緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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前話でキンジにバレてしまって、アリアはどうしようかと考えた結果、今回のお話となりました。

当初の考えとは大分かけ離れていっているので、今後もご都合主義のお見苦しい展開になると思われますm(_ _)m

それでも良いよという方は、下にスクロールしていってくださいませ。




第23弾~『武偵殺し』~

ANA600便───『空飛ぶリゾート』と呼ばれる超豪華旅客機。

 

その1階は、豪奢(ごうしゃ)に飾り立てられたバーになっている。

 

その、バーのシャンデリアの下。

 

カウンターに、足を組んでいる女がいた。先ほどのアテンダントである。

 

拳銃を向けながら、アリアとキンジは眉を寄せる。

 

彼女は、武偵高の制服を着ていた。

 

それもヒラヒラな、フリルだらけの改造制服。

 

「今回も、キレイに引っかかってくれやがりましたねえ」

 

言いながら・・・ベリベリッ。

 

アテンダントはその顔面に被せていた、薄いマスクみたいな特殊メイクを自ら剥いだ。

 

中から出てきたのは───

 

「───理子!?」

 

Bon soir(こんばんは)

 

くいっ、と手にした青いカクテルを飲み、ぱちり、と3人にウィンクをしてきたのは、峰理子であった。

 

「アタマとカラダで人と戦う才能ってさ、けっこー遺伝するんだよね。武偵高にも、お前たちみたいな遺伝系の天才が結構いる。でも・・・お前の一族は特別だよ、()()()()

 

「あんた・・・一体・・・何者・・・!」

 

眉を寄せたアリアに、にやり、と理子が笑う。

 

その顔を、窓から入った稲光が照らした。

 

「理子・峰・リュパン4世───それが理子の本当の名前」

 

その告げられた名前が事実かをキンジが確認するようにこちらを見てきたので、透は小さく頷いた。

 

「でも・・・家の人間はみんな理子を『理子』とは呼んでくれなかった。お母さまがつけてくれた、このかっわいい名前を。呼び方が、おかしいんだよ」

 

「おかしい・・・?」

 

アリアが、呟く。

 

「4世。4世。4世。4世さまぁー。どいつもこいつも、使用人どもまで・・・理子をそう呼んでたんだよ。ひっどいよねぇ」

 

「そ、それがどうしたってのよ・・・4()()()()()()()()()()()

 

ハッキリとそう言ったアリアに、理子はいきなり目玉をひんむいた。

 

「悪いに決まってんだろ!! ()()()()()()()!? あたしはただの、DNAかよ!? ()()()()()()()()()()()()()! どいつもこいつもよォ!」

 

突然、キレた理子はアリアたちではない、誰かに対して叫んでいた。

 

ここではない、どこかに対して怒っていた。

 

「曾(ひい)お爺さまを超えなければ、あたしは一生あたしじゃない、『リュパンの曾孫(ひまご)』として扱われる。だから、イ・ウーに入って、()()()を得た───()()()で、あたしはもぎ取るんだ───あたしをッ」

 

「待て、待ってくれ。お前は何を言っているんだ・・・!? オルメスって何だ、イ・ウーって何だ、『武偵殺し』は・・・本当に、お前の仕業だったのかよ!?」

 

「・・・『武偵殺し』? ああ、あんなのプロローグを兼ねたお遊びよ。本命はオルメス4()()───アリア。お前だ」

 

じろ、と理子がアリアを見る。

 

その眼はもはや、いつもの理子の眼ではなかった。

 

獲物を狙う、獣の眼だ。

 

「100年前、曾お爺さま同士の対決は引き分けだった。つまり、オルメス4世を倒せば、あたしは曾お爺さまを超えたことを証明できる」

 

獣の眼が、透とキンジ、交互に向けられる。

 

「オルメスの一族にはパートナーが必要なんだ。曾お爺さまと戦った初代オルメスには、優秀なパートナーがいた───それで、アリアはどっちをパートナーに選んだのかな?」

 

理子は最後の方だけ、いつもの軽い調子に戻って、くふ、と笑った。

 

「そんなの、透に決まってるじゃない」

 

「あーあ、トオルンを選んじゃったかぁ───トオルンはこっち側の人間なのに」

 

「・・・え?」

 

一瞬、アリアの動きが止まる。

 

「な、なに、バカな事言ってるのよ! 透があんたの仲間な訳ないじゃない!」

 

「ふーん。すっかり信用しちゃってるんだねぇ。キーくん、アリアに教えてあげなよ。トオルンがどんな人間なのか」

 

「・・・・・・」

 

キンジは口をつぐむが、それが逆にアリアを不安にさせたようで、

 

「何? あんた、何か知ってるの? 透、違うわよね?」

 

透に直接訊ねる。

 

「アリア、理子は俺達を挑発してるだけだ。俺を信用してくれ」

 

そう言ってアリアを諭すものの、透は内心焦っていた。

 

理子は何のつもりで、こんなことを言い出したのだろう。

 

「じゃあ、アリアに問題その1。キーくんのチャリジャックの時、トオルンはセグウェイに囲まれてしまいました。さて、トオルンはどうして無傷で生還できたのでしょうか」

 

「協力者だから、と答えさせたいんだろうが、あれは全部俺が実力で仕留めた。変なハッタリを言うのはやめろ」

 

「アリアに問題出してるんだから、トオルンは答えちゃダメだよぉ。第2問。バスジャックの時、トオルンはアリアの応援を断ったみたいだけど、それは何故でしょうか」

 

「それは、透が優先順位を考えて、冷静に判断した結果よ」

 

「ほんとにぃ?」

 

にやっ、とした理子の笑顔に、透は背中に何とも説明しがたい悪寒を感じた。

 

「冷静に考えてみてよ。トオルンも含めてバス内の人間全員が人質なのに、犯人に抵抗するなんてちょっと無謀だと思わない? でも、トオルンの自作自演だったら・・・ねぇ?」

 

「騙されるなアリア。理子は揺さぶりをかけて、俺とお前の連携を崩そうとしてるだけだ」

 

「う、うん・・・」

 

頷くアリアだが、表情を見れば分かる。

 

絶対的な『信用』が揺らぎ始めてる。

 

「そんじゃ、ラストいってみよぉ───これ、だーれだ」

 

理子はアリアの足元に一枚の写真を投げ捨てる。

 

「っ!」

 

その写真を見た透は、アリアが拾うより先に素早く拾い、ぐしゃりと握りつぶした。

 

「ね、ねぇ・・・今の写真何だったの? ・・・そんなに見られちゃマズイものだったの?」

 

見られちゃマズイなんてものじゃない。

 

なぜならその写真に写ってたのは───

 

 

「───平透と夾竹桃の密会写真でした」

 

 

理子はもう一枚写真を取り出し、アリアに見せつけるように示した。

 

その写真には、グレーの髪に武偵高の制服を着た恐らく透であろう人物の後ろ姿と傘を差し、煙管(キセル)を吸う夾竹桃の姿が写っていた。

 

「───!」

 

その写真を見たアリアは目を大きく見開き、ゆっくりと首を透の方に動かす。

 

「・・・あんたも、イ・ウーの人間だったの・・・?」

 

「・・・違う」

 

「じゃあ、あの写真は何!? なんで、夾竹桃ってやつと一緒にいるの!?」

 

「・・・あれは合成だ」

 

「ならなんで写真を隠したの! 心当たりがあるんでしょ!」

 

アリアの叱責に、透はこれ以上何も言えなかった。

 

 

これ以上・・・嘘を重ねる気も起きなかった。

 

 

「・・・何か・・・言いなさいよ・・・」

 

キッ、と透を睨み上げたアリアは───

 

「あんたは、理子の───『武偵殺し』のスパイだったのね! あんたもまとめて風穴あけてやる!!」

 

カチャッ、と二丁拳銃を抜き、透へ向けた瞬間。

 

飛行機が、ぐらり、と揺れる。

 

透もアリアもキンジも、3人が体勢を崩したタイミングで理子が駆け出す。

 

アリア目掛けて一直線に。

 

スカートの中からワルサーP99を2()()抜き、アリアに襲いかかる。

 

「くッ・・・このっ!」

 

「あはっ、あはははっ!」

 

アリアと理子は至近距離から、拳銃でお互いを撃とうとせめぎ合う。

 

武偵法9条。

 

武偵は如何(いか)なる状況に()いても、その武偵活動中に人を殺害してはならない。

 

その法を遵守するため、アリアは理子の頭部を狙えない。

 

そして理子も合わせているつもりか、アリアの頭部を狙わない。

 

まるで格闘技のように、アリアと理子の手が交差する。

 

武偵同士の近接拳銃戦は、射撃線を避け、(かわ)し、あるいは相手の腕を自らの腕で弾いての戦いだ。

 

バッ! ババッ!

 

放たれる銃弾は、お互いの小柄な体を捕らえず壁に、床に、撃ち込まれていく。

 

「───はっ!」

 

弾切れを起こした次の瞬間、アリアはその両脇で理子の両腕を抱えた。

 

2人は抱き合うような姿勢になり、理子の銃撃が()む。

 

「とお・・・キンジ!」

 

アリアの呼び掛けに、キンジはバタフライ・ナイフを、手のひらの中で回転させて開く。

 

非常灯の下で、刀身が赤く光る。

 

「そこまでだ理子!」

 

アリアの背後に突き出た拳銃に注意しつつ、キンジが慎重に理子に近付こうとした時───

 

双剣双銃(カドラ)───奇遇よね、アリア」

 

理子が言った。

 

「理子とアリアは色んなところが似てる。家系、キュートな姿、それと・・・2つ名」

 

「?」

 

「あたしも同じ名前を持ってるのよ。『双剣双銃の理子』。でもねアリア」

 

キンジの足が止まる。

 

その、ありえない不気味な光景を見たからだろう。

 

「アリアの双剣双銃は本物じゃない。お前はまだ知らない。()()()のことを───!」

 

笑う理子の、ツーサイドアップのテールが───まるで神話にあるメデューサの髪のように動く。

 

戦闘を眺めていた透はこのタイミングで動き出す。

 

テールの片方が背後に隠していたと思われるナイフを握り、アリアに襲いかかった。

 

「!」

 

驚きながらもなんとか避けたアリアだが、反対のテールに握られたもう一本のナイフがさらに襲いかかろうとする。

 

しかし、そのナイフがアリアに届く事はなかった。

 

「透・・・まだアリアの味方をするの?」

 

透が先回りして、テールごとそのナイフを掴んで抑えていた。

 

「透・・・あんた・・・」

 

「悪い、アリア」

 

透が乱入したことにより、戦闘が一瞬、膠着(こうちゃく)状態になる。

 

テールを離した透は、驚いて動きを止めていたアリアに近付き、その額に掌底を当て、脳震盪を起こさせた。

 

「アリア!」

 

意識を失い、崩れ落ちるアリアをキンジが慌てて支える。

 

「キンジ、アリアを連れて一度、退避しろ」

 

透は2人を庇うように、理子との間に入り、背を向けたまま言った。

 

「お前は、どうするつもりなんだ」

 

「俺は俺の役割を果たす」

 

「逃がすと思うの?」

 

理子のワルサーの銃口が、わずかな射線からアリアとキンジに向けられる。

 

次の瞬間、透は理子にタックルして、2人から離す。

 

「早く行け!」

 

「ちぃっ!」

 

理子は再び拳銃を向けたがすぐに降ろした。

 

透が2人の壁になっており、狙えないと判断したのだろう。

 

アリアを抱えたキンジがバーを出て行ったのを確認した透は理子に向き直り、対峙する。

 

「できれば、透とは戦いたくなかったの。そこを通してくれないかな」

 

恐らくその言葉は本心。理子にとって透は戦いにくい存在なのだろう。

 

だから、先ほど透とアリアとの信頼関係を崩すような事を言ったのかもしれない。

 

「悪いがそれはできない」

 

透も出来ることなら理子と戦いたくはない。

 

だが、このまま素直に引き下がる訳にもいかない。

 

「・・・そっか。『白』をえらんだんだね」

 

理子は哀しげに、しかし穏やかに呟いた。

 

「いや・・・」

 

透は鞘を付けたままの『鎌鼬』を理子に向ける。

 

「俺は『灰色』を貫く───貫いて、アリアを守って、お前を救い出す!」




結局、散々悩ませた結果、『灰色』で良いのかな、と書き終えてから思ってしまってます。

次回は理子との戦闘になります。戦闘シーンって苦手なのですが、なんとか上手くまとめたいと思います。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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