緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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書き進めていくうちに、当初の予定とは違うルートに突入してしまいました。

なので、少し見辛い部分もあるかと思われますが、ご了承ください。

第22弾です。


第22弾~ハイジャック~

午後7時。透とアリアはロンドンへ向かうためチャーター便に搭乗していた。

 

二人が乗っている旅客機は『空飛ぶリゾート』と言われている全席スィートクラスの超豪華旅客機である。

 

1階は広いバーになっていて、2階、中央通路の左右には扉が並んでいる。

 

扉の先は、座席ではなく高級ホテルのような個室となっており、全12部屋ある。それぞれの部屋にベッドやシャワー室までもを完備した、いわゆるセレブご用達しの新型機である。

 

「・・・俺の分も出してもらって良かったのか?」

 

もう間もなく離陸となるので、座席に座り、ベルトを着用した透は隣のアリアに話しかける。

 

「別にこのくらい構わないわよ」

 

透の記憶が正しければ、この旅客機のチケットは片道20万円くらいしたはずである。

 

出せない事はない額ではあるが、出し渋りしたくなる額ではある。

 

しかし、アリアが透の分のチケットも出すと言ったので、お言葉に甘えた訳だが、

 

(合わせて40万・・・流石は貴族だな・・・)

 

あっけらかんと答えるアリアに透は苦笑いをする。

 

ぐらり、と機体が揺れ、離陸の準備に入る。

 

『ANA600便』は滑走路に入ると、そのまま離陸した。

 

 

離陸後、しばらくするとベルトの着用サインが消えた。

 

機体が上空まで出て、安定したのだろう。

 

そして、すぐにガチャッと部屋の扉が開かれた。

 

「・・・キ、キンジ!?」

 

扉を開けて部屋に入ってきたのは、なんとアテンダントに案内されたキンジだった。

 

「───断りもなく部屋に押しかけてくるなんて、失礼よっ!」

 

アリアは突然現れたキンジに驚いていたが、すぐに座席から立ってキンジを睨んだ。

 

「お前に、そのセリフを言う権利は無いだろ」

 

アリアは自分がキンジの部屋に押しかけた事を思い出したのだろう。

 

うぐ、と怒りながらも黙る。

 

「・・・なんでついてきたのよ」

 

「武偵憲章2条。依頼人との契約は絶対守れ」

 

「・・・?」

 

「俺はこう約束した。強襲科(アサルト)に戻ってから最初に起きた事件を、1件だけ、お前と一緒に解決してやる───『武偵殺し』の1件は、まだ解決してないだろ」

 

「・・・お前、それは屁理屈だろ」

 

キンジの理屈に透は呆れたように突っ込んだが、内心ではキンジが来てくれた事に少しありがたく感じていた。

 

これで、またアリアと組ませられるチャンスが出来たわけだ。

 

「俺はアリアと話してるんだ。お前じゃない」

 

しかし、キンジは何故か透に対して、当たり強く返してきた。

 

「・・・ロンドンについたらすぐ引き返しなさい。エコノミーのチケットぐらい、手切れ金がわりに買ってあげるからっ。あんたはもう他人! あたしに話しかけないこと!」

 

「元から他人だろ」

 

「うるさい! 喋るの禁止!」

 

アリアは、ぶっすぅー、と膨れっ面になり、腕組み足組みをして座席に座り、外を眺めだした。

 

「キンジ、座るか」

 

座席が2つしかなかったので、気遣いをするようにみせて、透はキンジに訊いてみる。

 

「俺はいい。お前が座っとけ」

 

やはり風当たりが強い。

 

(・・・()()()()()()・・・)

 

一体、どういう経緯で知ったのかは知らないが、透の存在に恐らく気付いたのだろう。

 

今は、アリアの手前、何も言わないようにしているだけで。

 

キンジには素直に話した方が良いのかもしれない。

 

「キンジ」

 

「なんだよ」

 

「少し来てくれ」

 

透はキンジを連れて、部屋を出た。

 

「・・・どこまで分かった」

 

通路に出た透は、簡潔にキンジに訊ねる。

 

「・・・この飛行機に恐らく『武偵殺し』が現れること。そして、()()が『武偵殺し』かその関係者だってことだ」

 

そして、キンジは透の胸ぐらを掴み、

 

「お前が兄さんを殺したのか・・・!?」

 

怒りの形相で透の事を睨んだ。

 

「・・・どうして、俺が『武偵殺し』か関係者だと思った」

 

「思い返せば、チャリジャックの時、お前は俺が来るのを分かってたように()()()()()()()。最初に起きた事件を1件だけ解決するという提案。あれもお前が出してきた提案だ。そして、その1件でバスジャックが起きた。あの時、お前はもう一台のバスジャックに巻き込まれていたと聞いたが、それもブラフだったんだろ」

 

「・・・チャリジャックの時、俺は『武偵殺し』からお前の自転車に爆弾を仕掛けたと情報提供があった。だから、お前を助ける為に待っていた。1件だけ解決という提案はお前とアリア、2人にチームを組んでもらいたくて誘導したものだ。そして、バスジャック。俺は『武偵殺し』じゃない第三者の事件に巻き込まれていた」

 

透に言い逃れする気はなかった。キンジの推理に一つ一つ丁寧に答えていく。

 

「関係者って事は認めるんだな? 教えろ! 『武偵殺し』は誰だ! 兄さんはどうして殺された! お前はアリアに近付いてどうするつもりだ!」

 

「『武偵殺し』の正体はもうすぐ分かるはずだ。金一(きんいち)さんは生きている。だが、今どこにいるかは知らない。アリアに近付いてるのは『武偵殺し』から()()為だ」

 

透の答えを聞いたキンジの表情が驚きに満ちている。

 

「兄さんが・・・生きてる・・・?」

 

胸ぐらを掴んでいた手の力が緩くなっていくのが分かる。

 

しかし、すぐにそれを否定するようにキンジは首を横に振った。

 

「お前は俺達の事を騙してたんだ。 そんな事信用できるわけないだろ! アリアを守るって言うのも嘘なんだろ!」

 

「嘘じゃない!」

 

大人しく問答に応じていた透が突然激昂(げきこう)したので、キンジはうろたえた様子を見せる。

 

「俺と『武偵殺し』はお前とアリア、2人にパーティーを組んでもらう。その利害だけは一致していた。だが、あいつの爆弾を使って周りを巻き込むやり方は反対だった。そして、お前も気付いていると思うが、『武偵殺し』はアリアを()()()()()()

 

透は胸ぐらを掴むキンジの手を外す。

 

「アリアを守りたい。その気持ちは嘘じゃない」

 

「・・・透、お前本当に何者なんだ・・・?」

 

「俺は───」

 

透が返答をする前に───

 

パン! パァン!

 

音が機内に響いた。

 

透もキンジも聞き慣れた音───

 

銃声───!

 

その音に反応して、個室から乗客たちが顔を出し、数人のアテンダントも集まってきて、老若男女が不安げな顔でわあわあ騒ぎ始める。

 

銃声のした機体前方を見ると、コックピットの扉が開け放たれ、小柄なアテンダントが姿を見せる。

 

そのアテンダントは、ずるずる、と機長と副操縦士を引きずり出してきている。

 

2人のパイロットは何をされたのか、全く動いていない。

 

どさ、どさ、と通路の床に2人を投げ捨てたアテンダントを見て、透とキンジは拳銃を抜いた。

 

「動くな!」

 

透の声にアテンダントは顔を上げると、にいッ、とその特徴の無い顔で笑った。

 

そして、一つウィンクをして操縦室に引き返しながら、

 

Attention Please.(お気を付け下さい)でやがります」

 

ピン、と音を立てて、胸元から取り出したカンを放り投げてきた。

 

「皆さん、部屋に戻ってドアを閉めて下さい!」

 

ガス缶───すぐに気付いた透は乗客とアテンダントに大声で指示を出す。

 

「透! キンジ!」

 

騒ぎを聞いて部屋から出てきたアリアが、悲鳴を上げる。

 

シュウウウウ・・・!

 

ガスの音が聞こえてきた。

 

「アリア! キンジ! すぐ部屋に戻れ!」

 

キンジがアリアを押し込むようにした後、透も続けて部屋に入る。

 

バタンッ、扉を閉める一瞬前に、飛行機はグラリ、と揺れ。

 

バチンッ、と機内の照明が消え、乗客たちが恐怖に悲鳴を連ねた。

 

 

暗闇はすぐに、赤い非常灯に切り替わった。

 

「透! キンジ! 大丈夫!?」

 

息はできる。目も見える。手足のマヒもない。

 

どうやら無害なガスだったらしい。

 

「アリア。あのフザケた喋り方・・・あいつが『武偵殺し』だ。()()()()、出やがった」

 

「・・・()()()()・・・? あんた、『武偵殺し』が出ることが、分かって───」

 

キンジのセリフに、赤紫色《カメリア》の目が、まんまるに見開かれる。

 

「『武偵殺し』はバイクジャック、カージャックで事件を始めて───さっき分かったんだが、シージャックで───ある武偵を仕留めた。そしてそれは、たぶん直接対決だった」

 

「・・・どうして」

 

「そのシージャックだけ、お前が知らなかったからだよ。電波、傍受してなかったんだろ」

 

「う、うん」

 

「『武偵殺し』は電波を出さなかった。つまり、船を遠隔操作する必要が無かった。ヤツ自身が、そこにいたからだ」

 

ここで、一度キンジはうつむき、何か考えている素振りを見せるが、すぐに推理の続きを説明する。

 

「ところが、バイク・自動車・船と大きくなっていった乗り物が、ここで一度小さくなる。俺のチャリジャックだ。次がバスジャック」

 

「・・・!」

 

「分かるかアリア。コイツは初めっからメッセージだったんだよ。お前は最初から、ヤツの手のひらの上で踊ってたんだ。ヤツはかなえさんに罪を着せ、お前に宣戦布告した。そして(にい)───いや、シージャックで殺られた武偵を仕留めたのと同じ3件目で、今、お前と直接対決しようとしてる。このハイジャックでな」

 

推理の苦手なアリアが、ぎり、と悔しさに歯を食いしばる。

 

そこに───

 

ポポーンポポポン。ポポーン。ポポーンポポーンポーン・・・

 

ベルト着用サインが、注意音と共にワケの分からない点滅をし始めた。

 

「・・・和文モールス・・・」

 

オイデ オイデ イ・ウー ハ テンゴク ダヨ

オイデ オイデ ワタシ ハ イッカイ ノ バー ニ イルヨ

 

「・・・誘ってるな」

 

「上等よ。風穴あけてやるわ」

 

アリアは眉をつり上げて、スカートの中から左右の拳銃をぞろりと出した。

 

「透、行くわよっ」

 

「俺も一緒に行く。()がどんな出方をしてくるか分からないからな」

 

キンジはアリアではなく、透に向けて言い放っていた。明らかに敵意剥き出している。

 

「来なくていい」

 

キンジの申し出をアリアが拒絶するが、

 

「いや、戦力は多いに越したことはない」

 

透はキンジに一緒に来てもらうよう、要請した。

 

「どういうつもりだ」

 

キンジがアリアに聞こえないように耳打ちをしてくる。

 

「さっきも言ったが、俺はお前とアリアにチームを組んでもらいたいだけだ」

 

透もキンジと同様、耳打ちで返事をする。

 

「それよりも、俺の事をアリアに言わなくて良かったのか?」

 

「・・・少なくとも、アリアはお前の事を信用している。今から『武偵殺し』と戦うって時に事実を話して動揺させる訳にもいかないだろ」

 

()()()()でも、そのくらいの頭は働くんだな」

 

「言っておくが、妙な動きを見せたらすぐに拘束するぞ」

 

「そうなったらもう手遅れだ。リスクを避けたいなら、今から俺を拘束しておくべきだ」

 

「あんたたち、何ゴチャゴチャ話してるのよ! 早く行くわよ」

 

痺れを切らしたアリアは2人を置いて、部屋から出て行ってしまう。

 

「どうする」

 

「・・・分かったよ。 今だけはさっきのお前の言葉を信用してやる」

 

舌打ちをして、キンジはアリアの後を追って部屋を出た。

 

「・・・ありがとう・・・」

 

そして、透も2人を追いかけ、部屋を出て行った。

 

 





とうとう透の正体がキンジにバレてしまいましたね。
今のところ、アリアには気付かれてないようですが、今後どうなりますことやら…(作者自身どうしようかと考えてます・・・)

次回更新も未定ですが、今回と同じくらいの頻度で挙げられるように頑張ります。
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