緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

25 / 52
ついに透と理子の直接対決となります。

もうちょっと上手く書けたらなぁ、と思ったのですが、今の技量ではこれが限界そうです。


第24弾です。


第24弾~蜂蜜色と灰色~

「アリアを守って、あたしを、ねぇ・・・まだ、そんな甘えた事を言ってるの?」

 

透の決意ある宣言に、理子は呆れたように呟き、2丁のワルサーP99を構える。

 

「夾竹桃にも言われなかった? どっちかを見捨てるしかないって」

 

「・・・ああ。言われたし、悩んだよ。どちらかしか助けられないなら、理子を助けたいとも思った」

 

2年前、父親が死に、妹が行方不明になった透は勧誘された事もあり、イ・ウーに身を寄せた。

 

大切な家族を一度に2人失った透の心は(すさ)んでいた。

 

そんな時、透の心を救ってくれたのは()()()()()

 

辛いのは理子も同じだったはずなのに。

 

「だが、理子に加勢する事は、アリアを殺す事になる。やっぱり、それはできない」

 

「その中途半端な考えが一番ダメなんだよ!」

 

パァン!

 

威嚇射撃のつもりだろうか、理子は叫んだのと同時に一発、透の足元に発砲してきた。

 

「・・・理子、もう()めよう。今ならまだ間に合う。アリア達と協力すれば『アイツ』も倒せる」

 

「・・・っ! 今さら・・・後戻りなんかできない!」

 

その透のセリフが引き金になったのか、理子は距離を一気に詰めてくる。

 

「ちっ」

 

透もバックステップで少しだけ距離を稼ぎ、『鎌鼬』を抜刀する。

 

しかし、理子はさらに接近してきて、至近距離から撃とうと銃口を向けてくる。

 

(さすがに、()()()()・・・!)

 

理子との距離が近すぎて、刀による攻撃が難しい。

 

出来ないことはないが、力の乗らない攻撃になるだろう。

 

透は鞘を投げ捨て、『鎌鼬』を床に突き刺す。

 

そして、理子の両手首を掴み、外側へ逸らした。引き金を引く指は止まらなかったのだろう。左右の拳銃から一発ずつ床に向けて発砲される。

 

すると、今度は髪のテールが握るナイフが襲ってきたので、透は掴む手を両手首から両腕にし、理子を引き寄せると、右脚を理子の腹の辺りに合わせ、ぶっ格好な巴投げのような投げ方で、後ろに投げ飛ばした。

 

透はすぐに立ち上がり、『鎌鼬』を握るとその場で理子目掛けて一振りする。

 

「くっ!」

 

それを見た理子は、すぐに横っ飛びで避ける。理子がいた場所の後方の壁に斬撃の跡がついた。

 

再び、理子が距離を詰めようとしてきているので、透は理子の足元に向けて『鎌鼬』を振るう。

 

「距離は詰めさせない」

 

透は理子との距離を取り、『鎌鼬』を振るいながら、ワルサーの残弾数を計算する。

 

ワルサーには通常16発までしか入らない。先の威嚇射撃で右のワルサーから1発。床に撃たせた無駄弾で各1発ずつ減らしている。

 

その前にも、アリアとの戦闘で弾は消費している。正確な数までは把握しきれていないが、アリアのガバメントは8発まで入り、それを使いきっていたので、理子も同じくらいは使っていたと思われる。

 

(となると、右手は6発、左手は7発前後残っているのか)

 

消化させるのは思ったより時間がかかりそうである。

 

それなら、と透は『鎌鼬』を振るうのを止め、理子に向けて投擲(とうてき)した。

 

「なっ!」

 

自ら武器を手放した透の行動に、理子は驚いた様子を見せるが、軽々と避け銃口を透に合わせようとする。

 

しかし、透は既に()()()()()()にいた。

 

(───『鳶穿(とびうがち)』!)

 

『鎌鼬』に注意を逸らさせて、理子に一気に近付いた透は、左手のワルサーを掠め取り、そのまま後ろへ駆け抜けた。

 

「まずは1つ」

 

壁に刺さった『鎌鼬』を抜き、理子から奪ったワルサーを本人に向ける。

 

「まだ続けるか」

 

「当たり前だよ」

 

答える理子は拳銃をスカートの中にしまい、左(てのひら)を前に突きだし、足は前後に開いて体勢を低くした。

 

中国武術(クンフー)の構え。拳銃を奪われ、無駄弾をこれ以上消費できない為、戦法を切り替えたのだろう。

 

「やることは同じだ」

 

『鎌鼬』に喰われる『精気』を温存する為、今度はワルサーを理子に発砲し、近付けさせないよう試みるが、

 

「ちっ」

 

理子は怯むことなく、真っ直ぐ突っ込んできた。

 

当たる事を恐れないのか。

 

いや、()()()()()事に気付いているのか。

 

後ろは壁。左や右に移動したところで、すぐに距離を詰められる。

 

それならここで迎え撃つしかない。

 

ワルサーを一旦、ズボンのポケットに入れ、『鎌鼬』を床に刺す。

 

初撃に備える為、理子の足の運びと手の動き、そして髪の動きを注視する。

 

左手が胸の辺り、右手がスカートに伸びている。

 

(右手を抑える!)

 

拳銃を取り出す。もしくは、掌底などの打撃攻撃。どちらが来ても備えられるようにしていた。

 

 

その思い込みが───

 

 

「え・・・?」

 

 

───透の()()だった。

 

 

(ハンカチ!?)

 

理子がスカートから取り出したのは、何故かハンカチ。では、本命は何か。

 

意識を理子の左手に戻した時には、もう遅かった。

 

シュッ、シュッ、と香水瓶に入った何かを吹き付けられた透は、咳き込み、その場に(ひざまず)く。

 

「ごめんね、透」

 

ハンカチで口を抑えた理子が話す。

 

「うっ・・・ぁ・・・!」

 

立ち上がろうとした透を激しい頭痛と目眩が襲う。

 

「これ、(きょー)ちゃんに、調合してもらった強力な麻酔薬なんだ。ちょっとでも吸い込むと、6時間は目を覚まさないらしいよ」

 

「・・・り・・・こ・・・!」

 

目が霞んできて、透には理子の姿が二重三重に見えていた。

 

「やっぱり透は甘いよ。さっきから理子に()()()()ようにするか、理子が()()()()()ようにしか攻撃してなかった」

 

理子は透に近付き、奪われたワルサーを回収する。

 

「・・・ま・・・っ・・・」

 

離れていく理子を、透は追いかけようとするが、身体に力が入らず、うつ伏せに倒れてしまう。

 

這いつくばってでも進もうとするが、意志に反して身体は動きもしなかった。

 

「それでも・・・理子を止めようとしてくれてありがとう。だけど、もうここまで来たら引き返せないよ。透には迷惑かけないから、ゆっくり休んでて」

 

振り返って笑ういつもの明るい理子の姿を最後に透の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

アリアをお姫様抱っこで抱えて、先ほどのスィートルームに逃げ込んだキンジはアリアをベッドに横たわらせた。

 

「う・・・っ」

 

その直後に、アリアが目を覚ます。

 

「アリア、大丈夫か!」

 

「・・・こんなの、大した事ないわ」

 

まだ半覚醒状態で状況を思い出せないのか、アリアは打たれた額を抑え、ゆっくりと上半身を起こす。

 

「・・・とおる・・・透───!」

 

少しして、意識を失う前の事を思い出したのか、アリアはベッドの上から左右の拳銃をむしり取った。

 

そして、鬼の形相で部屋から出ていこうとする。

 

「待てアリア! あいつは多分今、理子と戦ってる!」

 

キンジはドアの前に立ちふさがり、アリアの左右の拳銃を手のひらごと鷲掴みにした。

 

「仲間割れ? だったら都合が良いじゃない! まとめて片付けてやるわ!」

 

「落ち着けアリア! 透は俺たちを逃がしてくれたんだ!」

 

「なんで透がそんなことするのよ! アイツは理子の仲間なんでしょ!?」

 

アリアはキンジに両手を握られたまま、牙のような犬歯をむいてわめく。

 

「そ、それは俺にも分からん。けど、あいつはアリアを守りたいって言ってた。だから、理子の攻撃からお前を助けて、わざと気絶させたんじゃないのか」

 

「それこそ分からないわよ! アイツは何の為にあたしを守りたいの!」

 

キンジにも透の真意は分からない。答えられずに黙っていると、

 

「・・・透はあたしのパーティーに入りたいって言ってくれたの。大切な幼馴染みよりもあたしについていくって言ってくれたの。それも全部ウソだったのかな?」

 

キンジを睨んでいた紅い瞳は潤んでいた。

 

「分からない・・・透が分からないよ・・・」

 

きっとアリアも気付いているはずだ。透は決して悪人ではないことに。

 

短い間とは言え、パートナーのように密に接してきたから分かるのだろう。

 

騙されていたという事実を知ったショックから、それを受け入れられなかっただけ。

 

「・・・俺は透の事を全然知らない。俺たちに正体を隠して騙していたのも事実だ。けど、お前を守るために、理子と戦ってるあいつはウソなんかじゃないと思う」

 

「・・・あたし、もう一度透と話したい。キンジ、そこをどきなさい!」

 

「ダメだ! どのみち向こうには理子がいる! マトモに戦ってもアイツには勝てない!」

 

「なおさら透が危険よ! 助けにいかなきゃ!」

 

透の事に気を取られてしまい、アリアは自分と理子の、戦力の優劣が判断できていない。

 

今、アリアを行かせて返り討ちにでもあったら、それこそ透が自分たちを逃がしてくれた意味がなくなってしまう。

 

アリアを落ち着かせる。しかし、銃を押さえる両手は絶対に離せない。

 

───それなら方法は一つしかない。

 

(ああ、アリア───許せ!)

 

「離しなさいキンジ! はな───」

 

(わめ)くアリアの口を、キンジは。

 

(ふさ)いだ。

 

 

───()()

 

「────!!!」

 

赤紫色(カメリア)の目を、飛び出させんばかりにして驚くアリア。

 

恋愛沙汰の苦手なアリアは、キンジの決死のキスに、思った通り、固まってくれた。

 

桜の花びらみたいなアリアの唇は、小さくて、柔らかくて、キンジのよりもいくらか熱いその唇が種火になって、こちらの全身へと火炎を広げていくのが分かる。

 

───ドクン。

 

体の中心がむくむくと強張り、ズキズキと(うず)くような感覚。

 

()けたように熱いそこから、堪えきれず、何かがほとばしりそうな気さえする。

 

(───凄い。こんな猛烈なヒステリアモード・・・生まれて初めて、だ・・・!)

 

───ぷは!

 

2人は口を離し、同時に息を継いだ。

 

「アリア・・・許してくれ。こうするしか、なかった」

 

「・・・か・・・か、か、かざ、あにゃ・・・」

 

ふら、ふらら、へなへな。

 

アリアが、その場にへたり込んだ。

 

「バ、バ、バカキンジ・・・! あんた、こ、こんな時に・・・なんてこと、すんのよ・・・! あたし、あたし、あたし、ふあ、ふぁ・・・ファーストキス、だったのに・・・!」

 

「安心していい。俺もだよ」

 

「バカ・・・! せ、責任・・・!」

 

涙目でキンジを見上げ、プルプルと小動物のように震えるアリアに───

 

ヒステリアモードのキンジは、屈んで、目線の高さを合わせた。

 

「ああ、どんな責任でも取ってあげるさ。でも───仕事が、先だ」

 

「・・・キンジ・・・! あんた、また・・・!」

 

キンジの声が先ほどまでより遥かに落ち着き、低くなっていることに気付いたようだ。

 

アリアは、チャリジャックの時の事を思い出したような表情で、目を見開いた。

 

キンジはアリアの耳元にスッと口元を寄せる。

 

そして、(ささや)きで伝えた。

 

「武偵憲章1条。仲間を信じ、仲間を助けよ。俺は、アリアと透を信じる。だからアリアも俺と透を信じてくれ。3人で───『武偵殺し』を、逮捕しよう」




主人公、負けちゃいました。
やっぱりどっちも取るというのは欲張りなのかもしれませんね。


次回辺りでハイジャックは解決でしょうか。
早めの更新目指して頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。