになる。

 

それは、単純に考えると事件が無事に解決する確率が半分になると言うこと。

 

戦力の分け方次第では、必ずそうとも限らないが、怪我のリスクは当然高まる。

 

その事実が拡散されれば、せっかく不知火が治めてくれたバス内も、半狂の地に戻ってしまうかもしれない。

 

「アリア、パーティーの人数はどのくらいだ」

 

『今はあたしとレキ。これからキンジにも連絡を入れる。でも、この手の事件に使えそうな生徒は他の事件に出払ってるみたいだから、これ以上はあまり期待できないわ』

 

レキは狙撃科(スナイプ)Sランクの天才少女だ。

 

身体は細く、身長はアリアより頭半分大きい程度。外見もショートカットの美少女だが、無感情でロボットっぽい性格のため目立たない女子である。

 

透もアリアと一緒にいるレキの姿を何度か見たことはある。

 

狙撃を目の当たりにしたことはないが、ランクと言い、アリアに選抜されていることと言い、実力は確かなのだろう。

 

とは言え、狙撃はあくまで戦闘支援。しかも、建物の多いこの近辺では、狙撃のチャンスすらないかもしれない。

 

なので、表立って戦力となりうるのはアリアとキンジのみ。レキに過度な期待をすることはできない。

 

(いくらなんでも人数が足りなさすぎる・・・)

 

『最悪、あたしとキンジの二手に分かれるわ。あんたはそのバスで車内の状況を確認して待機してて』

 

「・・・いや───」

 

透は会話を続けながら、不知火に向けて左右の目を何度かウィンクをする。

 

マバタキ信号(ウインキング)という、本来なら武偵同士が人に聞かれたらマズい情報を伝達する際に使う信号なのだが、今はアリアの通話と不知火への指示を同時に行う為に使用した。

 

───バクダン サガセ

 

モールスのようなそれを読み取った、不知火は頷き、その場を離れると、車内にいる生徒に手分けして爆弾を探すよう指示を出した。

 

「───こっちに応援は不要だ」

 

混乱を避ける為にも、不知火が完全に離れたこと、運転手がスピードに注意しながら運転に集中している事を確認した上で、そう告げた。

 

『な、何言ってるのよ!』

 

「こっちのバスは20人程度。後続のバスは恐らく満員状態。5、60人は乗っているんだろ? 犠牲は少ない方が良い」

 

『バカな事言ってんじゃないわよ! あたしはあんたの乗ってるバスももう一台も必ず救出(セーブ)する!』

 

「分かってる。だが、優先順位として58分のバスから救出に向かってくれ。俺らのバスは人数が少ない分、身動きも取れる。上手くいけば自分たちだけで解決できるかもしれない」

 

『・・・分かったわ。でも、無茶だけはするんじゃないわよ』

 

「ああ」

 

通話を切った透は、車内を見渡す。

 

手分けをして、座席下や荷物棚の上などに爆弾がないか、探してはいるが無さそうな雰囲気である。

 

(やられたな・・・)

 

この手口、透は今回のバスジャックの犯人に心当たりがあった。

 

 

───『武偵殺し』

 

 

先日、キンジのチャリジャックを起こし、それ以前にもバイクジャック、カージャックと事件を起こしている。

 

『武偵殺し』の手口は毎回、乗り物に『減速すると爆発する爆弾』を仕掛けて自由を奪うというもの。

 

(だが、妙だな・・・)

 

このバスジャック、()()()()()()()()()()()()()()()()事が目的のはずだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。その点については、透は『武偵殺し』と()()()()()()()()()

 

わざわざ、透、アリア、キンジを分断させようとする意味があるのだろうか。

 

いずれにせよ、アリアとキンジには二人で一緒にいてもらわなければ困る。だからこそ、透はこちらに応援はいらないと言った。

 

「不知火、爆弾はあったか」

 

とりあえず、今は自分たちの置かれた状況を解決する方が先だ。

 

様子を見る限り期待は持てないが、爆弾探索の進展具合を不知火に訊ねる。

 

座席下を覗いていた不知火は、こちらに振り返り、静かに首を横に振った。

 

「・・・足元失礼します」

 

後は確認していないであろう、運転席の下を確認した透だったが、そこにも何もなかった。

 

『乗客は おとなしく し やがれです』

 

不知火が握る携帯から、再びボカロの人工音声が車内に響き渡る。

 

しかし、なお爆弾を探し続ける生徒達を感知したのか、

 

『警告は 守り やがれ です』

 

と脅迫をしかけてくる。

 

「みんな伏せろッ!」

 

ボカロの警告から間髪入れずに、不知火の叫び声。

 

生徒達が一斉に頭を低くした直後────

 

バリバリバリバリッ!

 

無数の銃弾が、バスの窓を後ろから前まで一気に粉々にした。

 

透は射線上に入らないように注意しながら、割れた窓の外を見ると、ルノー・スポール・スパイダーが並走しており、その無人の座席からUZIを載せた銃座が、こちらに銃口を向けていた。

 

トランクの上には、通常のルノーには付いてなさそうな、見たことのない装置が付いている。

 

「不知火、手を貸してくれ。あの外車を黙らせる」

 

血の気の多そうな男子生徒が3人、拳銃を取り出して不知火に協力を求める。

 

「犯人は僕たちの動きを監視している」

 

行動は筒抜け。無謀な行為だと言いたいのだろう。

 

「そんなの関係あるか!」

 

「俺たちは武偵だぞ! このまま引き下がれるか!」

 

しかし、彼らは引き下がる事なく、是が非でも実行する気のようだ。

 

「いくらなんでも危険すぎる」

 

不知火は冷静な判断ができていない3人を止めようとするが、

 

「もういい! 俺たちだけでやる!」

 

3人組は自分たちだけで、ルノーを破壊しようと決断してしまう。

 

「少しは冷静になれ」

 

透も姿勢を屈めたまま3人組に近付き、不知火に加勢するが、

 

「うるせぇ! お前も協力する気がないなら引っ込んでろ!」

 

やはり一蹴されてしまう。

 

「はぁ・・・」

 

溜め息をついた透は、カチャッと3人組の中心人物にコンバット・マグナムの銃口を向けた。

 

「なっ!?」

 

その行動に周囲はどよめき、一番近くで見ていた不知火が、

 

「やめるんだ! 今は仲間割れをしてる場合じゃない!」

 

透に制止をかける。

 

「こいつらは先の事が見えてない。ロクな作戦も立てずに、頭に血が上った状態で実行に移してみろ。返り討ちにあうのは、こいつらだけじゃない。俺たちにも危害が及ぶ」

 

それなら、と透は男子生徒の額に銃口を近付けた。

 

「リスクは最小限に抑えるべきだ」

 

「平川君、いくらなんでもそれはやりすぎだ・・・!」

 

「不知火、動くな。お前らもそのままの状態で話を聞け」

 

バスジャックという非常事態の最中、仲間を撃とうとする異常人物の言葉に周囲は耳を傾ける。

 

「まずは状況の整理だ」

 

「え?」

 

その行動とは場違いな発言に、銃口を向けられている男子生徒も口をポカンと開けてしまう。

 

「さっき不知火が言った通り、俺たちの動きは監視されている。考えられる監視方法は3つ。『犯人がこの中にいる』『俺たちを襲撃したルノーにセンサーが搭載されている』後は『バスの車内カメラ』」

 

犯人がこの中にいる、という発言で車内はざわっと騒ぎ出す。

 

「・・・でも、わざわざ遠隔で指示を出してきている。爆弾もバスに仕掛けてる事を考えれば、犯人がこの場にいる可能性は低いはずだ」

 

不知火の推測に透は、そうだと頷く。

 

「そして、お前らが反撃に出ること、銃を取り出した事に関しては何も言ってこない。音声も拾えてなければ、恐らく、細かい動きまでは把握できていない」

 

その推測から、バスの車内カメラで把握しているという可能性も低くなってくる。

 

「つ、つまり、あの外車は何かしらのセンサーで俺たちの動きを大まかに把握してるって事か?」

 

「ああ、そして音声を拾えてないということは、犯人は俺の動きを見て、仲間割れをしてると思っているはずだ」

 

そう、透の行動は3人組の自殺行為を防ぐものと、犯人に現場の状況を誤認させること、そして全体に情報を共有して、統率するためのものだった。

 

それを知った、生徒たちは気を緩め始めたが、

 

「動くな!」

 

透の命令で、ビシッと再び緊張感が走る。

 

「これから俺の作戦を話す。いいな?」

 

透が周囲に同意を求めると、皆静かに頷いた。

 

「まず、俺がその割れた窓から、バスの屋根に上がる。当然、ルノーは俺目掛けて撃ってくるだろうが、射角を考えてもお前らに当たる事はないはずだ。その間に複数人で一斉射撃。だが、できればタイヤには当てないでくれ」

 

「待ってくれ! それじゃ、平川君が危険だ! それに犯人がそれに感付いて初めからバスに連射してくるかもしれない」

 

「肌を晒してる部分は制服やグローブで補う。死にはしない。それから直接バスを撃とうとするなら、俺がルノーに攻撃できるようになる」

 

「それなら、その役目僕がやる!」

 

死ぬ確率は低いと言えども、UZIの的になるので危険であることには変わらない。

 

それなら、と不知火が立候補してくれたのだが、

 

「不知火、お前は爆弾を解除できるか?」

 

「爆弾? 種類にもよるけど」

 

「車内になかったって事はバスの上かバスの下に爆弾があるはずだ。バスの下にあった場合、不安定な姿勢で解体作業をしなければならない。失敗も許されない。お前にその覚悟と自信があるか? それとももっと安全で効率的な代案があるのか?」

 

突きつけられるプレッシャーに不知火は顔を歪ませる。

 

「・・・平川君なら爆弾を解除できるのか?」

 

「犯人が独自に生み出した最新の爆弾とかじゃない限りな」

 

「・・・分かった。その役目は平川君に任せるよ」

 

「話を続けていいか」

 

頷く不知火を見て、透は作戦の続きを説明する。

 

「お前らがUZIを破壊してくれた所で、俺は一度ルノーに乗り移る。トランクの上に付いていた装置───あれは車の遠隔装置だと思う。それを破壊する」

 

「どうしてわざわざそんな事を」

 

「装置を壊したら、まずは運転できるやつなら誰でも良い。ルノーの運転を頼む。それから、不知火。お前は助手席に乗って、俺のボディーガードをしてほしい」

 

「僕に?」

 

「敵はまだ1台と決まった訳じゃない。もしかすると、1台もう1台と増えるかもしれない。爆弾解体中、俺は無防備だ。だからお前に守ってもらいたい。この役目も危険だが、頼めるか」

 

「・・・そんな先の事まで考えてるなんて、平川君はすごいね」

 

不知火は透の顔を見つめて、小さく笑う。

 

「是非、僕に君の事を守らせて欲しい」

 

不知火が決意ある顔でそう告げた時、何故か一部女子生徒から、きゃあああ、と黄色い声が挙がる。

 

「後は、ルノーを運転してくれる奴、誰かいないか。これも十分危険だ。無理強いはしない」

 

シーンと静まり返る車内。命を落とす危険性が高い以上、やはり誰もやりたがらないのだろう。

 

仕方がない。何か別の方法でも考えるため、頭を切り替えようとしたところ、

 

「あ、あの・・・!」

 

か細いながらも力強い声。

 

「私、それやります! やらせてください!」

 

その声の主は、元々、例の携帯を所持していたショートカットの女子生徒であった。

 

「・・・気持ちはありがたいが、死ぬ可能性もあるぞ。その覚悟はあるか」

 

「そ、それはこのバスの中にいても同じです! 私にできることがあるならお手伝いしたいです!」

 

身体は少し震えているが、その声と言葉からは覚悟を感じられた。

 

「学科と名前は?」

 

車輌科(ロジ)1年の吉水千佳(よしみずちか)です!」

 

「不知火、吉水。よろしく頼む」

 

「うん」

 

「はい!」

 

作戦とメンバーが決まったところで、早速準備に取りかかる。

 

ルノーに悟られないように、透はスクールバッグを開け、防弾製のオープンフィンガーグローブを取り出し、手に着ける。

 

不知火は自分のグローブを持っていたので、それを着けてもらい、千佳には予備のグローブを手渡し、着けるように促した。

 

「俺が飛び出して、銃声が聞こえたら合図だ。UZIを破壊したら、救護科(アンビュラス)の生徒は怪我してる奴の手当てをしてくれ」

 

車内からUZIを破壊するメンバーと救護科の生徒にそう伝え、一呼吸終えた透は椅子、窓枠を階段のように踏んでいき、身体を屈ませて窓の外に飛び出す。

 

同時に『鎌鼬』をバスの屋根に背面で突き刺し、持ち方を変えて、それを支点にバッグ転の要領で屋根に上がった。

 

ほぼ同タイミングでルノーは透目掛けて、UZIを乱射するが、うつ伏せ姿勢になり、防弾制服で頭を覆いつつ、腕を前面に出して庇う事で、頭部への被弾率を抑える。

 

腕に2発程、弾が当たり多少は痛むが問題はない。透は、銃声が聞こえなくなったタイミングで立ち上がり、ルノーに跳び移った。

 

トランクの上に着地し、装置を外そうとするが、ルノーは突然、蛇行運転を始める。

 

「ちっ」

 

車内の生徒たちがUZIを破壊してくれたとは言え、ルノーの操作の主導権はまだ犯人の物である。

 

バランスを崩しそうになった透は、飛び込むようにして助手席に移り、振り返り様にマグナムを発砲する。

 

マグナムの弾が遠隔装置に当たり、破壊に成功すると、徐々にルノーのスピードが落ちていっていた。

 

透はUZIの残骸を破棄すると、アクセルを踏み込み、ギリギリまで、バスの横に近付ける。

 

「吉水!」

 

「は、はい!」

 

「雨で滑りやすいからゆっくりでいい。中から支えてもらって、窓枠に足をかけて、それから、こっちのドアに足を乗せろ」

 

ルノーは右車線を走っている。当然、左ハンドルなので、バスからスペースの空いている助手席までは距離がある。

 

バスの中からと透側でフォローしつつ、千佳が無事に移動できるように指示を出す。

 

バス内から腕を支えてもらいながら、窓枠に両手両足をつけるようにして、後ろ向きで車外に出てきた千佳は少しずつ足を降ろしていく。

 

「ひゃっ!」

 

謎の声を挙げて、一瞬動きが止まるが、再び足を降ろしていき、両手がバスの窓枠、両足がルノーのドアという姿勢になった。

 

「よし、両手を放せ」

 

言われるがまま、バスから手を放した千佳は、仰向けのままルノーに向かって倒れてくる。

 

透は一瞬だけハンドルを放し、千佳のことをお姫様抱っこのような形で受け止めた。

 

右手で頭を支えた状態を保ち、左手でハンドルの制御をする。

 

「あっ・・・わわわ・・・!」

 

「早速で悪いが、運転を変わってくれ」

 

何故か顔を真っ赤にする千佳だったが、あまり時間もかけてられないので、透は交代の要請をする。

 

「ひゃっ・・・ひゃいっ!」

 

千佳が起き上がり、その場でハンドルを握るのを確認すると、透は後ろのトランクへと移動する。

 

「あ、あの!」

 

「なんだ」

 

「み、見てないですか?」

 

「何を?」

 

「その、私がバスから足を降ろすときに何も・・・」

 

「だから、何をだ」

 

「み、見てないなら良いんです! 失礼しました!」

 

質問の意図がよく分からなかったが、本人が良いと言ったのだからもう良いのだろう。

 

透はルノーからバスの窓枠に手をかける。

 

車内の不知火と目があったので、

 

「不知火、後は頼んだぞ」

 

「うん、平川君も」

 

簡単に会話を済ませて、バスの屋根へと再び戻る。

 

(当然、上にはないよな・・・)

 

屋根の上を再確認するが、爆弾らしき物体はない。

 

そうなると、後考えられるのは車体の下である。

 

透は屋根にワイヤーを撃ち込んで、身体が落ちないようにすると、バス後方から逆さ吊りになって、車体の下を覗き込む。

 

(あった・・・!)

 

ここからでは微妙に手が届かない位置に爆弾らしき物が着いていた。

 

(カジンスキーβ型のプラスチック爆弾(Composition4)・・・炸薬の容積は3500立法センチはあるな)

 

それは過剰すぎる炸薬量であった。それは、ドカンといけば、バスどころか電車でも吹っ飛ぶ程の量。

 

透は潜り込んで行き、慎重に解体作業を始める。

 

ドライバーで4隅に止められていたネジを取り外し、蓋を開ける。

 

「そういうことか・・・」

 

爆弾の中身を見た透は思わず呟いた。

 

 

 

 

 

「平川先輩、大丈夫でしょうか?」

 

「今は彼を信じるしかない。僕らは僕らにできることをしよう」

 

千佳と不知火はルノーに乗り、バスの後方につくように運転していた。

 

今のところ、新しい敵が来る気配はないので、透の様子を見守っている。

 

「あっ!」

 

透が車体下から這い出て来るのを、千佳がいち早く気付く。

 

屋根まで戻ってきた透の手には爆弾のようなものがある。

 

「平川君、無事に解体できたんだね」

 

不知火に声をかけられた透は、無言でその爆弾を投げてきた。

 

「おっと」

 

「ええっ!? そ、それ大丈夫なんですか!?」

 

爆弾を投げつけられたとあって、その方面の知識がない千佳はひどく慌てるが、

 

「ははっ。平川君が解体してくれたからもう大丈夫だよ」

 

不知火は爽やかな笑顔で、千佳のことを落ち着けようとしてくる。

 

「その爆弾は偽物だった」

 

唐突な透の発言に、不知火は驚きその爆弾を確認する。

 

「起爆装置も雷管も着いていない。爆弾そのものは本物だが、それらがないんじゃ何の意味もなさない」

 

「それじゃあ、犯人は何が目的で?」

 

千佳が恐る恐る透に訊ねると、「さあな」と一言。

 

「結局、俺らは爆弾があると思い込んで、犯人の手の平の上で踊らされてだけだったってことだ」

 

「でも、爆弾がないと分かったのは喜ばしいことだよ。これで、この事件は無事に解決できた」

 

「・・・そう・・・だな。車内の連中と運転手に伝えてくる」

 

そう言い残して、透はバスの車内へと戻っていった。

 

「結局、平川君に任せっきりになっちゃったなぁ」

 

不知火が苦笑いしながら、そんな事をぼやくので、

 

「そんな事ないです! 不知火先輩もみんながパニックになる前にまとめていましたし、お二人共凄かったです!」

 

千佳はフォローというか、素直に思った事を口にする。

 

「ありがとう。でも、やっぱりこういう事は強襲科が表立って頑張らないといけないから、少し悔しいかな」

 

「え? 平川先輩って強襲科じゃないんですか?」

 

「平川君は装備科(アムド)だよ。確かに最近は自由履修で強襲科に来てる事も多いけどね」

 

「そうだったんですか・・・」

 

先頭に立って指揮していたので、てっきり強襲科の生徒だと思っていた。

 

(装備科の人なのに、誰よりも冷静で、誰よりも活躍してた)

 

それに比べて私は、と自分を卑下して、気持ちが少し暗くなる。

 

先日も車輌科で中国系マフィアを護送した時、トラブルがあったのだが、手錠を付けた相手に胸ぐらを掴まれて、なされるがまま反撃も何もできなかった。

 

その時は、たまたま神崎・H・アリア先輩が助けてくれて、事なきを得た。

 

自分たちの本分は、運転や操縦。荒事は強襲科や狙撃科に任せるべきだというのが、元々の考えだったが、その一件があって以来、本当にそれで良いのかと思ってもいた。

 

そして、今、透が本分関係なしに極力被害を出さないように奔走していた姿を思い出し、考えが固まる。

 

(私も平川先輩みたいになりたい・・・!)

 

透から事件解決の事を聞いたのか、バスは徐々に減速して停止した。

 

千佳もルノーのスピードを落とし、バスの後ろにつけるようにして止めてから、不知火と一緒にバスまで駆け寄る。

 

バスから降りてきた透は、他の生徒と協力して怪我人を運び出していた。

 

そんな透の姿を目に焼き付けて、千佳は自らを変えるために、率先して手伝いに加わるのだった。

 

 






久しぶりに主人公を活躍させられたかな~、と思います。
というか、まさかの新キャラちゃんの登場です。

新キャラちゃんは、またいずれ出て来ると思いますので、楽しみにしていただければ。


次回の更新は未定ですが、もう少しでGW入るので、比較的早めに更新したいな、とは思ってます。
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