緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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タイトル通り、このタイミングでまさかの魔剣の正体を明かしてしまいます。透ならではの情報ですね。



第35弾です。




第35弾~魔剣の正体~

アリアとキンジがもう間もなく帰ってくるということで、透は白雪が作った料理の数々を食卓に並べるのを手伝っていた。

 

カニチャーハンにエビチリ、酢豚に餃子にミニラーメンに、アワビのオイスターソース()え、と中華料理のオンパレードであった。

 

食卓に皿が揃ったのとほぼ同時に2人が帰ってきた。

 

「お、お帰りなさい。キンちゃん、食べて食べて。全部キンちゃんのために作ったんだよ」

 

白雪はお盆に乗せたジャスミン茶を運んできて、制服エプロンのまま、テーブルについたキンジの横に立った。

 

白雪がその近くの椅子に座るとして、透は既に着席しており、余った席が必然アリアという事になるのだが・・・

 

「で? なんであたしの席には食器がないのかしら?」

 

3人には丁寧に用意されている食器を見て、アリアは腕組みをしながら、ヒクヒク、とこめかみを震わせていた。

 

「アリアはこれ」

 

白雪は絶対零度の声で、アリアの前に(どんぶり)を置いた。

 

丼には、盛った白飯に割りばしが突き立っている。しかも割っていない。

 

「なんでよ!」

 

「文句があるんなら、ボディーガードは解任します」

 

つーん、とソッポを向く白雪に、アリアは、ギリギリィ、と犬歯を食いしばってから、ご飯をかき込むのであった。

 

 

 

 

 

夕食後、お互いに観たいテレビがあり譲らないアリアとキンジによるチャンネル争いを傍目(はため)に、透はダイニングテーブルでコンバット・マグナムの簡易整備をしていた。

 

「キンちゃん、あのね、これ・・・巫女占札(みこせんふだ)っていうんだけど」

 

しょうもないリモコンの奪い合いを続けている2人の元へ、白雪がカードゲームのようなものを持ってきた。

 

「───みこせん・・・? 占いか?」

 

「うん、キンちゃんを占ってあげるよ。将来のこと、気にしてたみたいだから」

 

「ふーん・・・じゃあ、やってもらうか」

 

アリアも占いには興味があるのか、なにそれ、と言いながらHDDレコーダーに動物番組を録画セットしながらテーブルについた。

 

「キンちゃんは、何占いがいい? 恋占いとか、金運占いとか、恋愛運を見るとか、健康運を占うとか、恋愛占いとかあるんだけど」

 

「じゃあ・・・数年後の将来、俺の進路がどうなるのか占ってくれ」

 

やたらと恋愛系を推した白雪だったが、キンジはそこに気付くことなく注文した。

 

それに、白雪は「チッ」と一瞬舌打ちのような音をさせてから、天使のような笑顔になって「はい」と答え、カードを星形に伏せて並べ、何枚かを表に返し始めた。

 

「どうなのよ」

 

横からアリアが尋ねると、白雪は少し険しい表情をした。

 

「どうした」

 

「え、あ・・・ううん。総運、幸運です。よかったねキンちゃん」

 

「おい。それだけかよ。何か具体的なこと分かんないのか」

 

「え、えっと、黒髪の女の子と結婚します。なんちゃって」

 

ニッコリ笑って答えた白雪の表情は、作り笑いのように思える。

 

大方、良くない結果でも出たのだろう。

 

「はいじゃあ次はあたしの番!」

 

ウズウズしていたらしいアリアが机に乗り出してきたが、

 

「平川君も良かったらどうかな?」

 

白雪はそれを無視して、マグナムの整備を終え、ダイニングテーブルで頬杖をつき様子を眺めていた透に声をかける。

 

「そうだな・・・」

 

せっかくのお誘いなので、何か占ってもらおうと少し考える。

 

美沙の居場所、という考えが浮かぶが、今やっている占いは対象者の未来や将来を予見したもの。他人の行動の予知とはまた別物である。

 

それなら、言い方を少し変えて───

 

「───俺は・・・大切な人といつ会えるかどうか、だな・・・」

 

少し(うつむ)きがちに透は白雪にお願いする。

 

白雪は先ほどと同じ手順でカードを並べていく。1枚、2枚・・・3枚目を表に返した辺りから、その顔が少し悲しげになった。

 

占い終わったのか、白雪は透に目線を向けるが、一言も発さない。気を使ってくれているのだろう。

 

「・・・正直に話してくれないか」

 

「はい・・・平川君の大切な人とは、近いうちに会うことができます。ただし、()()()()()()

 

良くない形、と言われて『死体』という考えが頭に浮かぶ。

 

先日、すれ違った少女を思い出す。彼女はやはり美沙ではなかったのだろうか。

 

「もう終わったわよね! はい今度こそあたしの番!」

 

もう待ちきれない、といったアリアが白雪に占うよう催促するが、

 

「総運、ろくでもないの一言につきます」

 

白雪はカードを1枚、ぺら、と開き適当な感じに言って、占い札の片付けにかかった。

 

「ちょっと! ちゃんと占いなさいよ! あんた巫女でしょ!」

 

「私の占いに文句を言うなんて・・・! 許さないよ、そういうの」

 

「───()ろうっての?」

 

2人の視線がバチバチに火花を散らし始めた。

 

「アリアが戦いたいんなら、私は受けて立つよ。星伽に禁じられてるから使わなかったけど、この間はまだ、()()()を隠してたし」

 

ぱっつん前髪の下の眉毛をツリ上げる白雪に、アリアは立ち上がる。

 

「あたしだって切り札・・・えっと、2枚隠してたもんね」

 

「私は3枚隠してました」

 

「じゃあ4枚!」

 

「5枚」

 

「いっぱい !」

 

「あーもう静かにしろ! なんでお前ら占い一つ平和にできないんだよっ!」

 

手がつけられなくなる前に、キンジは2人の間に入り、左右の手で引き離した。

 

「ふーんだ」

 

アリアは、あっかんべー、と舌を出すと、ふてくされて自室に閉じこもってしまった。

 

ボディーガードを始めてまだ初日だと言うのに、アリアと白雪の仲が険悪すぎてこれから先が思いやられる。

 

溜め息を一つついた透は、ダイニングテーブルから立ち上がり、アリアのご機嫌取りの為に、ももまんを買いに行くことにした。

 

きっと白雪も溜まる物が溜まっているだろうし、キンジと2人きりにしてあげた方が色々吐き出せるだろう。

 

 

 

 

 

「はむぅ。全くなんなのよあの女は。はむぅ。はむぅ」

 

コンビニから帰ってきた透は、アリアの部屋に入れてもらったのだが、ももまんを手渡した途端にこれだ。

 

白雪に対するストレスと夕食もロクに食べてないせいか、驚異的なスピードで、ももまんがなくなっていく。

 

「おかわり!」

 

「おかわりはない」

 

6つ───売ってあるだけ買ってきたのだが、3分も経たないうちになくなるとは思ってもみなかった。

 

まだまだ足りないといった表情をしているものの、好物を食べた事で多少は落ち着いてくれただろう。

 

「・・・まあ、いいわ。それより、あんたあたしに何か用でもあるの?」

 

ももまんを渡した後も、自室に居座り続ける透を見て、そう捉えたのだろう。

 

魔剣(デュランダル)についていくつか話しておきたいことがあってな」

 

アリアの方から話を振ってくれたので、透は昼間、情報共有しようと考えていた話を持ち出す。

 

「何か分かったことでもあるの?」

 

アリアは、魔剣(デュランダル)という言葉に反応して、前のめりの姿勢になった。

 

それもそのはずだ。魔剣(デュランダル)はアリアの母親───神崎かなえに冤罪を着せてる敵のうちの1人なのだから。

 

「ああ、奴は既に俺達の周りをうろついている可能性が高い」

 

「それってどういうこと?」

 

「この前の昼食の時の不知火の話を覚えているか?」

 

透は、不知火が温室で白雪を見かけた、という意味合いで言ったのだが、アリアは違うことを思い出したらしく、ぶわあああ、と顔を赤く染めていた。

 

「・・・不知火が温室で会長を見たと言っていただろ? その時間帯、キンジも校舎内で会長を見たと言っていた」

 

一々、突っ込んでいては話が進まないので、透は簡潔に順を追って説明をしていく。

 

「同じ時間、違う場所で会長の目撃証言が2つあった。そこから考えられるのは、どちからかが魔剣(デュランダル)の変装だったという可能性だ」

 

「っ! じゃあ・・・!」

 

今、リビングにいるであろう白雪も魔剣(デュランダル)の可能性があると考えたのだろう。アリアは部屋を飛び出そうという勢いで立ち上がるが、透がそれを手のひらを出して制止する。

 

「そこにいる会長は本物だ」

 

昼間、2人きりになり会話をしていた透には分かる。

 

1年前の出来事や『妖気』といった専門的な話は、さすがに偽物には出来ないだろう。

 

そもそも変装した人間が敵のど真ん中に入り込み、会話を交わすのはリスクが高すぎる。魔剣(デュランダル)はそんなハイリスクになるような事はまずしない。

 

どんなリスクでも必要最低限に抑えて行動する策士であるという事を透は知っている。

 

「それからアリア。前に更衣室のロッカーにピアノ線が仕掛けてあったって話をしていたな」

 

「うん。もしかしてそれも・・・」

 

「恐らくな。お前達が不仲なのを良いことに、会長の嫌がらせに乗じて、殺人罠(キルトラップ)を紛れさせてたんだ」

 

「白雪に化けてあたしを殺そうとしてたなんて、魔剣(デュランダル)・・・狡猾なヤツね・・・!」

 

アリアは、こんなにも接近していた魔剣(デュランダル)に気付かなかった怒りからか、ギリッと歯ぎしりを鳴らす。

 

「・・・この機会だから、魔剣(デュランダル)の正体についても教えておく」

 

「いったいどんなヤツなの?」

 

「剣の名手で超能力者(ステルス)というのは噂とかで聞いたことはあるだろ? その噂は(おおむ)ね合っている」

 

キンジに白羽取りの練習をさせている事や昼に対超能力者用の手錠を買いに行っていることから、アリアには、ある程度魔剣(デュランダル)について知識がある事を確認した上で、話を進めていく。

 

「ええ。でも、どんな能力を使ってくるかまでは知らないわ」

 

「『氷』の超能力者(ステルス)だ。氷の能力と剣技、そして、確実に敵の戦力を削いでいくような戦術。これらが、アイツの恐ろしい所だ」

 

「それ、キンジや白雪は知ってるの?」

 

「いや、キンジには(おり)を見て話そうと思っているが、会長には言わないつもりだ。会長は俺の事を知らないからな」

 

元とは言え、魔剣(デュランダル)と仲間であった事を白雪に知られてしまえば、その気はなくともキンジに害なす者と決めつけられて、反対に透が白雪に排除されかねない。

 

そうなれば最早ボディーガードどころではなくなる。

 

その考えを汲み取ったのかアリアも、

 

「懸命ね」

 

と頷き同意した。

 

「後、戦闘中に動揺されても困るから言っておくが、魔剣(デュランダル)・・・アイツは『ジャンヌ・ダルク30世』だ」

 

「ジャンヌ・ダルクですって!?」

 

透の唐突なアウティングに、驚きで少し甲高くなったアニメ声がその名を繰り返す。

 

「ジャンヌ・ダルクは火刑で・・・十代で死んだ! 子孫なんていないわ!」

 

「ジャンヌの話によるとそれは影武者だったらしい。少なくとも本人は嘘をついてはいなかった」

 

「・・・でも、そうよね。あんたのようなやつもいるもんね」

 

アリアは信じられないといった表情をする一方で、どうやら納得している部分もあるようだ。

 

初代ジャンヌ・ダルクも透の祖先である安徳天皇(あんとくてんのう)のように正体を歴史の闇に隠しながら子孫を残してきたのだろう。

 

「そういうことだ」

 

一通り話し終えた透は立ち上がり、アリアの部屋を出ていこうとする。

 

「どこ行くのよ」

 

「仮眠だ」

 

透はベッドルームへと移動し、空きベッドを借りて布団に潜り込んだ。

 

夜中、3人が寝ている間の警護は透が担当する事にしていた。

 

なので、透は今のうちに睡眠を取っておく。今からだと3、4時間程しか寝れないが全く眠らないよりかはマシだ。

 

後は授業中にでも寝ておけば問題ない。

 

(美沙・・・)

 

静かな部屋の中、1人になった透は先ほど、白雪に言われた事を思い出してしまう。

 

『平川君の大切な人とは、近いうちに会うことができます。ただし、良くない形で』

 

この時、白雪は嘘をつく事なく正直に話してくれていた。

 

白雪の占いの的中率は分からないが、少なくとも結果としてはそう出てしまったのだろう。

 

占いの結果全てを信じている訳ではないが、面と向かってあんな事を言われれば必然と不安は(つの)る。

 

2年間、捜し続けて手掛かりすらなかった。それを思えば例え死体になっていようと会えるだけマシというものだろうか。

 

そう考えようとしてみるも、やはり簡単には割りきれない。

 

透はそれらの不安を払拭するように、目を(つむ)りすぐに眠りにつくのだった。

 

 




今回の話は結構、無理やり感が半端ないかなぁ、と少し見返している一方でまあ、いいかと妥協している部分もあります。

今後もこんな感じで進めて行くと思うので、見てくださっている方はどうぞよろしくお願いします。
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