緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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年始と言っていいのかどうか分からないタイミングでの投稿。

最近の中では頑張った方かと思いつつも、中身が見合ってないかも。



第37弾です。




第37弾~対立~

透は昨夜、何があったのかキンジがアリアに気付かれないように、こっそり帰ってきた時に聞いていた。

 

キンジの話によると風呂から上がり、服を着ようとしていた時に突然、白雪が飛び込んできたとのこと。

 

なんでも白雪はキンジから電話で「バスルームにいる。すぐに来い」と言われたとの事だが、シャワーを浴びながら電話をかけられるわけない、と(さと)していたところ、上半身裸のキンジを見てテンパったそうだ。

 

すると、白雪は『おあいこ』と言うことで、自分も巫女装束を脱ぎ始めて、それをキンジが必死に止めていたとこにアリアが帰ってきてしまったと言う。

 

その場の状況しか見ていないアリアからは、キンジが白雪の服を脱がそうとしてるようにしか見えず、風穴祭りが始まったようだ。

 

そして現在、ソファーでクラクラとしながら体温計をくわえるキンジは38度の熱があった。

 

風呂上がりで裸のまま東京湾に落とされたのだ。風邪を引いてしまうのは無理もないだろう。

 

その姿を見て、アリアは「だらしないっ」とおかんむりだったが、それ以上はいつものように手を出したりしなかった。

 

「私も学校をお休みします!」

 

白雪はキンジの看病をしたいらしく、そんな事を言い出すのだが、

 

「俺は、大丈夫だから、学校に・・・行ってこい」

 

少ししんどそうな感じでキンジは白雪に登校するよう促していた。

 

自分の為に休ませるのが悪いというのと、付きっきりで看病されていては、ゆっくり休むこともままならないと思ったのだろう。

 

「で、でも・・・」

 

白雪は目に涙を浮かべ、キンジを置いて登校することを渋っていた。

 

「会長、あんたは警護対象だ。まともに動けないボディーガードと一緒にはいさせられない。俺たちと一緒に登校してもらう」

 

そこで、透が少し厳しめに説得すると、渋々と「はい・・・」と言って登校の準備を始める。

 

「・・・ゆっくり休んでおけ。何か欲しいものがあったら今日の帰りに買って来る。メールでもしておいてくれ」

 

「すまん。助かる・・・」

 

キンジはフラッと立ち上がり、頭を押さえながら、重い足取りでベッドルームへと入っていった。

 

その後ろ姿を、アリアはそっぽを向きながらもチラチラと目で追っているのだった。

 

 

 

 

 

その日、透は白雪に付きっきりで1日を過ごしたが、特に問題は発生しなかった。

 

キンジからのメールがなかった事だけが唯一気がかりではあったが、杞憂(きゆう)だったようで帰宅した頃には既に平熱に戻っていた。

 

翌日には普通に登校し、現在は体育館のような強襲科(アサルト)施設の中でギターを()いている。

 

今日はアドシアード閉会式の下稽古(したげいこ)ということで、女子のチアと男子バンドの練習をしているのだ。

 

I'd like to thank the person(感謝させてほしいよ)…」

 

ギター兼ボーカルの不知火の歌声に合わせながら、キンジと透はそれぞれの担当のギターとベースを弾き、武藤はノリノリでドラムを叩いていた。

 

一方で、女子たちは白雪の監督のもと、ポンポンを持ちチアのダンスをしている。

 

軽快な躍りに、ひらひら揺れる短いスカート。武藤が眼福と言いながら逐一そちらを見ていた。

 

「はい、じゃあ今日はここまでにしますねー。お疲れ様でしたー」

 

先生のような言い方で白雪が一同に言うと、女子は各々散らばっていく。

 

練習も終わったという事で、キンジが早々にギターを片付け、屋上へと続く階段へと向かっていた。

 

「不知火、武藤。すまないが少しの間、会長のこと頼めるか?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

「おう、任せておきな」

 

白雪の護衛の件を知っている2人に白雪の一時的なボディーガードをお願いした透はキンジの後を追いかける。

 

屋上に出ると、暖かな陽射しの中、仰向けで寝転ぶキンジを発見する。

 

「キンジ」

 

「ん? ああ・・・透か」

 

見下ろす透の影を感じたのか、キンジは薄目を開けて、上半身を起こした。

 

「昼間はお前がボディーガードの担当だろ。なんで会長から目を離す」

 

「なんでって、ここ数日白雪に張り付いてるけど何も問題なんか無かっただろ」

 

「・・・まあいい。会長がいない間にお前に話しておく」

 

透はそう前置きをしてキンジの隣に腰を下ろす。

 

「確かに今のところ何も問題は起きてないが、魔剣(デュランダル)は既に俺たちの周りをうろついている」

 

「・・・何を根拠にそんなこと言うんだよ」

 

「お前と不知火が見た2人の会長も、アリアのロッカーに仕掛けられたピアノ線も、会長にかかってきたというお前からの電話も全て魔剣(デュランダル)仕業(しわざ)だ。ヤツは着実に近付いてきている」

 

「不知火が見た白雪は見間違いだろ? ロッカーにあったピアノ線だって白雪のイタズラだし、まあ、さすがに度が過ぎるとは思うが・・・。後、電話だって白雪の勘違いだ」

 

透はここ最近起きた事例を挙げてキンジに説明するが、どうも本気で受け止めてくれてはいなさそうだ。

 

「お前、まだ本気で魔剣(デュランダル)が噂だけの存在だと思ってるのか?」

 

「じゃあ逆に訊くが、お前もアリアも魔剣(デュランダル)がいると思ってるのかよ。現に今まで白雪も危険な目にあってないだろ」

 

「いると思ってるじゃない。いるんだ」

 

2人の間にピリッとした不穏な空気が流れ始める。

 

この先、お互いに何か言葉を発しようものならば口喧嘩になりかねない雰囲気。

 

それをぶち壊したのは、

 

「こら、あんたたち! なにサボってんのよ! ちゃんと白雪をガードしなさい!」

 

チアガール姿をしたアリアの怒号だった。

 

「・・・会長のことは、少しの間だけ不知火と武藤に任せてある」

 

透は立ち上がり、2人が代わりに白雪を見張っている事を伝える。

 

「そうだったのね。それじゃあ、キンジっ!」

 

納得したアリアはキンジの名前を呼ぶと、右脚を天高く、自分の頭上まで振り上げた。

 

明らかにチアとは違う動作に、キンジはハッ、と気付いた様子で振り下ろされたカカト落としをキャッチしようとするが───

 

「ってぇ!」

 

───パシッ、とキンジの両手は虚しい音を立てて、アリアのカカトが脳天を直撃するのだった。

 

「もうっ。白刃取り、いっぺんぐらいは成功させなさいよねっ! 遊びじゃないのよ!?」

 

「あ・・・あのなぁー・・・」

 

キンジは蹴られた頭を片手で抑えながら立ち上がる。

 

「・・・お前、パートナーなら相方のコンディションの事も少しは考えてくれよ。たまには休ませろ。俺は病み上がりなんだ。どっかのバカにベランダから、冷たくて、汚い、夜の東京湾に突き落とされたからな」

 

と、キンジがクドめに嫌味を言うとアリアは、

 

「そっ・・・それは悪かったわよ。あたしも、ちょっとやりすぎたかもって思ったから」

 

紅い目を()らしつつ、ぷい、とソッポを向いた。

 

「・・・まあ、風邪のことはもういい。白雪がくれた『特濃葛根湯(とくのうかつこんとう)』のおかげで治ったからな」

 

「え」

 

キンジの言葉に、アリアは心底驚いた様子で向き直る。

 

「あ、あれは、あたし・・・」

 

アリアはゴニョゴニョと小さな声で、何かを言おうとして言わないでいる。

 

「・・・何だよ。あれはマイナーな薬だけど俺には効くんだよ。確かお前にも、このあいだ話したろ。白雪がなんでか知ってて、それを買ってきてくれたんだ」

 

「・・・白雪がそう言ってたの?」

 

「ん? ああ」

 

「・・・・・・」

 

ここで、アリアが沈黙してしまったので、察した透がフォローしてあげようとしたのだが、

 

「キンジ、それ本当はアリ───」

 

「透! 余計なことは言わないで!」

 

アリアのうわずった声が、透の言葉を(さえぎ)る。

 

「余計なことってなんだよ。隠さないでハッキリ言えよ」

 

「なんでもないわよ! 良かったわね白雪に看病してもらって!白雪、白雪、白雪!! あんたに良いことをしてくれるのはいつも白雪! もう白雪と結婚しちゃえば!?」

 

アリアは犬歯をキバのように剥いて、いつも以上の大声でキンジに詰め寄る。

 

「お、おい! いきなり何キレてんだよ!」

 

アリアの急な激昂っぷりに、キンジも1歩だけ引き、少し狼狽(うらた)えた様子を見せる。

 

「うるさい! キレてなんかない!」

 

「キレてるだろ!」

 

「あんたこそ!」

 

顔と顔がくっつきそうなぐらいに接近したアリアとキンジはお互いに睨み合った。

 

「この際だから言わせてもらうけどな、パートナーの方針だから付き合ってやってたけど、真剣白刃取りの訓練なんて、もうやめだ! あんなもん、達人技だろ! そう易々(やすやす)とできるもんじゃねーんだよ!」

 

「だめよ! 続けるわ! 魔剣(デュランダル)は鋼をも斬る剣を持ってるらしいの。ナイフやジュラルミンの大盾でも防御できない! 白刃取りの訓練は、今こそ重要な意味を持つのよ! いざ白雪が襲われた時、あんたを覚醒させて───」

 

「さっき透にも言ったけどな、この数日、そのいざ、ってなるような事が何も無かっただろ! こうなりゃもういっぺん言ってやる! 敵なんて、魔剣(デュランダル)なんて、()()()()()()!」

 

キンジの言葉にアリアはその紅い目を見開く。

 

「お前が一刻も早く母親───かなえさんを助けたいのは分かってる。でもな、今のお前はそのために平常心を失ってんだよ! 敵の一員かもしれない『魔剣(デュランダル)』って名前を聞いた時、お前はその敵を『いてほしい』って思っちまったんだ。それでいつの間にか、自己暗示ってやつで、『いる』ような錯覚に(おちい)ってんだよ!」

 

「ちがうっ!」

 

びしっ、と片方のポンポンをキンジに向けてアリアが犬歯を剥く。

 

魔剣(デュランダル)()()! 透もイ・ウーにいた頃に接触してるの! 魔剣(デュランダル)が存在する何よりの証拠よ! そして、あたしのカンでは、もう近くまで迫ってるわ!」

 

「そんなもの何の証明にもならねーよ! だいたい、コイツは俺たちを(だま)していたんだぞ! 何でそんな簡単に言うことを信じられるんだよ! 今回だって魔剣(デュランダル)がいるって嘘ついて、お前をまた騙しているかもしれないだろ!」

 

キンジもアリアに怒鳴りながら、透を指差す。

 

「あんたねぇ・・・!」

 

自分の事も透の事も信用していないような発言をしたキンジに、さらに業を煮やした様子のアリア。

 

「アリア、もうやめろ」

 

今にもキンジに掴みかかりそうなアリアを引き止めたのは、透であった。

 

「でも、今コイツはあんたを・・・!」

 

「それに関しては、キンジは何も悪くない」

 

透はキンジを見つめ、自嘲するような薄ら笑いを浮かべる。

 

確かに透は2人に正体を隠し騙していた。しかし、『武偵殺し』の一件が一段落着き、改めてアリアは透をパートナーとして迎え入れていた。

 

アリアは透を信用している。だからこそ、魔剣(デュランダル)がいる証拠として『透』を使った。透の名前を出せば、キンジも納得すると思ったのだろう。

 

しかし、キンジは魔剣(デュランダル)をいないことの証拠として『透の過去の行い』を使った。悪く言えば、自分の正しさを証明するために仲間を利用した。

 

その事実に、透は少しだけ心を痛めながらも、自らの過ちを(かえり)みる。

 

「この前まで騙してたんだ。信じられないのも無理はない。お前らの優しさに甘えて、信用を取り戻す努力を忘れていた」

 

でも、と透は小さく呟く。

 

「俺のことは信じられなくても、アリアのことぐらいは信じてやれよ。パートナーだろ・・・」

 

罪悪感、後悔、憤り、哀しみ。複雑な感情が透の中で入り交じる。

 

「・・・・・・」

 

何も言えずに突っ立っているキンジから目を逸らし、透は階段へ向かい歩き出す。

 

「透!」

 

アリアの呼びかけにも止まらず、階段を降りていく透とその場に留まるキンジを交互に見ながら、アリアは、

 

「バカキンジ・・・」

 

キンジに一言浴びせてから、透を追いかけた。

 

 

 

 

 

屋上でキンジとケンカ別れをした透とアリアは体育館を去った後、装備科(アムド)の透の作業室に来ていた。

 

「透」

 

「・・・なんだ」

 

「ごめん。あんたを傷付けることになっちゃって」

 

アリアは不用意に透の証言を使ったことを後悔しているようだった。

 

それが結果的に透を傷付けて、キンジとケンカしてしまう事態へと発展したと思っているのだろう。

 

「お前が謝ることはないだろ」

 

確かにキンジに信用されてないことが分かった時、透の心は少なからず傷付いた。だが、キンジが疑心暗鬼になるのは至って正常な反応だ。

 

透がキンジに対して憤りを感じていたのは、パートナーだと認めながらも、アリアのことを信用していなかったからである。

 

「一番悪いのは俺。次にキンジ。お前は何も悪くない」

 

アリアもアリアで特訓のことなど独裁的な所があったので、一概に全く悪くないとも言えないが、気落ちしていたのでフォローしてあげると、

 

「そうよ! 全部バカキンジが悪いのよ!」

 

態度が一変。全責任をキンジに(なす)り付け始めた。

 

相変わらず理不尽な気もするが、アリアらしさが戻ってきたという点においては良かったと言えるだろう。

 

「・・・まあ、ともかくそろそろ帰ろう。会長のボディーガードは続けなきゃならない」

 

武偵憲章2条『依頼人との契約は絶対守れ』。

 

キンジと顔を合わせるのは気まずいとは言え、この憲章は遵守しなければならない。

 

「帰らなくていいわ。ボディーガードはキンジ1人にやらせときなさい」

 

ところが、アリアはその憲章を破るような指示を出してきたのだ。

 

「どういう意味だ?」

 

アリアに限って依頼を放棄する事はないはずだ。何かしらの意図があると感じ取った透はその真意を問う。

 

「あんたも分かってると思うけど、魔剣(デュランダル)は白雪のことを常に監視している。それも、距離をどんどん詰めてきてるわ。でも、あたしやあんた、レキがいる内は多分襲ってこない。だから、このケンカしたタイミングであたしたちは、わざとボディーガードから外れるのよ」

 

「・・・待て。今回のボディーガードのメンバー、レキもいたのか?」

 

「言ってなかった?」

 

「聞いてないな」

 

情報の共有はして欲しいものだ。いざと言う時の連携が取れない。

 

「レキのことは今把握したから良いとして、俺はその提案には反対だ」

 

「なんでよ」

 

「会長が危険だからだ」

 

これはなかなか尻尾を見せない魔剣(デュランダル)(おび)き寄せるアリアなりの作戦なのはよく分かる。

 

だが、今のキンジはヒステリアモードでもなければ、魔剣(デュランダル)がいないと思い込んでいる程の無警戒っぷり。

 

主戦力とも言える透やアリアが白雪の側を離れるとなれば、出来るのはせいぜい魔剣(デュランダル)に悟られないように遠くから見張る程度。

 

これでは白雪を(さら)ってくれ、と差し出しているようなものだ。

 

「アリア、お前がジャンヌを捕まえたい気持ちはよく分かる。だが、今回はあくまで会長の身の安全が優先だ。ジャンヌを逮捕したいならアドシアードが終わってからでも───」

 

「ダメよ!」

 

警護対象を危険に(さら)してまで犯人を捕まえようとすべきではない、という透の意見をアリアは(さえぎ)り、真っ向から否定する。

 

「もし、魔剣(デュランダル)が白雪を諦めて姿を(くら)ましたら、あたしたちは追えなくなるわ。今が・・・魔剣(デュランダル)の方から近付いてきてる今しかヤツを捕まえるチャンスはないのよ!」

 

アリアの目は本気だった。例え、再度否定しても、1人でやることになったとしても、その考えを変えることはないだろう。

 

「・・・分かった」

 

透は早々に折れることを選んだ。

 

しかし、何も考えなしに提案を容認したわけではない。

 

魔剣(デュランダル)超偵(ちょうてい)の誘拐が目的としている以上、もし白雪が拐われてもすぐに殺されることはない。

 

殺害が目的ならこれまでにいくらでもやりようはあったはずなので、『誘拐』という優先事項の変更もないはずだ。

 

「俺も全面的に協力する」

 

それに、アリア1人で実行するよりも、2人で協力した方がリスクは下がり、魔剣(デュランダル)を逮捕できる可能性が上がる。

 

これらを踏まえた上で透はアリアの提案を呑み込んだのだ。

 

「透・・・ありがと」

 

相変わらず感謝の言葉は聞き取れるか分からないくらい小さな声であったが、透にはきちんと届いていた。

 

「じゃあ話すことも話したし、早く帰りましょ」

 

「帰るって・・・俺の部屋か?」

 

「当たり前じゃない。あ、そうだ。久しぶりにあんたの卵焼き食べたいわ。もちろん砂糖たっぷりのね」

 

また少しの間、アリアの居候生活が始まる。

 

透はその事に頭を少し悩ませながらアリアと共に第7男子寮へと帰るのだった。

 






透のこれまでの行いが仇となってしまいましたね。


人間一度騙されれば疑心暗鬼となってしまうものです。
これは透が悪い。


ここから透を挽回させられるように頑張ります。




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