『武装探偵』。通称、『武偵』。それは、凶悪化する犯罪に対抗する為に新たに設けられた国家資格である。
犯罪者を捕らえる。そういった点に関しては警察と何ら変わりはない。しかし、武偵と警察とでは決定的な違いがあった。
それはお金である。武偵は金を貰わなければ動かない。裏を返せば、金さえ払えば武偵法の許す限り、いかなる仕事をも請け負う。いわゆる『便利屋』な側面もあった。
そんな武偵を育成する教育機関──武偵校──は世界中に存在している。
レインボーブリッジ南方に浮かぶ人工浮島に設立された『東京武偵高校』もその一つである。今日は東京武偵高校の始業式でもあった。
指定された防弾制服を身にまとい、寮から武偵校までの道中をゆっくりと歩く一人の男子生徒がいた。
グレーの髪に鋭い目付き。しかしながら、一般的に見て、顔は整っている部類に入るだろう。
始業式の時間がギリギリの為か周りに人はいない。たまに自転車に乗った生徒が追い越して行くが、それも一人二人程度だった。
(さて、そろそろか)
遠くから何やら黒い物体がこちらに向かって近付いて来るのが見えた。
その正体は次第にハッキリとしてくる。
それは、自転車を全速力でこぐ、武偵校の制服を着た男子生徒と並走するセグウェイを乗りこなす一基の自動銃座──UZIであった。
「この自転車には爆弾が仕掛けられてる! できるだけ遠くへ逃げろ!」
前方に立つ透の姿に気付いた男子生徒は大声で叫んだ。しかし、透は動こうとはしなかった。
「黙れ」
透は一言ボソリと呟き、
「『
腰につけた鞘から日本刀を抜き、振るった。
するとどうだろうか。まだこちらに来ていないセグウェイはUZIごと上下真っ二つに切れた。バランスを失ったセグウェイは上部、下部それぞれ勢い良く地面を転がり、やがて動かなくなった。
男子生徒は隣でセグウェイが壊れたのを見て、透が助けてくれるのではないかと希望を持った。
しかし、それは一瞬の希望だった。
どこからともなく、セグウェイの集団がやって来て透のことを取り囲んでしまう。
「・・・悪いが後は自分でどうにかしてくれ」
頼みの綱が切れてしまった。
セグウェイに囲まれた透を横目に男子生徒は自転車で過ぎて行く。
「・・・用意しすぎだろ」
セグウェイ5台に囲まれることなど、誰も経験したことないだろう。
このまま攻撃すれば、蜂の巣にされるのは目に見えている。透はセグウェイの隙間を縫うようにして囲いを抜け出した。
振り返り様に抜刀。二基のUZIを仕留める。うち一台のセグウェイを盗み、逃走を始める。
その間に残りのセグウェイに撃たれるが、防弾制服で頭を庇い、受けきった。
銃撃が途切れたところで、少し振り返ると三台のセグウェイがキレイに並走して追いかけてきていた。
「少し大きめだ・・・『鎌鼬』!」
セグウェイから飛び降り、男子生徒を助けた際よりも、大きく刀を振るった。
その一瞬後、セグウェイは三台とも真っ二つになり、先程同様、後方へ転がっていき停止する。
同時に奥の方で轟音と共に爆発が目に映った。
生ぬるい風が頬に当たる。それなりに距離を取っていた筈なのにだ。
「・・・・・・」
透は携帯を取り出し、誰かに電話をかける。
「おい」
「せっかくの計画を台無しにする気?」
「俺はお前の計画には反対だと前々から言っていただろ。それよりも火薬の量が多すぎだ。周りに誰かいたらどうする」
透は周囲の人間に危害が及ぶのではないかと心配していた。
「だいじょぶだいじょぶ。その為に遅刻ギリギリの時しか使わない自転車に付けた訳だし、それにかの有名な・・・えーと、誰だっけ?」
「知るか」
「まぁ、いいや。その誰かさんも芸術は爆発だー! って言ってる訳だし」
後半に至っては意味が分からない。
「それじゃ、トオルンまた後で」
「その呼び方は辞めろ・・・って切られたか」
計画通りなら、
果たして二人は無事なのだろうか。
透はセグウェイを動かし、爆心地へと向かった。
セグウェイの最高時速は20km。
改造すれば40km行けるらしい。
チャリで振り切るには無理があるし、爆弾抱えてるし、キンジ君ホントにピンチでしたね。